【二巻発売】海外のエロ動画サイトで俺だけ無修正ダンジョン配信 ~無双してスパチャNo.1になったら世界中の女性パフォーマーから罵詈雑言がDMで届きました~ 作:フーツラ
アカネの第三階層への挑戦に付き合ったあと、俺は日の丸が掲げられたキャンプ地へ足を踏み入れた。
若い男の冒険者がテントから出てきて俺を睨みつける。
「なんの用だ? 変態」
「ふん。いきなり変態呼ばわりとは失礼だな」
「パンツ一丁で歩き回る男を変態と呼ばずして、何を変態と呼ぶのか」
男は口元を歪め、嘲るように笑う。
「喧嘩をしに来たわけじゃない」
「じゃあ、何の用だ? 我々は忙しいんだ。冒険者の資格も持たない素人に費やす時間はないのだが?」
やたら挑発的だな。ダンジョンアタックの失敗で気が立っているようだ。
「怪我人が出たと聞いた」
「だから何だ? お前に治せるというのか?」
「俺は治せないが、ダンジョン産のエクスポーションであれば、大体の怪我は治せる」
男の表情が変わる。
「そんな伝説級のアイテムを持っているというのか?」
「隠し階層の宝箱ではハズレ扱いのアイテムだ。珍しいものではない」
「……ついてこい」
男はくるりと踵を返すと歩き出す。その先には大きな天幕がある。怪我人が集められているのだろう。
「例のモザイク男が訪ねてきました。エクスポーションを持っているそうです」
天幕の中に向かって男が声を掛けると、「入れ」と返事があった。
男は入口の幕を捲って中に入り、俺もそれに続く。
中にはコットが五つ並べられていて、その上に怪我人が寝かされていた。
若い男が四人。若い女が一人。若い女の怪我が特に酷い。左腕が欠損していて、意識も戻っていない。ハイオークのハンマーを直に受けたのかもしれない。奴等に掛かれば、人間の身体を破壊することなんて容易い。
女に治癒魔法をかけていた男――たしか名前はハヤトと言ったか――が顔を上げてこちらを睨む。
「エクスポーションに餌にして中に入り、失敗した俺達を笑いものにする算段か?」
「随分と捻くれているな。通常階層でイレギュラーに遭って死者が出なかったんだ。笑いものにする要素なんてないだろ?」
「ふん」
俺はテントの中に進み、背負っていたバックパックを下す。中から緩衝材に包まれた瓶を十本、取り出した。エクスポーションだ。
「これを傷口にたらせば、欠損すら治る。内臓をやられている場合は飲めば効果がある」
そう言ってエクスポーションをハヤトに差し出した。ハヤトは立ち上がるが、まだ受け取ろうとはしない。
「一体、何が狙いだ? こんなことをしても、はく奪された冒険者の資格は戻らないぞ?」
「そんなものはどうでもいい。俺にはあまり必要のないエクスポーションが手元にあったからくれてやる。ってだけだ。つまらない意地で仲間の怪我を治す機会を失うつもりか?」
「くっ……」
ようやくハヤトはエクスポーションを受け取る。しかし、表情は晴れないまま。まだ納得していないようだ。
「さっさと動け。欠損してから時間が経てば、エクスポーションでも効果が弱くなる」
「……わかった」
ハヤトはコットに寝かされた女の脇に座り、左腕にまかれた医療用テープを剥がす。ぐちゃぐちゃに潰された二の腕の断面が露わになった。治癒魔法で血は止まっているが、このままだと冒険者を続けることは難しいだろう。
エクスポーションの蓋を開けると、瓶全体が輝き始めた。ハヤトはそれを慎重に女の腕に垂らす。強い光が女の腕全体を包む――。
「生えた……!!」
声を上げたのは最初に俺を「変態」と呼んだ若い男だった。小走りで女のところにやってきて、はしゃぎ始める。
「ハヤトさん! 遥ちゃんは内臓も損傷しています! はやく飲ませましょう!」
「わかっている」
ハヤトはちらりと俺の顔を見てから、右腕で遥の上半身を起こし、左手でエクスポーションの瓶を口元へもっていく。そして飲ませた。
今度は身体全体が薄っすらと輝き始める。遥の瞼が動いた。やがて目を開く。
「ハヤトさん……」
遥はハヤトを見つめる。
「遥ちゃん! 腕、治ったよ! 見てみな!」
男の声に遥はハッとなり、左腕を上げて不思議そうに眺める。
「腕が戻っている……」
「そこのモザイク男がエクスポーションをくれたんだ!」
遥は顔を上げ、初めて俺の存在に気が付いたという様子で瞳を大きく見開いた。
「あなたが……?」
「同郷のよしみだ」
コットから降り、遥はよろけながらも俺の前に立った。
「ありがとうございます……」
「礼には及ばない。それより、他の怪我人にも早くエクスポーションを使ってやれ」
ハヤトと若い男は手分けして怪我人にエクサポーシャンをたらしたり、飲ませたらしていく。
さっきまで静かだった天幕の中が急に活気付き始めた。
動けるようになった怪我人達はフラフラとしながらも立ち上がり、俺を囲む。
「……諸越さんだよな? 助かった」
「ありがとうございます」
「このご恩は忘れません」
「本当に、本当にありがとうございます」
四人の口から礼の言葉が紡がれる。
「大した話じゃない。重要なのはダンジョンアタックを続けることだ。苦境を乗り越えた数だけ、冒険者は強くなる」
四人は曖昧な表情を浮かべる。まだ、ダンジョンに入る気分にはならないのだろう。
その背後ではハヤトが奥歯を噛み締め、じっと俺を睨みつけている。説教を垂れるオッサンを邪魔臭く感じているのかもしれない。
「俺はダンジョンに行く。じゃあな」
俺は背中に視線を受けながら、天幕を後にした。
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深夜の日本調査団キャンプ。野生動物避けのモスキート音だけが響く中、一つのテントにだけ灯がついていた。
光量を抑えたLEDランタンが照らすのは、ハヤトの横顔だった。
テントの中で胡座をかいて座り、じっと一点を見つめている。ハヤトの視線の先にあるのは、奇妙な紋様の描かれたスキルオーブだった。
「俺が引っ張っていくんだ……」
自分に言い聞かせるように、ハヤトは呟く。
「俺がやるんだ……」
ハヤトの額に汗が浮かび始め、呼吸が荒くなる。
長く息を吐いた後、ハヤトはスキルオーブを手を伸ばした。手を震わせながら掴み、スキルオーブを額に当てる。
途端、強い光がテントの中を埋め尽くす。それが収まった頃には、既にハヤトの手からスキルオーブは消えていた。
LEDランタンが照らすのは、不敵な笑みを浮かべたハヤトの横顔だった。