機動戦士ガンダムSEED 自然発生の天才   作:ただの粒

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第1話 破滅への引導

C.E.71 ヘリオポリス

 

 

 

そこは現在、地球連合軍とプラントが武力衝突を起こしてから既に11ヶ月もの時間が経過している中、地球上で中立を保てている数少ない国、オーブが所有する資源衛星コロニーであり、外の世界と比べると全く戦争のない平和な場所であった。

 

しかし、中立などというのは名ばかりで、実際には国の中から自らの利益の為に、影響力の強い地球連合に取り入ろうとする閣僚も僅かではあるが存在しているのが実状である。

 

それらの閣僚らが独断で地球連合と共同でMSの開発を計画し、オーブからヘリオポリスに送り込まれたのがオーブ国営のモルゲンレーテ社の技術スタッフ達である。

 

そして、そのスタッフのリーダーを任されていたのが、ロイ・ネ・フラガである。名前からも分かる通り、彼は資産家であったフラガ家の次男で、10も歳の離れた長男であるムウ・ラ・フラガを兄に持つ。

 

勿論、彼もムウ同様にフラガ家が代々引き継いできた優秀な空間認識能力と特殊な予知能力も身につけている。更にロイはそれらの才能に加えて知能レベル、身体能力共に平均的なコーディネイター達と比べるとズバ抜けており、まさに本物の天才と呼べる存在だった。

 

そんな才能の塊である彼は現在、ヘリオポリスの工場区にて5機のG兵器の最終点検を行っていた。

 

G兵器と言うのは、今回ロイが連合軍と共同開発を進めてきたMS、デュエル、バスター、ブリッツ、イージス、ストライクの5機のGAT-Xシリーズの事で、それらのMSには共通して、PS装甲、MS専用ビーム兵装、低電力高出力ジェネレーターといった、これまでの技術では実用化するのはかなり難しいと考えられていた机上の空論だったものを盛り込んだ最新鋭の機体である。

 

そして、それらの高度な技術を実用化に漕ぎ着けたのも彼を含めた技術スタッフ達なのである。

 

「よし、ジェネレーターの出力に問題はないな」

 

ロイが手元の端末を確認しながら目の前に横たわる全身グレーの機体の最終調整を終えた。すると、ロイの部下の一人であるルーク・フェイロンが彼の元に来て声を掛けた。黒髪をオールバックにし、理知的な雰囲気を纏った男である。

 

「主任、こちらも最終調整終わりました」

 

「ああ、了解した。お前達は予備のジェネレーターとスラスター、武装一式をB区画に移動させておいてくれ。それが終わったら今回の仕事も完了だ」

 

「はぁ、ようやく終わるんですね。本当に大変でしたよ、例のスラスターの開発。ま、久しぶりにまともな物が作れて技術者としては大変喜ばしい限りなんですけどね」

 

ルークが溜息をつき、ようやく今までの激務から解放される喜びを噛み締めた。

 

「寧ろ、俺たちにとってはこれからの方が大変なんだがな。ところで、本国の連中の様子はどうだ」

 

「ええ、彼らも主任の無茶振りな要求に毎日死にそうになってますよ。でも、流石は主任が直々にスカウトした奴らばかりですね。死にそうになりながらも毎日子供みたいに目をギラつかせながら喜んで開発に勤しんでますよ。それと先日、ついに核融合炉の小型化に成功したそうです」

 

「そうか、ようやく完成したか。それで、アスハ派の人間には気付かれていないだろうな」

 

「ええ、そちらも心配ありませんよ。きちんとサハク家に提供してもらった秘密区画で開発は行わせていましたから」

 

「そうか、ならば予定通り例の実験機で大気圏内での飛行試験とデータ採り、それと理論値との誤差計算に移行しておくように伝えておいてくれ。それが終わったら核融合炉をエンジンユニットに換装して稼働試験の方もしておくように伝えてくれ」

 

「了解しました」

 

ルークはそれだけ言うと、ロイに背を向けて工場区の出口に向かって行った。

 

「さて、こっちの方も済ませておくか」

 

ロイは周りに誰もいない事を確認すると、ポケットから小型の端末を取り出し、ある人物を呼び出した。そして、数秒の後、その人物の顔が端末の画面に映し出された。

 

「やあ、ロイ。君から連絡してくるとは珍しいな。私に何か用かな?」

 

その人物はロイと同じ色の髪色をした奇妙な仮面を付けた男だった。その男の顔には笑みが浮かべられており、それが更にその男の奇妙さを際立たせていた。

 

「昨日、そちらにG兵器の画像と大まかなデータを送ったはずだが」

 

ロイはそんな奇妙な外見を気にした様子もなく、淡々と話を進めていった。

 

「あれは君が送って来たものだったのか。道理で情報が細か過ぎる訳だ。それで、データを送って来たと言う事は物もくれるのだろ?」

 

「あぁ、勿論だ。PS装甲もビーム兵器もこちらからすれば、既に型落ちした技術だからな」

 

「本当に君の才能にはいつも驚かされる。ところで、5機の内の何機をこちらに譲ってくれるのかな」

 

「4機やる。その代わり、そちらもジンを1機譲ってくれ」

 

「ん?残りの1機には君が乗るのではないのか?」

 

「あれらは5日後には連合に受領されることになっている。俺は今回、オーブの技術スタッフとしてここに来ている。だから俺は連合のMSには乗れない。それに、現状で堂々と実戦データを採れるのはザフト製のMSだけだからな」

 

「そうか、了解した。ジンを1機手配しよう。自爆装置は解除しておく。精々壊さんようにな。それと、詳しい作戦が立案され次第、そちらにも情報を流そう」

 

「感謝する」

 

「お互い様だよ」

 

端末に映っていた画面から光が消え、画面は元の液晶色に戻った。

 

 

 

 

 

一日後、ロイは端末に一通の文書ファイルが送られて来ているのを確認した。その中身は前日会話したラウ・ル・クルーゼからのヘリオポリス強襲作戦の詳しい内容についてだった。ロイはその内容を読み終えると、端末をポケットに入れて、連合の技術者達がストライカーパックの調整で集まっているA区画へとルークを引き連れて行った。

 

 

 

 

 

「マリュー・ラミアスさんですね。今お時間大丈夫ですか?」

 

ロイは連合側の開発主任を務めていたマリュー・ラミアスに経過報告するために来ていた。いくら、オーブと連合で分かれているとは言え、今はまだお互いに共同でMSの開発を進めている立場なので、何かあれば逐一報告し合うのが暗黙の了解となっている。

 

「ええ、時間ならありますが、何か用ですか?」

 

「昨日全てのG兵器の調整が終わりましたので、こちらのスタッフ、私を含めた数名以外を本国へ帰国させた事を報告に来ました」

 

「そうですか、お疲れ様です。後は4日後の受け取りのサインを残すだけですね」

 

「ええ、そうですね。これでようやく私も地球に帰れますよ。ところで、一つ聞いてもよろしいでしょうか」

 

「ええ、いいですけど、なんでしょうか?」

 

「あのG兵器とアークエンジェルがあればこれからの戦局は連合に有利になると思いますか?」

 

ロイは、未だストライカーパックの周りで忙しそうに作業を続ける連合の技術スタッフ達を眺めながら質問を投げ掛けた。

 

「……難しい質問ですね。正直なところ、私は流石にあれらのG兵器達だけでは戦局を変える程の戦力にはならないと考えています。しかし、これを契機に我が軍のMSの量産体制を整えて、物量戦に持ち込めば、ザフトに勝てる可能性はかなり大きくなると思っています」

 

「そうですか、確かに仰る通りですね。私たちからすれば地球軍には勝ってもらわないと今後の食い扶持が危ぶまれますから、これからも是非そちらに協力していきたいものです」

 

「それはありがたいお話ですが、私の一存で決めるわけにもいきませんので……」

 

「ええ、それは承知しています。ただ、こちらとしてもこういった姿勢を示しておかないといけませんので、どうかご了承ください。それでは、そろそろ時間なので失礼します。貴重なお話をありがとうございました」

 

「いいえ、こちらこそ」

 

ロイは軽く会釈しながらお辞儀をすると、もと来た方向へと戻っていった。

 

「さっきの話、どう思う」

 

ロイは歩きながら、斜め後ろから付いてくるルークに尋ねた。

 

「確かに彼女の言うことも正しいでしょう。しかし、今回主任がクルーゼに流した機密情報がプラントの評議会に知れ渡れば彼らも黙ってはいないでしょう。私の予想では本格的にNジャマーキャンセラーの実用化に乗り出してくると思います。そうなれば、単純な物量で圧殺というのは難しくなると思いますね」

 

「Nジャマーキャンセラーか、確かプラントでは既に基礎理論は完成しているそうだな。まあ、核融合炉の小型化に成功した今となっては重要度はかなり落ちる代物ではあるが、持っていて損することもあるまい。それで、その技術は手に入りそうか」

 

「ええ、そもそもこの情報の元は、事前に潜り込ませていたエージェントの一人からのものですから。偶然にもNジャマーキャンセラーの開発チームに入ることができたそうで、案外簡単に手に入ったそうです。ただ、完成に近づくにつれてスパイ対策が厳重になりつつあるそうなので、詳しい情報を持ち帰るのには時間が掛かりそうです」

 

「そうか、なるべく無理はしないように伝えておいてくれ」

 

「了解です。ところで、クルーゼにはGを4機渡すと言っていましたけど、どの機体を残すつもりなんですか」

 

「ストライクを残す。他の機体には既にビーム兵器が装備されているからジン程度なら一撃で撃破されてしまう。クルーゼが手配してくれるジンをなるべく傷付けずに鹵獲するには、まだアーマーシュナイダーしか装備されていないあの機体が適任だろう」

 

「それならストライクを奪取しようと近づいて来るザフト兵を排除する必要がありますね」

 

「あぁ、それはお前に任せる。確かお前はザフトのアカデミーを首席で卒業していたな。銃の扱いや近接格闘戦も得意だろ」

 

「ええ、あなたのお陰で私のこれまで積み上げてきた華々しいキャリアは全て水の泡になりましたけどね」

 

「まあそう言うな。俺の元で働いている方が軍で腐ってるよりよっぽどお前の才能を有効活用出来ていると思うが」

 

「ええ、確かに。私はあなたに拾われてから一度たりとも後悔なんてした事はありませんよ」

 

そう言う彼の表情はとても楽しそうに綻んでいた。

 

 

 

 

 

4日後、クルーゼの部隊がヘリオポリスの工場区画及びアークエンジェルが格納されているドックを襲撃した。ヘリオポリス内部は、ジン数機が暴れ回っていることも起因して、様々な場所から爆発音や悲鳴が聞こえてくるという悲惨な状況に陥っていた。

 

斯して、絶対に安全だと唱われてきた揺り籠は、一変して戦争の業火に呑まれた地獄へと化した。

 

「どうやら始まったようだな」

 

ロイは静かに呟いた後、すぐ近くで研究資料や整備記録をまとめていた数名の部下達に指示を飛ばした。

 

「この戦闘が一旦落ち着いたらB区画に搬入されているジンの改修キットを運び出す。お前達は、その部品が積み込まれているトレーラーをいつでも出せる状態で待機しておいてくれ」

 

「主任はその間どうされるのですか」

 

部下の一人がロイに尋ねた。

 

「俺はこれからルークの援護に向かう。お前達は今から移動を開始してくれ」

 

ロイはそれだけ言うと、ハンドガンを手にしてストライクとイージスがある激戦区へと走り出した。

 

 

 

 

 

一方、未だ奪取されていないストライクとイージスの周りには複数のザフト兵と連合の技術スタッフとが激しい銃撃戦を繰り広げていた。

 

戦況は連合側が圧倒的に不利だったが、ストライクの周りで戦っていたルークは、そんな複数のザフト兵達を相手取っても、かなり有利に戦闘を進めていた。

 

彼は基本的にロイの右腕として諜報活動や裏工作、そしてMSの開発などを行う比較的戦闘とは無縁の仕事をこなしているが、ザフト軍のアカデミーを首席で卒業したという功績は伊達ではなく、MSの操縦技術から白兵戦闘能力に至るまで、ロイ同様に平均的なコーディネイター達を遥かに上回っていた。

 

「あと4人ですか、しかし元とはいえ同胞をこの手で殺すのはあまりいい気分ではありませんね」

 

ルークはとても落ち着いた様子で状況を見据えながらひとりごちた。

 

彼は装備していたアサルトライフルの弾が切れたことで一旦物陰に隠れてマグチェンジをして、敵の様子を伺うために再び物陰から顔を出した。すると、彼の目の前で4人いたザフト兵の内3人の頭が連続で撃ち抜かれた。

 

ルークが一瞬呆気にとられていると、彼の横にハンドガンを持ったロイが現れた。

 

「ルーク、ここもそろそろ危険だ。一旦離脱するぞ。それと、あの赤いパイロットスーツを着ている奴にはイージスを奪ってもらわないと困るから殺すなよ」

 

辺りの爆発の規模が徐々に大きくなりつつある中で、ロイはルークに撤退の命令を出しながら、ストライクに取り付いていた赤いパイロットスーツを着込んだザフト兵の近くに数発威嚇射撃をした。

 

ザフト兵はストライクに乗り込む事を諦め、未だに誰も奪取出来ていなかったイージスの方へと走って行った。

 

「了解です。それにしても、相変わらずの射撃技術ですね。本当にあなたがナチュラルなのか疑いたくなりますよ」

 

ルークは少し飽きれた表情でロイに話し掛けた。

 

ルークは確かにあらゆる事に於いて優秀ではあったが、ロイはその更に上を行っていた。それがコーディネイターであるはずのルークがナチュラルであるロイに付き従う最大の要因でもあった。

 

「俺はれっきとしたナチュラルだ。ただ、俺の家系が少し特殊なだけだ。まあ、その中でも俺は特別に優秀だったらしいがな」

 

二人は自身の運動能力をフルに使い、炎に包まれて行く工場区画から撤退していった。

 

 

 

 

 

 

 

「主任、状況はかなり不利だと思うのですが、大丈夫でしょうか」

 

二人は安全な場所からストライクとジンの戦闘を見守っていた。

 

「あぁ、大丈夫だ。GAT-Xシリーズの性能は現行の兵器群の中ではトップクラスだ。たとえ素人が乗ったとしてもジン程度なら倒せるだろ」

 

「ですが、流石にあのOSでは歩く事すらままならないと思うのですが。多少なりともOSの開発も手伝ったほうが良かったのではないですか?」

 

「俺はそこまでサービス精神に富んでない。それに俺の勘がストライクが勝つと言っている」

 

「まあ、あなたが言うのであれば正しいのでしょうね」

 

2人がそんな話をしていると、今までまともに動く事すら出来ていなかったストライクの挙動が急にスムーズなものとなり、ジンの頭部を殴りつけた。

 

「ん?ストライクの動きが変わったな。OSを書き換えたのか?」

 

「どうやらそのようですね。確かストライクにはマリュー・ラミアスと民間人の少年が1人乗り込んでいたはずですが」

 

「民間人か、……恐らくそいつはお前と同じコーディネイターだろうな」

 

急に動きがよくなったストライクはその後の戦闘を終始、有利な状況のまま進め、ジンがストライクのアーマーシュナイダーを両肩の関節部に突き刺されたことで活動を停止した。そして、ジンのコックピットから自爆装置を起動させたつもりになったザフト兵が出てきて、そのまま飛び去って行った。

 

勿論、自爆装置はラウ・ル・クルーゼが事前に取り外していたので起動する事はなかった。

 

戦闘が終わるとロイはすぐに端末を取り出し、B区画で待機していた部下達に通信を繋げた。

 

「たった今捕獲対象が活動を停止した。機体はE区画付近にあるから早速回収に当たってくれ。合流ポイントは後程指定する。それと、もし人手が余っていたらA区画からストライカーパックが積んであるトレーラーも合流ポイントまで回してくれ」

 

ロイは通信を終えると、メインバッテリーが切れてPS装甲がダウンしたことでトリコロールカラーから元のグレーに戻ったストライクの元へと移動して行った。




かなり端折ってしまった感が否めないですが、この作品を読んでくださる方々の殆どが既に原作の知識を備えてらっしゃると思いますので、今後からも今回と同じように、一々既存のキャラの説明などはせずに書いていこうと思っています。

感想、評価などありましたら、是非コメントしていってください。
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