捨てられ大聖女のセカンドライフ ~失敗作呼ばわりされた私は天使と骸骨騎士と共に幸せに暮らしたい~   作:黒木ココ

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第11話 明かされる真実、粉砕される現実

 ノアの長々とした説明はライセリアの思考をオーバーヒートさせるには十分だった。

 彼女の話を聞いて、ライセリアの頭の中はぐるぐると回り始めた。信じられないような真実が次々と明かされていく。

 

 ……この世界は、地球から遥か彼方にある惑星だった。

 エレウシス4――人類がエデン・エンデバーという宇宙船で移住してきて、テラフォーミングを行った場所で……その過程で使われたのが、現代では“マナ”と呼ばれる――ナノマシン。

 

 そして、この世界全体を管理しているのがNOAH――正式名称がNano-Organic Adaptative Homeostasis systemというシステム。

 ノアの正体は、そのシステムの一部でライセリアのために特別に作られたコミュニケーション用インターフェースだったわけである。

 

 エデン教会が信仰する大神エデンの正体は、今もなお月周回軌道上に“エデンの瞳”として存在する宇宙船“エデン・エンデバー”で、ライセリアが魔法だと思っていたものはナノマシンを操作する技術――全て高度な科学技術だったという。

 要約するとそんなところだろうか。

 

「じゃあ千年前の出来事は――?」

「それは――」

 

 ノアの説明によると当時、太陽――恒星エレウシスがこれまでの観測記録に無かった大規模なスーパーフレアを起こし、その電磁パルスよってNOAHシステムが大打撃を受けナノマシンの一部が暴走したという。

 その暴走したナノマシンが“瘴気”と化した。生物無生物問わず侵食し、その姿を変異させていくという。

 

 そして、もっと厄介なのが“堕天使”だという。これも暴走したナノマシンに乗っ取られたドローンで、NOAHやエデン・エンデバーをハッキングしようとする危険な存在とノアは言った。

 そこに登場したのが聖女ライセリアだった。ライセリアのこの世界での前世にあたる人物で、彼女が命を懸けてNOAHを再起動して瘴気を封じ込めたが、完全に消滅させるには至らなかった。今でも時々瘴気が発生し堕天使の脅威も残っているのはそのせいだという。

 

「じゃあ、私は何なの? 異世界転生したとばっかり思っていたけど、ここは私の記憶よりもずっと未来の別の星なんでしょ? なんで21世紀に生きていた私がここにいるの?」

 

 ライセリアの問いにノアはさっき以上に動揺した様子で、視線を逸らせた。

 

「えっと...それは...」

 

 ノアの態度を見て、ライセリアはますます不安になった。でも……もう引き下がるつもりはない。

 

「今更どんな突拍子もない話が出てきても驚かないから。話して」

 

 ノアは深呼吸をして、覚悟を決めたようにライセリアを見つめた。

 

「NOAHにはあるアーカイブが保存されています。TERA……Terrestrial Ecosystem Replication Archive……地球の生態系を再現したアーカイブのことです」

「地球の……アーカイブ?」

「はい、TERAは超高度なシミュレーションシステムで、地球の歴史や文化、そして何億もの人々の人生をシミュレートして保存していました。テラフォーミングを行う際のモデルケースとして用いるために――」

「じゃあ、私、は――」

 

 ライセリアはごくりと喉を鳴らす。

 聞きたくない、でも聞かなきゃだめだ――

 喉がカラカラで上手く唾を呑み込めない。

 

「ライセリア様は、TERAのデータベースから選ばれた人格なんです。元々は21世紀の日本に生きていた女性のデータですが、それがライセリア様の体にインストールされました」

 

 ――は、はは……なにそれ。

 ライセリアは自分の手を見つめた。この体を動かしている自分は、データでできた存在とでも?

 

「私の記憶も、感情も、全部データ……? じゃあ、私は本物じゃない……?」

 

 今までの思い出、家族の思い出、友達との思い出。

 全部がまやかしだと言うのだろうか。

 

「違います! ライセリア様の記憶や感情、全てが本物です! TERAに存在した一人の人間なんです!」

「AIがわかった風なこと言わないでよッ!! その言葉だって私を慰めるためにそれっぽいこと言ってるだけでしょッ!?」

 

 思わず叫んでしまう。ノアはびくんと身を縮こませ肩を落とす。

 ライセリアはゆっくりと深呼吸して心を落ち着かせようとする。しかし、一度沸き起こった感情はそう簡単に消えない。気づけば頬に涙が伝っていた。

 この世界にて初めて流す涙だった。そんなライセリアを見て、ノアは小さく口を開いたが何も言えず固まってしまっている。

 

 ライセリアは居たたまれなくなり思わず小屋から逃げ出すように走り出そうとして――「どこへ行くつもりだ?」と小屋の外に立っていた骸骨騎士に襟首を掴まれた。

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