【完結】個性:物間寧香   作:大海

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ところで出久の緒方恵美ボイスを想像してくれ。こいつをどう思う?



第4話  雄英体育祭

「特級憑依型変異個性、『物間寧香』。雄英高校敷地内にて170秒の完全顕現……過去に二度行われた、計547秒の完全顕現もそうだったが、このような事態を避けるために、緑谷をお前に預けたのだ。申し開きの余地は無いぞ、ホークス」

 

「……まあ、その場に居合わせなかった以上、言い訳なんて仕様が無いですし」

 

「なにをふざけている? 物間寧香があのまま暴走していたら、街一つ消えていたかもしれないのだぞ!」

 

「そうなったら最速で駆けつけて命懸けで止めましたよ」

 

「オールマイトをして、勝てる自信が無いと言わしめた『個性』に、お前ごときが勝てるとでも?」

 

 いつだか呼び出された会議の場。そこに立たされたNo.3ヒーロー、ホークスは、問いかけに対して一つ、ため息を吐いた。

 

「あのねぇ……今さら言うことじゃないでしょうが、俺たちがあの『個性』に言えることは一つだけ――『分からない』。死亡した女児の個性が、どうしてあそこまで形を変えて、あげく赤の他人に宿ったか。死の間際、同じく事故に巻き込まれた人たちの個性をコピーしたにしても、それであんなふうに変わるなんて考えられない。理解できない物をコントロールすることはできません……彼以外はね」

 

「……」

 

「二度目の完全顕現の時にも説明した通り、緑谷出久は『物間寧香』の制御はできている。現に、今回も暴走は起きていないし、襲撃してきた敵以外にケガ人も出ていない。雄英受験の時のように、一瞬だけ呼び出し引っ込めるという芸当もできている。そもそも制御ができていることをヒーロー仮免試験の時点で認めたから、アナタ方もヒーロー仮免許の発行を承認したのでは?」

 

「完全顕現の最長許可時間を7秒間(・・・)と限定した上でな?」

「加えて、雄英在学中は完全顕現を行わないという取り決めも雄英との話し合いで合意させていたはずだが?」

 

 ホークスは淡々と、あくまで正論を返したのだが……

 公安の者たちにも言い分があることで、納得する者は見られない。

 

「……どうしてもまだ彼を信じられないというなら、俺に考えがあります」

 

 ホークスの提案を聞いた公安の男たちは……

 そのほとんどが、良い反応を示さなかった。それでも、最終的には強引に納得させた。

 

「まあ、俺と出久を信じて、放っておいてあげてくださいよ」

 

「……緑谷の秘匿死刑は保留(・・)だということを忘れるな?」

 

「……そうなれば、俺たち(・・・)が出久に付くことも、忘れずに」

 

 

 

「……たく、野暮なおじさんどもめ」

 

 会議を終えて、一人になった最速の男は、歩きながらそんな悪態を吐いていた。

 

「大体さ、若人から青春を取り上げるなんて、許されていないんだよ。誰にもね」

 

 と、あくまで可愛い教え子に味方して、最速で連中を納得させるために、携帯電話を取り出した。

 

「……もしもし、根津校長ですか? 今、お時間よろしいですか? ……ええ、緑谷出久のことで、はい……そう。今度行われる、雄英体育祭なんですが」

 

 

 

 

 

―― 数日後 雄英高校 ――

 

 

『雄英高校体育祭、第一種目! 序盤の展開から誰が予想できた!?』

 

 雄英高校体育祭。

 規模も人口も縮小し形骸化したオリンピックに変わると言われる、日本の祭典。

 生徒たちの活躍の場であり、プロヒーローを目指すために自身の存在をアピールできるチャンスの場でもあるその舞台。

 

『今! 一番にスタジアムへ帰ってきたその女!』

 

 例年通りと言ってしまえばその通りだが、今年の雄英体育祭も、ヴォイスヒーロー『プレゼント・マイク』の実況と、目の前の光景に、観客たちは大いに盛り上がっていた。

 

『ヒーロー科B組! 禪院(ぜんいん) 真希(まき)の存在を!!』

 

 大いに盛り上がり、歓声を上げる観客たちに混ざって、緑谷出久もまた、仲間であるA組含む、生徒たちの活躍を見つめていた。

 

(禪院真希さん……彼女はダークホースだな)

 

 

 

 

 

―― 数日前 ヒーロー科1年A組 ――

 

 

「雄英体育祭が迫ってる」

 

 

「「「「「クソ学校っぽいの来たあああああああああ!!」」」」」

 

 

 雄英体育祭が開催される。そのことに、その祭典の意味と意義を理解する生徒たちは大いに沸いた。だが、ほんの少し前に敵に侵入されたばかりのこんな時に、開催をしていいのかという疑問の声も上がった。

 だが、逆に開催することで警備体制が盤石であることを証明すること、加えて、生徒たちのチャンスの場を奪わないためにも開催はする。そんな話を受け、聞いていた生徒全員のテンションが上がっていた。

 

「ちなみに緑谷は出場禁止な」

 

 だが、大いに熱く沸いていたA組の雰囲気に、相澤先生のアッサリした一言という冷や水をぶっかけられた。

 

「代わりに、体育祭当日、やってもらいたいことがある」

 

 生徒たちから疑問や苦情の声が上がるより前に、相澤は、不敵な笑みを出久に対し向けていた。

 

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 そして現在。一年、どころか生徒の中でただ一人、出場を禁じられた『例外』は、担任に言われた出番が来るまで、他の観客たちと同様、体育祭を楽しんでいた。

 

 

「お久しぶりね。真希」

「お姉ちゃんて呼べよ。妹」

 

 第一種目、第二種目が終わって、決勝。その一回戦。

 ヒーロー科A組、八百万(やおよろず) (もも)と、B組、禪院(ぜんいん) 真希(まき)。女子生徒同士の対決となった二人が立つステージとは、距離が離れていることで、観客席まで会話の内容が聞こえてくることはない。それでも、誰の目から見ても分かる、『ワケあり』と思われる空気。

 そんな二人だけの空気の中、勝負を制したのは、禪院真希。

 

「大っ嫌い……お姉ちゃん……」

 

 

 その後も試合は進んでいって、二回戦。

 

「お前の!! 力だろうが!!!」

 

 終始、A組の轟が優勢に試合を運び、禪院真紀は個性の反動による両腕の損壊を引き起こしながらも苦闘を続けていた。

 そんな戦闘のさ中、痺れを切らしたように叫んだ時――

 

 かたくなに、右半身の氷結の力しか使ってこなかった轟が、左半身から炎を噴出。

 互いの全力がぶつかり合った結果、勝利したのは……

 

「おめでとう、轟君……禪院さん、残念だったな」

 

 

 それ以降、二回戦、三回戦と進んでいき、決勝戦。

 結論を言えば、雄英体育祭、一年生の部の優勝は、緑谷出久の幼なじみである、爆豪勝己が果たした。

 もっとも、彼は納得できかねているようで、表彰式ではギチギチに拘束され、口さえ封じられて、二位の台に立つ轟に向かってなにやら苦情を叫んでいる。

 一位のメダル授与も拒否を示していたものの、最後はオールマイトに無理やり渡される形となった。

 

『ご唱和ください! せーの――』

 

 

「プルス……え?」「プル、ス!?」

『おつかれさまでした!!』

「プル、あれ?」「プルスウ、ル!?」

 

 

「「「「「そこはプルスウルトラでしょ! オールマイト!?」」」」」

 

『え? いや、疲れたかなって……』

 

 

 と表彰式も終了して、誰もが終わりを感じた時。

 

『さあ、リスナー諸君! 表彰式が終わったが、雄英体育祭はまだ終わらねぇ! 最後にもう一つ、スペシャルなエキシビションが用意されているぞ!』

 

 円もたけなわといった空気の中、観客席の多くが帰宅を始めていたタイミングで言われた、プレゼント・マイクからのイベント続行の宣言。それを聞いた観客たちは、帰路に付こうとした身を腰かけ、ステージに目を向けた。

 

 

『細かい説明は後回しにして、まずは今エキシビションの主役に登場してもらう! 個性、実力、全てにおいてまさに例外(・・)! ヒーロー科一年でありながら、入学前、すなわち中学時点でヒーロー仮免許取得済みの男にして、一年の中で断トツ、ナンバーワンの実力者!』

 

『ヒーロー科1年A組、緑谷出久! ヒーロー名……デクゥゥゥウウウウウウウウ!!』

 

 

(大げさな……)

 

 再び湧き上がる歓声。声援もあれば驚きもある。

 そんな視線と声を一身に受けながら、ヒーローコスチュームとサポートアイテムの刀を身につけた緑谷出久は、苦笑しながらステージへと上がっていった。

 

 

「あの子、見たことあるぞ!」

「ああ、ホークスや他のヒーローたちに連れまわされていた子だ……」

「子どもとは思っていたが、中学生だったのか!?」

 

 出久の存在を知っていた、一部のプロヒーロー。

 

「一年生で、仮免許取得済み!?」

「ヒーロー科の一年の数が一人足りないとは思っていたが、そういうことか……」

「確かに、実力差はありすぎだろうからな。出場を禁止されていたというわけか」

 

 一年の身で仮免許取得済みという事実に驚愕する者。彼が体育祭に出場していないことに納得する者。

 

「どーも、ミルコさん」

「……んだよ、No.3。テメーも来てたのかよ」

「当然! 可愛い教え子の活躍を見に……というのは建前で、今回のエキシビションを提案した者として、見にこないわけにはいかないもので」

「ふむ……そういうことか」

「おっと、ベストジーニストさんまで?」

「彼の姿が無かったので残念に思っていたのだが……公安の差し金か?」

「いいえ、言った通り俺の発案ですよ。いい加減公安の堅物どもに、彼が大丈夫だということを見せつけなければと思いましてね」

「なるほど……これだけの大衆の目の前で結果を見せつければ、未だ彼に疑念を持つレトロデニムたちも認めざるを得ないというわけか。だが、それは逆もまた然り。失敗した時は、今度こそ彼を庇い切れなくなるぞ?」

「ハッ! バーカ。何させる気か知らねーが、出久が負けるわけあるかよ」

「そういうことです。さあ、一緒にミルコさん愛しのデク君の活躍を観戦しましょう」

「うるっせぇ!! そんなんじゃねー!!」

 

 彼の登場と共に、観客席に集まったトップヒーローたち。

 

「とうとう始まるね」

「緑谷ちゃん、大丈夫かしら……」

「……ケッ、アイツが普通に体育祭出てりゃあ、ぶっ殺してやってたのによぉ」

「ずっと緑谷にビビってたお前がそれ言うのか?」

「うるっせぇ! 昔の話だ!!」

「おやめください! 二人とも……」

「……八百万は禪院と何かあるのか?」

「……それが、轟さんとなんの関係が?」

「……別に。ただ、アイツは昔からあんななのかって気になってな」

「……?」

 

 A組生徒たちも、ずっとお預けを喰らわされていた仲間の登場に盛り上がりを見せて。

 

 

 様々な反応を会場に引き起こした例外は、ただただ無言で、生徒たちと同じ決勝ステージの上に立った。

 

『それじゃあ、エキシビションの内容を説明するぜ! と言っても、わざわざ説明の必要はねーか? 内容は至ってシンプル! 仮免取得済み、一年生ナンバーワンの実力者、下手すりゃ現雄英生徒の中でも断トツの実力を持ったこの男に、あるヒーローとガチンコファイトをしてもらう……内容はただそれだけだ!!』

 

 そこまで聞いて、事前に知っていたA組は元より、観客の全員が察することになる。

 それほどの実力者の対戦相手に選ばれる人間など、一人しかいない……

 

『そんな! 例外の男と戦う相手は……言わなくても分かるよな? 例外のその先にいる正真正銘のNo.1! 平和の象徴――オールマイトォォオオオオオオオオ!!』

 

 

 HAーHA HA HA HA HA HA!!

 

 わーたーしーが――

 

「来た!!」

 

 

 ついさっきまで、生徒たちがいた表彰台に立っていた。

 それが、いつの間に移動したのやら、ステージ、観客席の最上段へ、再び移動していたらしい。

 演出を分かっているNo.1ヒーローは、ステージ上へ一足飛びで着地し、例外と向き合った。

 

「やあ、緑谷少年……」

「オールマイト……こんな形で、アナタと戦えるなんて、光栄です」

「うむ! ……だが、このエキシビションが組まれた理由も、ホークスから説明があったと思うが?」

「ええ……僕が雄英に残るため(・・・・・・・・・)に、オールマイト、全力でアナタを倒します」

「うむ! 乗り越えてみせろ――若人よ!!」

 

 

『それでは、いよいよ開始するぜ!! ルールは生徒たちのバトルと同じ、降参、戦闘不能、場外にて決着だ!!』

 

 観客たちの中には、すでに勝負が見えている試合を前に、再び帰路に付こうと立ち上がる者たちもいた。

 しかし、一年生ナンバーワンの実力を持つという例外と、No.1ヒーローとの試合に興味を示す者たちは、より大勢いた。

 興奮。期待。予想。信頼。

 様々な感情と歓声により、最高のボルテージに満たされた会場の中心で……

 

『エキシビションマッチ! デクVSオールマイト!!』

 

 

『STAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAART!!!』

 

 

 

 




真希さんの見た目は劇場版の一年次の容姿です。
ヒーローコスチュームも一年次の制服です。
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