時が経つにつれ、タイムマシン理論は着実に完成へと向かっていた。紅莉栖の手の中で、時を超える可能性が現実味を帯びてきたが、その成功の影に、彼女の心は揺れ動いていた。槙島聖護の存在が彼女にとって不可欠なものとなる一方で、何かが心の奥底で彼を完全に信用することを阻んでいる。
その日、紅莉栖は研究室の窓から、夕暮れに染まる空をぼんやりと見つめていた。彼女の手元には、槙島が提案した新しい数式があり、その解法に取り組んでいたが、どうしても集中できなかった。
「このまま進めていいのかしら…?」紅莉栖は自問自答した。槙島の協力によって彼女の研究は飛躍的に進展した。しかし、それが自分自身の力で成し遂げたものではないという思いが、彼女を苦しめていた。彼の助けなしにはここまで来られなかった――その事実が、紅莉栖の心を縛りつけているようだった。
「紅莉栖君、どうしたんだい?」
その時、背後から槙島の声が聞こえた。彼はいつものように静かに研究室に現れ、穏やかな微笑を浮かべていた。その微笑が、紅莉栖にとっては時に心を癒し、時に不気味ささえ感じさせるものだった。
「少し考え事をしていただけよ。」紅莉栖は努めて落ち着いた声で答えた。
槙島は彼女の隣に立ち、窓の外を見つめながら静かに言葉を続けた。「君が抱えている葛藤は理解できるよ。タイムマシンの研究は、ただの技術的な挑戦ではない。君は、時間そのものに挑んでいる。人類が決して手に入れるべきではない力かもしれない。それを理解しているからこそ、君は今、迷っているのだろう?」
紅莉栖は、彼の言葉に心が引かれるのを感じた。彼が言う通り、自分が成し遂げようとしていることは、単なる科学の領域を超えたものだった。彼女はその責任の重さに耐えられるのか、不安を感じていたのだ。
「そう…私は、これが本当に正しいことなのか、分からなくなることがあるの。」紅莉栖は正直に言った。「時間を操作するなんて…誰にも理解されないかもしれないし、下手をすれば、世界全体を変えてしまうかもしれない。」
槙島はしばらく黙っていたが、やがて静かに口を開いた。「紅莉栖君、君が抱えているのは、まさにその倫理的な葛藤だ。そして、それこそが君を特別にしているんだよ。」
「特別…?」紅莉栖は思わず聞き返した。
「そう。多くの科学者が追い求めるのは、ただの成果や名声だ。しかし、君はその先にある責任を考え、自分の成すべきことに対して慎重だ。だからこそ、僕は君に協力したいと思っているんだ。」槙島は紅莉栖を見つめ、その目には深い共感が浮かんでいた。
紅莉栖は、その言葉に少し安心を覚えた。彼は彼女の心の奥にある葛藤を理解してくれているように感じられた。だが、それでも、完全には槙島の言葉を受け入れられない自分がいることに気づいた。
「本当に、それだけなのかしら…」紅莉栖は心の中でそう呟いた。槙島は今まで以上に協力的だったが、その協力の裏に隠された意図が何かあるのではないかという疑念が拭えなかった。
その時、槙島はふと立ち上がり、ホワイトボードの前に歩み寄ると、彼女が書いた数式の一部を指さした。「君の理論はほぼ完璧だ。ただ、ここにもう一つの要素を加えれば、実現可能なレベルに到達するだろう。」
紅莉栖は彼の指摘に驚いた。「何か欠けているというの?でも、ここまで完璧だと思っていたわ。」
「君の理論は確かに素晴らしい。ただ、タイムマシンの動作に必要なエネルギー源が不足している。もしこの点を補うことができれば、君のタイムマシンは実現可能だ。」槙島は冷静に説明した。
「エネルギー源…?」紅莉栖はその言葉に一瞬戸惑ったが、彼の指摘が正しいことに気づいた。「確かに、その通りね…でも、どこからそのエネルギーを手に入れるの?」
槙島は微笑みを浮かべたまま、静かに言った。「それは、僕が提供できるものだよ。」
紅莉栖は一瞬、彼の言葉の意味が理解できなかった。「どういうこと…?あなたがそのエネルギーを持っているの?」
「そうだ。ただし、そのためには、君の協力が必要だ。僕の計画が実現するためには、君の力が不可欠なんだ。」槙島の言葉には、これまでとは違った冷たい響きが感じられた。
紅莉栖はその瞬間、何か重大なことに気づいた。槙島が今まで彼女に協力していたのは、単に知的な好奇心や支援のためではなかった。彼には何か隠された意図があったのだ。
「槙島さん、あなたの本当の目的は何なの?」紅莉栖はその疑問を口にした。
槙島は静かに紅莉栖を見つめ、やがて答えた。「僕の目的は、時間そのものを超えることだよ。時間の流れを支配することで、人間社会を根本から変えることができる。それが僕の計画だ。」
その言葉を聞いた瞬間、紅莉栖は全身に冷たいものが走った。彼はただの協力者ではなかった。彼は彼女の研究を利用して、時間を操る力を得ようとしていたのだ。
「それって…世界を支配しようとしているの?」紅莉栖は恐る恐る尋ねた。
槙島は微笑を浮かべたまま答えた。「支配とは少し違う。むしろ、人間が作り出した無秩序な時間の流れを正すことが僕の目的だ。時間を操ることで、より理想的な社会を作り出すことができる。」
紅莉栖はその言葉に背筋が凍る思いだった。槙島は自分の研究を利用し、世界を変える力を手に入れようとしている。そして彼女は、その計画の中心に立たされているのだ。
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紅莉栖は、自分が選ぶべき道が何なのか、今まで以上に強く悩んでいた。槙島は彼女を利用して自らの目的を果たそうとしている。しかし、彼の助けなしではタイムマシン理論の完成は難しい。紅莉栖は、自らの知性と独立を守るために槙島と決別すべきか、彼の計画に乗るべきかを問われる。
彼女の決断は、未来の全てを左右することになる――。
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PSYCHO-PASSとSTEINS;GATEは設定が難しいのでなかなか大変でして、何度も試行錯誤してました。
変な解釈違いがあるかも知れませんがその時はすみません。