仮面の海兵   作:ガンオタ

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第3話

第3話

 

「アハハ……どうも〜」

 

 万華鏡写輪眼“神威“の能力で海の上から一瞬で海軍の甲板に転移したオビトだが、現在甲板中央で大勢の武器を持った海兵たちに囲まれながら、“危害は加えません“という意思を示すかのように両手をヒラヒラと揺らしていた。

 だが、ライフルを構える海兵たちは警戒を緩めることはなく、自分たちの目の前にいる顔を面で隠した黒衣の男からその銃口をそらすことはなかった。

 

「(ミスったなぁ〜、事情を話せば分かると思って船に乗り込んだけど、こうなるなら逃げればよかったよ……)」

 

 砲弾が当たる瞬間、“神威“の能力を発動させ身体の一部を異空間へ転移させることで砲弾を交わしたオビト。自分を攻撃してきた相手がまさかの海軍という事実に驚いたものの、これはクザンを返す絶好のチャンスだと考えたオビトは、砲弾が炸裂したことで生まれた水柱に紛れ、“神威“で海軍の船へと転移した。しかし、転移したはいいものの突如として現れた彼の姿を目にした海兵たちがフレンドリーに接するわけもなく、なんとも浅はかな彼の考えは今こうして銃口の輪の中で無惨にも崩れ去った。

 ちなみにだが、起爆粘土フクロウの尾に乗せていたクザンは、すでにフクロウごと神威空間に取り込んでいるので、ここにはいない。

 

「な、なんで、さっきまで海の上にいたヤツが船にいんだよ!?」

 

「うちはオビト……そんな海賊の名前は聞いたことありません。でも今のは……瞬間移動……おそらく“悪魔の実の能力者“……」

 

 獲物である2本のククリを構えながら慌てふためくヘルメッポと、拳を構えて冷静に相手を分析するコビー。2人以外の他の海兵たちもオビトの一挙手一投足に気を配りながら、『うちはオビト』と名乗った仮面の男を静かに分析する。

 緊張する海兵たち。だがそんな海兵たちの耳に船首から歩いて来たガープの豪快な笑い声が響く。

 

「ブハハハハハハ! こりゃたまげたわい! まさか瞬間移動を使える海賊がいたとはのぉ〜! じゃが……わしの船に乗り込んでくるとは、いい度胸しとるわい」

 

 左右に分かれた海兵たちの間を、拳をバキボキと鳴らしながらオビトの前にやって来たガープ。

 

「あのぉ〜、すみませんけど、ボクぅ〜“海賊“じゃないんすよぉ」

 

「フンッ! とっ捕まった海賊の連中は、大概そう言うんじゃ。仮に貴様が海賊じゃないとしても、海軍本部の目と鼻の先で、顔を隠し、変な格好でおかしな鳥に乗っておった貴様がただの一般人とは思えん。それに海軍本部が存在するこの海域には許可のない者は入れんのじゃ! つまり貴様はこのワシに捕まるしかない!」

 

「(エーーー!! 何それ!! クザンさんからそんな話聞いてねぇエエエエ!!)」

 

 ガープから聞かされた衝撃の事実に衝撃を受けるオビト。

 

「そんなのボク知らないすっよ!」

 

「文句なら後でワシがじっくり聞いてやるわい!」

 

 バキボキと拳を鳴らし、顔には好戦的な笑みを浮かべたガープがじわじわと近づいてくる。それに合わせて海兵の包囲網もじわじわと狭まり始める。

 

「(クッソぉ〜、こうなったら海軍とやり合うしかないか!!)」

 

 不本意ではあるが、こうなってしまっては海軍と戦うしかないと腹を括るオビト。そして、いざ戦端が開かれると思った瞬間、突然ガープが足を止めた。

 

「ワシが直々にとっ捕まえても良いが、それじゃ面白くないので、ここはーー」

 

 と言って、ガープは自分の部下である若き2人の海兵、コビーとヘルメッポの方へ振り向く。

 

「コビー、ヘルメッポ! お前たちにコイツの確保を任せる!」

 

「「エーーーー!!」」

 

 当然のガープの命令に驚愕するコビーとヘルメッポ。

 

「ちょ、ちょっと、ガープ中将そりゃないっすよ! 相手は能力者ですよ!! 俺たちじゃ無理っすよ!!」

 

 ガープの命令を聞いたヘルメッポはあからさまに拒否を示す。

 

「馬鹿モン! いいか、ヘルメッポ。いずれ貴様らも能力者の海賊とぶつかる時が必ず来る。その時に備え、ここで能力者との戦闘を経験しておけ!」

 

「でも、ガープ中将「やりましょう、ヘルメッポさん!」コ、コビー……」

 

 なおも食い下がろうとするヘルメッポだったが、彼の相棒であるコビーが口を挟む。

 

「やりましょう、ヘルメッポさん。ガープ中将の言う通りいずれ僕たちも能力者と戦う日がやってきます。その時に備えて、ここで経験を積むことは今の僕たちにとって貴重な財産になるはずです」

 

「けどよ……」

 

「それに気になるじゃないですか。今の僕たちがどこでまでやれるか」

 

 将来は海軍将校になるという夢を抱いているコビーはそう言って顔に笑みを浮かべた。

 

「ダァ〜たくお前って奴は! わかった、わかったよ! やるよ」

 

 純粋でまっすぐな姿を見たヘルメッポ。相棒の熱い思いにやられ、不承不承ながらも目の前に立つ仮面の男、オビトと戦う決意をする。

 

「よう言った! 2人とも! それでこそワシの弟子じゃ! じゃが奴の能力は未知じゃ、用心しろ」

 

「「はい!!」」

 

 2人は返事を聞いたガープは満足そうに頷くと腕組みをする。そんなガープに副官であるボガートが声をかける。

 

「いいんですか、あの2人に任せても」

 

「構わん構わん、いつまでも訓練ばかりやっとてもあいつらのためにならん。それに少し気になることもあるしの……」

 

「はぁ……」

 

「まぁ見ておけ。なぁに、もしもの時はワシが割って入る」

 

 副官であるボガートにそう告げると、ガープは目を細め、オビトの前に立ち、戦闘体勢をとるコビーとヘルメッポを見つめる。

 

「(うわ、やる気満々じゃん。けどまぁ、コビーって子が言ったようにボクも、今のボクがどこまでやれるか気になるしね)」

 

 やる気満々のコビーとヘルメッポの姿を見て焦るオビトだったが、そんな彼も現時点での自分の戦闘能力がどこまであるか気になっていたため、それを知るためのいい機会だと納得する。

 

「海賊ではないあなたを傷つけたくはありません。ここはどうかおとなしく僕たちに捕まってください」

 

「そうだ、そうだ、お前がおとなしくお縄につけばこっちだて余計な手間かかんねえんだ!」

 

 オビトに相対するコビーとヘルメッポは最後の警告としてそう告げる。しかし、2人からの最後の警告を聞いたオビトはやれやれと小さく首を振る。

 

「もうー! なんで海兵さんってこう血気盛んなのー! もうしんじられなーい! けど……」

 

 そこまで言うと、オビトは仮面に手を当て少しだけ顔を下に向ける。そして、再びゆっくりと顔を上げる。

 仮面の右目にぽっかりと空いた穴からは、赤き瞳に浮かぶ二重の黒き三枚刃の手裏剣が見える。

  

「クク……いいだろう、オレも己の力を知るいい機会だ。少し相手をしてやろう。」

 

「「「!!!」」」

 

 先ほどまでの剽軽な姿からは想像もできないほどの“殺気“がオビトから放たれる。その殺気を感じ取ったコビーとヘルメッポは息を呑む。2人の様子を黙って見ていたガープは腕を強く握り、副官のボガートは自然と腰に挿す日本刀の柄に手を添える。

 

「……うちはの瞳力舐めるなよ、海兵ども!」

 

 太陽に雲がかかり、甲板に影がさす。

 

「コビー、まずはおれがやる」

 

「分かりました。気をつけてください、ヘルメッポさん」

 

 太陽を隠していた雲が流れ、再び甲板に陽の光が差した瞬間、ヘルメッポはオビトに向かって、一気に駆け出した。

 

「てりゃあ!!」

 

 両手に握ったククリナイフを、オビトの顔を目掛けて振り下ろすヘルメッポ。

 

「!!」

 

 しかし、オビトはナイフが顔を一閃する直前に“神威“を発動させ、ナイフをすり抜けさせる。そしてヘルメッポの全身を完全にすり抜けさせた瞬間、身を翻し、ヘルメッポの背中に拳を叩き込もうとする。

 

「“剃“!!」

 

 しかし、叩き込もうとした瞬間、六式と呼ばれる特殊な格闘術の一つで高速移動術である“剃“によっていつの間にかオビトの右側にいたコビーが殴りかかる。それに気づいたオビトは、“神威“を発動させ、顔面に打ち込まれそうになったコビーの拳をすり抜けさせる。

 

「何!」

 

 オビトは、すり抜けたコビーの拳を掴むと彼を投げ飛ばす。だが、ガープの厳しい修行を受けてきたコビーはその過程で手に入れた高い身体能力によって空中で1回転しながら体勢を整える、スタッと甲板に着地する。

 

「コビー! 大丈夫か!」

 

「大丈夫ですよ、ヘルメッポさん。これくらい」

 

 急いで駆けつけたヘルメッポの心配気な声を聞いたコビーは、心配無用だと笑みを浮かべる。

 そんなコビーの姿をじっと見つめるオビト。

 

「コビー、ヘルメッポ……そうか、貴様らが……」

 

 最初は外見が変わっていて気が付かなかったが、2人ともワンピースの原作の最初期に登場するキャラクターであることを今更ながら思い出したオビト。

 

「ヘルメッポさん、気づきましたか?」

 

「あ?」

 

「どうやらあの人、攻撃をすり抜けさせる時、全身が実体を無くしているようです」

 

「ああ、厄介な能力だぜ。どうなってんだ、野郎の体は」

 

「だけど、攻撃するために相手の体に触れる時は実体化している」

 

「そうか! つまり……」

 

 コビーの分析をそこまで聞いたヘルメッポは、コビーが何を言いたいのかようやく気づいた。

 

「カウンターを狙えばいい」

 

「ええ」

 

「(フフ……さすがはコビーじゃわい。戦闘中であっても冷静に相手を観察し、その相手が持つ能力を分析しとる)」

 

 2人の弟子のやり取りを見ながら、ガープはその成長を喜ぶ。そして、次に弟子たちの相手であるオビトに視線を向ける。

 

「(瞬間移動だけでなく、自分自身を透過させる能力まで持っておるとは。それにどう見ても戦い慣れておる。……こりゃとんでもないヤツを見つけてしもうたわい)」

 

 改めてオビトの実力の高さを実感するガープであった。

 

「よく理解した。……いい分析だ」

 

 コビーの分析を聞いていたオビトは、その分析力の高さを称える。そんなオビトの前でコビーはヘルメッポに耳打ちをする。

 

「(何か仕掛けてくるな……)」

 

 2人の姿を見たオビトはスッと目を細める。

 互いに頷きあった2人は同時にオビトヘ向かって、ヘルメッポが先頭、その後ろにコビーという順で突っ込んでくる。 ヘルメッポがククリナイフを振り下ろす。しかし、先ほどと同じように“神威“によってすり抜けさせられ、ヘルメッポの背中がガラ空きにある。そこに身を翻したオビトが拳を打ち込もうとする。

 

「(ここだ!!)砕!!」

 

 ヘルメッポに気を取られ、オビトの視線が自分から外れたのを確認したコビーは、剃と同じく六式の一つで意識を集中することで岩を砕くほどの強力な一撃を発する『砕』を発動させる。そして拳に力を集中させ、渾身の一撃をオビト背中に叩き込もうとする。

 

「!!?」

 

 しかし、その一撃はオビトの背中に当たることはなく、その背中をすり抜けると、ヘルメッポに直撃した。

 

「グハっ!?」

 

 勢い余って倒れ込むコビーとヘルメッポ。

 

「ぐっ……」

 

 あまりの痛みに呻き声を上げるヘルメッポ。

 慌てて身を起こすコビー。

 

「(しまった! 攻撃するふりしてわざと……くそっ、ひっかけられた……!)」

 

 オビトを睨みつけながら、まんまと相手の罠に嵌められた自分に怒るコビー。

 

「ほう……どういう原理か知らんが一時的に身体能力を強化する技か……面白い……」

 

 先ほどの攻撃を分析したオビトが興味深そうにコビーを見つめる。

 

「どうやら、貴様らはそこら辺の海兵どもとは一味違うようだ……」

 

 オビトは肩越しに、腕組みをしながら仁王立ちしているガープへ視線を向ける。

 

「さすがは、“英雄“ガープ、いい弟子を持っている」

 

 と、“神威“を発動させ、その身を甲板へと沈める。

 その姿を見た他の海兵たちが浮き足立つ。

 

「お、おい! ヤツはどこに行った!!」

 

「クソ! 野郎、艦内に逃げやがった! 追え!!」

 

 そして一斉に海兵たちが包囲を崩し、艦内に逃げたと思われるオビトを追い始める。

 

「ヘルメッポさん! 大丈夫ですか!?」

 

「奴から目を離すな! コビー!」

 

 身を起こしたヘルメッポは、コビーに大声でそう告げ立ち上がろうとする。しかし、先ほどのダメージがまだ身体に残っているのかすぐに膝をついてしまう。

 

「ヘルメッポさん!! っ!!」

 

 ヘルメッポに手をかそうとした瞬間、コビーは驚愕した。なぜなら彼の背後にオビトが立っていたからだ。ヘルメッポの肩に右手を添えているオビトは、“神威“を発動させ、ヘルメッポを吸い込もうとする。

 突然謎の渦が発生し、驚き固まってしまうコビー。

 

「そこをどけ!! コビー!!」

 

 固まってしまったコビーの元へ、腕に武装色を纏わせたガープが突っ込んできて、オビトへ拳骨を喰らわせる。

 思わぬ不意打ちくらい吹き飛ぶオビト。

 

「(クソ!! ヘルメッポが吸い込まれてしもうた!!)」

 

 攻撃が間に合わず弟子を救うのに失敗し、悔しさのあまり奥歯噛み締めるガープ。

 

「しっかりせい、コビー!! 戦いの最中に敵から目を離すな!!」

 

「ガープ中将〜!! ヘルメッポさんんがああああ」

 

 ガープに叱咤されるコビーだが目の前で“親友“がやられてしまったことにひどく動揺してしまい、立ち上がることができない。

 

「さすがは拳骨のガープ、凄まじい破壊力だ」

 

「ぬ」

 

 ガープとコビーが振り返るとそこには右腕を庇いながら立つオビトがいた。

 

「さっきので右腕が完全にイカれてしまったな……」

 

「「!!!」」

 

 おもむろに左手を右手に添えたオビト。そして彼はなんの躊躇もなく怪我をした右腕をもぎ取る。

 衝撃的な光景を目にしたコビーは驚愕し、歴戦の海兵であるガープも一瞬だけ思考が停止する。その一瞬の隙をついて、オビトがもぎ取った右手をガープへ蹴り飛ばす。

 突然の目眩しに腕で顔を覆うガープ。すぐさま腕をどかすが、そこにはすでにオビトの姿はなかった。

 

「次は貴様だ」

 

「うわ!?」

 

 突如目の前の甲板床から現れたオビトに驚愕するコビー。自分もヘルメッポのように吸い込まれると直感した彼はすぐさま逃げようとするが、オビトに腕を掴まれ逃げることができない。

 覚悟を決めるコビー。しかし、直後誰かに強い勢いで突き飛ばされた。

 コビーを突き飛ばしたのは、ガープだった。

 

「ガープ中将ぉおお!!」

 

「させるかあ!! テリャーー!!!」

 

 ガープは武装色を纏った拳を床に叩きつける。衝撃で甲板が煙に覆われる。 

 

「一体、どうなったんだ……」

 

 突き飛ばされマストにぶつかったコビーは、よろよろと立ち上がると、先ほどまでガープがいた場所へ歩いていく。

 

「あ……あ……なんてことだ……」

 

 先ほどまでガープがいた場所に、ガープの姿はすでになかった………




戦闘シーンむず、今回もありがとうございました。
マダラボイスやっぱカッケェ。
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