「・・・いや龍華ちゃんは逃げてくれ」
「え…?」
前へでた龍華を下がらせるように肩を掴み代わりに前に出るクリリン。
「…ダメですよ!私以外の人じゃ簡単に魔人ブウに殺される!今魔人ブウの相手ができるのは…!」
「分かってるよ…俺なんて簡単に殺されちまうって…けどさ逆を言えば龍華ちゃんは今の地球の最後の希望なんだ…俺たちみたいな足手まといを庇いながら殿をするんじゃなくて龍華ちゃんが今はデンデを連れて逃げて,魔人ブウを殺すチャンスを伺うべきだ…」
クリリンはその死闘を潜り抜けた経験から察していた。
今生き残らせるべき人物は誰なのか。そのために数秒でも,犬死だとしても魔人ブウの足を止めるべきは誰なのか。
「龍華ちゃん…18号とマーロンを頼む…」
「おいおい水臭いじゃないかクリリン…
俺が役立てるのなんてこれくらいだ…俺もやってやるぜ…!」
クリリンと共に並び立つヤムチャ。その顔は自身の運命を察している顔だった。
「そんな…!」
「龍華ちゃん来るのよ!!」
悲壮感漂う顔をして立ち止まる龍華の手を持ち逃げるブルマ。女子供は逃げ,戦える男達は残って,魔人ブウの足止めをするようだ
だがそんな決死の覚悟虚しくほんの一瞬で殺されていく仲間たち。
逃げる人数にも限界があった。
「龍華……ちょっと母さんは忘れ物をしてきたべ…絶対に生き残るんだぞ…!」
「お母さん…?」
突然立ち止まり後ろを振り向くチチ。何か覚悟を決めたような顔をするチチに龍華は母がやろうとしていることを察する。
……しかし状況が状況のため止めようと思っても止めることが出来ずそのまま母は魔人ブウの元へ向かっていった。
「龍華ちゃん…アンタが魔人ブウを倒してドラゴンボールで絶対に生き返らせてよね。ベジータとトランクスを殺したあの化け物に平手打ちの1発でも食らわしてきてやるわ!」
「…私も行きます。悟飯くんを殺した魔人ブウを許せない…
・・・それに私が生き残ってもできることはありません」
ブルマやビーデルもそれに続くように龍華へと地球の未来を託しその背を押して,自分たちは魔人ブウの元に歩いていく
「・・・ちょっとアンタ。マーロンの事頼んだよ…うちの娘に何かあったら化けて出てやる」
「18号さん…!」
「ママ!!」
龍華にマーロンを預け,魔人ブウの元へ向かう18号。
これで本当に地球上に残った最後の戦士は龍華ただ1人だ。
「くそ…くそ…!!」
「ママァァァッーー!ママァァァ!!」
背後から仲間たちの最期を想像させる叫び声を聞きながらマーロンを連れて逃げる龍華。
仲間たちは皆生き残らせるべき者を判断し,その者に…龍華に全てを託して散っていった。
最後の地球を守る戦士として今は撤退する龍華の背はマーロンの泣き声も合わさり哀傷に満ち溢れていた。
「はぁはぁ…ここ…まで来れば。でもデンデさんが見つからなかった…!もしデンデさんが死んでたら…ドラゴンボールはもう…!」
「ママぁ…」
「大丈夫…大丈夫だよ。絶対にお姉ちゃんが何とかしてみせるから大丈夫…大丈夫」
何とか逃げ切った龍華とマーロン。しかし逃げる際肝心のデンデを見つけることが出来ずにいた。
母と父を亡くし,べそをかくマーロンを何とか安心させられるよう元気づけながらもデンデが居なくドラゴンボールが使えない可能性がある絶望感と最後に残った戦士としてのプレッシャーで龍華の心も不安で埋まっていた。
「…私にできるかな…こんな状況で…私独りで…お父…さん…」
「うぅ…」
「大丈夫…大丈夫だよ」
その言葉は自身の頬を伝う雫の事を考えないようにする為,自分にも言い聞かせるように言い続けた
〜〜〜〜〜
「老界王神様もっと早く終わんねーのか!?」
「待て…焦るなそれこそ儀式の時間が伸びるぞ…わしはこれでもかなり急いで仕上げている」
界王神界。そこに界王神達と悟飯,そして悟空が居た。
あの世へ帰った後悟飯の気を感じて瞬間移動した際にここに辿り着いたのだ。
そしてZソードと呼ばれる剣を振ってた悟飯だが,悟空が来た後,興味本位の実験で剣が折れ,中から先代の界王神が出てきた。
今ここでは悟飯がその老界王神による潜在能力を解放する為の儀式をしていた。
「な…なんと惨い…今あの地球の運命はたった1人の少女に託されてしまった…
…………可哀想に,何とかあの一緒に逃げた子の為気丈に振舞っていますが…あんな絶望的な顔を浮かべて…」
界王神の水晶によって地球の様子を見ていた悟空達はしっかりと神殿であった事を見ていた。
・・・もちろん龍華がマーロンと共に逃げ,最後の戦士として残されている事も。誰にも知られることはなかった龍華の涙も悟空はしっかりと見ていた。
「ちくしょう…何とかなんねーのか!?界王神様!」
「いえ…今私達にできることは何も…あの少女が何とか魔人ブウと戦ってくれることを願うしか…」
現状悟飯の儀式が終わるまで界王神達にできることは何も無かった。それこそ龍華が何とか魔人ブウを止めてくれる事を願うしか…
〜〜〜〜
何とか神殿から逃げた龍華は暫くマーロンを落ち着かせることも目的として,地上の岩場で休んでいた。
そこでなんと地球上をさまよっていたミスターサタンと出会った。
「な…なに魔人ブウが…そ…それにビーデルも…」
「はい現状かなり絶望的です。…ですのでこの子をお願いします。私は何とか魔人ブウを止めに行きます。このままでは地球は滅ぶだけです。」
ミスターサタンに事情を説明し,マーロンを預けて戦いへ向かおうとする龍華。
龍華は逃げるだけでは何も変わらず,今唯一戦える戦士である自分が何とかするしかないことを理解していた。
「行かないで…お姉ちゃん…」
「…………大丈夫だよ。お姉ちゃんが魔人ブウをやっつけてみせるから…そうすれば君のママとパパもきっと生き返れる…そうきっと…だい…じょう…ぶ」
父と母を亡くしたマーロンは龍華の袖を掴んで離さない。
そんなマーロンに龍華は慰めの言葉をかけるが…デンデを見つけられなかった現状。ドラゴンボールに頼れるか分からないのでその言葉は言い淀んでしまった。
「それじゃあその子を連れてなるべく逃げてくださいお願いしますね…ミスターサタン」
「まっ…待ってくれ!き…君は…!」
龍華はミスターサタンの言葉を聞くことはなく飛び立っていく。
そして急いで魔人ブウの元へ向かっていく。
龍華は人の気配がひとつもしない神殿でその惨状を目の当たりにする
「見つけた…」
「もぐ…もぐ…うん?」
魔人ブウはまだ神殿に居た。その姿は茶色く汚れていた。チョコレートだろう。
そしてその大量のチョコレートの元は恐らく…
「まだ生き残りがいたのか…今度は何にして食べようか…チョコレートは飽きたな…今度はケーキにするか…!」
「よ…よくも……よくも…」
食べかけのチョコを踏み潰す魔人ブウ。周りを見ると雑に食い荒らしたのが分かる残状が広がっていた。
悪魔の叫びのような怒号が響き渡る。
初めて成ってしまって以来,自身の理性が消えることを恐れずっと封印していた力。
だが現状最後に残った戦士となった為そうも言ってられない。
とにかく目の前の敵を殺す為に…例え自分の理性が無くなろうと道連れとするためにその力を解放する。
「ふぅ…ふぅ…ふぅ…」
緑色に染まった髪に大幅に増したおぞましい翠色の気のオーラ。
皆が知るよしはないだろうがその姿はまさに伝説の超サイヤ人であるブロリーに似た姿だった。
……そう精神と時の部屋以来封印していた伝説の超サイヤ人の全ての力をとうとう解放したのだ。
「オォォッッ!!」
「ギッッ!!」
瞬間的に魔人ブウの目の前に移動し,正面から殴り飛ばす龍華。
「オマエ…絶対に殺してやる!!!」
魔人ブウが怒りと共に龍華の顔を殴りつける。
しかし…
「・・・ウゥウッッ!」
全く怯まずに逆にその拳を持って魔人ブウを地面に叩きつける龍華。
そして殴り,叩きつけ,踏み潰す。
ボロボロになった魔人ブウを投げ飛ばし,それを追撃するように翠色の光弾を飛ばす。
その戦闘は全く理性を感じさせない野性的な戦闘だった。
「ガアァァァッ!!!」
周りを気にすることなく高密度の気を死の雨のように振り乱す龍華。
その破壊衝動は止まることを知らない
「よし!出れたよ!ピッコロさん」
「全くそんな事が出来るなら最初から…!
なっ…し…神殿が…!」
精神と時の部屋に閉じ込められていたピッコロとゴテンクス。
しかしゴテンクスがようやく奥の手の超サイヤ人3になったことで脱出してきた。
そして脱出した先の景色は破壊された神殿が広がっていた。
「…………あ…あれお姉ちゃんじゃ…」
「…!孫龍華…なのか…いっ…一体何が…」
その目線の先には魔人ブウを蹂躙しながら,神殿を破壊してまわる龍華が居た。
「お姉ちゃーーん!龍華お姉ちゃーん!!」
「…き…聞こえてないのか…?」
ゴテンクスが必死に呼びかけるが全く聞いていない様子の龍華。
「…あ!俺たちフュージョンして姿が変わったからお姉ちゃん誰か分かってないのかな」
「いや…というよりも理性が無いと言った方が…危ない!!伏せろ!」
瞬間。ゴテンクス達がいる場所に気弾が着弾し,爆発が起こる。
「ぐぅぅッ!コイツ…!」
「ふぅ…ふぅ…ウゥゥ…!!」
魔人ブウと激しい戦いを繰り広げる龍華。
その心にはもう破壊衝動しか残っていない。
「…どうやら共闘どころでは無さそうだな…」
「どっ…どーすんだよ!このままじゃ仮に魔人ブウは倒せてもお姉ちゃんに地球を壊されちゃうよ!」
ピッコロは龍華の状態を判断し,共闘は無理だと察する。
それに対してゴテンクスは龍華の暴れようを見て,このままでは魔人ブウどころではないと慌てる。
「ウゥァァァッッ!!」
殺せ殺せ殺せ殺せ
壊せ壊せ壊せ壊せ
心なんていらない強い心なんてものがあっても何も出来はしない
何も…無い…
何も…
『お姉ちゃん!』
『行ってくるよ,龍華!』
『生き残るんだぞ…龍華』
『龍華…オラが居なくなったあと…地球を…チチや悟天を頼む』
何も…
『君が無事で…良かった…』
何で私はこの強靭な肉体を求めたんだっけ…私は…私の…願いは…
ふと頭に過ぎるのは
身を刺すような雨と青い信号機,
そして目の前に迫る大きなトラック,こっちを見て叫ぶ周りの人の声
“なんの景色だっけ…これ…なんの…”
急ブレーキを踏む音とパンッという普通に生きていたら聞きなれない異音。
この音を私は知っている
人が死ぬ音…人の肉体が跳ねられる音。
雨と共に地を流れる赤い赤い鮮血。
ピタピタと鳴り響く雨音と不気味なくらい静かな空間。
そして
暴走するように周りを破壊しながら,魔人ブウとの戦闘をする龍華を暫く眺めていたゴテンクスとピッコロ。
その戦闘には手を出せず,そして解決法も浮かばず,ただ無意味に時間が過ぎていった。
だが突然暴力的に溢れていた気の嵐が落ち着いたように龍華の体を包む。夥しいオーラは清々とした翠色のオーラとなる。……しかし見た目は変わらず,その気の量や圧も圧倒的なままだ。
そして表情も理性的なものへとなっていく。
…………龍華は成功したのだ……前の精神と時の部屋に入った時の暴走のように,ただ落ち着いて力が収まり破壊衝動が止まった訳では無い。
……そう本来の伝説の超サイヤ人ですら成しえなかった,その強大な力を完全に顕現させての,理性を保持したままの力のコントロール
……力を抑えた,ただの超サイヤ人では無い。
その伝説の超サイヤ人という肉体が秘めたる力を完全に自身のモノとして,とうとう龍華はその力に呑み込まれることがないまま完璧に扱えるようになった。
「……ピッコロさん,それと多分悟天とトランクスがフュージョンしたって事だよね君は。」
「お姉ちゃん…?」
突然暴走が落ち着き,ピッコロとゴテンクスへと話しかける龍華。
それに対して2人は驚いた表情を浮かべる。
「孫龍華…どうやら理性が戻ったようだな…なら頼もしい限りだ。ゴテンクス…今の孫龍華と一緒に戦えば魔人ブウも確実に倒せるだろう…」
「よーし!お姉ちゃん俺も一緒に戦うよ!」
完全に理性が戻った龍華を見て共闘して魔人ブウを倒そうとするゴテンクス。
しかしその姿が突然光ったと思うとなんと悟天とトランクスに別れてしまった。
「あ…あれ!?」
「ど…どうして…!?」
今はまだ分からぬことではあるが強大な超サイヤ人3の力がフュージョンの時間を短くしていた。
その超サイヤ人3の状態で無意味に龍華が暴走している間時間を食ったのが良くなかったらしい。
せっかく龍華の理性が戻ったというのにタイミング悪くフュージョンが解けるとは運が悪いと言う他ならない。
「…………大丈夫だよ。今の私は多分魔人ブウにだって負けない。この力を完璧に制御できるようになったから…もう誰にも負けない。」
伝説の超サイヤ人の強靭な肉体を強い精神力で完璧にコントロールできるようになった龍華。
その力は悟空を超え,ゴテンクスと同等…否それ以上の力を持っていた。
「…オマエ…もう許さないぞ…絶対にぶっ殺してやる!!!」
「みんなの仇を取らせてもらうよ…絶対にこの場で殺す…!」
その刹那。膨大な気がぶつかりあったーーー