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第2話
雲ひとつない青く澄み渡った大海原の空を大きな白いフクロウが2羽横並びで飛んでいた。1羽の背には、顔を面で覆った黒衣の人物が乗っていた。黒衣に描かれた赤雲が風に煽られひらひらと靡く。そしてもう1羽のフクロウの背には、浅黒い肌をした黒髪パーマの長身の男が両目をアイマスクで覆い、仰向けで眠っていた。
「落っこちても知らないスッよ、ほんと」
仮面の男、うちはオビトは、起爆粘土を加工して作ったフクロウの背でグゥすかイビキをかきながら気持ち良さそうに眠るクザンを横目に見ながらそう呟いた。
「にしても、起爆粘土の加工上手くいってよかったな」
と、オビトは両手の平を眺める。両手には舌なめずりをする口がそれぞれついていた。この口に起爆粘土の元となる粘土を喰らわせ、チャクラを練り込むことで爆発物へ変化させる。そして、起爆粘土をうまい具合に加工すれば、オビトが乗っているフクロウのような鳥などにもできて、このように空を自在に飛ぶことができる。
この術は、“暁“のメンバーで岩隠れの抜け忍である、デイダラがよく使用していた忍術だ。
「にしても「“海軍本部“へ送れ」とか普通ありないでしょ。まあ、自転車燃やしたのボクだけどさ……」
無人島でクザンに、黒焦げになった自転車を元に戻せという無理なお願いをされたオビトだったが、いくら転生特典で忍術を使えると言っても、すでに原型を留めないほどに黒焦げになった自転車を元に戻せる便利な忍術などあるはずもなく、当然「無理」と断ったのだが、相棒を黒焦げにされたある意味被害者であるクザンがそれに納得するはずもなく、
ーーじゃあ、直せないなら相棒の代わりに俺を送ってくれ。
ーーへぇ? どこへ?
ーーどこって、そりゃ君ぃ、『海軍本部』に決まってるじゃないの。俺海軍大将なんだからさあ〜。
ーーマジで……?
「大将なら専用の通信機とか持ってないの? それで迎えの軍艦呼べよ……。はぁ〜、まあ悪いのボクだし、これは仕方ないな……」
ブツブツ文句を言ったところで、こうなったのは自分自身の不注意には変わりないので、オビトは盛大にため息を吐く。
「にしても、『海軍本部』か……軍艦とかいっぱいあるんだろうな〜。ん? ちょっと待て」
仕方ないと渋々納得したオビト。目的地である海軍本部の風景をぼんやり頭に思い浮かべていたが、突如ギョッとする。
そして慌てて隣のフクロウの背で気持ち良さそうに寝ているクザンを叩き起こす。
「ちょ、ちょ、ちょっとクザンさん起きて! 起きてくださいよ!」
「フガぁ〜、……なんだぁ? もう着いたのか? うアアアあ〜」
オビトに叩き起こされたクザンは、むにゃむにゃと口を動かし、目を覆っていたアイマスクをずらすと、欠伸をしながら大きく伸びをする。
「いやまだですけど……」
「んだよ、じゃあ、起こすんじゃねえよ。これからパツキンボインのネェちゃんとよろしくやろうと思ってたのによ」
「そんなの知らないっスよ。てか、なんちゅう夢みてたんだ! それより聞きたいんすけど?」
「何をよ?」
「海軍本部に送れって言いましたけど、それって海軍本部の近くまで送れってことですよね? 海軍本部の中まで送れってことじゃないスッよね?」
「あ? 何訳のわからんこと言ってんのキミぃ〜、海軍本部つったら海軍本部よ。中まで入るに決まってるでしょうが。なんだぁ、おいオビト、まさかオメェビビてんのか?」
と、ニヤニヤと笑いながらおちょくるクザン。
「当たり前でしょ! 敷地入った瞬間、銃弾で蜂の巣にされるのはイヤですからね!」
両手で胸をパンパンと叩きながら、オビトはそうクザンに言う。
『海軍本部』、通称“マリンフォード“は、世界政府が管理する軍事組織海軍の総本部であり、そこには海軍組織の中でトップである元帥、そして海軍が誇る最高戦力である大将、その大将には及ばないが数々の海賊たちと死闘を繰り広げてきた歴戦の中将たちが大勢いる。いわば海軍の中でも猛者中の猛者たちがいる場所である。また、海軍の中枢ということで多数の軍艦や海兵が駐留し、常時厳しい警戒体制が敷かれている。そんな場所へのこのこと顔を面で隠した、まさに不審者の見本のようなオビトが行けばどうなるか、答えは火を見るより明からだ。
そんなオビトの不安をよそに、クザンは「フハぁ〜」と呑気に欠伸をすると、身体を横にして、頬杖をつく
「問答無用で撃ちやしねぇよ。だいいち、オメェは“海賊“じゃないんだろう? オビト? だったら大丈夫だ。それに海軍大将の俺がついてんだ、なんかあっても心配すんなって」
「は、はぁ……だと良いですけど……」
「うんじゃ、俺ぁまた一眠りすっから本部に近づいたら起こしてくれ」
と、オビトにそう告げたクザンはわずか3秒でイビキをかき始めると、再び眠りについた。
「たく、ホント能天気なんだからこの人は……。にしても海軍本部かぁ〜、クセの強そうな人がいっぱいいるんだろうな」
ユニークで癖のある登場人物が数多く登場するワンピースの物語の中でも、今オビトの隣で居眠りをしているクザンを含め海軍には癖の強い人物が多い。
「特にルフィのじいちゃんの“ガープ中将“とか、そのクセ強海軍の筆頭格だからな! アハハハッ!」
ワンピースの主人公、モンキー・D・ルフィの祖父で海軍の英雄と呼ばれるモンキー・D・ガープ中将の姿を思い出しながら大笑いするオビト。
「アハハハっ……あ? なんだこの音?」
大笑いしていたオビトだったが、ふとヒューという空気を切り裂くような鋭い音を耳にした。
「ん、どこだ? 下からって……ぇええエエエェエエエッ!!!」
下の方から聞こえてきた音の正体を確認しようとしたオビトだったが、突如彼の隣、背中にクザンを乗せて飛んでいた起爆粘土フクロウの頭部が木っ端微塵に吹き飛んだ。
「ちょ、ちょっとととぉ!!」
突然目の前で起きた衝撃的な光景に仰天するオビト。
頭部を失った起爆粘土フクロウは眼下の海へと、背中に乗せていたクザンと共に墜落していく。
「ヤッバ!! クザンさぁんん!!」
仰天していたオビトだったが、墜落していくクザンの姿を目にし慌てて気を取り直すと、彼を救出するべく一気に急降下する。
「って!! アンタいつまで寝てんだ!!」
墜落しながらも変わらずグゥすかイビキをかきながら眠り続けるクザンにツッコむオビト。しかし、当のクザンは危機的状況にもかかわらずいっこうに起きる気配はない。
「(だあクッソ! なんなんだよ、この人は!!)」
命の危険にもかかわらず愛も変わらずのクザンのマイペースさにもはや怒りを通り越して呆れるオビト。そうこうしている間にもクザンは海面へと真っ逆様に落下し続ける。
「間に合ええええ!!」
クザンを救うべくさらに加速するオビト。そして、海面スレスレのところでなんとか起爆粘土フクロウの尻尾でクザンをキャッチした。
「ヨッシャ!!」
間一髪のところでクザンの救出に成功し大喜びするオビト。そして、一体何が起きたのか確認するために周囲の状況を確認する。すると、海原に一隻の白い帆にデカデカと『MARINE』と書かれた強大な軍艦が航行していた。
「あの船か!! ん? あの船ってもしかして……海軍?」
海軍の軍艦を発見したオビトは、もっとよく確認しようと目を凝らす。
その海軍船の船首部分はドーベルマンの顔のような形をし、そしてその上にコートを羽織った長身巨躯の壮年の男が仁王立ちしていた。
その男の姿を目にしたオビトは仰天する。
「ええええええ!! “ガープ中将“!!!!!」
***
「ほう、どうやらあっちもこちらに気づいたようじゃな」
海軍船の船首に立っていた海軍中将モンキー・D・ガープは、つい今しがた己が撃ち落とした白い鳥に乗っていた相手の姿を見て、ニヤリと好戦的な笑みを浮かべる。
「わしの投擲を避けるとは……なかなかやるわい。じゃが、次は外さんぞ!」
自らの攻撃を交わした相手の実力を讃えながら、ガープは肩をぐるぐるんと大きく回す。そして背後に控えていた2人の部下に指示を飛ばす。
「これ“コビー“、“ヘルメッポ“! さっさと次の弾渡さんか!!」
「「は、はい!!」」
ガープの部下である2名の若き海兵、額にバンダナを巻き、その上に丸眼鏡をかけたコビーと金髪オールバックに目元をゴーグルで隠したヘルメッポが急いで大砲の弾をガープに渡す。
「コビー! ヘルメッポ! お前たちは敵の動きをよーく見とけ!」
「「了解しました!! ガープ中将!!」」
ふたりの若き海兵の声を聞いたガープは、「うむ」と言い大きく振りかぶる。
「“ギャラクシー、メテオ“!!」
と、大声で叫びながら砲弾を投擲した。
大砲で発射した時とは比べ物にならないほどの高速で投擲された砲弾が空気と海面を切り裂きながら一気に標的である白い鳥に乗る黒衣の人物へと向かっていく。
「あーあ、あんなモン喰らったらひとたまりもねぇぞ」
「ええ……」
赤雲が縫われた黒衣に身を包んだ人物を双眼鏡で観察しながらコビーとヘルメッポがごくりと唾を飲み込む。高速で飛来してきた砲弾が黒衣の人物に直撃して大爆発すると予想する2人だったが、その予想は大きく裏切られる。
「「な!! すり抜けた!!」」
高速で飛来した砲弾は黒衣の人物の身体を“すり抜け“、背後の海面へと着弾。着弾と同時に砲弾が炸裂し、巨大な水柱が上がる。
「ブハハハハハハ!! なんじゃ、能力者か! こりゃ、ちっと厄介じゃわい!!」
相手が能力者ということを知ったガープは、手を額に当てあながら大笑いする。そんな上官の笑い声を聞きながら、部下であるコビーとヘルメッポは双眼鏡で標的である黒衣の人物を探すが、いつの間にか黒衣の人物と、乗っていた白い鳥が綺麗にいなくなっていた。
「お、おい! あいつどこ行きやがった!」
「逃げた! いやでも、どこに!」
見失った黒衣の人物を必死に探すコビーとヘルメッポ。2人以外の他の海兵たちも共に、突如消えた黒衣の人物を見つけようと海上に目を凝らす。
海軍の甲板はしばしの沈黙に包まれる。
聞こえるのは船体に当たって砕ける波の音と風の音だけ。
だが、沈黙に包まれた甲板のわずかな“空気の乱れ“を長年の実戦経験から感じ取ったガープと、彼の副官であるボガートの2人が身構える。
ハットを目深に被った副官のボガートが腰に挿していた日本刀の柄に手をかける。そして、目にも止まらぬ速さで抜刀すると、いつの間にか自分の背後に立っていた“仮面の男“の首めがけて一閃する。
「ッ!?」
首を刎ねると思われた刃は、まるで空を切ったように仮面の男の顔をすり抜けた。
目の前で起こった衝撃的な出来事に歴戦の海兵であるボガートは目を見開く。
「いやぁどうもどうも〜!!」
「「「うわぁ!!!」」」
突如甲板に出現した仮面の男が発した剽軽な声を耳にして、ここでようやく他の海兵たちも気がついた。そして一斉に取り囲むと、ライフルの銃口を向ける。
「ギョギョギョ!! ちょっとちょっと危ないなぁ、もう。……えっと、初めまして海軍の皆さん。ボク、うちはオビトって言います。あははは……よろしく……」
仮面の男、うちはオビトは両手を上げひらひらとさせながら、自分に必殺の銃口を向ける海兵たちに自己紹介した。
ありがとうございました。