【二巻発売】海外のエロ動画サイトで俺だけ無修正ダンジョン配信 ~無双してスパチャNo.1になったら世界中の女性パフォーマーから罵詈雑言がDMで届きました~ 作:フーツラ
経団連副会長から叱責を受けた翌日。八塚舞は理事長室の執務机に向かい、祈るような表情でノートPCのディスプレイを見つめていた。
ブラウザで開かれているのは大手動画配信サイト。『ソマリアダンジョン日本調査団』というアカウントのライブ配信待機画面だ。
「ソマリアダンジョンに到着した」という報告をハヤトから受け、国内へのアピール用の配信を指示したのだ。
じりじりとした時間が過ぎる。
「まだなの……」と呟いた途端、待機画面が切り替わり、ライブ配信が始まった。
【A-generation】の遥がカメラに向かって話し始める。
『皆さん! 遂にソマリアダンジョンに到着しました!! 調査団のメンバーはキャンプの設営中です』
二十名近い調査団のメンバーがシャベルで整地を行っていた。カメラがぐるりと周囲を見回すと、所狭しとテントが張られている。各国の調査団のものだろう。国旗も掲げられていた。チャット欄がコメントで埋め尽くされる。
<おお!!ソマリアダンジョンきた――!!>
<待ってました……!!>
<わくわくするぜ!!>
『あ、あそこ見てください!』
遥は丸太と竹で作られたシェルターを指さす。
『ブッシュクラフトでシェルター作っていますね! 本格的! どこの国の調査団でしょうか。後でご挨拶したいと思います』
<めっちゃ本格的!>
<あーいうのもいいね>
<サバイバルのプロの仕業>
カメラは再び遥をフレームに収める。その横にはハヤトが立っていた。
『調査団リーダーのハヤトさんです。今後はどのようにソマリアダンジョンの調査を進めていくのでしょうか?』
遥が紹介すると、ハヤトは笑顔を作って溌剌とした声で話し始めた。
『ソマリアダンジョンの調査は長期化することが予想されるので、先ずはしっかりと生活基盤を固めます! その後は一階層ずつ丁寧に攻略法を確立していく予定です』
『なるほど。先ずは地固めということですね!』
<ハヤト!! 待ってました!!>
<ハヤトがいると安心だわ>
<焦らずじっくり行こう>
その後、遥とハヤトは当たり障りのない会話を繰り返す。八塚はその様子をほっとした表情でディスプレイを眺めていた。
『これから、リーダーのハヤトさんが各国の調査団に挨拶をして回るそうです。撮影許可は得ていますので、一緒についていこうと思います』
ハヤトと遥は国旗の掲げられた各国のキャンプ地を回り始めた。
イギリス、ドイツ、フランスの調査団のリーダーとハヤトが握手を交わし、お互いの健闘を祈る。カメラには中国やロシアの国旗も映っていたが、ハヤトがキャンプを訪ねることはなかった。撮影許可が下りなかったのだろう。
そしてポールに星条旗がはためくキャンプ地が画面に映った。他国が軍用のテントを張るなか、アメリカ調査団だけは違う。モダンなデザインのコンテナハウスが堂々と並んでいた。
<えっ、アメリカやばない?>
<ここだけ風景がちがう>
<どうなってるの?>
『ハヤトさん。これは、どういうことなんでしょう?』
遥が尋ねると、ハヤトは得意げに答えた。
『アメリカ調査団のリーダー、ガストン・フリードマンの【空間魔法】でコンテナハウスを運んだんだろうね。亜空間を収納箱にする【アイテムボックス】という魔法を使えば、これぐらい朝飯前だよ』
『さすがはS級冒険者といったところですね……。凄いです……』
ハヤトは堂々とした足取りでアメリカのキャンプ地へと踏み込み、あるコンテナハウスの扉をノックした。中から返事があり、迷彩服に身を包んだスキンヘッドの白人が出てくる。ガストン・フリードマンだ。
『おぉ、日本の調査団の方々ですね。どうぞ、中に入ってください』
ガストンが流暢な日本語で案内すると、一同はコンテナハウスに入っていく。カメラが部屋の中をぐるりと映すと、画面の一か所に突然、モザイクが掛かった。モザイクの隣には金髪の日本人女性もいる。
「えっ? 裸の男?」
八塚は思わず声を上げる。視聴者からの指摘も入る。
<今一瞬、裸のおっさんが映らなかった?>
<一応、パンツは穿いてた気がするけど……>
<モザイクオッサンの隣の女の子、めっちゃ可愛いな>
画面の中ではガストンがハヤトと遥に応接セットを勧めていた。
ローテーブルを挟み、ハヤトとガストンが対峙する。ガストンの背後にはモザイクの掛かった謎の男と金髪の若い女が映り込んでいる。
『日本の調査団のリーダーを務めています。ハヤトです』
『アメリカの調査団のリーダーをやってるガストンだ。よろしく』
二人はがっしりと握手をすると、それぞれソファーに腰を下ろした。ハヤトがモザイクの男達に視線を送ると、ガストンが口を開いた。
『彼らは俺の友人だ。気にしないでくれ』
『……はい』
一瞬ハヤトは頬を赤らめ、熱に浮かされたような表情になる。
『どうかしたか?』
『……いえ、なんでもありません』
グッと耐えるような仕草をした後、ハヤトはいつも通りの顔つきに戻った。そしてガストンとソマリアダンジョンについての簡単な情報交換を始める。同盟国同士、表面上は協力体制を敷いている体のようだ。
<駄目だ。モザイクの男が気になって全然会話が頭に入ってこない>
<なんでパンツ一丁の男がガストンの部屋にいるの! どうなってるの!>
<二人はどういう関係!?>
コメントが荒れてきたタイミングでチャット欄自体が閉じられた。それ以降、視聴者の声が表に出ることはない。
五分ほど話した後、ハヤトと遥はガストンのコンテナハウスを後にした。そしてライブ配信自体も終了する。
ノートPCの蓋をバタンと閉め、八塚は息を吐く。
「はぁ……。なんとか恰好はついたわね。しかし、あのモザイクの男。もしや……」
八塚の脳裏に浮かんだ名前は「諸越」だった。