光波防御体、それは実体弾、ビーム、レーザー等の如何なる攻撃も通さない鉄壁の壁。
そんな無敵とも思えるような防御設備に覆われた宇宙要塞アルテミスに、クルーゼ隊からの追跡を巻いたアークエンジェルが入港していた。
だが、アークエンジェルとアルテミスは同じ地球連合といえども、それぞれの所属が大西洋連邦、ユーラシア連邦という違いがある。それ故、形式上は友軍ではあるが、どちらかが隙を見せれば一気に呑み込もうという程度には牽制し合っているというのが現状である。
そして、その隙を見せてしまったアークエンジェルが今こうしてアルテミス内の兵によって武装解除され、占拠されていた。艦の指揮を執っていたマリュー・ラミアス大尉、ナタル・バジルール少尉、そしてこの艦内では比較的上級であるムウ・ラ・フラガ大尉の3名がアルテミスの施設内へと案内、もとい連行されることとなった。
アークエンジェルのハンガーでは、ストライクが武装解除され、アルテミス側のMAデッキへと移送された。だが、幸運にもアルテミスの対応としてロイが搭乗していたジンに対してそこまでする価値は無いと判断され、武装解除されるだけに留まった。それは、いかにアルテミスが新造艦であるアークエンジェルと新型機であるストライクに興味を示しているかの表れでもあった。
「さて、こうして我々は一箇所に押し込められた訳ですが、何か対策はあるんですか、主任?」
アークエンジェルのクルー達と同様にロイやルークも食堂に集められていた。不満を零すクルー達の中で彼ら二人は今後のことについて話し合っていた。
「対策も何も、放っておいてもザフト側にブリッツがある限りこの要塞は終わりだ。ただ、それは同時にストライクを捨てる結果になると思うがな」
「捨てるんですか、ストライク?」
「まさか。まだまともに戦闘データも取れていないのに手放すはずがないだろう?最悪、ザフトがここを襲撃してきた時の混乱に紛れて奪い返しに行くことも出来るが、その方法は確実性に欠ける」
「ではどうすると?」
「その内、焦れた向こうから迎えに来るだろうさ」
そう言ってロイは皮肉げな笑みを浮かべた。
暫くすると、細々とした不満が聞こえる食堂に武装した兵を引き連れたアルテミスの指揮官であるジェラード・ガルシアが入ってきた。彼は食堂内の人間を一通り見渡すと、口を開いた。
「この中にロイ・ネ・フラガという者はいるか」
その言葉を聞いたロイは自分の予想の通りに動いてくれるガルシアを滑稽に思いながらも、そのことを一切噯気にも出さずに返答した。
「私がそうですが、何か用でも?」
ロイが名乗りを上げるとガルシアは探るような、見定めるような視線をロイに向けた。
「ほう、君がそうか。確か君はあのエンデュミオンの鷹殿の弟だそうだな。聞く話によると、君はあの最新型のMSを操縦していたそうじゃないか」
ガルシアが言う最新型のMSとはストライクのことを指しているのだということを食堂内の人間たちはすぐに理解できたが、実際に操縦していたのはキラであり、ロイではなかったはずだと知っていた。ロイはガルシアの言っていることが事実と食い違っているのはアルテミスに連れて行かれたムウ辺りがロイならばどうにでも対処出来るだろうと判断して、ガルシアに嘘を吹き込んだのだと想像できたため、誰かがガルシアの間違いを指摘する前にこの状況を利用することにした。
「ええ、その通りですよ。あれは私が動かしていました。それで、私に何をしろと?」
「君は現状をよく理解できていて助かるよ。最近はどうも反抗的な輩が多くて困るのでな」
そう言いながらガルシアはアークエンジェルのクルーが集まっている一画に侮るような視線を送った。そして、そのクルーたちは顔を顰めるばかりで、自分たちに抵抗する手段がないことに苛立った。
「時間がおしていますので、具体的な内容を聞いても?」
ロイは大西洋側とユーラシア側のいざこざに関わり合いを持つのは面倒と判断し、ガルシアに先を促した。
「なに、簡単なことだ。ストライクのOSに我々では突破できない強固なロックが掛かっていてな。どうするべきか思案していたところにある方から助言を頂いたのだ。その内容に、君に一任するべきとあったので、君を迎えに来た訳だ」
ガルシアの言うある方という人物に引っかかりを覚えたロイはガルシアに助言をしたのはムウではないのかと考えたが、やることに変わりはないので了承の意思を示した。
「成る程。……いいでしょう、あなた方に協力しましょう」
「おお、そうか。協力してくれるのか。では早速こちらについて来てもらおうか。ああ、それと、一つ念のために確認しておきたいことがある」
ガルシアはもう一度食堂内に顔を向け、言った。
「あのジンを動かしていたのは誰だ」
食堂内の空気が凍りついた。本来ストライクを操縦していたのはキラであり、ジンを動かしていたのはロイだということをクルー達は知っているからだ。知っていながら嘘を吐いたのがばれると厄介なことになると感じながらも何人かの者達はロイに視線を向けた。その反応を目敏く見つけたガルシアはロイに問うた。
「何か知っているのかね、ロイ君」
「ええ、あのジンを動かしていたのは彼ですよ」
ロイが一人の男に指をさした。
「彼の名前はルーク・フェイロン。私の助手として付いてきてもらってます。ああ、何故彼がMSの操縦を出来るか不思議ですか。彼はコーディネイターですからMSの操縦くらいわけないですよ」
軽い調子のロイに紹介されたルークはガルシアに軽く礼だけをした。
「ほう、まさか地球軍の船にコーディネイターが乗っていたとは」
ガルシアはルークに興味を持ったのか、いつもの人を食ったような目を向けた。
「ガルシアさん、一つ勘違いされては困るのですが、我々は軍属ではありません。飽くまで民間人としてあなた方、地球連合軍に一時的に協力という形をとらせて頂くだけです。ですので、私を含めた避難民である部下達に必要以上のことを要求するようなら、この話はなかったことにさせて頂きます」
ロイがガルシアに決然とした態度で言い放った。ガルシアはそんなロイの顔を見て、ロイの表情の中に色濃く侮蔑を滲ませていることに気が付いたのか、彼は自尊心を傷つけられたような気分に酷く憤りを感じ、顔を歪めて怒鳴りつけた。
「調子に乗るなよ民間人が!その気になれば我々は武力を持って貴様らを従えることだってできるんだ。それを、こちらが穏便に済ませようと下手に出てやったらなんだその態度は!この場で全員殺してやろうか!?ここは我々の庭だ!貴様らを殺してしまっても証拠などいくらでも握り潰せるんだぞ!」
息を荒らげながら言い切ったガルシアに、ロイは愛想笑いの仮面を外し、溜息を吐いた。そして堂々と蔑笑を浮かべながら言った。
「それが本音か。そういえば、あんたがさっき言っていたある方とやらは今回の件を知っているはずじゃなかったか。それなら必然的に俺たちがここに立ち寄ったことは既に知れ渡っているはずだ。残念ながらあんたがその人物に連絡を取った時点で同胞殺し、ましてや民間人虐殺の証拠を全て消し去るなんてことは現実的ではないな」
ガルシアは怒りのあまり、今回の件に関して外部と連絡を取っていたことを失念していた。そもそも前提としてその連絡を取った人物がユーラシア側の人間であればガルシアにとって何も問題はなかった。しかし、ロイはガルシアと連絡を取った人物に関して思い当たり以上に確信があった。だから踏み込んだ。結果は焦りの表情を浮かべるガルシアの反応を見ればロイの予想通りであることが窺えた。
「ガルシアさん、一つ忠告だ。あんたらがザフトと今でも戦い続けられているのは連邦諸国の国力あってのものじゃあない。我々、企業をはじめとした多数の経済主体が齎す巨大な資本あってのことだということを忘れるなよ?余り調子に乗ってると、潰すぞ?」
ロイが語るその様はまるで何かの演劇でも見ているのではと錯覚しそうになるほどものだった。事実、ガルシアを含め、その場にいた誰もがロイのことを得体の知れない、何か恐ろしい物のように見えた。ロイの目はガルシアを映してはいたが、言外に彼などいつでも消し去ることの出来るゴミ屑と同然だと語っていた。
「ただ、今回のOSの件はこちらにも利がある。だから協力してやろう。ありがたく思えよ」
ロイは食堂から出るべく、出口に向けて歩き出した。その際、近くに座っていたキラの肩を軽く叩いて声を潜めて言った。
「少しストライクを借りる。艦長たちにはザフトの攻撃が始まったらすぐに艦を出すように言ってくれ」
ロイはそれだけ言うと、ガルシア達よりも先に食堂から出て行った。残された者達の殆どは状況がよくわかっておらず、ただ呆然とするばかりだったが、ガルシアが悔しそうな表情をしながら部下達を引き連れて行った後、ひとまず面倒事が去ったことだけは理解した。
「ルークさん、でしたよね」
ロイ達が食堂を去った後しばらくして、一人で座り続けるルークにキラが声を掛けた。
「ん?ああ、君は確かキラ・ヤマト君でしたね。先程はうちの主任が色々と危ないことを口走ってしまいご迷惑を掛けたようで申し訳ありませんでしたね」
ルークは基本的に誰に対しても物腰の柔らかい対応をする。無論、ナチュラルに対してもである。特にプラント育ちのコーディネイターは幼少期にナチュラルを嫌厭するように教育されるため、ナチュラルとコーディネイターを表立って区別しない者はナチュラルよりも少ない。そういう意味ではルークは非常に珍しいタイプの人間である。
「いえ、そのことは僕も助かったので、寧ろ感謝してます」
「そうですか、それは良かった。主任が身を呈してあなたを守った甲斐がありますよ。それで、私に何か用ですか?」
ロイは特にキラを守るために行動したわけではないが、キラが感謝ししているのならばそういうことにしておくのが面倒が少ないと思い、キラの言うことを修正することなく受け入れた。
「いえ、特に用というわけじゃあないんです。ただ、少しきになって……。ルークさんも僕と同じコーディネイターだったんですね」
「ええ、まあ。私は特に自分がコーディネイターだということを意識しないのですけどね。この船は地球軍の所属ですから、気をつけるのに越したことはありません。それに自分から打ち明けるようなタイミングも特にありませんでしたから。それと、付け加えておくとあそこに集まっている技術士達は半分以上がコーディネイターですよ。我々の職場では何よりも優秀なことが求められますから、必然的にコーディネイターが多くなるんです」
ルークが指をさしながら言う一画にはロイがオーブからヘリオポリス、そして現在にかけてまで連れている部下達が談笑をしながら時間を潰していた。その緊張感に欠ける様子は他のクルーや避難民の張り詰めた雰囲気とは随分と乖離していた。それは単に危機に対して鈍いのか、それともロイがいるのなら何も心配はいらないという信頼なのかはキラには判断しかねた。それでも、アークエンジェル内にいるコーディネイターは自分一人だけではないという安心感も同時に感じられた。
「そうだったんですか」
幾分か緊張の解れた表情を見せるキラにルークは言った。
「まあ、私がコーディネイターということが知れて気分を害される方もいるようですが、それが普通の反応ですよ」
ルークが苦笑しながら目を向ける方へとキラも視線を送るとフレイ・アルスターの姿があった。彼女はコーディネイターに対する嫌悪感を隠すことなくキラとルークに敵対的な目を向けていた。キラはフレイのことが気になっていたこともあって随分とショックを受けた様子だった。
「察するに、色々と事情があるようですが、あまり気にしないことをおすすめします。そっちの方が気が楽ですし」
「楽、ですか……」
「ええ、楽です。私は元々、他人に対して特に興味を持たない人間でしてね。それは同時に他人の評価も気にしない気楽な生き方です。すべて自己完結していて、他人を一切顧みない。とても楽な生き方です」
「それは……、さみしいですね」
「ええ、よく言われます。ただ、そんな私も主任と出会ってからは少し違う生き方を楽しませてもらってますよ」
ルークは再び苦笑した。キラは自分が随分と失礼なことを言ったと気が付き、咄嗟に謝った。そして、少し暗い雰囲気を和らげようと話題を変えることにした。
「そういえば、さっきロイさん達が言っていたある方って誰のことなんですか?会話の内容から随分と偉い人の様に感じましたけど」
「私もはっきりとはわかりませんが、推測することはできますね。まず、ストライクのことを知っている人は今の段階では殆どいませんから、かなり絞れると思いますよ。それに、地球連合の軍人の中に主任の知り合いはあの人の兄であるムウさん以外いないはずですから更に絞れますね。そうなると、民間からのG開発への出資者といったあたりでしょうか」
さらりと物凄いことを言い出すルークにキラは若干気圧されつつも質問を重ねた。
「出資者、ですか」
「ええ、そうです。その中でも軍に口出し出来るほどの人物は一人しか思いつきませんね」
「それは誰なんです?」
「おっと、これ以上は流石にマズイですからね。お互いの身のためにも黙っておきましょう」
キラは、十分にやばいことを聞いたのでは、と思ったが、ルークが大丈夫だと言っているので信じることにした。そして、同時にロイは一体何者なのかと考えを巡らせていた。
それから、ルークがストライクの開発に深く関わっていたということもあり、ストライクに関する話がブリッツがアルテミスに攻撃してくるまでの間続いた。
ロイはストライクのコックピット内でキラがロックしたOSを起動するべく、キーボードを叩き続けていた。
本当ならば彼が持ち歩いている端末内に入っているソフトを使えばすぐにでもロックは解除できるのだが、それをしてしまうと、ロイがお役御免となってコックピットから降ろされてしまいストライクを奪い返すのが面倒になるため、ブリッツが攻撃を仕掛けてくるまでの時間を稼いでいた。
「まだ終わらないのかね。随分と大口を叩いた割には大したことはないのだな」
先の食堂での意趣返しのつもりなのか、嫌味ったらしく口撃してくるのはガルシアである。
「無視かね。それとも言い返す言葉が無いのかね。これだから世間知らずの若造は困るのだ」
ロイが言い返さないことに調子づいたのか先ほどから、この繰り返しである。ロイとしては食堂での一件はジンに関することから注意を逸らすためと、現在のストライクに乗り込むという状況を作り出すための演技であったので、用済みであるガルシアとこれ以上関わるつもりは無いのである。
暫くすると、ロイの勘に反応があった。
それを合図に、ロイは銃を構えて見張っていた兵を蹴り飛ばし、コックピットを閉じた。ストライクの外で何やら騒いでいるガルシアを始めとした者達の声を無視して、端末をストライクに接続しロックを瞬時に解除していき、OSを立ち上げた。そして、更にロイは端末を操作しOSそのものを、端末に保存されていた独自のOSに上書きしていく。彼が今回ストライクに乗り込んだ一番の理由は、たった今インストールしたOSの試験のためであり、他は飽くまでもついでなのである。
「さて、武装はアーマーシュナイダーとヘッドバルカンだけと、かなりのハンデではあるが、この機体がOS通りに動いてこれれば何も問題無い」
OSのインストールに若干の時間はかかったものの、ブリッツがアルテミスを攻撃する直前に完了した。アルテミス内に鈍い衝撃が走ったのと同時にロイはストライクのPS装甲を展開した。
「さて、兄さん達は上手くやると思うから心配はない。ならば、あとは俺が敵をここで足止めできれば脱出は完了するというわけだ。楽勝だな」
ロイは何のユニットも装着していない素のままのストライクのメインスラスターを点火し、ブリッツが侵入してくるであろうハンガーの出入り口に向けて機体を推し進めた。
ストライクがあと少しでハンガーの端に辿り着こうとした瞬間に、ハンガーのメインゲートが高熱の爆炎と共に爆ぜた。両手にアーマーシュナイダーを持ったストライクはまるで獲物が来るのを知っていたかの様にブリッツに直進した。
「くっ、対応が早すぎる。やはり、この手で来ることはバレバレでしたか」
ブリッツのコックピット内でニコルが自虐的な笑みを浮かべた。それでも、相手がジンでなかったことに多少なりとも安心していた。前回は改造されたジンのパイロットに自分たちザフトの赤服部隊を圧倒する腕を見せつけられたため今回の相手がジンでないならば、まだやりようはいくらでもあると彼は考えていた。それに、武装がナイフとヘッドバルカンのみと、随分と貧弱なことから気が楽になるのを感じた。しかし、ニコルが恐れていたパイロット、ロイは今、目の前のストライクに乗り込んでおり、ブリッツを落とさんとする勢いで襲い掛かっているのだ。
ペダルを最大まで踏み込まれたストライクはスラスターを全開にして真っ直ぐにブリッツに突っ込んでいった。そのスピードは改造されたジンと比べて遅いものではあったが、ジンよりも入力から出力までのタイムラグが圧倒的に短いことがロイを何よりも満足させた。
ブリッツはそれを迎撃するべくビームライフルをストライクに撃つが、すべて躱されてしまう。そして、避ける時は機体を最小限しか動かしておらず、どれも機体すれすれを通過していった。
「!?」
ストライクの避け方が明らかに異常であったことは誰の目からも明らかだった。それでも、実際にMSを動かしたことのある者にしかわからないこともある。
「あんな動き出来るわけない……」
ニコルはコックピット内で不安を打ち消す様に、自分に言い聞かせる様に呟いた。
そして、接近してくるストライクに、シールドとユニット化されたビームサーベルを展開し、切りつけた。だが、ストライクはひらりとそれを躱し、流れる様な動きで、シールド裏面に装填されてある貫徹弾にヘッドバルカンを打ち込んだ。放たれた弾丸は貫徹弾内部に含まれていた炸薬に起爆し、連鎖的に50mmレーザーライフルも破壊された。
「この戦い方は、あの時の……」
そこで漸くニコルはストライクに乗るパイロットがロイであることを確信した。ニコルは一度距離を取ろうとペダルを踏み込むがスラスターが点火されるまでの数瞬の間に三度、コックピット内に衝撃が響いた。
「くっ!」
そしてブリッツの三箇所の部位が操作不可能に陥っていることがすぐにわかった。頭部と両腕である。ロイはPS装甲の隙間を狙って、胴体と肩の接続部、頭部の付け根にアーマーシュナイダーを抉りこませたのである。
「そんなことがMSに可能なのか!?」
ニコルは戦慄しながらも、ブリッツの距離をストライクから離すことをやめなかった。その甲斐あってか、ある程度の距離を稼ぐことができた。そこで再び思考の海に潜った。
さっきのビームを避けたこともそうだが、ストライクの動きが異常なのだ。何が異常なのかはすぐにわかった。動き方が余りにも機械離れしている。まるで本物の生き物の様な繊細で滑らかな動きだ。まるで、全ての動作をOSに頼らずにしているみたいな。
だが、ニコルは首を振った。
そんなことが可能なわけがない。そもそも自分たちが使っているMSは、戦闘に必要な動きをOSの補助を受けて漸く再現できるようになるのだ。それなのに目の前のストライクはまるで一切の補助を受けずに全ての動作工程をパイロット一人に負担させているかの様な動きをする。
それとも、全ての戦闘行為をOSに頼っているのか。
いや、それこそありえないと思い直す。それではただの無人機だ。コックピットなどもはや必要ない。それに、さっきの戦い方は人間のそれだった。以前戦った者と非常に酷似した動きだった。だからありえないのだ。ならば、やはり最初の考えが正解なのか。それならばパイロットの方が異常なのだとニコルは理解した。
どちらにせよ相手が化け物であることは間違いないのだ。
ニコルは覚悟を決めて、応援がくるまでの時間を稼ごうとした。だが、ストライクは徐ろに機体を反転させて飛び去って行った。本来であれば、追いかける場面であろうが、今は頭部と両腕が機能を停止しているために、追撃は事実上不可能だった。そのことがニコルを安心させたことは言うまでもない。
補助カメラで見えているストライクはアルテミスから次々と発進してくるメビウスの部隊をヘッドバルカンで撃ち落としていた。一瞬仲間割れかと訝しんだものの、連合内の政治的いざこざを思い出し、納得した。自分達は彼らがアルテミスから脱出するための出しにされたのだと。
暫くしてから、デュエルとバスターが到着したことで、二機が基地内を適当に破壊していくのを攻撃手段を失ったブリッツのコックピット内から見届けた後にガモフに帰投した。
炎に包まれつつあるアルテミスから脱出したストライクは先に脱出したアークエンジェルを追うべく、スラスターを吹かせていた。そして、Nジャマー影響下から抜けたところで、ロイはとある人物と連絡を取っていた。
ロイの手にある端末の画面に映し出された人物は淡い青のスーツに金髪の愛想の良い顔をした若い男だった。
「やあ、ロイ。君から直接連絡を寄こしてくるなんて珍しいですね。何かあったのですか?」
「惚けなくてもわかってますよ。ユーラシア側に意見を通すのは大変でしょうに。今回の件、感謝してますよ」
「ふむ、やはりばれていましたか。ああ、一つ誤解がある様なので訂正しておきますが、僕は彼らに意見したのではなく、提案しただけです。流石に僕でもユーラシア側に意見を通す程の力は持っていませんよ。まあ、僕が手を出さずとも君なら解決できていたであろう案件でしょうが」
「どちらにせよ助かったことに変わりはありません。とにかく、一言礼を、と思って連絡した次第です」
「そうですか、では素直に受け取っておきましょう。それでは私も忙しいのでこれくらいで」
「ええ、また地球で会いましょう、アズラエル理事」
会話が終わると共に画面が液晶色に戻った。
ロイ・ネ・フラガという名前に関してですが、
・ネ・
↑これが顔文字に見えて仕方がない……。
ミッフィー?