【二巻発売】海外のエロ動画サイトで俺だけ無修正ダンジョン配信 ~無双してスパチャNo.1になったら世界中の女性パフォーマーから罵詈雑言がDMで届きました~ 作:フーツラ
八塚は目覚まし時計のアラームが鳴るよりも早く瞼を開き、慌てた様子でベッドから降りた。パジャマ姿のままリビングへと向かい、滑り込むようにローテーブルの前に座る。
そして据え置かれたノートPCの蓋を開いた。滑らかなタイピングでロック画面を解除してブラウザを立ち上げ、アクセスするのは『ExtremeChat』。
八塚のホーム画面にお気に入り登録されているアカウントは一つだけ。「HAYATO」だ。
残念なことに、ハヤトはオフラインだった。しかし、それは当然のことだ。現在は日本時間午前九時。ソマリアは現地時間、深夜午前三時だ。いくら攻略に熱心だといっても、そんな時間からダンジョンアタックするわけがない。
八塚はハヤトのアーカイブ動画のキャストオフシーンを見て気分を盛り上げると、立ち上がる。そのままキッチンへと向かい、朝食の準備を始めた。
食パンをトースターにセットし、目玉焼きを焼き始める。白身が色付いたところで黄身にパラりと塩を振った。塩が熱で溶け、マーブル模様のようになる。
フライパンの火を止めると、冷蔵庫からミニトマトとレタスを取り出し、丸皿の半分に盛り付けた。もう半分は目玉焼きのスペースだろう。
目玉焼きも丸皿に盛り付け、マグカップに牛乳を注いでいると食パンが焼き上がった。もう一枚の丸皿に乗せ、バターをたっぷりと塗る。食欲をそそる香りがキッチンに漂った。
朝食セットをダイニングテーブルに移すと、八塚はアントチェアに座って食事を始めた。
理事長時代とは全く違う、ゆったりとした朝の時間。
全て食べ終えた頃には八塚の顔はしっかり目覚めていて、何でも出来そうに見えた。
「よーし。片付け、掃除、洗濯」
自分に言い聞かせるように発し、八塚は行動を開始する。
キッチンで食器をちゃっちゃと洗い、寝室に行って着替えると、今度は洗面所で洗濯機を回す。そして、歯を磨きながらちらりと壁掛け時計を見る。
まだ、午前十時。ソマリアは午前四時。当然、ハヤトのダンジョン配信は始まらないだろう。時間の進みをもどかしく思いながら歯磨きを終え、八塚はコードレス掃除機に手を伸ばした。
玄関から取りこぼしがないように、丁寧にヘッドをフローリングに滑らせる。なるべく時間が掛かるように丁寧に丁寧に。
掃除機を仕舞い、洗濯物を干し、ノートPCの画面を確認する。まだ、ハヤトのアカウントはオンラインにならない。もしやと「諸越大徳」や「さぶ越」、「Akane_a.k.a_doinran」のアカウントもチェックするが、やはり全てオフラインのまま。まだ、時間が早いらしい。
仕方なく、買ったまま一年間ローテーブルに置きっぱなしだったエッセイ集に手を伸ばし、ペラペラとページを捲り始める。
小一時間ほど文庫本に視線を落としていると、突然ノートPCのモニターにポップアップが上がった。『ソマリアダンジョン日本調査団がライブ配信を開始しました』と書かれてある。日本の調査団がライブ配信をするのは久しぶりのことだ。
八塚は無意識のうちにポップをクリックして大手動画配信サイトにアクセスしていた。
モニターに映し出されたのは黒髪をセンターパートにした若い男だった。
「御厨くん……」
顔と名前は知っているが、八塚にとってはそれほど関わりのないA級冒険者だった。御厨は米沢の派閥だったからだ。
『皆さん、はじめまして! 新しく日本の調査団のリーダーに任命された御厨です! 今日から心機一転、新しいメンバーでソマリアダンジョンの攻略を再開していくのでよろしく!』
カメラは引いて御厨以外のメンバーも映す。御厨と同じような長身の若い男が二人が立っていた。御厨を含む米沢派閥のA級冒険者三人でダンジョンアタックするらしい。
『では早速、ダンジョンアタックを開始します! これからお見せするのは冒険者の新しい戦闘スタイルです!』
そう言って、御厨達はダンジョンの入り口へと入っていく。三人は鎧こそ着ているが、手には何も武器を持っていない。
「どうやって戦うつもり……?」
魔法メインで戦うつもりだろうか? 全ての敵を一撃で仕留めることが出来るのなら手ぶらで進むことも可能だろう。しかし、御厨達が挑むのはソマリアダンジョンだ。そんなに簡単にいくとは思えない。
八塚の考えを無視するように、御厨達は自信を持った足取りで第一階層を進んでいく。
<あっ、配信してる>
<新しいメンバーだ>
<三人ともイケメン! モデルみたい!>
<みんなスタイルお化けなんだけど……!!>
徐々に接続する視聴者も増え、チャット欄にはコメントが流れ始めた。あまり長身の男性を好まない八塚は視聴者の意見に眉を顰める。
<あっ、いつもの豚のモンスター来たよ!>
<何も武器持ってないじゃん! どうするの?>
<魔法じゃない?>
三体のハイオークがハンマーを振り上げ、御厨達に迫る。三人は足を止め、前方に手を突き出した。そして――。
『【テイム】』
低い声が三つ重なる。と同時にハイオークは動きをピタリと止めた。ハンマーは何を砕くでもない。
『腕を下ろせ』
御厨が命じると、先頭のハイオークはハンマーをだらりと下げた。カメラが御厨の顔に寄る。
『今、俺達が使ったスキルは【テイム】。モンスターを味方に付けるレアスキルです』
<え、魔法でなくてテイム?>
<ハイオーク、三体ともテイムされたってこと?>
<凄い! だから武器を持っていなかったんだ>
<モンスター同士を戦わせるってことね!>
『しかし、このままではハイオーク同士が戦うことになって効率が悪いです。だから俺達はこうします――』
三人はまた手を前に翳す。ハイオークに狙いをつけるように。
『【ブースト】』
ハイオークの身体が淡い光につつまれる。
『今掛けたのは【支援魔法】の一つ、【ブースト】です。これでハイオーク達の身体能力は飛躍的に上昇しました』
<【テイム】と【支援魔法】で戦うスタイルってこと?>
<絶対負けないじゃん!!!!>
<めっちゃ賢い!!>
スマホで視聴者のコメントを確認した御厨は満足気に頷き、カメラを見つめる。
『これからの冒険者はもう、自らは戦わない。さぁ、先に行ってみましょう』
ハイオークが先導し、御厨達はダンジョンを進みはじめた。