浦和の桜吹雪   作:Simca Ⅴ

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 本日はかしわ記念。
 実際に船橋競馬場まで来たらその空気に触発されたので、今回ちょっと短めですが更新しました。



#26.5「ビックリ箱のようなオファー」

《ハルノウラワ かしわ記念勝利!》

《牝馬のかしわ記念勝利は1990年のフジノダンサー以来22年振り。また、同競走のJpn1昇格後としても初の快挙》

《浦和の桜吹雪がまたも鮮烈なレースを刻みつけた。2012年5月2日、船橋競馬場にて行なわれたダートG1かしわ記念。当日は時々雨が降り、発走時刻も夕方17時15分を予定していたが薄暗く、肌寒さを感じる一日だった。そのため、馬場も重で全般的にスッキリしない雰囲気だった。また、かしわ記念の2週間前に急遽エスポワールシチーはさきたま杯への出走に切り替えたことからフリオーソとの一騎打ちは帝王賞までお預けとなった。そのフリオーソが当日は1番人気に推され、2番人気には同じく地元船橋所属のクラーベセクレタ、そして、3番人気に推されていたのがハルノウラワ(浦和)だった。なお、同競走で引退することとなった群馬所属のオメガイレブンは9番人気だった。レース展開は始まる前から波乱を感じさせるものだった。奇数番の枠入りが終わった辺りで13番のバターネージュ(福山所属・鞍上:三村弘典騎手)が発馬機内で暴れて負傷したため競走除外となり、また既に枠入りしていた馬たちも一旦ゲートから出されるというハプニングがあった。この影響か、はたまた馬場が原因か、ハルノウラワは出遅れでのスタートとなった。開始早々、ハナに立ったのは11番オメガイレブンと6番フリオーソ。中盤までベテラン二頭がレースを引っ張る展開となった。一方でハルノウラワは徐々に追い上げつつ後方五番手付近で待機。向正面の後半に差し掛かったところで一気にギアを上げて加速。前方ではフリオーソとオメガイレブンが未だに押しも押されぬデッドヒートを繰り広げる中、早くもその争いから脱落したボンネビルレコード(大井)とシルクフォーチュン(JRA)を交わして後方にいたハルノウラワとトウホクビジン(笠松)が激しい競り合いをしながら三番手に躍り出た他、中団付近で待機していたクラーベセクレタ、アースサウンド(JRA)、グランシュヴァリエ(高知)、テスタマッタ(JRA)、メルキュールエリス(足利)などがそれを合図とばかりに先頭集団へ一気に畳み掛けに入った。第4コーナー直前でオメガイレブンが首位争いから脱落、フリオーソは粘っていたが、最終直線に入る前段階で先頭は既にハルノウラワに変わっていた。ここでハルノウラワを懸命にマークし続けたのが、直前で鞍上が山元朱音騎手に乗り替わったトウホクビジン。さらにクラーベセクレタなどが追い上げてきて、フリオーソも懸命に粘った走りを見せた。勝負は最後まで分からなかったが、ゴールラインを先に越えたハルノウラワは2着トウホクビジンとの間に半馬身差を付けて勝利した。また2着のトウホクビジンに騎乗した山元朱音騎手は、地方所属の女性騎手としてはG1級レースにおける歴代最高着順の記録を更新した。なお、2着から8着までは全てハナ差での決着となり、確定までに時間を要したという》

 

 ひゃー。凄いことになっちゃったなぁ……。

 改めてかしわ記念の後の新聞記事を見たけど、振り返ってみれば内容盛り沢山だぁ……。

 

「ハルナちゃん、よくやってくれたよ、はい、これお土産」

 

 おー。ありがとう美鶴ちゃーん。

 柏餅だー。

 かしわ記念を勝った事にひょっとして掛けたのかな?

 

 ちなみに今日はレース翌日なのでオフよ。

 起きたら朝10時で野田トレセンの調教なんてとっくに終わっていたんだけども、起こされなかったってことは休みって事でしょ?

 今日は一日のんびりしよー……。

 暇だから出馬表とかレーススケジュールとかでも見ときましょうかね。

 えーと何かあったかなぁ……。

 東京湾カップ……はちょうど今日か。

 うーん……出馬表を見る限りは特に気になるお馬さんはいないかなぁ……。

 ……お? 兵庫大賞典!?

 明日かぁ。コロちゃん*1出るんだねぇ。

 これここで映るかしらね?

 ……ん?

 そんな時にちょっと困った顔をしながら岡嶋調教師(せんせー)と光和さんがやってきた。

 どったの?

 

「岡嶋先生に光和さん? どうしたんですか?」

「その……な」

「次のレースなんだけども……」

 

 何か歯切れ悪いなぁ。

 まさか海外遠征行ってBCクラシックか何か獲ってこいとか義隆パパに無茶振りでもされた?

 

「どうしたんです?」

「ちょっと悩ましいことが起きてな」

 

 そのタイミングで光和さんの携帯が鳴った。

 ここには持ち込み禁止じゃなかったっけ?

 

「はい……はい、え、えぇ、今目の前に……分かりました。ちょっと待ってくださいね」

 

 と言って光和さんは、新品ピカピカのスマホ*2を取り出して、スピーカーに切り替えた。

 というかもうこの時代にはもうあったんだスマホ。

 

『あー、聞こえるかい?』

「お義父さん?」

「ヒヒンッ?」

 

 何と通話相手は義隆さんだった。

 

『実は次の君のレースについて何だけども、帝王賞を獲りに行かないかい?』

「ヒンッ?」

 

 なーんだ。

 海外遠征かと思ったので拍子抜けしちゃった。

 だけど代わりに岡嶋せんせーの親子が歯切れの悪い様子だったのか納得しちゃった。

 

 帝王賞。

 大井競馬場で行なわれるダート2000m。

 ジャパンダートダービーと同じコースであり、2000mというとあたしが全力を出せる限界ラインでもある。

 

 確かにあたしはジャパンダートダービーの優勝レイを持っている。

 けれどもあの戦いはクラーベセクレタに完敗したも同然だ。後日の検査でカフェインが原因で失格になっていたとしても過去は変わらない。

 ぶっちゃけるとあのレースがきっかけか何だか分からないけど、あたし自身も2000m以上のコースには神経質になってる感じだ。

 だから、勝てるかどうかは正直言って期待しないでほしいのが本音ではある……んだけども。

 何でわざわざ聞きに来たんだろうか?

 

『わかってる。「レースローテなんて馬にわざわざ聞くなんておかしい」って思うだろう? だがな、今回は話がちょっと違ってなぁ』

「ビヒヒンッ」〈なぁに?早く言ってよぉ〉

『あぁわかったわかった。勿体ぶらずに話すさ。まずリアライズノユメが同競走に出るかもしれないというんだ』

 

 なぁるほど……あたしが他の馬や、特に対戦経験を何度か繰り返してるお馬さんを気にしているからわざわざ聞きに来たかぁ。

 

『それだけではない。実はオオエライジンも帝王賞に出てくるというんだ』

「……ヒヒンッッ!?」〈マジですか!?〉

『あ。あぁ。紛う事なくマジだよ。兵庫大賞典の結果次第ではあるが、その次を帝王賞に定めたと向こうから連絡があってね。「ハルノウラワは出ますか」って聞かれたよ』

 

 おーぅ、つまりこれは「挑戦状」と受け取っていいわけね?

 

『もちろん、君の得意距離を考えてみても帝王賞は勝てるかギリギリの範囲だし、無理はさせられない。……それでも走りたいかい?』

「ヒヒンッ、ヴッフヴッフ!」〈もちのろん、断るわけないじゃない!〉

「ハルナちゃん。やる気みたいだよ?」

『そうか。……わかった。先方には「出ます」って伝えておくよ。というわけで……岡嶋先生は?』

「はい。ここに居ます」

『先生。お願いします。勝算は薄いかもしれませんが、どうか出来るところまで』

「黒松さん今更弱気な発言はよしといてくださいよ。我々に任せてください。勝たせてみせます!」

『そうですか……どうか無理はさせずに』

「もちろんです。では」

『はい、よろしくお願いします』

 

 そうして突然到来した嵐のような電話は切れた。

 でも、これからが本番だ。

 

「さぁて……リアライズノユメに、オオエライジンに、エスポワールシチーにフリオーソ。さらにクラーベセクレタもいる。強敵ばっかりだ」

「確かに勝算は薄いかも」

「だが、結果はまだ分からん。特に今回のレースはリベンジを兼ねてる部分が多くなりそうだからな。ハルナちゃん。そうだろう?」

「ヒヒヒンッッ!」

「よし。そうと決まれば、早速明日から大井2000m向けトレーニングだ」

 

 しかしここは厩舎。あたしと違って調教終わりで疲れて寝ているお馬さんたちもいる。

 なので美鶴ちゃんは声のボリュームを落としながら決起した。

 

「帝王賞、勝つぞー」

「「「おー!」」」

 

 帝王賞かぁ……何だか遠くまで来てしまったような気分になった。

 

 ちなみに翌日、グリーンチャンネルカップでやってた兵庫大賞典をリアルタイムで見ていたけど、オオエライジン(コロちゃん)がぶっちぎりで勝利していた。

 これはワンチャンだけど帝王賞をオオエライジンが獲る可能性もありそうに思える。

 ……しかし、申し訳ないけど、いくら弟分にも思える子相手とはいえ、あたしだって簡単に負ける気ないし、むしろジャパンダートダービーのリベンジとなったら熱く燃えないわけがない。

 

 このレース、勝って故郷に錦を飾ってやろうじゃないの。

*1
オオエライジンのこと

*2
iPhone4s




 実はかしわ記念を見に現地に行ってみたら、ポニーのふれあい体験会をしていたので、参加してきました。
 最初見た時は、ハルノウラワが普段やってるグリーディングがちょうどそれと似たイメージだったので思わず二度見。
 最初は遠くからですがちょっと録画していましたが、実際にふれあい体験をした際にさらに近くで写真を撮らせていただきました。
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