「くぅっ……!!」
背後に一を庇いながら、ディメイアとアビスマータの二体の猛攻を必死に受け止める創。幾ら死ぬことも無く傷が癒えるからといっても、痛覚は当たり前のようにある為、既に意識は朦朧とし始めていた。
それでもなお、無銘剣虚無を握る手は力強く振るわれる。身体から立ち上る炎は悪を焼き尽くさんと燃え上がる。
「本当にしつこいですね、貴女」
「それは……こっちの……セリフ……です……」
はぁ……はぁ……と、肩で息をしつつ、アビスマータを仮面の下で睨みつける創。しかし、既に視界には靄がかかり始めていた。
(このままでは……不味いですね)
危機感を感じる創。すると唐突に頭の中に声が響いた。
『いきなりすまない。声が聞こえるか、白城創』
(ああ……遂におかしくなっちゃいましたか。私の頭)
『いや、君の頭は正常だよ』
(なら、これは幻聴でしょうか?)
『幻聴でもないよ。会話が成り立つ時点でおかしく思ってよ』
(……確かに)
創はそこでその声が気の所為でも何でもないことに気がついた。
(貴方は……?)
『私の事は今はいい。時間がないから私の言う通りにやってくれ』
(……私に何をさせる気で?)
『警戒するのも分かる。だけど、仮面ライダーキュビズムを助けるには必要な事なんだ』
(四方田さんを……!?)
『ああ』
頭に響く声は力強く答える。それに、創は漸く声を信用した。
(……分かりました。私は何をしたら?)
『簡単な事だ。無銘剣虚無の力を自分の体を通ってドライバーに嵌まったワンダーライドブックに流し込むようにイメージしながら、全身全霊でフェニックス・ワンダーを発動するんだ!』
頭の声がそう言った途端、創は無銘剣虚無を左手に持ち替え、仮面の下で目を閉じた。
「……?一体何を……」
訝しげにアビスマータが首を傾げると、カッと目を見開いた創は力強くエターナルフェニックスワンダーライドブックのページを押し込んだ。
『エターナルフェニックス!』
すると、ワンダーライドブックから赤く燃え盛る不死鳥が顕現し、アビスマータとディメイアを吹き飛ばし、そのまま旋回して仰向けに倒れ伏す一の腰の、壊れたキュビズムドライバーへ吸い込まれるようにして消えた。
「一体何を……!?」
「さあ……?何でしょう?」
アビスマータの苛立ったような詰問に、飄々とした態度で創はそう返した。
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Side:一
気が付くと、真っ白な空間に俺が一人で立っていた。
「ここは一体……?」
ここが何処かヒントを得ようとキョロキョロと見回すが、真っ白で何もない。
「本当にここはどこなんだよ……」
ヒントを探すのは諦め、中心にあった真っ白な台に腰掛ける。思っていたより硬くて冷たい。どうやら石製っぽい。この台。
「ていうか、俺、何してたっけ?」
意識を失う前、何をしていたか思い出そうとする。そして……
「……っ!?そうだ!!俺はアビスマータとディメイアにやられて……っ!」
そして立ち上がり勢いよく辺りを見渡す。
「ここは病院って訳じゃない。……なら、俺は死んだのか……!?」
『いや、まだ死んでないぞ』
「!?」
勢い良く振り返ると、そこには先程まで居なかったはずの鳥がいた。
全身が真っ赤で、まるで燃えているかのような鳥。それはまさに、伝承で語られるような……
「……不死鳥」
『ほう、一目で分かるとは、なかなかやりおる』
愉快そうに笑う不死鳥。そして、俺を鋭い目で睥睨すると、
「それで死んでないってどういう……」
『言葉通りの意味だ。しかし、ここで目覚めても、また苦しく長い戦いに逆戻り。このまま転生して次の生に向かった方が得策かもしれんぞ?』
「いや、逃げないよ」
不死鳥の質問に即答すると、不死鳥は驚いた様子で俺を見る。
『……本当に良いのか?これから何度苦痛を味わうか分からぬのだぞ?』
「そんなもん、覚悟はとうの昔に出来てるよ。仮面ライダーを名乗ると決めたその時から」
『お前は……』
「それに、大切なものを守るためなんだ。どんなに痛くても、どんなに苦しくても、どんなに辛くても立ち上がるよ。人間は、それが出来る生き物なんだから」
そう言うと、不死鳥はふっと笑みをこぼす。
『お前はとんだ馬鹿だな。大馬鹿だ』
「何だと!?」
『だからこそ、あれ程迄に多くの者たちが心から惹かれるのだろうよ』
「それって……」
聞き返そうとすると、不死鳥はそれを無視して、両翼をバサリと開く。そして、
『さあ、四方田一。仮面ライダーを名乗る若造よ!精々足掻け、精々苦しめ!その先に貴様の望んだ結末が無かったとしても!多くの者達から後ろ指を指されようとも!……きっと、お前と共に歩もうとしてくれる仲間はずっと側に居てくれるさ』
「それはもう……知ってるよ」
そこで、俺の身体が次第に薄れ始めた。
「お、おい……!!これって……!!」
『お前の現実での身体が意識を取り戻そうとしてるんだ。少しは落ち着け』
呆れた様子の不死鳥は、最後に表情を緩め、こう言った。
『……四方田一、仮面ライダーキュビズムよ。この私にここまで言わせ、力をくれてやるんだ。無様は晒すなよ』
「結局、あんたは一体……」
『私はエターナルフェニックス。小さな本の中で眠る神獣さ』
そこで、俺の意識は現実の世界へと戻ったのだった。