Side:???
……長い、夢を見ていた。
『華恋……逃げろぉ……っ!!』
『貴女だけは、生きて……っ!!』
誰かが私に何かを言った。肉の焼ける臭いがする。
『あんれぇ?この娘、魔法少女じゃない?』
『丁度いい!!実験がてら、使い勝手のいい駒にしよう!!』
誰かが私に何かを言った。見下ろしてくる視線に純然な悪意を感じた。
『いやあっ!!助けてっ!!』
『なんでこんな事するの!?お姉ちゃんは魔法少女じゃないの!?』
『嫌だ……死にたくない……っ!!』
『ウワァァァァァァァァァァ!!』
誰かが私に何かを言った。少しずつ、何かが削れていく気がした。
『この……裏切り者!!』
『くたばれ……外道め……っ!!』
『悪魔に魂を売ったか……このクズッ!!』
『ヤメローシニタクナーイ』
誰かが私に何かを言った。少しずつ、何かが壊れていく音がした。
『私、■■■■■■■■■■■■■■!』
■■が■■に何かを言った。……もう、何も思い出せなかった。
『僕は優しいからさ、真実を思い出させてあげるよ』
……長い悪夢を見ていた。とても長い悪夢を……。
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何かの物音がきっかけとなり、意識が浮上する。目を開けて横に視線をずらすと、私を見てカタカタと揺れる四角い何かが居た。
「……君は?」
掠れた声が私の口から聞こえた。寝起きだからだろうか。うまく思考がまとまんない。
「ばっ……、バットゥ……」
四角い何かは小さく鳴いた。一体何なのだろうか、あの生き物は。
布団の中でぼんやりと見つめていると、近寄ってくる足跡が聞こえ、襖が開く。
部屋に入ってきたのは、何処か、見覚えのある女の子だった。
「貴女は……」
「先輩、目が覚めたんですね」
優しげに目を細める彼女。確か名前は……
「たかだ、うみか……」
「……覚えててくれたんですね、華恋先輩」
優しげな微笑みを浮かべたまま、ゆっくりと布団に横たわる私の元へと近付いてきた。
「先輩。貴女の身に何が起こったか覚えていますか?」
「何を……、っ!?」
海歌ちゃんの言葉がトリガーとなり記憶を取り戻す。
目の前で家ごとお父さんとお母さんが焼き殺された事。
何故か人類を憎いとしか思えなかった事。
「うっ、お゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛っ!!」
「ちょっ、先輩!?」
思わず胃からせり上がってきた中身を吐き出してしまう。海歌ちゃんは驚きながらも、慌ただしく私の吐瀉物を片付けようと動き出した。
いまだに込み上がる嘔吐感を堪えながら、その後ろ姿を眺めた。
(ああ、もう私は綺麗じゃないんだなぁ……)
そんな事をぼんやりと考えながら。