かつてヒスイノに集まった三人が取り決めを交わし、その後数多くの惑星が加入して巨大になってきた組織「抗う者」。ヒスイノ、スターピースカンパニー、厄災前衛の三柱が組織の存続を担っている。近年、抗う者の中でカンパニーがパワーバランスを保つために、「戦略投資部」を起用した。そして戦略投資部部長である存護の使令は、彼の部下である「十の石心」の一人を、交渉役として抜擢する。
十の石心は戦略投資部のトップエキスパートであり、呼称の通り十人で構成されている。そして各々が宝石の名を博した基石を所持し、基石に沿ったコードネームを与えられている。
交渉役の女性が持つ基石は、「貸付の翡翠」。ヒスイノに対して言葉遊びのごとき選出だが、戦略投資部部長ダイヤモンドはこれ以上良い人選はないとした。十の石心は入れ替わりが起こるが、この女性は地位を保ち続けているからだ。
大きな飾り帽子を被った女性、ジェイドは、ヒスイノの主に話をつけ、自身の陣地へと招き寄せた。蛇の腹の中に、狼を呑み込めるか。彼女は悠々と構え、白き巨躯がやってくるのを待つ。
――――――
ヤリーロ-Ⅵから離れてしばらく経った。私は宇宙船にて、不定期で送られてくる月御からのメッセージを見ながら休憩を取っていた。飛霄や椒丘のビーコン情報も交換していたため、曜青で生活している知人から近況が聞ける。
飛霄は日に日に成長し、今ではすっかり目元の些細な部分以外師匠と瓜二つになった。彼女の写真を見ると、懐かしさと嬉しさが同時にこみあげてくる。彼女は戦場での功績を認められ、曜青の将軍である月御から将軍の座を継承した。それ故に、ただでさえ高い動体視力が底上げされ、戦闘では無類の強さを誇っているそうだ。
また最近飛霄は、モゼという名の少年を引き取ったようだ。モゼは、第三次豊穣戦争以降に仙舟でできたテロ組織に育てられたという。
薬王秘伝。元仙舟人や仙舟で生きる知人から聞くところによると、数千年前に存在した信仰団体と名を同じくした新興組織だそうだ。仙舟では豊穣の星神を寿瘟禍祖と呼称し、最大の警戒をしく。だが薬王秘伝は外部から来た薬乞いと同じように、薬師を信仰対象としているのだという。
彼らは仙舟における十王司が定めた「不赦十悪」の内、多くの罪を犯しており、詳しくは「魔陰に陥れる」、「機要窃奪」、「盟約の離間」、「兵禍を招く」の四つである。
薬王秘伝の人員は牢獄で口をそろえて言うそうだ。あの戦争以降「巡狩」に疑心を抱いてはいるが、仙舟の民に害をなそうとはしていない。巡狩と豊穣の戦いが減ったのならば、もう一度仙舟全体の在り方を見つめ直すべきだ。自分たちの活動は在り方を考えた結果であり、魔陰の身をコントロールする術を探ることで、仙舟の民が苦しみのない生を送れるようにするのだと。
数多の重罪を犯す薬王秘伝は、仙舟にとっては混乱を齎すテロ組織だ。行いは過激であろうと、薬王秘伝が口から出す「仙舟の未来」については、民全体が考え始めていることだそうだ。
これもまた萌芽なのだろうか。 絶対に「長生に堕とす」「同胞殺し」だけは破らないと誓っているらしい薬王秘伝に対して、私は思った。
休憩を終え、私は一通の連絡を見る。それは、「抗う者」として肩を並べているカンパニーからの招待であり、パーティに友人一同で参加してもらいたいとのことだった。真の目的は無論別である。カンパニーの力の象徴の「十の石心」から一人出し、私との話し合いを行いたいとのことだ。
資金繰りの話か、それとも各派閥が持つ力の話か。豪華な食事会でもてなすならば、必ず含みがあるだろう。私は、こんなとき元カンパニー重役であったクネーテが今もいたら、どれだけ楽に話し合いができただろうと思わずにはいられなかった。
クネーテはヒスイノに移住してから満足するまで己の力量を発揮し、最期に呑み込んだ欠け月を、経営の才がある一人の弟子へと明け渡した。その弟子も別の人間に欠け月を渡したのだろう。数えきれないほどに増えたヒスイノの民から、欠け月の継承記録を遡るのは至難の業だ。
元々長命種でなかった者は、長くても二百年で次世代に継承する傾向がある。人間種は、人の一生は短いとこぼすそうだが、本来の倍の年月を健康に生きられたら、生涯をやり切ったと感じるらしい。
もう世を去った友人を頼ろうとしても、手は差し伸べてもらえない。私は深緑の騎士と白珠たちに声をかけることにした。白露は戦いに向いていないが、白珠や智械黑塔、サマンサは十分に戦い力を持っている。
カンパニーは一枚岩ではない。おびき寄せておいて敵意を向けてくるのであれば、護身が必要になってくるのだ。
サマンサも加えた五人のグループに、カンパニーからの誘いを送る。現在遠くを旅している白珠と白露はすぐに反応してくれ、提案されている日時までには合流する旨をメッセージで送ってくれた。
智械黑塔も珍しく、誘いの内容をしっかり目を通してくれている。横にいるサマンサは何やら検索し始めると、カンパニーの情報網からある写真を表示させた。
「この女性は、ポーンショップヒスイという貸付屋を経営しているようです。どんなものでも質草にでき、対価を払えば叶えられない願いはない――。十の石心という方々は存護の力による特殊な技を持っているのでしょうか。」
「簡単に何かを得るには、何かを捨てなくてはならないのは納得できる。それにカンパニーの上澄みになると、交渉事は得意だろうな。」
「ふーん…。」
智械黑塔は何も話さず、興味を持ったような表情で端末を見続けている。「十の石心」の力を分析しているのだろうと、私は予想した。
サマンサは警戒をしながらも、それはそうとこの食事会で兼ねて行われる、オークションに興味を持っていた。オークションの出展物は様々であるが、信用ポイントの値が高くつけられた動物、鉱石など希少なものであることは共通している。私もまだ訪れたことがない惑星から出土したという代物は、確かに目が奪われる。
サマンサはだんだんと年頃の少女らしく表情を緩ませていき、高揚した声で私に言った。サマンサが見せる端末には、人間種の身長と同じくらい巨大な次元プーマンが映し出されていた。サマンサは、動物には目がない。それが愛らしいものであれば尚更だ。
「人慣れした、巨大プーマン!父さま、この次元プーマンを抱いてみたいです!」
「ここまで大きくなれるものなのだな…。」
このプーマンであれば私も抱えられそうだ。いつもとは打って変わって黄色い声を上げるサマンサに付き合いながら、私は思考を巡らせた。
翡翠の名を冠する十の石心。選出も偶然というわけではないだろう。写真越しであるが、私はその女性の瞳の奥を見て、カンパニーの人間らしさを認めた。
富や望むもののために飢え、渇くのが人間だ。そして、人ならば誰もが持つそれを凝縮した者だけがカンパニーの上澄みになれる。彼女は損得勘定で物を決める、生粋の商売人である。
またしばらく時間が経ち、食事会の日時がやってきた。宇宙船から出れば、すぐにその場所だ。白露と白珠も数日前に私の宇宙船へ合流し、普段以上の活気が船内に溢れる。
「普通だったら入れない高級ホテルですよ!白露、しっかりおめかししていきましょう!」
「こういうところに行くのは初めてじゃ…!うわ!母様、この服寒そうだから、別のはないかのう…。」
白珠は事前に準備していたらしいパーティ用の華美な服を取り出し、白露に着替えを行わせていた。白露は恥ずかしそうにその服を見て、奥の部屋で試着をしているようだ。
智械黑塔は自室から、普段使いの服に近いものを着てきた。黒を基調としており、落ち着いた印象を受ける。外に行くときはいつも被っているベレー帽を置いて、代わりに緑の造花が取り付けられたとんがり帽子を被った。
「こんな装いも用意していたんだな。よく似合うな。」
「これ、ヘルタが被っていた物に似せて作ったの。今も私のお気に入りだし、一つくらい持っておくのもいいかなって。」
自慢げな表情を作った智械黑塔は、帽子のつばを触って言う。やはり智械黑塔はヘルタと同じように自己愛が強い。自己肯定感が高いのは良いことだと、皆が来るまで服装を褒めておく。
サマンサもまた白珠に捕まり、白露の次に試着へと向かった。私も外部の食事会に行くことはあるので、それ用の黒いスーツを着る。少し窮屈だが、破けはしないため問題ない。
着替え終わった白露が私を見上げて、首元を凝視してくる。
「首元がもふっとしてるのじゃ…。」
「そうだろうか。…白露、髪色に合っていて良いドレスを選んでもらったな。」
「もっと背が伸びたら、母様みたいなドレスも似合うかの。」
しばらくすると、白珠とサマンサはどちらもドレスを着てやってきた。私は均等に服装の良さを話すと、皆揃って宇宙船を出た。金色に染まった、いかにも信用ポイントと希少な資材をつぎ込んでいそうなホテルが目の前に見える。
同行を希望した深緑の騎士たちも別の船から合流し、外鎧を外した姿で顔を合わせる。深緑の騎士の中には狼もおり、毛並みはしっかり整えている。彼らは肉を食べることを待ち望んでいた。
携帯用武具は装備済みだが、取り越し苦労で終わることが一番いい。人員が全て集まったのを確認してから、私は身を屈めて中に入り、受付の人間に対して確認を願った。
資産家や、カンパニーの中でもP40以上が集まる場。上の階級へあがるために努力を重ねてきたのであろう、壮年の男女たちが話し合っているのを横目に大広間へ入る。そして私用に用意してくれたらしい席へ腰を沈めた。
「父さま、警戒は絶えず行います。白珠は弓を持っていませんし、智械黑塔は丸腰ですから、非常時には私が。」
「ここで潰そうとするような下手な動きはしないはずだ。それに、折角の衣装が煤けては気分も下がるだろう。騎士たちが対応する。安心して、オークションを見ているといい。」
「は、はい。ありがとうございます…。」
「そうだ、信用ポイントが足りなければ私の分を使ってくれ。」
私はサマンサに小遣いを渡しておく。最近は防具を使わないため、出ていくものがないのだ。研究に使える物が流れるか分からないが、智械黑塔にも渡した。
白露は場に呑まれているようだが、白珠が相手をしてくれている。
「請求が怖いから貰っておく。…それより十の石心の力を、しっかり確認して。」
「ああ。私も気になるところだからな。」
すっと手を信用ポイントに伸ばして取っていった智械黑塔は、私の目を見て念押しする。時が来れば、話し相手の彼女の真価が分かる。
広間の明かりが正面だけになり、カンパニー社員が主体となって催しを始める。私は考えを巡らせながら、招待状を送った女性が来るのを待つ。過ぎる時間が遅いように感じる。
数々の催しが終わり、オークションが始まる。客の視線が正面に釘付けになるのと同時に、後ろから琥珀の仮面を付けた社員に話しかけられる。
「狂风様、ジェイド様がお呼びです。」
「ありがとう。案内をよろしく頼む。」
私は今回の交渉事では、下手に出ないことを決めた。頷くと四人と騎士たちを置いて立ち上がり、ジェスチャーですぐ戻ることを伝える。どれだけ長くなるかは、彼女の話次第だ。
豪華絢爛なロビーに戻り、そこから一階の客室へと案内される。カンパニー社員が緊張感を持ちながら扉をノックすると、女性の了承する声が聞こえた。私は開かれた扉をくぐり、対面する。
「ポーンショップヒスイ臨時店にようこそ、狂风さん。まずは目的を果たして――その後に店を開きましょう。」
「お招きありがとう。レディ・ヒスイ。ああ、そうしていただこう。同じ、翡翠の名を冠する者として、良い話し合いができることを望んでいる。」
紫色を基調とした衣装を身に纏った婦人、ジェイドは口元を少し上げた後、私を席へと促した。
私は大き目の椅子に腰を下ろすと、まずここに呼んだわけを聞く。
「レディ・ヒスイ。私は抗う者の今後を決めるという、漠然とした理由で呼ばれたのだが、持ち株の話か――それとも軍事力の話か。」
「早々に事を進める方なのね。私を通してカンパニーがあなたと話をしたがっているのは、そう。軍事力の話。」
ジェイドは話し始める。今私が統治している惑星には、造物エンジンを基点とした巨大ロボットに、神秘の壁を作る技術、帝弓の光矢がそれぞれ大量に保管されている。また訓練され装備も高品質な兵士たちもだ。特に光矢はカンパニーにとって厄介なのだろう。撃てば惑星に損傷を与えられる代物だ。加工はすれど、大戦の時にしか其の矢は用いられない。戦力が目減りしないのだから。
「加えて――惑星と謳っているけれど、あなたたちは十八個の星系を保持しているわ。それぞれの星系で産業を特化させて。」
「バランスを取りたいならば、あなた達はどう動く?規模を縮小させれば、星海の脅威から惑星を守ることに難が生じるようになる。私としてはそちら側が更に、抗う者へリソースを割いてくれることを望んでいるが。」
星海を支配しているといっても過言ではないほどに勢力圏を広げたカンパニーであっても、軍事力を一組織に集中させれば、その分空きが出る。抗う者の均衡を保つことと同じくらい、カンパニー内の勢力分配も大事なのだ。
だがそれは彼女の一存で決められる話ではない。カンパニー内に私の考えを持っていくことが目的だろうからだ。
ジェイドは目を細めると、一言話す。ピピシ人の彼女のことを。
「あなたの星にかつて、こういう名前の、戦略投資部の高級幹部がいた。間違いはない?」
「驚いたな。貴女が彼女を知っているとは。私と彼女は友人だ。亡くなっても変わらずな。」
「…それならば、その彼女から聞いたことはあるかしら。公然の秘密…市場開拓部と戦略投資部は睨み合っているの。」
「それで、市場開拓部に対して私たちにどう動けというのだ。」
続けてジェイドは話す。オスワルド・シュナイダー、市場開拓部を躍進する存護の狂信者。彼は元ナナシビトであり、危険な手段を以て「開拓」を推し進めているらしい。そしてジェイドが掴んだ情報では、彼は今後、市場開拓部を悩ませる大きな問題に着手していくという。
常日頃から過激な行動で存護を示している人間が、大きな問題を解決する際に惨状を作り出さない訳がない。戦略投資部の部長ダイヤモンドは彼を警戒し、カンパニーの信用に傷が付くことも恐れている。
「相応の報酬は、カンパニーが払うわ。オスワルド・シュナイダーが動くとき…一つの案件でもいいわ。依頼として、深緑の騎士を動かしてほしいの。」
「…なるほど。市場開拓部はカンパニーの勢力圏拡大の入口。止めることが出来ないというわけだ。」
「ええ、そう。」
「それに――私たちに依頼をすることで、カンパニーとの協力関係の増強並びに、疑似的な主従関係を作り出す。シンプルだが良い案だ。」
私は小さく頷く。ジェイドは薄く笑い、感情の読めない瞳を私に向け続けている。疑似的な主従関係と協力関係の増強によって、ヒスイノの手綱を引こうというのだろう。
ヒスイノについて、私は考える。カンパニーに一時的にでも従属するのであれば、民は自由に星海を渡ることが出来ないだろうか。私はそうは思わない。
ある惑星を例に挙げる。荒れ果てた惑星、富裕層だけが逃げ延び、貧困層は移住するための資金などなく苦しい生活を強いられていた。そこにカンパニーがやってきて、その惑星の環境は元に戻り、飢えに苦しむことも無くなった。だが見返りに惑星の住民は全員カンパニー社員になることを約束させられた。
それで貧困にあえいでいた民は損をしたか。全くしておらず、寧ろ信用ポイントという価値を働くことで得られるようになったのだから得しかしていない。
カンパニーは巨大な組織であり、協力関係を築き上げられることにデメリットなどない。一枚岩でない故にカンパニーに敵対してしまった者がいたとしても、秘密裏に支援すればいいだけだ。カンパニー以外にもヒスイノは多くと相互関係を作っているし、清濁併せ吞むことこそカンパニーの特徴だからである。
それに私は考えている。この提案を呑むことで、あの時彼女を所属させていた戦略投資部に恩を返せるのだと。ピピシ人の彼女、クネーテがいてヒスイノを信用してくれたから私の世界は一つ広がり、ここまでの繁栄を作り上げることができたのだ。
私は口を開けると、大きく頷いてから言った。
「断る理由などない。その依頼、呑みましょう。」
私は手を差し出し、ジェイドの前に持ってきた。私の指とジェイドの掌で握手を行う。こころなしかジェイドの表情に冷たさが無くなっているようにも思えた。
そこからは依頼の詳細についてと、抗う者の資金繰りについてを話し合う。緊迫した空気は次第にほどけ、会談を行った目的は果たされた。
最後に私は、ポーンショップヒスイの営業を受けた。智械黑塔に言われたが、私が簡単に望もうとしているものがない。しばらく考えて、一つ思いつく。
「あなたが質に出せる価値は沢山ある。でも何も欲しくないなら、お開きでも構わないわ。あなたも連れのお嬢さん方と時間を過ごしたいでしょう?」
「いや、思いついた…簡単なものでいいだろうか。」
「ええ。あなたは何を望むのかしら。」
私は指を一本立てて言う。それは今回のオークションについてだ。
「どうしても競り落としたい動物がいてな。それに買うかは分からないが、もう一人の連れの分も。当たりは付けている。それらを必ず競り落とせるようにしたい。…相場の三倍を担保に入れるのはどうだろう。契約は成立しないか?」
「そうね…カンパニーに入る資産を考えれば、十分足りているわ。」
ジェイドは脚を組み、じっと私の首元を見た後ポーンショップの契約書を取り出した。私は屈んで細いペンを手の先で摘み、サインを書いていく。
すると不思議な色合いの字が浮かび上がり、契約が成立したことを示した。私は信用ポイントを払い、契約外のポイントも取り出す。ジェイドを語る記事に、孤児院への寄付を行っているとあったからだ。未来が無限に広がる子どもに投資しているならば、口ではなんと言おうと確かな善性を持っている。
「この分は何かしら?」
「あなたにとっては少ない額かもしれないが、これは孤児院への寄付に使ってくれると嬉しい。では席に戻るとしよう。レディ、穏やかな対応をありがとう。これからも困ったことがあれば対応しよう。戦略投資部部長にもそう伝えておいてくれ。」
「…ええ。これからもカンパニーの協力者であってくれることを願っているわ。」
私は再び身を屈めると、小さく会釈してジェイドの元を去った。
私は席に戻り、巨大なプーマンを抱き上げたサマンサの深い笑みと、智械黑塔に報告した際の満足げな表情を見ることが出来た。「貸付の翡翠」の力は本物だ。オークションは全て苛烈であったが、横取りされることなく相場以下ですんなりと競り落とすことが出来た。智械黑塔が求めていた研究材料も併せてだ。
白露と白珠は食事を楽しんでいたようで、白露に至ってはドレスが盛り上がるほどに腹が膨れていた。騎士達もなにも問題が無かったため、途中から食事を楽しめていた。
それから私たちはホテルを出て、宇宙船でしばらく同じ時間を過ごしてから、再び別の場所へと旅立った。ジェイドからの報告を待ち、オスワルド・シュナイダーの行いを考える日々だ。
ナナシビトだった者には、白珠のように善性の人間もいれば、オスワルドのように狂信のままに開拓を行う者もいるということを私は知った。だが私は信じている。開拓の道が未知に溢れ、人々を明るく照らす運命であることを。