幻想郷。それは忘れられた者たちが行き着く妖怪たちの理想郷。某現人神曰く「常識に囚われてはいけない」場所らしい。
そんな幻想郷に、俺は飛ばされてしまったようだった。
「まじかよ……」
呆然と立ち尽くしてしまうが、それが間違いだった。
「ウルガアッ!!」
「うわっ!?」
咄嗟に躱せはしたものの、先ほどの狼……おそらく妖怪の攻撃を受け、右腕を切り裂かれる。
:たっぷり血が出てるよー!?:大丈夫かよイッチ!?
歌って踊れる大図書館:ちょっと待ちなさい、今から飛ぶわ!
スレへ俺の身を案じるレスが投下される。しかし、残念ながら今の俺には反応する余裕が無い。
「グルルル……ッ」「バウッフ!!」「ワ゛ウ゛ウ゛ウ゛……」「ガウガウッ!!」「ガルルッ!!」
続々と木々の奥から出てくる妖怪達。変身をしようとキュービットを取り出そうとした瞬間、背後から虹色の綺麗な弾幕が飛んできて妖怪達を殲滅した。
「……っえ?」
「大丈夫でしたか〜?」
パッ!と振り向くと、そこには中華服を身に纏った赤髪の少女が居た。
あくびを噛み締めつつ、彼女は俺へと近づいてくる。ただ歩いているだけだが、隙が一切見えない。かなりの手練だ。
:おいー!?
:いや、紅魔館が近くにあるなら来る可能性はあったけどさ……
:まさか、紅美鈴が登場するなんて……
「紅 美鈴……?」
「私の名前は紅 美鈴ですよ!?」
レスの名前を思わず口に出して読んでしまうと、鋭いツッコミが飛んできた。なるほど、中国語か……。
「……というか、なんで私のこと知ってるんですか。貴方」
一人納得していると、美鈴さんに訝しげに見られていた。……と言うか、不審者のように睨まれていた。
「あーそれは……」
「もしや……、お嬢様たちを狙った刺客!?」
「違いますよ!?」
バッと構えを取る美鈴さんに弁明するが、聞く耳を持って貰えない。
「怪しいですね……。すみませんけど寝てもらいますよ」
「それ寝るんじゃなくて気絶って言いませんかね……?」
ジリジリと後ずさる俺。変身して抵抗しようかと、取り出していたキュービットを改めて握りしめつつ見合っていると、
パァアアアーッ!!
「ふぁっ!?」
「っ!?なんですか!!」
丁度俺と美鈴さんの間に当たる場所に、唐突に光を放ちながら空間に穴のようなものが生成された。
そして、その中から銀髪の少女が姿を現した。
青いワンピースの上に黒いローブと魔女のような帽子を被った彼女は、俺の前に立ち、美鈴から庇うかのように背を向けた。
「マキア様。何をしていらっしゃるので……?」
「何をって……。ただ、友人を迎えに来ただけよ」
「友人……?」
美鈴と少女……マキアの会話をしているのを見ていて、もしや……という予感が俺の中で芽生えた。
名無しのイッチ:もしかして……大図書館ネキ?
スレを経由して質問をする。すると、
「正解」
歌って踊れる大図書館ネキ:正解
スレと肉声、同時に聞こえたそれは、目の前の彼女がこれまでに何度も世話になった大図書館ネキである事をありありと理解させられた。