【完結】個性:物間寧香   作:大海

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キング・クリムゾンなら分かるのに、投射呪法に無下限呪術はサッパリ理解できない大海は阿呆なんやろうか…



第19話  反撃 開始

(獄門疆だと? まさか、あの忌み物を――そこまでするのか、公安!)

 

 最初から仕組まれた取引だったのか。

 それとも本当に偶然取引されていた物を公安が見つけだし奪取したのか。

 

 今となっては確かめようもない。確かなのは、アレを使われれば最後、出久とは二度と会えなくなるということだけ。

 

(クソッ、直哉相手に羽を使いすぎた……ッ)

 

 普段の半分以下にまで縮んだ剛翼では、いつもの速度を出すことができず、飛行のバランスさえ危うい。

 それでも『速すぎる男』は、今の自分に出せる最速を尽くした。

 

「出久――待ってろよ、出久!!」

 

 

 

 

 

「ちょ、ヤバくない? これ――」

「は? ウソだろ……」

 

 目的地まで、出久と真希の救出に集まったA組生徒五人は、新幹線に揺られていた。

 長野から神奈川県横浜市まで約二時間。周囲を見ると、ほとんどの人間がスマホ片手に何かを話している。もっとも、それ自体はよくある光景と言っていい。だからと自分もスマホを操作しようとはならず、弁当を突き、話している間に目的地にたどり着き、五人とも、降りて言った。

 

「『例外』の使った『物間寧香』が、子供を殺して奪った『個性』って……ヤバすぎだろ」

 

 

 

 

 

「すまねぇ、出久。私のせいだ。私の治療をしてなきゃ、出久一人なら捕まりゃしなかったろ?」

 

 全身を椅子に拘束されながら、隣の出久へ、落ち込んだ様子で声を掛けている。

 そんな真希へ出久が向けたのは、優しい声と、柔らかな笑顔。

 

「気にしないで……約束したでしょ? 真希さんの傷は、僕が必ず治すって。むしろ、ケガをした真希さんを放置せずに済んで良かったよ」

「……」

「むしろ、謝るのは僕の方だ。ケガを完治させた時点で、君を放すこともできたのに、君のことが心配でずっと抱きしめてたせいで、真希さんまで一緒に……」

「それこそ気にすんなよ……私も、出久のそばにいたいって、甘えてたし……」

「真希さん」

「出久……」

 

 お互いに、顔を見合わせる。真希は赤面し、目を細めながら、唇を近づけ――

 

「ラブラブですねぇ、お二人ともぉ」

 

 そんな茶化すような声に、真希は慌てて元の位置まで戻り、出久も正面を見る。

 

「お前らさ……自分たちがどういう状況か分かってんのか?」

 

 寂れたバーに集まった、八人組の男女――(ヴィラン)連合。うち、中心で椅子に座っている、顔を『手』で隠した青年が、呆れた声を上げていた。

 

「イチャつくなとは言わねぇけどよぉ……もう少し緊張感ていうか、危機感をよぉ……」

「イチャつくって……別に普通じゃないかな? 真希さんとは恋人でも何でもないし」

 

 出久の冷めた発言に、真希はグリンと首を向け、連合らも、「マジかこいつ……」という顔になる。

 最愛(・・)が常にそばにいるのに加え、主にミルコのせいで、女性との距離感がバグっている少年。緑谷出久である。

 

「そっかー♪ それじゃあ、私にもチャンスはあるってことですねぇ、出久くん♡」

「なにが?」

 

 敵連合の紅一点らしき少女が、顔を真っ赤にしつつ迫ってきても、出久は全く動じない。

 

「けど、もっと血出てた方が格好いいと思うなぁ♪」

「……これ以上、まだ血を流せっていうんですか?」

 

 少女のナイフを見つつ、出久は苦笑を見せる。

 事実、両腕を始め、小さい傷すら綺麗に完治している真希に対して、出久は順平やムーンフィッシュとの戦いで負った傷をロクに治療されず、運ばれてきた後は雑な止血をされただけで、上半身裸の体中は未だに傷だらけ。所々出血もしていた。

 

「テメー! 出久にそれ以上近寄んじゃねー!!」

「……とりあえず、ソイツの言う通りだ渡我(トガ)。いい加減、本題に入ろうぜ」

 

 真希の絶叫と、青年――死柄木弔の言葉を受けて、少女――渡我(トガ)は、唇を尖らせつつ出久から離れた。

 

 

「さて、緑谷出久……俺たちの仲間にならないか?」

「なりません」

 

 死柄木の問いに、出久は最速で返答する。

 もっとも、NOと返されることは死柄木にとっても予想していたんだろう。

 

「まぁ、そりゃ断るよな……だがどの道、今のお前には、何もできねぇよな?」

 

 余裕な調子で、テーブルの上に乗せてあったもの……銀色に光る指輪を手に取ってみせた。

 

「こいつが無きゃ、アレ(・・)を呼び出すことはできない、だろ?」

「その指輪に傷の一つでも付けたら、この建物ごとお前たちを皆殺しにしてやる」

 

 指輪を見た途端、明らかに声も表情も一変した。

 直前まで飄々としていたのが、全身から殺気と殺意を駄々洩れにしている。

 身が縮む。息が詰まる。手が震える。冷や汗が出る……

 敵連合らはもちろん、隣に座る、真希さえもそうなった。

 

「おー怖わ、やっとお前の()が見られた気がする……いや、それがお前の、本当の姿なのかな?」

 

 事前に用意していたらしい、指輪ケースに指輪を納めながら、そんなことを死柄木が言った後……バーカウンターに立つ男――黒霧が、タブレットを取り出した。

 受け取った死柄木はソレを操作し、表示された内容を二人に見せる。

 

「……」

「な、なんだよコレ!?」

「……お前らをさらった次の日には、ネットに出回ってた記事だぞ? 多分、テレビでもやるんじゃないかな……ほら」

 

 続けてリモコンを手に取り、テレビの電源を入れた。

 

 

 

 

 

 雄英高校謝罪記者会見。

 此度の敵連合襲撃と、それによって生徒二人が拉致された件。それ以前から起きた不祥事と合わせて、世間の目、反応は、かなり冷たいものだった。

 

「……イレイザーヘッドさん、先ほど生徒の安全とおっしゃりましたが、事件の最中生徒に戦うことを促したそうですね? 理由をお聞かせください」

「私どもが状況を把握できなかったため、最悪の事態を避けるべくそう判断しました」

「最悪の事態? 二名の拉致と、敵側とは言え死者を出したことは最悪ではないと?」

「私があの時想定した最悪とは、生徒たちが成すすべなく殺害されることでした」

 

 相澤(イレイザーヘッド)の返答に、根津(ねづ)校長が補足を加えて説明する。それでも、質問した記者の顔は晴れはしない。

 

「生徒たちの未来を侵されることこそ、最悪であると考えます」

「攫われた二人……特に、緑谷出久に対しても、同じことが言えますか?」

 

 むしろ、本当に聞きたいのはここからだと、言葉を続ける。

 

「高校入学前時点での仮免取得。体育祭エキシビションでのオールマイト相手に勝利。保須市では暴れる怪物を無効化しながらの住民らの救助など、経歴こそまさにヒーローとして理想以上であると言っていい。しかし、それだけの力を危険視する声も少なからず世間では上がっている。加えて、こちらのネット記事はご存じでしょうか?」

 

 記者がタブレットを取り出し、会場備え付けのスクリーンに表示させる。そこには、どこかで死柄木が見せたものと同じネット記事が映し出された。

 

「今からおよそ六年ほど前、不幸にも一人の小学生の少女が交通事故に遭い死亡してしまった。その少女の名前は、物間(ものま) 寧香(ねいか)さん。ここに表示されているのは当時の新聞記事の写真ですが、この写真をよく見ると……ここには、幼いですが、緑谷出久の姿がハッキリと映っている」

 

 更にスクロールしていき、物間寧香、緑谷出久が並んだ写真を表示させた。

 

「更に、当時彼ら二人を知っている人たちに話を聞いたところ、物間寧香さんの持つ『個性』は、触れた人間の個性を一定時間使える『コピー』。そして、緑谷出久は『無個性』だった。それが今は、『物間寧香』という名前の、他人の個性をコピーできる個性を使用している」

「……何が言いたいのですか?」

 

 相澤からの問いかけに……

 記者は確信を込めて、声を上げた。

 

「緑谷出久は何らかの手段を使って、物間寧香さんを交通事故に見せかけて殺害し、その個性を奪ったのではないか。そしてその五年後、彼のことをイジメていた少年らを個性を使い襲った。そのせいで一度逮捕もされています。更には今回の襲撃において発生した1名の死者も、緑谷出久の手によって殺害されたと言われております」

 

 会場がザワつく。会見を見ている一般人らにも動揺が走る。

 その会見を見ていた、雄英生徒らにも、動揺が走った。

 

「仮にこれらが全て事実だとするなら……幼いころからそれだけの異常性と凶暴性を持っていたことに目を付けられた上での拉致だとしたら? 言葉巧みに彼をかどわかし悪の道に染まってしまったら? 未来があると言える根拠をお聞かせください」

 

 

 

 

 

「……事実だよ。全部」

 

 会見を聞いた、出久が、真希に対して、答えた。

 

「林間合宿で、暴走する順平を止めることができず、死なせてしまった……僕をイジメてきた人たちは、僕が止められなかったせいで、寧香ちゃんに襲われて、重症を負った」

「そんなの……お前のせいじゃねぇだろ? 個性を他人から奪ったなんてのも、デタラメだろ?」

「……デタラメじゃないよ。僕が、寧香ちゃんを殺して、個性を奪ったんだ」

 

 真希も、聞いていた連合らも、絶句した。

 

「……あの日、僕の9歳の誕生日だった。寧香ちゃんは、プレゼントに婚約指輪を送ってくれて、大人になったら結婚しようって、そう約束したんだ」

 

「……それが、あの指輪か?」

「やだっ、思ってた以上に大切なものじゃない……」

 

「正直、結婚ていう言葉の意味も、深く理解できずにいたけど、それでも、嬉しかった。大好きな寧香ちゃんと、ずっと一緒にいられるって。その約束の証しが、この指輪なんだって。そう思ったら、本当に嬉しくて、小さな指輪を手に取ったまま、浮かれて、帰り道でも、はしゃいで、ふざけて、走り回って……その時、指輪が手から滑って落ちた。大切な指輪なのに、落としてしまって。けど、それにすぐに反応したのが、寧香ちゃんだった。寧香ちゃんは、転がる指輪を追いかけて、そこに、車が走ってきて、彼女を止めようと一緒に飛び出した人たちと一緒に……止めようとした人たちは、ケガはしたけど無事だった。けど、寧香ちゃんは、頭が潰れて。後に残されたのは、衝撃で僕の足もとまで戻ってきた、婚約指輪だけだった」

 

 再び誰もが、言葉を失う。誰も、何も言えなかった。

 

「その直後だった。無個性だった僕の体に、形の変わった寧香ちゃんの個性が宿ったのは……僕は寧香ちゃんを死なせて、その寧香ちゃんの個性が、僕に宿った。だから、あのネット記事に書かれたことは、全部、事実なんだよ」

「……」

 

 全然違う。出久は何も悪くねぇ。

 そう、確かに思っているのに、言えなかった。あまりの話に、信じられない気持ちや、驚愕や、混乱が、ごちゃまぜになって、真希から言葉を奪っていた。

 

「事件を起こしたのは、その五年後の、中学三年に上がる少し前。僕のことを特にイジメてた不良たちに、寧香ちゃんが怒って、襲い掛かった。必死に止めようとしたけど、できなかった……逮捕された後、ヒーロー公安委員会からは、即刻死刑にするべきだって言われたけど、ホークスが助けてくれた。そのままホークスのもとで、寧香ちゃんの制御や、正しい力の使い方を学ぶことができた……そこでやっと気づいたんだ。寧香ちゃんは決して、悪い存在じゃない。ずっと僕のことを思って、愛してくれて、だから守ってくれていた。四年前から変わらない、強くて優しい、けな気な子だったことを。大好きだったはずの寧香ちゃんのこと、僕はずっと、信じてあげられなかった」

「……」

「だから決めたんだ……今度こそ、寧香ちゃんのこと、最期まで信じるって。そして、死んでしまったのに、個性に変わって僕に宿ってしまった寧香ちゃんを、僕が解放してみせるって。どうしてこうなったのか、今も原因は分からない。けど、全部、僕のせいだから。あんな姿に変わって、なのに、こんな僕を守ってくれて、尽くしてくれる。そんな、最愛の女性(ひと)を変えてしまった呪いを解く。そう、寧香ちゃんに誓ったんだ。公安を敵に回しても、世界を敵に回しても……それが、彼女を死なせてしまった僕にできる、たった一つの償いなんだ」

「出久……」

 

 なぜだか分からないが、漠然と感じていた。

 出久は決して、私に振り返ることはないと。ミルコも、同じことを感じてると、そんな気がしていた。

 その理由を今、ようやく理解した。

 出久にとっての最愛が、ずっと出久の中にいる。そして出久は、そんな最愛のために尽くしてる。

 ミルコも思ってたんだろう。そんな男が今さら、私を見てくれるわけ、ないって……

 

「……ぐすっ」

「渡我、なに泣いてんだよ?」

「だ、だって……せっかく、愛し合えた二人が、可哀そうって……出久君も、寧香ちゃんも、すっごくけな気で、良い子たちですし……」

「泣いちゃダメ……あなたのせいじゃない! それに寧香ちゃんも、愛するあなたと一緒にいられて、幸せに、決まってるじゃない……っ」

「マグ姉も泣くなよぉ……泣けねーぜ!」

「トゥワイスまで……おい、スピナーも何とか言えよ?」

「……ズズ」

「スピナー」

 

「……けど、なんだってそんな昔の事件が、今になって……」

「大方、連合にさらわれたことに慌てたヒーロー公安委員会が、僕を消したとしても誰からも文句が出ないよう、社会的な抹殺に走ったんだろうね。公安はずっと、危険な個性(寧香ちゃん)を宿した僕のことを消したがってたから」

「なんだよそれ……てことはまさか、この誘拐も公安が……?」

「んなわけあるか」

 

 八人の連合のうち、四人が涙をこらえている。

 涙していないもう四人のうちの一人……

 死柄木は立ち上がり、近づいた。

 

「お前も、辛い目に遭ってきたわけだ……俺らもだよ。ここにいる全員、社会に、ルールに、ヒーローに、事情は違えど縛られ、苦しんだ。それに、さっきの会見も見たろ? 彼らは少し間違えただけ。なのに一方的に責められる……人助けを金や自己顕示に変換する異様。それをルールでギチギチに守る社会。敗北者を励ますどころか責め立てる国民。俺たちの戦いは、それらを社会に対する問いかけだ。この社会が本当に正しいのかどうか、国民一人一人に考えてもらう。俺たちは、勝つつもりだ……もちろん、お前の『願い』を叶える手伝いも惜しまないと約束しよう。一緒に寧香ちゃんを解放しようぜ?」

「……」

「トゥワイス、外してやれ」

「ズズズ……やだよ」

「渡我、お前は禪院真希の方だ」

「ひっく……はぁい」

 

 鼻水をすすり、涙をぬぐって、椅子の拘束を外していく。

 暴れるぞという、仲間からの警告にも首肯しながら、二人を自由の身にした。

 

「……会見、まだ続いてますよ?」

 

 

 

 

 

「……行動については、私の不徳の致すところです。ただ……」

 

 再び頭を下げながら……それでも確信を、言葉に込めていた。

 

「過去に犯した過ち……四人の同級生を傷つけたことを彼は心から悔い、だからこそより多くの人を救うヒーローになろうともがいている。それでも、全員を救えるわけではない。偶然(・・)目の前で起きてしまった少女の交通事故も、幼かった彼は何もできなかった。林間合宿では、『毒』を操る個性の反動で死にゆく敵を救うことができなかった。世間から見れば、確かに彼が全ての元凶に見えるでしょう。だから懐柔できると考えたのなら、敵は浅はかであると私は考えております」

「……根拠になっておりませんが? それに、彼が実際に犯行に及んでいないという答えにもなっていない」

「ええ、そうです……しかし、あなたがおっしゃったネット記事の内容も、全ては憶測の域を出ない。少なくとも、連合の一人が死亡したことは、緑谷の攻撃による外傷ではなく、個性による自滅が直接の死因であることはすでに証明されている。五年前の事件に関しては……逆にお尋ねしますが、あなたは9歳である無個性の少年が、本当にそんな大胆な犯行を犯して他人の個性を奪ったとお考えですか? 仮にそれができたとして、それを裏付ける根拠をあなたはお持ちであると?」

「……失礼しました。では、質問を変えます。ヒーローを目指す彼が懐柔されるわけがない。そういう感情の話ではなく、彼を敵にしないための具体策があるのかと伺っております」

「我々も手をこまねいているわけではありません。現在、警察とともに調査を進めております。我が校の生徒は必ず取り戻します」

 

 

 

 

 

「……」

「……さて、そろそろ答えを聞かせてもらえるか?」

 

 出久も、真希も、二人とも拘束から解放された。

 立ち上がり、真希を守りながら前に立った、出久の答えは……

 

「……良いですよ」

 

 全員が、出久を見た。

 

「な……おい、出久……!!」

「出久君、仲間になってくれるの?」

 

「……逆です。皆さんが、僕の仲間になるのなら、良いですよ?」

 

「……は?」

「なに言ってんだ、お前?」

 

 全員が、呆気に取られた。何を言われたのか、分からなかった。

 

「もちろん、タダとは言いません――個性『反転』」

 

「ぐぅ……!!」

 

 出久が個性を発動させる。瞬間、男の一人が、もがき苦しみ、ひざを着いた。

 

荼毘(だび)!」

「ウソ! 指輪も取り上げたし、個性は使えないはずじゃ……!」

「……テメェ、ワザと自分の傷は治さなかったのか? 俺らを油断させるために」

「……お、おい、見ろ、荼毘が……!」

 

 スピナーが声を上げ、全員が荼毘を見る。

 荼毘(だび)と呼ばれた男は、ひざを着いた身体を持ち上げて……

 

「……腕が、腹も、治ってる?」

「荼毘君、お顔も綺麗になってます!」

 

 渡我が叫びながら、手鏡を見せる。そこには、火傷に覆われた顔ではなく、十数年ぶりに見る、綺麗な自分の顔があった。

 

「傷やケガが体に作用するマイナスの流れを、プラスに反転させることで傷を治す。ちょっとした大ケガや、火傷した肌くらいなら、綺麗な状態に戻すことができる……一年ほど前、中南米に住んでいた天涯孤独の老婆が、死に際に提供してくれた奇跡の個性です」

 

『反転』の提供者、家入硝子に矛先が向かぬよう、デタラメな出どころを口にした。

 

「……出久、その個性、欠損部位も治せるのか?」

「傷の大きさや、経過時間にもよるかな? 失った直後から数日ならともかく、何年も前の古傷ともなると、傷も完治してエネルギーはプラスに変わってるから、多分治せない」

「そうか……」

「……彼以外にも、可能な限り、皆さんの願いを叶えましょう……だから皆さん、僕の仲間になってください。今とは違うやり方で、この社会をより良くしましょう」

 

 柔らかな笑顔で優しく語りかけながら、敵連合に対して、傷だらけの手を伸ばした。

 

 

「……先生とやり口が一緒だな。似たような力持ってりゃ、そうなるか」

 

 死柄木が、そう嘲笑した直後――

 どこかで見たことがあるような……そんな素顔を見せる荼毘の体から、蒼い炎が噴き出す。せっかく綺麗に治っていた、顔が、腕が、再び火傷に覆われる。

 

「悪いな、『例外』……お前じゃあ、俺の望みは果たせない」

「私もお断り……」

「俺も無理かなぁ……」

「右に同じく……イイよ!」

「出久君のことは大好きだけど、付いていくのは連合です!」

「全てはステインの意思のままに……」

「私は、死柄木弔をお守りする」

 

「……そうですか。それは良かった」

 

 個性――『超再生』。

 敢えて残していた身体の傷を、瞬時に治癒していく。

 

「正直、みんなが順平……毒ガスを操っていた彼と同じように、ヒーローや、ヒーロー社会に対する真っ当な怒りや憎しみを懐いているというなら、僕も揺らいでいたかもしれない。けど、彼ほどの悲しみや苦しみはアナタたちからは感じない。むしろ、平和に暮らしてたはずの順平を無理やり仲間に引き入れた連中のことを、許せるわけがない。つまり、僕がアナタたちに肩入れする理由は、一つも無い――アナタたちを倒して、真希さんを連れて帰ります」

「……私も手伝うぜ、出久」

「僕の後ろにいて、真希さん。君は彼らが利用したい僕とは違って、利用価値の無いオマケだ。きっと僕が暴れないよう、人質代わりに生かされてただけだ」

「だったら、人質の意地見せてやんよ。私らの戦闘許可も、まだ解けてねーしな」

 

「自分たちの立場、よく分かってるわね。小賢しい子たち」

「いや、バカだろ。その気がねーなら懐柔されたフリでもすりゃあいいものを……」

 

「だから、チャンスを与えたでしょう? アナタ方に……言っておきますが、寧香ちゃん抜きでも、真希さんを守りつつアナタ方を皆殺しにするくらい、わけ無いですよ?」

「私も戦うっての」

 

「君とは、分かり合えると思ってた……仕方がない。ヒーローたちも捜査を進めていると言った。公安まで必死にコイツのことを捜してるのなら、悠長に説得してられない――先生、力を貸せ」

 

 

 

「……良い判断だよ、死柄木弔」

 

 

 

 コンコンコン

「こんばんわー! ピザーラ神野店でーす!」

 

 

 

 




真希さんの個性が奪われてないのは完全にご都合展開です。
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