『未来への歪み』   作:d1ce-k

5 / 37
4.5章です
タイトルは気にしないでください
わざとです


第四、五章:計画の発覚と紅莉栖の選択

槙島の言葉が、紅莉栖の心を締め付けていた。彼が求めているのは、科学の進歩ではなく、時間そのものを支配することで世界を変える力だった。それを成し遂げるために、彼は紅莉栖を利用してきたのだという事実が、彼女の中で徐々に鮮明になっていく。

 

研究室の静寂の中で、二人は向かい合っていた。紅莉栖は冷たい汗が背中を伝うのを感じた。これまでの協力関係が崩れ去ろうとしている。いや、最初から真の協力関係ではなかったのかもしれない。槙島は紅莉栖を利用し、自分の計画を成し遂げようとしていた――その真実が、紅莉栖の心に重くのしかかっていた。

 

「時間を操ることで、理想的な社会を作り出す?」紅莉栖は呆然とした声で繰り返した。「そんなの、あなたが世界を支配しようとしているのと同じじゃない!」

 

槙島は、落ち着いた表情のまま首を振った。「支配とは違うよ、紅莉栖君。僕が求めているのは、時間そのものの調和だ。今の社会は、あらゆるものが無秩序に流れている。それを正すためには、時間を超える力が必要なんだ。」

 

紅莉栖はその言葉を聞きながら、背筋に冷たいものを感じた。彼の論理はどこか狂っている。彼は、時間を支配することで世界を正すことができると信じているが、それは人間が手にしてはならない力だ。紅莉栖はそれを本能的に感じていた。

 

「でも…そんなことをしたら、私たちが守るべき倫理や自由はどうなるの?あなたが言っていることは、人々から選択の自由を奪うことじゃないの?」紅莉栖は声を強め、槙島に問いかけた。

 

槙島は少し微笑みながら答えた。「選択の自由か…それは確かに重要だ。しかし、その自由が必ずしも正しい結果を生むとは限らない。むしろ、無秩序な選択が社会に混乱をもたらしていることもある。だからこそ、時間の流れを整え、秩序をもたらすことが必要なんだ。」

 

その言葉に、紅莉栖はさらに心の中で葛藤を感じた。槙島は冷静で知的だが、その知識と理論を恐ろしい目的に利用しようとしている。彼はただの協力者ではなく、彼女が追い求めてきた科学の力を、世界を変えるための道具として使おうとしていた。

 

「あなたの言うことが理論的に正しいかもしれないけど、それは人間の倫理に反しているわ。時間を支配する力を一人の人間が持つことなんて、許されるべきじゃない。」紅莉栖は自分の信念をはっきりと口にした。

 

槙島はその言葉に目を細め、しばらくの沈黙の後、静かに口を開いた。「君は本当にそう思うのかい?君の理論が完成すれば、僕ではなく、君自身がその力を手に入れることができるんだ。君がタイムマシンを完成させれば、君が世界を変える力を持つことになる。それでも、君はその力を拒否するのか?」

 

紅莉栖は槙島の言葉に一瞬、動揺した。彼が言う通り、タイムマシンが完成すれば、彼女は時間を超える力を持つことになる。だが、それは彼女が求めていたものではなかった。彼女が追い求めてきたのは、科学的な探究心と知識の追求であり、世界を変えるための道具としての力ではなかった。

 

「私は…」紅莉栖は言葉に詰まった。彼女の心は、科学者としての知識欲と、人間としての倫理感の間で揺れていた。タイムマシンが完成すれば、自分が求めてきた研究が成し遂げられる。しかし、それによって世界がどう変わるのか、そして自分がその責任を負えるのか――その答えはまだ出せなかった。

 

槙島は彼女の葛藤を見透かすかのように、優しく語りかけた。「紅莉栖君、君はこれまで僕と協力してきた。君の才能は素晴らしい。だからこそ、君にこの力を手にしてほしいんだ。僕は君を利用するつもりなんてない。ただ、君の力を信じているだけさ。」

 

その言葉は、紅莉栖の心にさらなる混乱をもたらした。彼の言葉には魅力があった。自分の才能を認め、支えてくれていることに感謝もしていた。しかし、それが本当に彼のためであるのか、自分のためであるのかが分からなくなっていた。

 

「私は…」紅莉栖は再び口を開いたが、言葉が出なかった。彼女は、自分がどの道を選ぶべきか決めかねていた。

 

「時間を操る力は、君にしか与えられない。君が選べば、その力を手に入れることができる。そして、君の選択が未来を決定することになるんだ。」槙島は、彼女の目をじっと見つめながら、最後の一言を付け加えた。

 

紅莉栖は槙島の言葉を聞きながら、最終的な決断を迫られていることを感じた。このまま槙島の手を借りてタイムマシンを完成させるべきか、それとも彼から離れ、自分の力で道を切り開くべきか。

 

「あなたの考えは理解できる。でも、私は…」

 

紅莉栖は、深呼吸をして自分の心を落ち着けた。そして、ついにその決断を下す時が来た。槙島の計画に従うことなく、自分の意思で未来を選び取るか、あるいは彼と共に進む道を選ぶのか――その選択が、彼女の人生と研究を大きく変えることになる。

 

---




槙島聖護の言葉に牧瀬紅莉栖はどんな選択をするのか?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。