【二巻発売】海外のエロ動画サイトで俺だけ無修正ダンジョン配信 ~無双してスパチャNo.1になったら世界中の女性パフォーマーから罵詈雑言がDMで届きました~ 作:フーツラ
ハヤトに異変が起きた翌日。明け方からテントの外に気配を感じた。
身体を起こし、身構える。
「俺だ」
ガストンの声だ。テントの入り口を開けると、険しい顔が現れる。
「ちょっと話がある。俺のコンテナハウスへ来てくれ」
わざわざコンテナハウスで……? 周囲に聞かれたくないネタなのだろう。
「わかった。準備をするからちょっと待ってくれ」
俺は外出用のブリーフに穿き替え、バックパックを背負って外に出る。ガストンは無言で先導し、アメリカのキャンプ地へと入った。
「入ってくれ」
開かれたドアからコンテナハウスの中に入る。相変わらず贅沢な作りだ。なんでも揃ってやがる。
バックパックを床に置き、勝手に応接ソファーに腰を下ろすと、ガストンも対面に座った。じっと俺の顔を見つめる。
「ハヤトの件だがマズイことになりそうだ。様々な企業から捕獲依頼がアメリカの冒険者協会へ来ている……」
「それで、依頼は受けたのか?」
ガストンは顔を顰め、口角泡を飛ばす。
「まさか! そんな糞みたいな依頼、ウチの上だって突っぱねるに決まっているだろ! 世界冒険者協会からも通達は出す。しかし――」
「他の国の冒険者協会がどう動くかは分からない」
「その通りだ。モンスターの遺伝子解析に熱心に取り組んでいる国は多い。特にロシアや中国は熱心だ。奴等がこの機会を逃すとは思えない。ハヤトは人間からモンスターへ変異し生存している世界で唯一の事例だ」
確かに、その道の奴等からすればハヤトは恰好の研究対象なのかもしれない。
「各国のソマリアダンジョンの攻略状況は?」
「今日、アメリカはオークキングに挑むつもりだ。ロシアや中国の調査団も同じような進捗だろう」
「つまり、アンデッド階層でハヤトを巡る争いが起きると?」
「その通りだ。そこで先行するモロコシに世界冒険者協会の理事の一人として頼みがある」
ガストンが瞳に力を込めた。
「他国より先にハヤトを確保しろ。か?」
「そうだ。冒険者がダンジョンで死ぬのはいい。しかし、冒険者が企業のオモチャになるのだけは許せない! ハヤトの細胞一つだって渡しはしない!!」
拳を硬く握ってガストンは主張する。
「……実は他の奴からも『ハヤトを頼む』と言われているんだ。ガストンに頼まれなくても、動くつもりだった」
「本当か……!?」
「あぁ本当だ。しかし、せっかくだから交換条件としよう。実は、鑑定を頼みたいアイテムがあるんだ。たしかアメリカの調査団には【鑑定】スキル持ちがいただろ?」
俺はそう言って床に置いたバックパックからナイロンバッグを取り出す。中には拳一つ分ほどの大きさの黒い心臓のようなものが入っている。
「それは昨日の?」
「ああ。ドラゴンゾンビのドロップアイテムだ」
「わかった。手配しよう」
ガストンは立ち上がり、【鑑定】スキル持ちを呼びに行った。俺は不気味に拍動を繰り返す黒い心臓をローテーブルに置き、ハヤトの捕獲について考え始めた。
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鑑定を終えてコンテナハウスを出ると、空はすっかり明るくなっていた。どのキャンプでも冒険者達がダンジョンに向かう準備をしていて、騒々しい。
今まで各国調査団の動きなんて気にしていなかったが、流石にこの状況では気になる。特に、名前の上がったロシアと中国の調査団は。
他国から離れた場所にキャンプ地を構えているロシアと中国の国旗を眺めていると、ダンジョンに向かう冒険者達と鉢合った。
中国の調査団だ。
一人の男が集団から飛び出し、愛想のいい笑顔を向けながら寄ってきた。
「モロコシーサン! 初めてまして。私は魏と申します。ずっと挨拶したかった」
少し変だが日本語だ。魏はニコニコしながら、右手を出す。
「諸越だ」
こちらも右手を出して握手をする。
「昨日のモロコシーサンの戦い観てましたよう! 凄い戦い。私、熱くなてしまった。一生懸命応援した。その後ちょと興奮してアカネーサンのパコリングアーカイブ動画ちょっと見ちゃた。本当は全部見た。454545。中国国内ではあのサイト見られないから、今すごくラッキー」
「……そうか」
うーん。完全にアカネとセットだと思われているな……。
「モロコシーサンもアカネーサンも中国来たら英雄なれるよ! これ本当ぅ! 私、いつでも紹介するから」
アカネがなんの英雄になるというのか……。
「有り難い申し出だが、今はソマリアダンジョンに集中したい。中国に行くとしてもずっと先の話だな」
「それはそう。でも、中国はいつでも二人ウェルカム。これ忘れないで」
魏は最後まで笑顔を崩さないまま、仲間達のところへ戻っていった。
#
アメリカの調査団が第五階層のフロアボスに挑んでいる頃、俺は第六階層からハヤトの捜索を開始した。
ハヤトが今どの階層にいるかは分からない以上、下の階層から虱潰しにするしかない。勿論それでもすれ違う可能性はあるが、【ネイキッド】のリソースを探知に全振りすればその恐れは低いだろう。
いつもは発見したモンスターは必ず殲滅するスタイルだが、今回だけ戦闘は最低限。避けられる敵は避け、ダンジョンを隈なく巡ってハヤトを見つけることがミッションとなる。
デコイ代わりのドローンカメラが先行し、それに反応するように現れたのは一メートル程の巨大な髑髏に蜘蛛のような脚が生えたモンスターだった。それが無数に連結して、ムカデのようになって進んでくる。ソマリアダンジョンでしか見られない厄介な奴だ。
普通なら全てを砕くしかない。しかし今回、俺の手にはアイスソードがある。
スムースに脚を動かし地面を這うように近寄ってくる髑髏ムカデに向けてアイスソードを構えた。そして、ギリギリまで引き付け一気に魔力を込める――。
「破ッ……!!」
超低温の冷気の帯が一直線に吹き出し、髑髏ムカデを次々に凍らせていく。二度、三度とアイスソードを振るえば、長大な列が全て停止した。倒したわけではないが、時間は稼げる。挟撃に遭う前に、先に進んでしまおう。
アイスソードを肩に担ぎ、急いで髑髏ムカデの脇をすり抜ける。ドローンカメラが全速力で付いてきた。いつもなら視聴者コメントの読み上げがあって賑やかだが、流石に今回は配信できない。他国に俺の動きを知らせるわけにはいかないからだ。
一人無言で黙々と走り続ける。第六階層は髑髏ムカデさえ躱してしまえば、基本的にモンスターは出現しない。どんな物音も逃さないように耳に神経を集中させ、脳内のマップを頼りに進む。
「……この階じゃないか……」
隅から隅まで四時間ほど探し回ったが、髑髏ムカデ以外で動くものは見かけなかった。ハヤトは第七階層へ行ってしまったのかもしれない。
「次へ行くか」
俺は動き出した髑髏ムカデを再び氷漬けにしつつ、第七階層への階段に向かった。
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深夜まで第七階層を探索した後、俺はダンジョンを出て自分のテントまで歩いていた。
身体が怠く、少し目が霞む。
普段はモンスターとトラップを気にすればいいが、今回はそれにハヤトの捜索が加わっている。ずっと過度に集中していたせいで、かなり疲れてるようだ。
静まり返ったキャンプ地。
アカネが自分のシェルターの前で焚火をしていた。その上では木の杭で体を貫かれたモリイノシシが炙られている。
近くまで行くと、アカネが立ち上がってモリイノシシを指さした。
「これ、凄いっしょ! 全部アカネが一人でやったの! モリイノシシを仕留めて、血抜きして、皮剥いで、内臓出して! めちゃくちゃ主婦適正高くない……!?」
「主婦はそんなことしない」
「キィィィ……!!」とアカネは怒ってみせる。
「諸越にはモリイノシシの金玉食べさせてあげないからね!」
アカネはモリイノシシの睾丸にハマっている。実際、どの部位が一番美味いかと問われれば、睾丸はかなり上位に入る。ただし、新鮮であれば。
まな板代わりの切り株の上でアカネは睾丸をスライスし、脂身と一緒にフライパンに乗せる。勿論、俺のフライパンだ。
「諸越、ちょっとモリニシとって」
モリニシとはアウトドア用の万能スパイスのことだ。二十種類以上のスパイスや調味料がブレンドされており、これ一本あれば何でも美味しく食べられる。勿論、俺のだ。
地面に置かれたモリニシをアカネに渡すと、スライス睾丸にパッパッと振りかけ、フライパンを焚火の上に置いた。
脂身が溶け、食欲をそそる香りが周囲に立ち込める。
匂いに釣られたのか、暗闇から足音がした。焚火がその身を照らす。遥だった。
「諸越さん。どうでした……?」
「ハヤト」とは口には出さない。俺がハヤトの行方を追っていることを遥は知っているが、他言は無用だと念を押している。どこまで効果があるかは不明だが、なるべく俺の動きを知るものは少ない方がいい。
「今日は見つからなかった。また明日探す」
「地域限定レアポケモンの話?」
「いや、ポケモンじゃなくてダンジョンのモンスターだ。レアなのは間違いないが」
アカネにはちょっと探し物があるから、しばらくダンジョンアタックは付き合えない。と伝えてある。アカネの身体能力はかなり向上しているし、【魅了】があるので無茶をしなければソマリアでも一人で大丈夫だ。
「うん! いい感じ! 遥ちゃん座って! 一緒に食べよう!」
焚火からフライパンをおろし、切り株の上に乗せる。そしてアカネは地面に胡坐をかいて座り、遥を誘った。
「えっ、いいんですか?」
「もちろん! あっ、諸越はモリイノシシの肉を適当に食べていいよ」
有難い申し出だ。正直、今から食事の準備をする気力はなかった。バックパックからモーラナイフを取り出し、モリイノシシの丸焼きから身を削いで口に入れる。
「おいしい……!!」
フライパンの中身を食べた遥が驚きの声を上げた。
「そうでしょ! 私の大好物なの!」とアカネは得意げだ。
「これ、なんのお肉なんですか?」
「金玉だよ!」
「えっ……!!」
アカネの回答に驚き、遥は俺の股間を凝視した。
「もう一つ残ってるから、遠慮せず食べていいよ!」
「食べられません!!」
やはり遥は俺の股間を見ている。こいつ、勘違いしてないか?
「遥。違うぞ? それはモリイノシシの睾丸だ」
「えっ!? あっ……そうですよね! 私、びっくりしちゃいました」
アカネは遥の勘違いにゲラゲラ笑い、地面をバンバン叩く。
「いくらアカネちゃんでも人間の金玉は食べないよ! 嚙んだことはあるけど!」
「噛むなよ」
「だって、お願いされたんだもん! あれは確か政治家の――」
「やめとけ」
一体、どんな性遍歴をしているんだ、アカネは。暴露配信でもやったら大変なことになるぞ……。
その後、アカネは「精が付いた! 一緒に夜のパコニックに行こう!」と遥を誘ったがすげなく断られ、結局一人で男漁りに出かけた。
俺はたらふくモリイノシシの肉を食べ、テントに入りすぐに眠りについた。明日の第八階層に備えて。