私はサマンサに抱えられながら、星が花火の提案に頷くのを見る。花火は嬉しそうな演技をする。反対にサマンサは星に対して声を上げた。
「星!仮面の愚者とは、刹那的な思考で動く人たちの集まりなんですよ…!安易に話に乗っては!」
「…でも、私たちには目的が出来た。そうだよね、狂风?」
「そうだな。招待状の意味が何であろうと、ピノコニーの危機を脱する一助にならねば。調査に実力者の花火さんの手を借りれるなら、こんなにやりやすいことはない。」
「父さま…!こんな姿になっても、花火さんを信じるのですか?」
私の言葉に、サマンサは困惑したような調子で言葉を漏らす。
仮面の愚者に対しては時に煽り、時にはおだてることこそ正しい対処法だ。花火の興味が、問題の解決に向いている間に得られるものは得ておくのが良い。
私はサマンサと停雲へ小声で、花火の目的について話す。そして「愉悦」の運命さえ掌握できるかもしれない才能を星は持っているため、花火の目的に一度乗ってみることも。
サマンサと停雲は私の考えを理解してくれ、花火については様子見をすることにしたようだ。花火は二人を順に見て「役」を押し付ける。
「芦毛ちゃんが助手ならー…君たちは警察!ちゃんと、子犬ちゃんを連れてくるように!」
「…父さま。」
花火はびしりと指を向ける。サマンサは花火の調子についていくことが出来ないようで、頭を押さえた。
結局、サマンサと停雲も花火の「探偵役」に付き合わされることとなる。サマンサは肩を落とす中、停雲は豪胆であり遊びに対して積極的な姿勢を見せた。
「小さなお子様みたいで、愛らしいですね。こういった遊戯でしたら、商談相手の方のお子様と行うこともありましたから得意です。」
「あはっ!それじゃあ、出発する前に~!」
花火が狂気的な調子で言葉を紡ぐと、先ほど見た巨大な金魚が、私たちの周りに現れる。金魚は星たちを撫でるように移動し、次の瞬間服装が全員変わっていた。
それはピノコニーの十二の刻において治安維持を行うクラン、ハウンド家の人間が着ている衣類であった。停雲の顔からは仮面が除かれ、代わりにマスクがつけられている。
星はシャツの襟元を触ってから、満足そうに言う。
「あんたって人の服装も変えられるんだ。こういうスーツも悪くないね。」
「花火を甘く見ないで!こんなこともできるんだからー!」
「…もはや何でもありだね。すごいすごい。」
星がおだてると、花火は不服そうな演技をし、自身の姿を変えた。ニュース映像で見たことのある天環族、調和セレモニーで歌唱する少女、ロビンの似姿へと。星は、更に適当な対応を花火へ行う。
声まで変化した花火は怒る演技をした後、すぐさま黒髪の少女の姿に戻る。そして調子はずれの声で、調査の開始を宣言した。
―――――
開拓者である穹は突然現れたミーシャに連れ去られ、浮遊感を覚えていた。しばらくした後、地面に足が着く感覚がして視界も晴れる。困惑しながらも彼は辺りを見回し、先ほどいた場所とは全く違うことに気づく。
「街なのか…?」
穹が言葉を濁した理由は、建造物の形にあった。彼の視界に映る全ての建物が奇抜であり、施設であるかさえも一般的な感性では判断がつかないほどである。
彼は後頭部を触った後、とりあえず仲間にメッセージを送ることにした。だがここでも穹は驚くことになる。列車の仲間から、無事かどうかの連絡が大量に入っていたのだ。画面をスクロールしていくと、三月なのかの一番新しいメッセージには、こう書かれていた。迎えに行くからその場で待っているようにと。
しばらくすると、遠くから三月なのかが手を振りながら駆けてきた。穹も彼女に合わせて大きく手を振る。
「――やっほ~!やっと合流できたね!」
「ああ。なのもミーシャに連れて来られたのか?」
「そう!黄昏の刻を観光してたら、いきなり後ろにいてね!本当にびっくりしたよ~!」
三月なのかは快活な調子で言った後、ぶるぶると体を震わせる。穹がもう一つ質問する前に、三月なのかは彼の腕をぐいと引き、掴んだ。
「早く行こう!姫子もヨウおじちゃんもここに来てて、アンタを待ってるんだから!観光は後で幾らでもできるから、急いで!」
「なの、もう一つだけ教えてくれ。ここどこなんだ?」
「アンタ聞いてなかったの?ここはドリームリーフだよ!」
三月なのかに引っ張られるようにして、穹はドリームリーフの街並みを進んでいく。歩けば歩くほどに、十二の刻と決定的に違う場所だという認識を深めていく。
こんなにも不思議な形をした建物ばかりなのに、ここにいる人はみんな目に光が灯っているように穹は感じた。そしてこうも思う。十二の刻にいた現地住民には疎らにしかなかったそれは、情熱の光であると。
三月なのかの先導の元、穹は辿り着く。姫子とヴェルト、その他衣類に統一感のない者たちが集められた広場に。穹はその集団の中に、以前会ったことのある騎士が混ざっているのを確認した。何故こんなところにもいるのだろうと思ったが、穹は考えるのを止めた。
集団の最奥には、穹をここへと連れ込んだ少年が腰かけている。
ふわりとした空色髪の少年ミーシャは、独特な装飾がなされたフェドラハットを被っていた。彼は穹を見て、温和な笑みを浮かべた。
少年は立ち上がり、自身が集めたピノコニーへの来訪者全員を見やる。「巡狩」の道を行くカウボーイハットのサイボーグ、「記憶」の収集家である、紫の装束を身に纏ったメモキーパー、複数の派閥の架け橋になってきたミーム生命体。「純美」を信奉し広めている、赤髪の騎士。
他にも「虚無」を拒む混沌医師、「終焉」の観測者である葬儀客などが集まっている。
見た目からは想像がつかない老人の声で、少年は言葉を発した。
「皆さん、ドリームリーフへ来てくださりありがとうございます。ここにいる皆さんには一度お話ししましたが、改めて自己紹介を。僕の名前は、ラグウォーク・シャール・ミハイル。既に生涯をドリームリーフへ捧げ終え、往生際悪く足掻いている亡霊です。」
既に死した老人の「記憶」の残滓、ミハイルの影は己をそう評し、これだけの人間を集めた理由について話し始める。
このピノコニーにおいて、ファミリーが不穏な動きをしている。中心人物は、十二の刻を政治的に纏め上げているオーク家と、クランにおける「夢の主」ゴフェルである。
ミハイルは生前、ドリームリーフの発展を支えながら、ファミリーと適切な距離を保ってきた。ドリームリーフという派閥は独立した小さな経済圏であり、ドリームメイクの技術を他四大クランと共有しながらも、ピノコニーの政治には不干渉であった。そして、オーク家をまとめていたゴフェルとも細くも長い交友関係を築いていたのだ。
ゴフェルが本格的に四大クランを「支配」するまでは。
「――ゴフェルは今回の調和セレモニーを、特殊なものへ変えようとしています。既にミハイルが死んでいると分かってから、彼は長年練ってきた計画を実行しようとしているのです。星核…ずっと前に封印されていたはずのそれは、偽られ汚染を広げていました。ピノコニー大劇場へと姿を変えて。」
「なんと痛ましい…。美しき友情が反故にされてしまうとは…。」
「…おい爺さん、長話はやめにしようぜ!オレは、ティエルナンの爺さんの遺品を届けに来ただけだ!ついでに手伝うにしても早くしてくれ!」
赤髪の騎士、アルジェンティは涙を流し、サイボーグの、ブートヒルと名乗る男はミハイルの影を急かす。
ミハイルの影は寂しげに微笑んだ後、目的を話す。ドリームリーフに興味を持った者、ミハイルと細くも繋がりを持っていた者たちへ、生前の彼が残した願いを伝える。
「ええ、そうですね。簡潔に言えば…君たちに、僕の旧友を止めてほしい。ピノコニーの住民を保護し、調和セレモニーをこのまま開催させないようにしたい。老人の最後の願いを、どうか。」
―――――
星は狼たちと共に、あちこち忙しなく動き回る花火についていく。そして彼女は、十二の刻で過ごしている人の背景を知っていった。故郷が無くなった人、現実の肉体が既に衰弱しきっている人、現実で楽しさを感じられず、夢の快楽を貪る人。
停雲は卓越したコミュニケーション能力で聞き込み、サマンサは演技無しでハウンド家の堅物らしく住民に話を聞く。また花火は、人を煽り倒す「聞き込み」を行った。
彼女らを通して星は気づく。美しい夢を純粋に楽しんでいる人は、来てから日が浅い来客ばかりであり、ほとんどは暗い感情や、現実逃避に堕ちている。
「深く入り込むと、印象が違って見えますね…。星はどう思いますか?」
「うん、サマンサの考えていることと同じだよ。あんたはずっと楽しそうだね…。」
「当たり前じゃん~!こんな惨めでドン底な生活をしている人ばかり…面白くないわけない!」
星は、くすくすとおかしそうに指をさして笑う花火に対し、悪趣味だと感じる。そして、銀狼が何故「気が合いそう」だと話したのか納得がいかなかった。
花火は嘲笑うのを止め、星に続けて言う。
「そんなことより~…証拠がどんどん集まってきたね、芦毛ちゃん!」
「証拠?」
「そう、証拠だよ!何で今回、普通の調和セレモニーじゃないのかって証拠!」
「なるほど…。あんたの聞き込み、ちゃんと意味があるんだね。」
「ごっこ遊びだと思ってたのー?遊ぶんだったら、楽しく全力でやらないと!今の花火たち「探偵」と「助手」なんだから!」
花火は立てた指を星に近づけ、つんと腹をつく。星は考えを巡らせ、自身が感じたことこそ、花火が言う「証拠」なのだろうかと推測する。そしてそれを花火に尋ねれば、言外に正解だと伝えられた。
十二の夢境にいる人々は、現実から逃げた先で、現実を味わっている。夢とは名ばかりで、この夢境の中はどこまで行っても現実と地続きなのだ。
夢から覚めたとしても、何も変わらない。
「…あんたが見せたいものは分かった。次はどうする?」
「うんうん!助手の表情になってきたねー!それじゃあ次は…容疑者に張り込み、してみよう~!」
花火は、人気のない場所で次の目的を話す。それはオーク家の当主、サンデーを追うことだ。花火は全員の服装を変え、自身の外見も別人へと変貌させた。サンデーの双子の妹、歌手のロビンの姿だ。
その後ロビンに化けた花火は、ちらりと物陰に視線を向ける。そこにはロビン本人が眉をひそめて立っていた。
―――――
私は花火と、彼女が化けた元の人物ロビンを見比べる。見た目も声も変わりはない。ただ花火の抑揚の付け方だけがロビンと少しだけ違っていた。
「…愚者。私は、あなたの行動を遠くから見ていたわ。とても楽しそうにしていたわね。」
『話す手間が省けて助かったわ、私。久しぶりの故郷は、どうだったかしら?「こんなのちっとも幸せじゃないわ」って、思ったかもしれないわね。』
「…私を相手に欺く必要はないわ、愚者。早く姿を戻しなさい。」
ロビンは少し声を低め、表情を硬くする。花火は演技を更に雑にしてから、姿を元に戻した。
『自問自答みたいで、効いちゃったかしら?』
「花火は、ここでもっと楽しむつもりなの!ロビンちゃん、あの兄様のところに案内してほしいな~!」
にやにやと笑い続ける花火を見つめた後、ロビンは星たちや私に視線を向ける。そして怪訝そうな顔をして、星を注視した。
「あのときの双子さん…。仮面の愚者ではないのに、どうして?」
「私は星。花火は今回真面目らしいよ。だから協力してる。私たちはこっちの、狂风の仲間だからね。」
「…狂风さん?…まさか、あなたが狂风さんなの…!?」
「その通りだ、ロビンさん。はじめまして。…この身体は、目立たないようにしてもらった結果だ。」
ロビンは口元を押さえ、首を幾度も動かして私の体を観察する。サマンサの腕に収まる程度の大きさしかないのが不可解なのだろう。
面識自体はないが、続けてロビンが言う。直近の私のことをカンパニーのニュースで知っていると。ヒスイノの場所は「神秘の壁」で隠しているため、内部の情報は大まかにしか星海に伝わっていない。「抗う者」として同盟を組んでいるカンパニーが必要以上に情報が漏れないよう協力してくれているのだ。
そして私が持っている力についても、「存護」の力以外詳しく知られていない。戦場を深緑の騎士が駆け、存護と治癒を為す。その戦士集団のまとめ役であるため、それなりに力はあると思われている程度だろう。武力というよりも再建、復興に関わっている印象が強いと推測している。
「やっぱり、ラジオで聞いた声の通り…。遠い昔、ピノコニーの夢境造りに協力してくださった方ですもの。お会いできて光栄だわ。兄様はあなたの星系を「楽園」だと話していて…。狂风さんと話せるなら、とても喜ぶはずよ。」
「是非とも話したいところだが、今は彼と話すよりも貴女と一時協力したい。ピノコニーに潜む問題を解決するために、私たちは動いている。勿論私が小さかろうと、花火さんに蛮行はさせない。初めて顔を合わせた間柄だが、貴女の力が必要なんだ。」
私は調和セレモニーのことを考えた。彼女は大劇場にて重要な役割を果たす。
そしてロビンは、花火に言葉で煽られた際、苛立ち以外の感情を持っていた。ピノコニーの現状について、彼女は共感していた。
やはり花火は器である以上、他者の感情の理解は得意なようだ。ロビンの感情を引き出す言葉をあえて使った。
ロビンは黙り込み、また私たち全員の顔を見た。そして星に目を止めると、彼女は問いかける。
「協力については…少し考えさせてくださるかしら。…星さんは、あの双子の男の子…穹さんのことをどう思ってる?」
「私に似てる人で、お互い元気ならいいって感じかな。趣味が似てるから共有はよくするよ。ロビンはどうなの?」
「そんなにフラットな関係なのね。私は…兄様と対等ではないように感じているわ。」
寂しげな顔でロビンは呟く。その後、ロビンはサンデーとの価値観の違いについて話す。
活動する場所が変われば、話す立場も変わってくる可能性は高い。だがロビンは、双子の兄サンデーに対して現状に哀しみを覚えているようだ。似ている人がいる人物は、多く事例がある。星だけでなくサマンサもそうだし、智械黑塔もそうだ。広義で言えば、ブローニャも似た顔の者がテロリストである。
似ていれば互いを意識する。血が繋がっていれば尚のこと。停雲やサマンサはじっと彼女の話を聞いていたが、花火はその空気に嫌気がさしているような演技をした。
「はーやーくー!手羽男ちゃんがロビンちゃんに、全然話をしないのは分かったから~!」
地団駄を踏み、花火は催促する。サンデーに対して張り込みがしたい、早くしたいと自制がきかない子どものように。ロビンは顔をしかめたが、向けた視線は最初の刺々しいものとは違っていた。推測の範囲ではあったが、ロビンも少しずつサンデーが含みを持っていることを考え始めたようだ。
「…分かったわ。今日の兄様はとてもよそよそしくて…私に何か隠しているのは感じていたの。兄様が危ないことをしようとしているなら…私も黙って見ていられないわ。」
すると花火はこういった旨の話を楽しそうにする。今回の調和セレモニーには裏がある。ただシペの化身が呼び出されるだけではなく、ピノコニーの人間全員が危険に晒されると。その確証を得るには、オーク家の当主サンデーが一人になるときを張り込むしかない。親しい者が離れたときであったり、調和セレモニー開催直前であれば隙があるかもと、「探偵」らしいことを言う。
ロビンが考え込んでいる間、停雲が話した。
「サンデー様と密接に関わっていらっしゃる方について考えてみるのは、いかがでしょう。」
停雲の言葉によって、ロビンは、養父であったゴフェルについて話し始める。木陰が全てを覆うように、隠然たる統治の仕方をする人間だと。サンデーは昔からゴフェルに多くを学び、当主の座についた。
私は先ほどロビンが話した、サンデーの価値観とゴフェルについてを考えた。これは明らかに「調和」らしくない。かつてカタルス家に起こったドリームメイカー殺害未遂、ドリームリーフができた経緯と同じ感覚を味わう。
この違和感を確信へと変えるのは、それからすぐのことだった。ロビンがその場を離れ、花火の尾行が行われる前に、異変が起こる。
サマンサの体がゆらりと揺れ、座り込んでしまったのだ。停雲も俯いて動かなくなってしまった。気がついたときには、私以外の全員がくたりと横になっていた。夢の中であるというのに、私の目も閉じていく。
私は意識が一度途切れる直前、皆の手を見た。ぴくりと動く。
―――――
穹は列車の仲間たち、他派閥の人間と話していた。元々会うことが多いアルジェンティは勿論、巡狩レンジャーのブートヒル。ミーム生命体の、ヘッジングとブラックスワン。彼らと主に作戦を考える。
「オーディションなんて、ラブリーでキューティーなことをする必要はねえ。一気に突入するんだよ!」
「わたくしが道を拓きますわ。後は、手慣れの列車の皆さんが時間を稼いでくださいまし。そうしたら、カンパニーの方を連れてきて、全員で倒すのですわ!」
「では僕は、ドリームリーフの人と共に、十二の刻にいる人の避難を呼びかけましょう。ドリームリーフか、現実世界に目覚めるか。後者の方が確実ですが、ここも安全です。僕の観察眼が保証いたしましょう。」
「隣り合った世界が協力する…。とても素晴らしい記憶が保存できそうね。」
式典を止める策は、あまりにも武力よりであった。列車の面々や非力な人々は話し合いも提案するが、実際に入り込めばどういう対応を取るかが分かると、武闘派は言う。
会話している中で、穹は星たちの姿が無いことに気がついた。何故ドリームリーフに呼んでいないのか、ミハイルの影に聞くと、彼は老人の声で理由を答える。
「彼らは僕が呼びに行く前に、もう答えに辿り着いていた。それに、あの人は真っすぐ突き進み、物事を良い方向へ導いてくれた。このドリームリーフのこと、親友とのことも。だから僕たちの作戦を始めるとき、合流してくれると信じているんだよ。」
「ミーシャ…ミハイルも、不思議だな。」
「不思議かな。君たちとは別の「開拓」が、必ずゴフェルの音色を崩し不協和音を作り出す。全く別の価値観を持った人と人が繋がりを持ち、深めていく…それも「開拓」だ。」
ミハイルの影は微笑む。少し融けていく手は、その影の残された時間が少ないことを示す。彼の横に、赤茶髪の男性が立った。ミハイルが残した切り札。ドリームリーフの人間と、生前はまだ勢力を残していたファミリーの穏健派が作り上げた存在。
彼はドリームメイカーたちと、古いナナシビトの元に集まった者と共に、ドリームリーフから介入する。ピノコニーに生きる者のほとんどが、星神から特別な力を持っていなくとも、彼らには今心強い味方がいる。友誼がある。腐っていく隣人に、古い友情を伝え直すのだ。
調和セレモニー前、集まった旗印の元に走り抜ける。
―――――
星は頭を押さえながら起き上がり、辺りを見回す。宇宙船内にある自室。彼女はベッドに寝転がっていた。星はゆっくりと体を起こし、ゴミケーキに起床の挨拶をする。にゃあとその生物は返した。
(頭が重い…。ゲームしすぎたかな?)
星は顔を洗ったり歯を磨いたりして目を覚まし、黒と黄のコートを着る。いつものように共有スペースへ顔を出し、ご飯を食べる。食後の運動として「不落」を振り、ゲームをする。新しい地でもゴミ箱は見られるかとワクワクしながら、時間を過ごす。
星は一つ気づく。宇宙船の人員と会話している中で、狼と話すタイミングがやってきた時のことだ。狼は次の目的地について答え、その場所の詳細を尋ねようとする。
「ねえ―――」
声に出そうとしたその瞬間、強烈な違和感を覚える。そして星は共有スペース内を見渡した。全ていつも通りで、最近仲間になった停雲も、星の視線に気づきにこりと笑う。
「…これ、夢だよね?」
星が呟くと、目の前が全て作り物のようになる。
星の横に、花火がやってきた。星が今まで見た彼女の表情の中で、最も嬉しそうに。
「目覚めた気分はどう?」
「刺激が無さすぎるから、すぐ分かったよ。あんたが見せたの?…夢境で?」
「鴉ちゃんが見せたみたい。花火の邪魔をするなんて…面白いー!」
「…確かに面白い。こんな程度で寝かせるつもりなんて。」
「やっぱり君が「愉悦」の才能があるって分かって良かった!さあ、種明かしの時間だよ~!」
星は一日一日を刺激的に過ごしていた。目的地に向かうまで、何かが起こるのを待ったことなど一度もなかった。常に変化を求めてきた。それが星の幸福であり、自分にとって何が都合の良い描写なのかなど定義していないのだ。
大事な人はいて、そのために力を使いたいと選択しても、それだけが全てではない。星は、どのような道を辿っても決して縛られない。彼女の特異さは、一瞥されるまでもなく「愉悦」の道を辿っていた。運命という絶対的な法則をかわし、行動と好奇心を絶やすことがない。愚者が嘲ることを楽しむものばかりでも、「愉悦」とはただ面白いと思い、笑い続けられることなのだ。
これは彼女が思い出すことはなくても、確かに選んでいた道だ。
星の体にかけられた夢の幕は剥ぎ取られ、「愉悦」の力で「調和」の一部を象る。未来の名を冠した弦楽器が星の手に取られる。
何より自由な演奏を行うため、星は舞台へと上がる。