Side:海歌
最近、一人の男の子と親交ができた。とは言っても、友達とまでは行かなく、よく話をする知人程度のものだ。
出先で遭遇したら少し話をする程度の繋がりで、学校では絡むことのない人。
それが、クラスメイトの四方田君と私の関係だ。
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「……四方田君、妹さん居たの?」
「突然何……?」
今度はラーメン屋で偶然遭遇した四方田くんとカウンター席で横並びになりながら会話をする。が、突然妹さんの話題を出した私に四方田君は困惑した顔を見せる。
「いや、この前まほu……ごほんっ!」
「大丈夫貴田さん!?」
「ごめん。ちょっと噎せただけ」
ついうっかり、私が魔法少女であることをバラしそうになったので、咄嗟に誤魔化す。危ない危ない。
「そう……?」
「うん。そう。……で、妹さんについてなんだけど」
怪訝な表情をする四方田君に返事をしながら、話を逸らす。
「まあ、確かに居るよ。……最近はあまり会話とかしてないけど」
「思春期ってやつじゃない?」
「絶賛、その思春期真っ只中な貴方が言う?」
「私が思春期だとしたら四方田君もでしょ」
呆れ顔の四方田君にそう言い返したところで「豚骨醤油ラーメン、ニンニクなしチャーシュー海苔味玉マシ野菜マシマシアブラなしカラメ一丁!」と、私の目の前に置かれた。
「相変わらずここのラーメンは美味しいけど、注文が難解よね」
「あの店名じゃねぇ……」
私と四方田君は同時に脳裏に表の看板にデカデカと達筆なフォントで書かれた店名、家郎軒を思い出す。
「二郎系と家系の両方を取り入れようとした結果、何故かスターバックスによってしまったラーメン屋……」
「けど、何故か家郎系というジャンルが新しく生まれたのはいまだに解せないわ……」
その時、今度は四方田君の前にラーメンが置かれた。そのラーメンは赤く、そして巨大だった。
「麻婆ラーメン、ニンニクマシチャーシューマシマシ海苔甘味玉野菜マシマシもやしマシアブラマシカラメ、XO醤柚子胡椒山葵入り一丁」
「あ、どうも」
平然と店員にお礼を言うと、四方田君は割り箸を取った。
「それじゃあ、いただきましょうか!」
「待って。色々ツッコミを入れたいから待って。後、流れるように取ったそのラー油と七味唐辛子の瓶も置いて」
「え?」
不思議そうにこちらを見る四方田君。いや、不思議に思っているのは私の方なんだけど。
「まず、麻婆ラーメンって何?そんなカオスな具材で大丈夫?味分かるの?ってか、その量食べきれるの?辛味効きすぎてない?」
「おおう……。凄い勢いで聞いてきますね」
四方田君は「もう何度もこれで食べてるので問題ないです。あと、麻婆ラーメンは裏メニューです」と答えると、ラー油と七味唐辛子をパッパッ……どころかドバドバとかけると、美味しそうに啜り始める。
(……今度、麻婆ラーメンを食べてみようかしら)
私はそれを横目で見ながら、私の目の前のラーメンに手を付けた。
数日後、麻婆ラーメンを注文した海歌ちゃんは、その辛さに悶絶しつつも気合いで食べ、「もう注文しない!」と心に決めました。