月に狂えど血に酔わず、異端の狼   作:棘棘生命

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決戦

 神々の戦いの状況が、また変わる。

 狼はスターピースカンパニーの観測記録を確認し、それを知る。余波もひどくなっており、戦いの中心地にはかつて惑星だった岩ばかりが散らばっている。

 そして「崩壊」の星神は四柱に囲まれている故に、観測地点が殆ど固定されている。其はますます歪になっていながらも、自由に動くことが出来なくなった。

 

 

 各派閥の代表から、星海に通達がある。

 スターピースカンパニーは、全戦力を投入して星海の「存護」を為す。惑星の保護を徹底することを示した。カンパニーの強みは、その広い情報網であり、守るための力である。「抗う者」のカンパニー側の代表者として名を連ねている、戦略投資部の「十の石心」の四名。彼らも、「存護」に集中することを表明した。

 

 仙舟同盟の雲騎軍は反対に、使令のみならず、星神討伐に全力を挙げるという。彼らは帝弓七天将の中でも、一騎当千を誇る将軍二名、「曜青」天撃将軍の名を持つ飛霄、「方壺」伏波将軍で知られる玄全を前面に出し、元帥華自らも先頭に出る。「豊穣」に矢が放たれるか、それに彼女ら戦士は怯えることはない。単騎であれば、矢など易々と避けてみせると実力が証明している。

 

 ファミリーも、神々の戦いに参加した「調和」のシペの怒りを胸に、崩壊へ立ち向かう。シペの化身を戦場で顕現させ、まだ見ぬ、ファミリーに所属するかもしれない民を救うために。

 

 また星海に散らばる人々には、信じがたい事実がある。元反物質レギオンの絶滅大君たちの一部も、戦いに参加しようとしているとの報告があったのである。「壊滅」に美学を感じていた絶滅大君の一部は、ただ乱雑に崩れていくことに我慢がならない。融合前のナヌークが動かすことが多く「抗う者」とも因縁があった星嘯が、戦線を進めることに長けたもう一体の絶滅大君と組み、かつての「崩壊」側に与する同族と同士討ちをする。加えて、仙舟同盟で監視されていた幻朧も、封印術の中で単身「崩壊」に戦いを挑むことを望んだ。

 

 

 星海における、星神の意思の代弁者、使令と使令に並びたてる実力者たちは派閥の進む先を示した。

 

 そしてヒスイノの主、狂风は。「豊穣」と「存護」の指向性を持った使令レベルの力を持つ、狼は考える。そして彼も選択した。ヒスイノに残存する全ての「方舟」を神々の戦いの場に駆り出す。

 純白の狼の黒い瞳は輝き、燃える意思を宿していた。

 

 

―――――

 

 戦う中で、やがて「崩壊」の星神は、兵をばらまく量を減らした。

 私は、名立たる派閥の実力者たちが次々に、星神の戦う星域へと向かう報告を受け、私ならではの策を取ることにした。方舟の到着と、宇宙船が戦場に辿り着くのを待つ中、私は祈りを捧げていた。

 

 どうか私に更なる力を。「崩壊」の星神を撹乱するための力を。神鬼に通じる力を、内から湧き立たせたまえ。

 

 私が目を瞑ってじっとしていると、智械黑塔と星が近づいて来た。

 

 

「方舟を全部持ち出すって、どういうつもり。また変な事考えてるの?」

「いいや。ただ、気にならないか?今の「崩壊」の星神に、果たして豊穣憎しの意思が残っているのか。」

「確かに気になる…。ルアン・メェイの影響で、星神に興味出てきたからかな。」

 

 

 私は片目を開けて、二人を見る。そして考える。私は、神々の戦いが始まってから「崩壊」と戦う仙舟同盟の将軍に対して、歪な矢が射られたのを報告で知った。だから、嵐の要素はまだ体内に残っている。大量に来ていて埋もれかけた情報だったが、しっかりと目を通した。

 

 欠け月の隠蔽を貫通するほどの「豊穣」の力を使えて、表舞台で戦う者はおそらく私だけだ。「神秘」の覆い隠す力は強いが、それを外し最大出力で「豊穣」の力を放てば、もしかしたら「崩壊」の中に残っている嵐が動き出すかもしれない。

 嵐が動き出せば、方舟に取り付けた拘束装置を順番に使う。そして私も脚のバネを使って跳躍し、方舟に飛び乗っていくのだ。

 この策が成功すれば、使令を倒すよりも早く「崩壊」の星神の内包する虚数エネルギーを削ることが出来る。そして取り除いたエネルギーを雑兵を叩くのにだって使えるだろう。僅かな差さえあれば、他の使令が、実力者たちが化物を必ずや倒す。

 

 私は二人に多くを語らず、再び目を瞑る。智械黑塔は何も言わず、星は、「仮面の愚者」の面々と合流できるかもしれないという旨を耳元で伝えてきた。

 運命の幅が広く、トリッキーかつ強い「愉悦」が参加するならば、更に安定感が増すだろう。

 

 後は策が成功するかだ。私はじっと時を待った。

 

 

 

 そしてついに、私たちは断続的にエネルギーの衝撃が飛ぶ星域へとやってくる。「崩壊」の星神の周囲には、レギオンの大軍勢が漂っている。

 それらは、辿り着いた戦士たちを殺すために襲い掛かっているのが観測できる。同時にヒスイノからの方舟も着々と星域に到着しているという報告を受ける。

 

 私は宇宙船を出るため、ハッチ前へと向かった。

 

 

「星、智械黑塔。ここからは単独行動だ。私は琥珀の壁を張りながら、戦場の支援を行う。星は仮面の愚者たちと、智械黑塔は方舟から降りた騎士たちの誘導を優先的に頼む。」

「…ルアン・メェイの研究は上手くいったでしょ。危険なことしなくても、もういいの。星神が四柱、もしかしたらルアン・メェイも人間に対してだけじゃなくて、討伐に参加するかもしれない。これだけいたら「終焉」も越えられるじゃない。」

「私は、ただヒスイノを作りたかっただけじゃない。民が自由に駆けられる世界を、私の手で作りたいと思っていた。今でも思っている。それを他人任せで指をくわえてみているなど、できはしない。縁が私の力になってくれた、後は私自身がこの討伐に貢献する。」

 

 

 私は二人に思いを話す。幾ら天才との縁があろうと、それは私ではない。どれだけ宇宙船の人員が成長しようと、民が成長しようと、それは私が為したことではない。

 民の成長を見続けるのは好きだ。だがでくの坊になりたくない。力は使わなければ意味がないのだ。

 

 だからこそ、私自らの手で。私のエゴのために戦う。

 

 

「私は傲慢だ。民を見ていたいし、存護したい。それに戦いたい。だが守りは、私一人では為すものじゃない。…これまで終焉を回避するために生きてきた。私は、この星海を駆けた証が欲しい。」

「心配しなくても大丈夫だよ、智械黑塔。…私も行ってくる。またすぐに会おう。」

「…分かった。じゃあ、気をつけて。」

 

 

 私は二人に向かって頷くと、ハッチを開く。そして私は端末を腕に取り付け、方舟が浮遊している場所を表示させる。神秘の壁が内蔵されていると、どこにあるか肉眼では判別できない。私が近づいた瞬間、壁の機能を遮断してもらうことにしている。

 

 私がハッチの方を見るまで、智械黑塔は私の顔をじっと見つめたままであった。そして小型船に乗った星と顔を見合わせた後、私は跳躍した。

 

 

 

 星域には体を揺さぶる衝撃波が入り乱れている。私は近くに待機していた方舟の一つに飛び乗り、搭乗員に避難するように言う。

 

 

「盟主様!…どうかお気をつけて!」

「ありがとう。君も必ず、生きて帰るんだ。」

「は、はい!」

 

 

 パイロットであった狐族の女性は敬礼をした後、脱出用の小型船に乗って星域を脱出していく。後方に敵はいない。私は軽く彼女を見送った後、虚数拘束装置を起動する。

 そして私は方舟の上にのぼり、笑みを浮かべる。嵐、私を追い続けてきた執着深い復讐者。まだ豊穣が憎いか。それとも何千年にも及ぶ戦いさえ忘れたか。それは今から分かる。

 

 

「嵐、私を見てみろ!憎くてたまらない、豊穣だぞ!」

 

 

 私は琥珀の壁を星域に建てて、他の戦士のための防護を固めた後、掌から豊穣の力を限界まで放出する。

 

 次の瞬間、私の目の前が光る。そして虚数拘束装置に、歪んだ光矢が閉じ込められた。ばちばちと虚数エネルギーが私の頭上で音を鳴らす。次の一矢はすぐにこちらを狙っている。私は跳躍し、次の方舟へと飛び乗った。

 策は上手くいった。

 

 私は、神々と戦いながらも歪んだ弓を構える「崩壊」の星神を嘲るように笑う。そして吐き捨てるように、呟いた。

 

 

「さあ…。追いかけ合おうじゃないか…嵐!」

 

 

―――――

 

 星は崩れた惑星近くまで船で飛び、約束をしていた「仮面の愚者」と合流する。星神の方を警戒しながらも、彼女は「愉悦」を教えてくれた友人と再会する。

 

 

「この前ぶり、芦毛ちゃん~!」

「会いたかったよ。それに、仮面も持ってきた。」

「最高ー!」

 

 

 花火が調子はずれの声で喜ぶのを見ながら、傍らにいる仮面の愚者に目をやり、目を大きく開く。

 

 

「ゴミ箱に入ってた人…!あんた、仮面の愚者だったんだ!」

「おや!ヤリーロ-Ⅵでお会いした、お姉さんじゃありませんかー!まさか、身内の方でしたとは…何故、僕を助けてくれなかったんです?」

「あのときは、愚者のこと全く知らなかったんだよね。それにまだ、仮面を花火からもらっただけだから。」

「ご新規の方でしたか!なるほど~この悪い花火に騙されないように、僕、サンポが愚者のことをお話ししてあげましょうか?ええ、その方がいいと思います。」

 

 

 長身、青髪の男性サンポは道化じみた調子で星に言う。星は頤に手を当てると、考える。愚者というのは、全員胡散臭いものなのかと。

 

 

「もう!サンポちゃんは余計なこと、芦毛ちゃんに吹き込まないで~!サンポちゃんは、仮面を取り戻したばっかで結構やる気なの!ふふふ、最強のパブメンバーで遊ぶのも、きっと面白いよ…!」

 

 

 星は、花火の横で浮かんでいるもう一人の仮面の愚者に目を向ける。その女性は口元で指を立て、自己紹介を省いた。

 仮面の愚者は三人。星も一緒に戦う旨を示し、花火は喜ぶ演技をする。

 

 

「それじゃあ、行こっか!雑魚相手でも、花火は派手に行くよー!サンポちゃんも、ほら!芦毛ちゃんに、先輩としていい所見せてね!」

「あはは…花火さんは本当に、人使いが荒いですね…。」

 

 

 星を含めた四人は、星域の中心を見る。そして四人は愚者が乗ってきた宇宙船に乗り込み、戦いを愉しむため中心へと飛んだ。

 

 

 崩壊のレギオンが、愚者の宇宙船を狙う。星は仙舟同盟やファミリーといった強者たちが戦いに来ているのを横目で見ながら、自身の力を発揮する。実体のある幻を生み出し、鉄騎の幻たちをレギオンに向けて飛ばした。

 花火はそれを見てにやにやと笑い、彼女自身も精巧なロボットの幻を作り出し、飛ばす。

 

 

「随分強くなったね、芦毛ちゃん!ねえ、君もやろうよ~!本物だして!」

 

 

 花火のリクエストにより、この広い星域を大小様々なロボットが駆ける。サンポも、船の上でナイフ捌きを披露し、ヴォイドレンジャー擬きを全壊させていく。

 

 

「こうしてると、祭りみたいだね!」

「そう、お祭りだよー!」

 

 

 星は今は存在しない「巡狩」から得た力を振るう、将軍たちを見た。暴風が雑兵を蹴散らしていく。またファミリーは、星が見たことの無いシペの化身を顕現させており、巨大なそれが敵を一網打尽にしている。

 宇宙船の進行方向とは別に、巨大な琥珀色の壁ができた。これは狂风が作ったものだと、星は理解する。

 

 

 粗製乱造であるのに、個体一つ一つに強力なエネルギーが内包されている。だが仮面の愚者の一人は、早くも飽きかけていた。

 

 

「はあ、パターンが無くて単調すぎるね。一気に―――おや?」

 

 

 愚者の宇宙船の上を、列車が通る。星穹列車、この広い宇宙を旅するナナシビトたちのホーム。宇宙船に乗った四人は一様に、面白そうだと笑う。

 星穹列車に積まれた武装が火を吹いた。これより「開拓」が介入する。

 

 

―――――

 

 「豊穣」の星神、薬師に変化が起こる。

 

 戦いの中で、ずっと崩壊を押さえていた薬師は、既に内包する虚数エネルギーを多く使っていた。何故なら、薬師は「生命を育む星神」であり、戦うことが性質に無かったからだ。介入自体は、生命を救おうとした動きからでも、継続して性質とは離れた行動をしていれば、弱っていくのも不思議なことではなかった。

 

 そして薬師は、崩壊から離れかけるとき、ある者を視認した。凡百にしては強い豊穣の力を放ち続ける狼。薬師には長命を望む者は少なくなっており、それ故に唯一「豊穣」を宿したその者にしっかり視線を合わせたのだ。

 

 

 狼は祈り続けていた。力を、皆を救えるほどの力がほしいと。薬師に向かって放たれるその念に、其は答えた。

 

 

 その瞬間、狼の体が閃光に包まれた。欠け月の中にある紅い月が、其の力に呼応したのだ。狼は恭しく薬師へ頭を下げ、今この瞬間から「豊穣」の使令として戦う。万物を救い、終焉を回避することで命を長らえさせるために。

 

 

―――――

 

 私の体が光り輝く。そして胸の奥から呪いのごとき、長命が湧き出でてくるのも感じる。薬師は私のことを確かに見た。そして「崩壊」から離れ、倒れ込むように戦いから離脱したのだ。

 

 

「三度も其は、私に応えてくれた…。この力、もらった恩…最後まで、使って見せよう!」

 

 

 私は豊穣の力を意識的に使うまでもなく、溢れ出る其由来の力をさらに垂れ流し、「崩壊」の星神の注意を引き続ける。余所見をしていて、戦いに勝てると思うな。

 

 「崩壊」の歪な矢が私にぶつかる。だが、異常なまでの生命力で再生し私は嗤う。胸に手を当てる。この欠け月を得てから、私は多くの友を得てきた。今では、守りたいものばかりだ。

 ずっと彼らのことを見ていたい。思い出の中で死した人間ではなく、未来を生きる人々を。

 

 

「欠け月の中から、私の戦いを見ていてくれ…!偉大なる巣父よ!」

 

 

 私の体は膨張し、筋肉を増強する。「崩壊」から更に多くの力を奪う。奪うことが好きなのではない。

 だが血肉沸き立つ戦いは、今私が最もしたいことだ。私はレギオンの大軍勢に単身飛び込んだ。

 

 

 跳躍する私の上を、星穹列車が通り、加えて私の体が更に活力を増す。これは、豊穣の力ではない。彼女の力だ。

 私は星域を見渡し、笑った。戦いの結末は既に定まっている。後は、それを手助けするだけだ。

 

 

―――――

 

 ナナシビトの象徴、星穹列車が現れた。それと同じくらいのタイミングで「命脈」の星神が戦いに参加した。

 巨大な女性、人によってはその面影を知っている其は、塩基を並び描いた。それによって、信じられないことが起こる。

 

 

 遠い昔に殞落したか、姿を隠したはずの星神が三柱。「不朽」の龍、「純美」のイドリラ、そして「開拓」のアキヴィリがその場に顕現したのだ。

 

 イドリラの姿に、ミラーホルダーと純美の騎士団は歓声を上げて、この世における至上の喜びを唱えた。

 「不朽」の龍は、倒れ込んだ薬師を視認した後、「崩壊」に向かって咆哮する。

 

 最後に「開拓」のアキヴィリは。

 

 星穹列車に搭乗し、「崩壊」へと挑むことを宣言した。

 

 

 アキヴィリが現れたことで、その其を知る星神は各々が反応する。人間に対して興味を持たない星神も、星神同士であれば通じあうのだ。

 薬師はアキヴィリの乗る星穹列車に腕を伸ばした後、再び戦いに復帰する。

 

 多くの星神が「崩壊」に立ち向かう。ただ相対する「崩壊」の星神だけが、薬師とアキヴィリに憎悪を撒き散らしていた。

 

 

 

 そして使令たち。仙舟同盟とファミリー以外に、一つの人影が現れる。

 その女性は刀を脇に差した、自滅者。本来存在しないはずの、「虚無」の使令に近しいもの。

 

 彼女は他の運命における使令達が団結して戦う中、一人刀を抜いた。白く染まる髪、紅く染まる手。彼女は抜いた刀で「崩壊」の使令たちを狩っていく。

 

 何れ彼女は虚無に辿り着く。だがそれは、今ではない。

 

 一時思い出した感情のため、共に旅をしたナナシビトから、受け止めてきた想いのため。黄泉、雷電忘川守芽衣は刀を振る。

 

 

―――――

 

 

 私は「崩壊」の使令たちを掴み上げ、増強した体でぶち破る。血肉の大樹と紅狼を召喚し、共に吠えた。

 これこそが、私だ。終焉に縛られず、未来を作り上げる礎となり、そして最後まで戦いを楽しむ狼だ。

 

 

「欠け月…!行くぞ!」

 

 

 私は拳を握り締め、わらわらと増え続ける化け物どもを噛み砕き、爪で裂き、腕力で引きちぎる。

 

 星神同士の戦いがいい方向に進んでいるのを見て、全身を砕く勢いで「月狂い」を発生させる。ただでさえ巨躯であった私の体が、血肉の大樹のごとく巨大になる。それに伴って、私は欠け月を全力で輝かせる。

 

 紅い月を呑み込んだ時から、得た力だ。全身の虚数エネルギーを欠け月に全て取り込ませた後、残り滓で私は一片の琥珀の鉱石を出現させる。私はそれを足場にし、全力で跳んだ。

 

 

 

 欠け月が其から分け与えられた使令の力を全て解き放ち、急速に作られていた「崩壊」の使令を半数以上巻き込んで爆発した。

 

 薄れゆく意識の中、私は何かに包まれた気がした。

 

 私は拳を握る。その握力にこう思う。まだ戦えるじゃないかと。

 

 

 体が硬質になり、一つの結晶となっていく。温かなそれに身を委ねながら、体を其らに向ける。私は吠え、爪を振るった。

 

 

―――――

 

 「開拓」のアキヴィリの似姿は、パムに泣き付かれながらも、ナナシビトの面々と共に「崩壊」の中心を目指す。

 そしてアキヴィリの後ろから、ごく普通の一般人が姿を現した。にやけづらの其は言った。

 

 

「アキヴィリ、アキヴィリじゃないか!私はずっと会いたかった!」

 

 

 アッハは嬉しそうに、だが調子はずれな嘲笑交じりでアキヴィリと手を繋ぐ。アッハの後ろから仮面の愚者がマジックのように現れる。その中には星の姿も混ざっていた。

 星は仮面を付けたまま、二ッと笑う。

 

 

「穹、一緒に倒そう。」

「…ああ!」

 

 

 二柱の其、どちらも人に強く興味を持った星神。「開拓」と「愉悦」が手を組んで、崩壊を打ち倒す。

 愚者たちは面白がりながら、其と共に戦うため列車を離れ、幻を出しながら道中を切り抜ける。

 

 

 貌の無い其は面白おかしく、狂気を伝染させるような笑い声をあげる。

 其は言った。ナヌークの胸の傷は愚者がつけたんだと、もったいぶるように。

 

 アッハは再び、歪な人型となった「崩壊」の星神に一撃を与える。運命に縛られず、愉悦は自由であるからこそ強く、普段はそれを見せないのだ。

 

 愉悦が攻撃した後、列車は金色の幻を複製し、その傷口に突進して一撃を喰らわせる。

 

 

 今だとばかりに星神たちがそれぞれ攻撃を行う。クリフォトは槌を振り下ろし、薬師は血肉の枝で縛り上げる。シペは調和を歌いながら、手で質量を持った楽章を飛ばし、互は均衡を守るために天秤へ「崩壊」を乗せる。

 そしてイドリラは純美の心を信徒たちに見せることで、誓いを強め、龍は純粋な握撃を行う。

 

 弱まった其に、各勢力の実力者が突撃する。仙舟同盟は亡き「巡狩」を遂行し、ファミリーはシペの音律に合わせ化身の武器を振る。

 その中には体から欠け月を生やし、すさまじい巨躯になった白き狼も混ざっていた。

 

 

 

 集まった全ての星神に危険視され、実際に星海を星神ごと滅ぼそうとした「崩壊」の星神は、道半ばで殞落する。

 死と滅びの概念は、「開拓」「不朽」「純美」の三柱を再現した「命脈」の星神が吸収し、万物の繁栄を望む「豊穣」の概念もまた、取り込んでいく。

 薬師は概念の外を出過ぎた故に殞落することになったが、「命脈」の星神に寄り添い、手を重ねるようにして概念を継承した。

 

 

―――――

 

 こうして星海に静寂が戻る。神々の戦いは、一旦の終わりを迎えた。

 

 終焉は回避され、枝が分かたれる前の未来を知る狼は、巨大な体を丸めて眠りにつく。

 

 

 そして狼は、いつか目覚める。大切な人々の未来を知るため。それを見守りたいと願うために。

 

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