【二巻発売】海外のエロ動画サイトで俺だけ無修正ダンジョン配信 ~無双してスパチャNo.1になったら世界中の女性パフォーマーから罵詈雑言がDMで届きました~ 作:フーツラ
第八階層に現れるのはスペクター。固体としての体を持たず、単純な物理攻撃が一切効かない面倒なモンスターだ。一時的に体を消すこともでき、気が付いたら背後からマジックドレインを仕掛けてくる。
それが一度に五体以上現れるのだから普通はたまらない。全て倒していたら到底一日では第八階層の探索なんて終わらないだろう。しかし、スペクターにはある特性があることに俺は気が付いた。
一体が人間に取り憑いている間、他のスペクターは攻撃をしてこないのだ。
きっとスペクターは高貴な人間が亡霊化したモンスターとしてダンジョンに生み出されているのだろう。とにかく礼儀が正しいというか、他のスペクターを尊重するのだ。
現在、俺の背中にはスペクターが取り憑き、じわじわと魔力を吸い上げている。マジックドレインは発動した瞬間にガッツリ魔力を奪い、それ以降はゆっくりと吸い上げる。
俺はスペクターを振り解くことをせず、そのまま第八階層の探索を続けているのだ。
行儀のいいスペクター達は俺の後ろでマジックドレイン待ちの列をなしている。たぶん、五十体を超えているだろう。
魔力が少ない者であれば一瞬で気を失い、今度はエナジードレインを仕掛けられるだろうが、俺の場合は大丈夫。【ネイキッド】による魔力回復量の方が上回っている。はっきり言って第一階層よりも楽勝である。しかし――。
「いないなぁ……」
ハヤトは見つからない。彼がどの程度までモンスター化したかは不明だが、ダンジョンの魔素を吸収できるようになっているなら、食料はなしで行動出来るだろう。しかし、彼はソマリアダンジョン生まれではない。
かつての研究者によって、あるダンジョンで発生したモンスターを別のダンジョンに放つとどうなるか? という実験が行われたことがあった。結果は侵入者としてモンスターに襲われたそうだ。そして、死体は煙になることはなく、そのまま残ったとか。
つまり、ハヤトは俺と同じようにモンスターと戦いながら先に進んでいる。
身体能力でなんとかなるとすれば、第七階層までだ。第八階層は膨大な魔力か特殊な移動系の能力がないと一人では抜けられない。
それにマップもかなり複雑だ。スマホを破壊してマッピングアプリを持たないハヤトが感覚だけで抜けられるだろうか……。
「この階にいると思ったんだがなぁ……」
「ウウゥゥゥゥ」
俺に取り憑いたスペクターが相棒のように答える。もう外は深夜だろう。
マジックドレイン待ちの行列を引き連れたまま、俺は転移の間へと戻りダンジョンから出た。もしあの後、第八階層に訪れた冒険者がいたら転移の間の外にずらりと並ぶスペクターに度肝を抜かれたことだろう。
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まだ暗いうちから起き、第九階層を深夜まで丁寧に探索したが、結局ハヤトは見つからなかった。同時に複数体発生するヴァンパイアに苦戦し、何度もキャストオフして全裸でピンチを潜り抜けたが成果なし。
そして疲れ果て、今はテントで横になっている。
ハヤトがこの先に向かっているのか? というとかなり疑問だ。俺や各国の調査団はダンジョンの攻略や新しい発見を目指して先へと探索を進める。
しかし、すでにハヤトには目的がないように思える。期待に応えたくてダンジョンに臨んでいた筈だが、今のハヤトは一人。彼を応援する者はいない。ダンジョンアタックを続ける原動力がない。
力を求めるだけの怪物になっている可能性もあるが、それならばどこかで息絶えているだろう。理性の残っていないハヤトが抜けられるほど、ソマリアダンジョンは甘くない。
辿りつけたとしても第十階層まで。あの巨大なドラゴンゾンビを単体でハヤトが倒せるとは思えない。やつはオークキングの王冠を持っていないだろうし……。
もしかすると、ハヤトはダンジョンの中にいない? いや、それはない筈だ。これだけ人目があるキャンプ地を全く目撃されずに抜けたとは考えられない。
「ふぅ……」
自問自答を繰り返すが、考えがまとまらない。俺はLEDランタンをオフにして目を瞑った。
明日、第十階層のボス部屋を探索して何も見つからなければ考え方を変える必要がありそうだ。
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結局、第十階層にもハヤトの姿はなかった。ドラゴンゾンビの毒に溶かされ、骨だけになってないかと血眼で探したが、何もない。ただひたすらに、疲れただけだった。
夜、夕食を取った後にアメリカのキャンプ地へと向かう。ガストンのコンテナハウスには灯りがついていた。もう戻ってきているらしい。
ノックをして声を掛けると「入ってくれ」と返ってきた。遠慮なく押し入る。
「随分と疲れた顔をしているな、モロコシ」
「それはお互い様だ」
ガストンは応接セットのソファーに座り、マグカップでコーヒーを飲んでいた。香ばしい匂いが少しだけ疲れを癒す。
どっかとガストンの正面に座り、じっと顔を見る。
「ハヤトは見つからないか?」
「あぁ。第十階層の隅々まで探したが、亡骸もふくめて見つからない」
ガストンはゆっくりとコーヒーを啜り、短く息を吐いた。
「俺達アメリカの調査団は第七階層まで探索を進めているが、ハヤトに関する手がかりは得ていない」
「そうか……。ガストンの見立てで、ハヤトが一人で第十階層を抜けられると思うか?」
難しい顔をしてから、ガストンは答える。
「動画を見た限りだと厳しいだろうな。俺達が知らない能力があれば別だが、ドラゴンゾンビの飽和攻撃を単独で抜けられるとは思えない」
俺と同じ見解か。
「となると、どこかで見落としがあるのか……」
「今までのダンジョンの常識を捨てて、臨む必要があるのかもしれない……」
二人して唸る。
「そういえばロシアや中国の動きはどうだ?」
「やつらも第七階層の探索中だ。明らかにダンジョン攻略よりもハヤトの行方を追うような動きをしている。同じタイミングでダンジョンに入るから気を遣って仕方がないよ」
奴らもまだハヤトを見つけていないと……。
「わかった。参考になったよ」
「こちらから依頼しておいて、大した力になれなくて済まない」
ソファから立ち上がり、コンテナハウスを後にした。
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考え事をしながら自分のテントに戻っていると、丁度対面からアカネが歩いてきた。どうやらダンジョンに潜っていたらしく、マントを羽織り、腰にエストックをつけている。
俺を見つけると手を振り、疲れを感じさせない足取りで駆けてきた。
「諸越……!! 今日、世紀の大発見があったの……!!」
胸の前で拳を握り、アカネは上目遣いで大見得を切る。
「なんだ?」
「今日、第四階層に潜ったんだけどね……」
「それで、どうした?」
「なかったの……」
アカネは勿体ぶる。
「何がなかった?」
「トロールの股間に、何もなかったの……!! 学会がひっくり返る事実よ!」
「俺がひっくり返りそうだ」
そもそもなんの学会だ? という話もある。
「大発見ってのはそのことか?」
「そうよ! あとは帰りにすり抜けられる壁を見つけたぐらい」
うん? 今、なんて言った?
「アカネ。ちょっと来てくれ」
アカネの手を取り、アメリカの調査団のキャンプ地に引き返す。
「わっ!? 何!? 急にアカネちゃんの魅力に気が付いちゃった? やるのはいいけど配信の準備だけさせて……!!」
「ちょっと黙ってくれ」
わーわー騒ぐアカネを引き摺るようにして歩き、再びガストンのコンテナハウスのに辿り着く。一応ノックはするが、返事がある前に中に押し入った。
ガストンはさっきと同じような恰好で、まだコーヒーを飲んでいる。
「おい、モロコシ。ここは連れ込み宿じゃないぞ?」
「よくそんな言葉を知っているな……。それより、このコンテナハウスは当然、防諜の装備はあるんだよな?」
「当然だ」とガストンは答え、俺とアカネにソファーを勧める。
「アカネ。さっきの第四階層のすり抜ける壁の話だが、配信中に見つけたのか?」
「えっ? 何? そんな真剣な顔をして」
「すまないが、非常に重要な話なんだ」
俺の権幕に、アカネも真面目な顔になった。
「配信をやめた後の話だよ。なんとなーく壁の一部を触ったら、カチッと音がして。変だな~ってその辺の壁を触ったら、手がすり抜けたの。変なの~って思いながら壁の中に入ったら、何もない部屋があった」
ガストンと顔を見合わせる。
「隠し部屋だな……。まさか、低層にあるなんて」
「【調整】が第一階層から働いている時点で想定すべきだったな……。俺達のミスだ。やつが先に進んでないとすれば、隠し部屋か隠し階層にいる可能性が高い」
二人で顔を顰める。
「どーいうこと?」とアカネが首を傾げた。
「一般のダンジョンにも隠し部屋や隠し階層は存在する。しかしそれはダンジョン最深部のボス部屋の中にあるというのが常識なんだ」
「へー。そうなんだ。ソマリアダンジョンはちょっと変わってるってこと?」
「あぁ。そうだ。俺たちは先入観に囚われて、大きな見落としをしていた。これは、大発見だ」
アカネはぽかんとしている。自覚がないらしい。
「隠し部屋と隠し階層って何が違うの?」
「基本的には広さだけだ。隠し階層は普通の階層よりも広大であることが多い」
「へー」とアカネ。あまり興味はなさそうだ。
「モロコシ。明日からどうする? 合同で第五階層から隠し部屋を探すか?」
ガストンの提案に俺は首を振った。
「いや、第七階層まで進んでいるアメリカの調査団が第五階層まで戻るのはまずい。明らかに怪しい。ガストン達は第七階層以降の隠し部屋を探してくれ。第五階層と第六階層は俺とアカネで調査した方が自然だ」
「……分かった。第五、第六階層はモロコシに任せる」
少し、ガストンは悔しそうな顔をする。隠し部屋のアイテムを取られると思ったのだろう。
「というわけで、アカネ。明日から俺と一緒にダンジョンに潜ってくれ。しばらく配信は出来ないが、その埋め合わせは必ずする」
「埋め合わせね……。分かった! いいよ!!」
アカネの承諾を取り付け、夜の会合は解散となった。
#
数日ぶりにアカネを連れてのダンジョンアタック。フレイムタンでトロールを切り捨てながら、さっさと第四階層を抜け、第五階層へ。二度目のオークキング戦だ。
どうやって戦おうかと思ったが、時間が惜しい。俺は最初からオークキングの王冠を使い、王と王の戦いを演じた。もし、ライブ配信をしていたら大いに盛り上がっただろう。俺が王冠をかぶったときのオークキングの顔は忘れられない。
そして本命の隠し部屋、隠し階層探しだ。
東京ドーム一個分はあるだろうボス部屋の壁をじっと見つめながら歩く。歩く。歩く。
しかし、何も見つからない。何か特徴はないのだろうか?
「アカネ。どうやって隠し部屋のスイッチを見つけたんだ?」
「なんかいい感じの突起があって、つい癖で触っちゃったんだよね~。クリクリって弄ったら、カチッって音が鳴って」
突起があれば触る。女性パフォーマーの恐るべき習性だ。
「全く俺には見分けがつかないが……」
「あっ……!!」
突然アカネが声を上げる。
「これこれ。このフォルム」とアカネは壁の一部を指さす。全く分からない。
「この突起をね~クリクリするの」とアカネは壁の一部を摩る。全く分からない。
カチリ。
しかし、反応はあった。アカネが周囲の壁を触ると、すっと手が中に入る。
「その先が空洞になっているのか?」
「うん」
アカネは右腕を付け根まで突っ込む。本当に隠し通路だ。その先にあるのは隠し部屋か。隠し階層か。
「ここからは俺が先頭に立つ。アカネは俺から離れて付いてきてくれ」
「うん」
俺はフレイムタンを構えながら、慎重に壁の中へと入る。通路は二メートル四方ぐらいだろうか。自分とアカネの足音だけが響く。
五十メートルぐらい歩いたところで、扉が見えてきた。
一歩進むたびに喉が渇き、唾を飲み込む。どうやら緊張しているらしい。
ついに、扉の前に立つ。戦いに備えてバックパックを下ろし、アカネに渡す。
右手でフレイムタンを構えながら、左手でゆっくりとドアノブを回した。音もなく、開く。
中はがらんとした空間だった。どうやら立方体で一辺は十五メートルといったところ。一番奥の壁際に宝箱がある。いわゆるよくある、隠し部屋だ。しかし、一つ違うところがある。
「モ、ロ、コ、シ」
宝箱に凭れ掛かるようにして寝ていた男が目を覚まし、俺の名前を呼んだ。男の頭には捻じれた角が二本生えている。以前より、大分伸びているようだ。
「お目覚めか?」
遂に見つけた。ハヤトを。