捨てられ大聖女のセカンドライフ ~失敗作呼ばわりされた私は天使と骸骨騎士と共に幸せに暮らしたい~   作:黒木ココ

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第25話 聖女と天使、冒険者への第一歩

 ライセとノアは年齢欄にそれぞれ18歳と14歳と記入した。この辺は適当な数字である。

 ノアは14歳にしては幼く見えるがあまり若く設定して年齢制限で冒険者になれませんだったら話にならない。

 フィオレはノアの年齢に特に訝しくこともなく手続きを進めている。ここは大丈夫のようだ。

 

「あと、聖符の確認をしたいので聖印に“解析(アナライズ)”をかけてもいいですか?」

「せ、聖符……っ!?」

 

 知らない単語が出てきたことで ライセは一瞬言葉を詰まらせる。フィオレは聖印を“解析”すると言っている。

 聖印はルシルの一件で知っている。ライセの場合首筋にあるQRコードみたいな痣のことだ。そして解析(アナライズ)はおそらく魔法の一種でQRコードを読み込む――ライセがルシルに無意識で行ったものだ。

 ということは――聖符とはあのID番号みたいなものなのだろうか。

 

「えっと……聖印、ですね。私は首筋にあるので……」

 

 ライセは少し服の首元をずらしてフィオレに聖印を見せようとすると「大丈夫ですよー、手のひらに解析(アナライズ)しますので」とにこやかに笑って言った。

 

「服で隠れてるところに聖印持ってる人も多いですからね。みんなの前で服を脱いでもらうなんてできませんから」

 

 そう言いながらフィオレは少し照れくさそうに自分の胸元を指差して「私の場合だとここに聖印がありますから」と言った。

 

「あはは……確かに」

「そういうわけで、手のひらお願いしますね」

 

 ライセはフィオレに言われるがまま、左手をカウンターに差し出す。

 するとフィオレは人差し指をピンと立るとライセの手のひらに近づけ「解析(アナライズ)」と唱えるとピリッとした刺激が走り、眼前に例のステータスのようなもの現れた。

 ――――――

 ID:EE-LC-REPS

 性別:女性

 マナ:7200/7200

 

 ――――――

 

(あれ? 私がルシルさんを見た時より情報が少ない……)

 

 そんな疑問が浮かんだと同時にフィオレが「あら、珍しい聖符の形をしてる――え、なにこのマナ量……」と呟く。

 フィオレの言葉から察するに……この世界の聖符の形は人それぞれ決まっているようだ。

 そう、“形”だ。文字ではなく“形”――アルファベットを文字としてではなく“模様”として認識している。

 

「ななせんにひゃく……!? あり得ない数値ですっ……」

「えーと……それって、すごいんですか?」

「はい! 普通の人で70~100、すごい人でも300~400くらいが普通ですから。私で80ですし……」

 

 フィオレは興奮気味に話す。ライセたちのやりとりを聞いていた周りの冒険者たちのひそひそ声が聞こえてくる。

 ライセのマナ量は人間の中では突出している部類のようだ。なるほど、“特別製”の意味がはっきりと理解できてくる。

 

「ええっと……じゃあこちらの方の聖符は……ええっこちらも!?」

 

 ノアのほうにも解析(アナライズ)を唱えたフィオレだが、今度はノアの聖符を見て絶句する。

 

 ――――――

 ID:EE-NOAH-AVATAR

 性別:女性

 マナ:6900/6900

 

 ――――――

 

 ノアの聖符はある意味そのままと言うべきか。

 この星の環境維持システムの端末みたいなものだからアバターというわけである。

 

(それにしても……私の聖符ってどういう意味なんだろう……)

 

「一体あなたたちは……何者なんです?」

 

 フィオレは驚いた顔を隠そうともせずライセたちにそう問いかける。ライセはノアと気まずそうに顔を見合わせた。

 さて、どう答えたものか……ライセはノアの耳元で囁くように話す。

 

(正直に話してみる?)

(誰も信じませんよそんなこと……)

 

 ノアの言う通り伝説の大聖女の生まれ変わりに天使だなんて誰も信じないし、頭がおかしい人だと思われるだろう。

 

「あまり冒険者の素性を詮索しないのもギルドの掟だ。お尋ね者でないことさえわかればそれでいいだろう?」

 

 アインが助け船を出すかのように割って入る。その言葉を受けてはフィオレは「そう、ですね……」と何も言えなくなる。

 確かにアインの言う通りだ。

 

(……まあ私は教会からお尋ね者扱いになってるかもしれないけど)

 

 なにはともあれ深く追及されなくなったことでほっと胸を撫で下す。

 フィオレは気を取り直すようにこほん、と咳払いをしてから話を続けた。

 

「はいっ! ではこれが冒険者証になりますね。基本肌身離さず持っていてくださいね。無くしてしまった場合再発行手続きが面倒なので」

 

 ライセとノアはフィオレから冒険者証を受け取る。

 運転免許証みたいな形と勝手に想像していたが、それは細い鎖に二枚の金属の板を通したもの――ドッグタグのような形をしていた。

 今まで意識していなかったがアインの首元にも同じものがぶら下がっているのに気付く。

 

 二枚の板にはそれぞれ聖符と名前と冒険者ランク、そして発行された町の名前が刻印されている。同じ刻印がそれぞれされていた。

 もし、クエスト中に命を落とし遺体の回収もままならない場合、その冒険者の身元確認のためにも使われる。

 遺体を発見した人間は二枚のうち一枚を持ち帰り、死亡確認の証拠とする。ドッグタグの形をしているのはそういう理由だろう。

 

 ライトノベルや漫画では世間の羨望を集める冒険者だが、その実態は命の危険と隣り合わせの仕事に違いない。気を引き締めていかねばとライセは決意するのだった。

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