Side:海歌
「……居なくなってる」
四方田君を寝かせていた和室へと行くと、そこは既に蛻の殻となっていた。
その事に、何処かホッとした私が居て、苦しくなった。
(私はどうしたら良かったんだろう。何が、したいんだろう……)
思わずその場でうずくまってしまいながら、グルグルと同じ様なことを考えてばかりいると、声を掛けられた。
「海歌……?」
「……お祖母ちゃん」
タオルが掛けられた、水の入った洗面器を持ったお祖母ちゃんが心配そうに私を見ていた。
「どうしたの、部屋の前で蹲って。……あら、一君がいなくなっとるとね」
「……うん」
「……何があったの、海歌」
「実は……」
部屋の中に入り、洗面器を置いたお祖母ちゃんが真面目な顔で振り返った。
私は四方田君が仮面ライダーであることを隠したまま、お祖母ちゃんに話した。四方田君が私を守ってくれた事。その時、彼が魔法の違法使用に該当してしまう様な事をしてしまった事。私は捕まえて連行すべきだが、四方田君の場合、連行したら彼が碌な目に遭わないであろう事。そして、魔法少女である事と新しく出来た大事な友人。どちらを選ぶべきだったか分からなくなってしまった事。
黙って聞いていてくれたお祖母ちゃんは、私が話し終えるとゆっくり近寄ってきて、目の前で座り、私の肩に触れた。
「……海歌。前に魔法少女になる言った時、あんたなんて言ってた?」
「……え?」
「魔法少女になる事を、私が止めようとした時、あんた言ってたじゃない。『私みたいに、家族を魔物のせい亡くしてしまう人を出来る限り減らしたい』って。あんたが魔法少女になったのは、魔物を殺して復讐するため?正義とやらを掲げるため?」
「ううん……私が魔法少女になったのは」
お祖母ちゃんの言葉で、私が魔法少女として在る為の、一番大切なものを思い出した。私は悲しむ人を無くしたかったから、魔法少女になったんだ。
あの時、私を魔物から助けてくれた、ホーリーメイデン先輩みたいな、みんなを守れる魔法少女に。
初心を思い出し、立ち上がった私は変身用デバイスを取り出しパネルをタップする。
「Releases the ice element!」
「マジカルメタモルフォーゼ!ノブレスセイレーン!」
デバイスから放出された、雪の結晶のような形の魔力結晶体が私の体を包み、魔法衣を形作る。
高濃度の魔力に影響され、私の髪と瞳も一時的に青く染まる。
「……お祖母ちゃん、ありがとう。私、行くね」
「気を付けて行きなさいな。ちゃんと帰ってきなさいな」
「……うんっ!」
お祖母ちゃんに笑顔で返事をし、和室を抜けて縁側から外へと飛び出す。四方田君は仮面ライダーだ。だから……
「……やっぱり」
デバイスを確認すると、そこまで離れていない町中に魔物の反応があった。四方田君はきっとここに居る。そう確信して、私は飛翔した。