浦和の桜吹雪   作:Simca Ⅴ

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 前回から1ヶ月も間が空いてしまい申し訳ありません。
 今回の話、実はどう組み立てるかずっと悩んでいたんですが、あの架空馬さんを登場させることにしました。

※2025年8月10日追記……あとがきに書いてあるおまけからボカシを外しました。


#07「修行」※後書きにおまけ有り

 兵庫ジュニアグランプリの直後。勝利騎手インタビューにて。

 

「生沿騎手、インタビューよろしいですか?」

「あ、えぇ、大丈夫ですよ」

「え、えぇ、では。改めて生沿騎手、兵庫ジュニアグランプリ、優勝おめでとうございます」

「ありがとうございます」

「今の感想は?」

「えぇ、前走の芙蓉ステークスでは惜しくも勝利を逃してしまいましたが、ようやくオルフェーヴルに国内重賞を勝たせることが出来てホッとしています。新馬戦の時よりも割と乗りやすく言うことを聞いてくれて……逃げるハルノウラワを差して勝てて、この調子でこの先もちゃんと勝てていければG1でも健闘できる馬だと思います」

「池枝調教師にもお話を伺いましたが、来年のオルフェーヴルはクラシック三冠路線だとか?」

「えぇ、まぁ、はい。一応そのつもりなんですが、今回はちょっと池枝先生とオーナーサイドで試してみたいことが出来まして。まだまだ成長途中ですが、普段の調教具合からオルフェーヴルならダートも行けるんじゃないかって話になり、今回、ここを走ることになりました」

「そういえばオルフェーヴルの全兄といえば」

「はい。ドリームジャーニーですね」

「ということは全兄弟の手綱を握ることになったんですね」

「そうですね。オルフェーヴルの得意距離は今探ってるところでして、この馬の実兄の適正を考えれば1800から2500ぐらいじゃないかなと」

「え、でも、兵庫ジュニアグランプリは……」

「あ、はい、確かに適正外(短距離)の分類に入るんですが、ダートを走るのはきっと今回限りでしょうし、それに本来の予定では京王杯2歳ステークスを走る予定でしたから「距離も同じだし、どうせならダート重賞でもちゃんと勝てるか試すか」って池枝先生が仰りまして。僕も兵庫がいいなって」

「ダートでも力強い走りをしていましたね」

「えぇ。力強すぎるぐらいでしたよ」(苦笑)

「あははは……」(察し)

 

 少し間を置いて、記者はこんなことを尋ねた。

 

「そういえば、ハルノウラワといえば、前々走までは生沿騎手が乗られていましたよね?」

「あ、はい」

「これはちょっと嫌な質問になるかもしれませんが……オルフェーヴルに乗ることになったのはどのような経緯があって?」

「あ。あのドリームジャーニーの全弟ということで乗ってみたくて。池枝先生とオーナーのご厚意に与り、乗らせていただいてます。ただ、その際にハルノウラワの主戦騎手を降りることになってしまいましたが……」

「ズバリ、二頭の乗り心地を例えるなら?」

「そうですね……ハルノウラワの場合は、トゥクトゥクに乗っているような印象を受けます。普段はそんなに速くないんですが、小回りが利く馬で、言わば街中をスルリスルリとスムーズに駆け抜けるイメージです。一方でオルフェーヴルは……まぁ、ピーキーなセッティングを施したレースカーのようなイメージなのでとても街中には出せませんね」(苦笑)

「なるほど……そういえばパドックでハルノウラワが嘶いていましたが、生沿騎手が乗られていた時からあんな感じだったんでしょうか?」

「あ、いいえ。あれには僕も驚きましたよ。たまーに暴走しがちな部分も見せますが、普段は大人しくて、騎手だった僕や調教師の岡嶋先生たちの言うことも素直に聞いてくれる。凄く良い子なんです。だから、あんなに嘶いたのは初めて見ましたし……」

「オルフェーヴルで1着入選後に生沿騎手が振り落とされた時も、心配そうな表情を浮かべて寄り添った、と思ったら、次の瞬間には怒って空馬のオルフェーヴルを追いかけ回して……」

「きっとハルノウラワはあのパドックで、「私の騎手を貸してあげてるんだから迷惑かけないでね!」って言っていたのかも?」

「あははは……なるほど」

「そのハルノウラワですが、実は僕がオルフェーヴルの主戦騎手になると知った時に、背中を押してくれたんです」

「背中を押して……? それって比喩でしょうか?」

「いやもう物理的に」(苦笑)

「物理的に?」

「話を盗み聞きしていたらしきハルノウラワが僕の背中を鼻で小突いて、まるで「行ってこい」って。頑張れってエールすらも送ってくれて」

「おぉう……なるほどそりゃぁ、あぁなったのも何となく納得できますね。そのハルノウラワ、福延騎手に乗り替わってから惜敗が続いているようですが、どう考えますか?」

「どうって……これはまた答えづらい質問ですね。そうですね……ハルノウラワは人懐っこくて素直な馬ですし、あの馬であれば、重賞どころかG1級のレースでも他馬に負けないポテンシャルを発揮できると思います。だから、今度はその時にまた手合わせをしたいなって。どんな成長を遂げていくか楽しみな馬です……って、オルフェーヴルの勝利インタビューなのに」

「すみませんでした。改めて、ありがとうございました」

「ありがとうございます」

「ここまで、兵庫ジュニアグランプリの勝利騎手、生沿健司騎手へのインタビューでした」

 


 

 兵庫ジュニアグランプリ。

 結果は2着で、本来はそこまで記事になるようなことじゃないんだけど……レース結果よりもその後のやらかしが全国放送される羽目になり、やや恥ずかしい。

 スポーツ紙、ニュース、動物番組に。果ては何と、あの国民的に有名な落語家のおじさんたちが出てくる番組でもあたしが笑いのネタになったんだとか。

 生沿さんも大して怪我が無かったのに、そこであたしがブチギレて空馬になったオルフェを追いかけ回して〈待てコラ!〉ってやっちゃったので……まぁ、確かにあたしが悪いので自業自得か。

 お咎めは特に無かったものの、ダメだなぁ……馬になってから感情的になると何だか暴走ばかりしてる気がする……。

 

 そしたら、出てた、出てたよ。生沿さんの勝利インタビューの記事……。後半から完全に私の話題だし。

 「騎手を貸してあげてるんだから怪我させたら許さない(意訳)」って、生沿さんは私の態度をそう見てた?

 うーん……後半は全面的に同意だけど、騎手を貸してるつもりはないんだけども……。

 

 ついでに、この世界のオルフェーヴルはかなりのやんちゃ坊主で他馬に強く当たることも多かったらしく、そのオルフェに()()して萎縮させ、さらに生沿さんを振り落としたことにキレて私が追いかけ回した結果、あのレースで一緒に走った馬たちからは〈ボス〉だの〈姉御〉だの〈スケバンが出た〉だの言われて引かれて、遠巻きにされて、ちょっと傷ついた。

 

 余談だけど、兵庫ジュニアグランプリの競馬新聞の裏にはこんなことが書かれていた。

 

ナコウトプカラ。ブラジルカップに続いてアルゼンチン共和国杯制覇! 来年の目標はフェブラリーステークスに照準か》

 ……実はこの「ナコウト」って、うちの馬主さんの所有馬。

 私の馬主さんは「ハグロ牧場」ないしは「ハグロ商事」って会社の経営者なので、今の冠名は「ハグロ」だそうだけど、ハグロ牧場が出来る前まではこの「ナコウト」って冠名を主に使っていたそうだ。南関東や中央ではあまり見ない冠名らしいけど、それは馬主さんの一家が主に九州と四国と中国地方に代々競走馬を送り出してきたからだそうな。

 そして、この冠名の由来は鹿児島に昔あった「中郡宇(なかこおりう)」という村の名前。

 馬主さん一家には所縁ある地らしいが、名前が長いから「ナコウ」に縮めて、さらに人を意味する「ト」を足して、「中郡宇村の人(おりむらのひ)」を意味した「ナコウト」って冠名になったそうな。

 日本の競走馬の命名規則を前に涙ぐましい努力をしていたことが伺える話だ。まるで5文字縛りだったポ○モンのニックネームを決めていた時を思い出す。

 

 ……まぁ、記事を読む限りだと所属が高崎かぁ……現役中に出会えればラッキーってところだろうか。

 中央のG2どころかOPさえ、今の私にゃあまだまだ縁遠い世界よ。

 

「トゥクトゥクに乗っているように、小回りの利く、街中をスルリスルリとスムーズに駆け抜けるイメージ、で、素直で良い馬、か……」

 

 一方、生沿さんの勝利者インタビュー記事を読んだ福延さんは暗い顔をしていた。

 兵庫ジュニアグランプリの惜敗に責任を感じて項垂れていて……いやいや福延さんのせいじゃないよ、あれは。

 

「ごめんなハルナちゃん、俺の騎乗が不甲斐ないせいで……」

 

 福延さんも悩んでいる。

 自分の思う通りの騎乗ができていないと感じているから。

 しかも、自分の前に乗っていた人の意見を参考にしてみても、頭では理解していて心掛けていても、身体に染み込んだ習慣は中々抜けていない。

 ……それに、騎手(ジョッキー)という職業柄、遠征でもない限りは私ばっかりに構っているわけにも行かない。

 曲がりなりにも福延さんもG1ジョッキーだ。だから騎乗依頼だって、実はいっぱい来てるのを知ってる。それ故に、他の馬に乗った時と私に乗った時とで切り替えが上手くいかないらしい。

 周りから見れば贅沢な悩みってやつだが、本人たち……私も含まれるが、深刻な問題だ。うーん……仲は悪くないのになぁ。

 

 そんな時だった。

 

「いやぁ、こんにちは」

「黒松オーナー!?」

〈え、オーナーさん!? オーナーさんナンデ!?〉

 

 野田トレセンで調教後にゆっくりしていた昼下がり……気付けば来週から12月という冬の青空をボーっと眺めていたら、そこにオーナーさんがやってきた。えぇ、聞いてないよー……。

 

「ハルノウラワも相変わらず元気そうで良かったよ。話には聞いていたが、本当に競馬新聞を読んでるとは……」

 

 あっ……。

 

「あらら、恥ずかしくなって引っ込んじゃった」

 

 うぅぅ……親に薄い本を見られた男子学生のような気分を味わう羽目になるなんて……穴があったら入りたい、パート2だよ。

 

「……」

「オーナー。期待に応えられずに申し訳ありません。あの件ですが……」

「いやぁ、まだ2戦走っただけですよ? そこまで深刻に考えなくても……」

「い、いえ、ですが生沿くんのお手馬だった時に比べて、私はハルノウラワの実力を引き出し切れていなくて……果たしてこのままこの子に乗り続けていいものか悩んでいます」

 

 ……え? ちょっと待って。よく聞こえなかったけど、まさか福延さん、本当にあたしから降りようって考えてんの?

 

「ブルヒンッ」

「わぁ」

 

 競馬新聞を読んでたことがオーナーさんにバレたのは確かに恥ずかしいけど、そんなことより福延さんがあたしの主戦騎手を降りるかもしれないなんて話を聞いたら馬房の奥で引っこんでるわけにも行かない。

 実力を引き出し切れていない?

 何言ってんの。それって福延さんばかりが悪いわけじゃない。私にも原因があるはず。

 というわけで、私は福延さんの顔を舐め回した。

 

「わわわっ、ハルナちゃん、急にどうした?」

 

 私がそんな行動を取ったからか、福延さんはお返しと言わんばかりに私の鼻を撫でてくれる。

 

「……そっか。ハルナちゃんはどうやら福延さんを気に入ってるみたいですよ?」

「ですが、競馬という世界で勝てない騎手に用はない。でしょう……?」

「うーん……」

 

 福延さんはどうやらかなり責任を感じてるみたいだ。

 困るんだよなぁ……次の人と組んだら関係をリセットするようなものだし。

 オーナーさんも悩んでるっぽいけど……ん? 何か思いついた?

 さっきまで俯いて腕を組んでいたけれど、顔を上げた時、目が光ったように見えた。まさかガラガラ声で喋ったりしないよね?*1

 

「そうだ。こうしましょう」

「オーナー?」

「福延さん。12月の1週目の予定を開けておいていただけませんか? ハルナちゃんと一緒に行って欲しい場所があるんです」

「行って欲しい場所……ですか?」

「はい。行き先は岡嶋先生とその息子さんが知っていますので。そこに行って解決策が見えない場合は……」

「……それでも、とりあえず年内までは乗らせていただきます」

「それならありがたい。でも、きっと何とかなるはずです」

 

 馬主さん……そんな楽天的に構えてられないんだけど?

 状況わかってるの?

 

 ……なんて呆れていたら、その次の日の早朝、私と福延さんは馬運車に押し込まれて───。

 


 

 ───およそ2時間後。

 私たちが乗った馬運車は、野田トレセンから高速道路をひた走る。

 

 

 馬運車を運転していた岡嶋さん───岡嶋先生ではなく、調教助手をしているその息子さん。彼のお気に入りの曲はイギリスの80’sらしく、馬運車で川越インターから高速道路の道中ずっと、ひたすらにそのメドレーが流れていた。

 Duran Duran*2に、Wang Chungに、Power Station。さらにYESやThe BugglesにCHICといったちょっと古いバンドを挟んで、高崎インターを出る頃にはNewOrderの「Round and round」が流れていた。

 何故、曲名と歌ってるバンド名がわかるかって?

 私の乗ってる馬運車のオーディオコンポには曲名が表示されるし、私が乗ってる荷台からも運転席のダッシュボードがよーく見えるから。

 気付けば日が昇っていた。

 

 

 

「着いたよ」

 

 時刻は朝9時ちょっと前。

 馬運車を運転していた岡嶋さん───岡嶋先生ではなく、調教助手をしているその息子さんから声を掛けられて、歩いて出た先にあったのは、

 

〈えぇ……!? ここってまさか……!?〉

 

 その光景は写真かYouTubeか……あとそうだ、アニメ『ウマ娘プリティーダービー』の中でも見た記憶が。

 あれは確か、カノープスが強化合宿に行くOVAで───と、記憶を探っている間に()()が現れた。

 

〈……ん? 見ない顔だな〉

〈あ、どうも……って、え、ここってやっぱり……!?〉

 

 馬運車から自分が向かう施設までの路上をカッポカッポと歩いていたら……鬣を短く切った栗毛のお馬さんに声を掛けられて、そしたらその後ろに施設の看板が見えてびっくり仰天した。

 

〈群馬トレセン……! 本当にあったんだ……!!〉

〈んなラピュタじゃあるまいし……〉

 

 栗毛のお馬さんに、お馬さんらしからぬツッコミを受けたが、この時の私は目の前の光景に感動し過ぎてその嘶き(ことば)が耳に入らなかった。

 

 そこには、既に秋から冬景色へと変わりつつある榛名山と芦名山を背景に、馬用とは思えないような険しいコースレイアウト。

 山道を切り開いて一周3kmにもなるという、あの坂路コース。カノープス主役のOVAでも見たあの風景……ということはつまり、まさか。

 

〈も、もしかして、あなたがシマカゼタービンさんでしょうか!?〉

〈え? 俺のこと知ってんのか?〉

〈は、初めまして、ハルノウラワと申します!〉

〈ほぅ……これはこれはご丁寧に〉

「……このお馬さん、お辞儀しました?」

「ハルナちゃんのお相手のお馬さんが返した……?」

 

 私の引き綱を持っていた福延さんと、シマカゼタービンの所有者さんらしき人はお互いに顔を見合わせた。

 

「あ、その、初めまして。福延と申します」

「こちらこそ。シマカゼタービンの馬主の瀬名です」

「あらら、もうご対面してましたか……」

 

 そう言って群馬トレセンから私たちを出迎えてくれた男性は、一頭の鹿毛の馬を連れてきた。

 

「岡嶋さん」

「これはこれは……おはようございます敷浪先生。お久しぶりです」

「黒松さんから連絡はいただいていますよ。この子がハルノウラワですね?」

「そうです。それとこの方が」

「敷浪先生ですね? 初めまして騎手の福延です」

「あなたが福延さんですね? お噂は予々です。瀬名さん、タービン、今日はよろしくお願いします」

「えぇ。お話は伺っています。まず午前中はナコウトプカラとの併せ馬、午後からハルノウラワとの併せ馬、でしたかね?」

「ブルルッ」

〈まぁったく、俺も若くねぇってのに〉

〈そんなこと言っても……私、師匠に勝てた事ないんですけど?〉

 

 ちなみにシマカゼタービン。

 ……私の記憶が正しければ2002年生まれだったから今年(2010年)で7歳のはずだ。なので競走馬としてはとっくに引退していてもおかしくない年齢なんだけども、敷浪先生が連れてきた鬣が金髪の鹿毛の馬はシマカゼタービンに対し敬意を払いつつも軽口を叩いてくる。

 

〈あなたが……ナコウトプカラさんでしょうか?〉

〈そうだけど、あなたは?〉

〈あ、初めまして。ハルノウラワと申します。新聞で読みました。アルゼンチン共和国杯での活躍、お見事でした〉

〈これはこれは……ご丁寧に〉

「この馬もお辞儀した……?」

 

 私の引綱を持っていた福延さんは、ナコウトプカラさんが私に向かってお辞儀したのを、タービンの時と同じく驚いていた。

 

〈……師匠、今の聞きました?〉

〈あぁ、聞こえたぞ。こいつ新聞読めるらしいな〉

〈人間さんの文字を読み書きできるなんて師匠ぐらいしか私知らないんですが、この子のいるところでは普通なんでしょか?〉

〈……さぁな、わからん〉

〈?〉

 

 ナコウトプカラとシマカゼタービンが何やら小声で話しているようだが、ハルノウラワにはあいにくと聞き取れなかった。

 


 

〈むーりー!!!〉

〈おいおい、去年のJBCステイヤーズを勝ってたはずだろお前! まだまだこんなもんじゃないだろ! 飛ばすぞプカラ!!〉

 

 山道を馬が走れる程度に整備しただけの坂路。そこを爆走して上がって下がって悲鳴を上げるプカラさんと、平気な顔をして引き回すタービンさん。

 ちなみに、この坂路ありの調教コースは全長約3000m、高低差はなんと驚きの30mもあるそうで!……一周が菊花賞と同じ長さとかヤバすぎる。それどころか間違いなく天皇賞・春よりヤバイじゃん……こんなところでレースはやりたくないなぁ。

 尤も、元が山道を無理矢理切り開いただけのポン付け調教コースだから横並びするとしても5、6頭が限界なコース幅しかないそうだ。

 そして誰が言ったか、この調教コースは「群馬スペシャル」だとか……うっわぁ、この世界にも本当にあったのか群馬スペシャル……!

 前世で聞いた話だとシマカゼタービンの他、群馬三銃士とディープインパクトにハーツクライに、バーネットキッドとカイザーフェルゼンにヒメカミアゼリアたちがここの練習用ゲートに並んだと聞くし、さらに後の世代ではケイジとゴルシとジャスタウェイとオルフェーヴルにジェンティルドンナとヴィルシーナらが一同に会してここで練習していたらしいが、そりゃぁ、こんな過酷なコースで鍛えていたのなら2006年での各種海外G1乱獲やら、2014年の凱旋門賞で掲示板を日本艦隊が埋め尽くしたり、ゴルシが宝塚記念を三連覇できたのも納得というものだ。

 「真に馬の実力が試される地」……前世の群馬トレセンはそう呼ばれていたけれども、この世界では果たして?

 

 

 

〈ぜー……ぜー……ぜー……はぁー……師匠、容赦無さすぎぃ……〉

「はぁ、はぁ、はぁ……ほ、本当に7歳とは思えない走りっぷりだぁ……」

 

 暫し短い坂路コースを行ったり来たりしていたら、ナコウトプカラと、その主戦騎手を務めている四ツ木騎手が地獄の特訓から帰ってきた。

 気付いたらもうすぐお昼だなぁ。お腹減った。

 

〈アグレッサー役が手加減なんて出来るかよ。それより敏則、もうこんな時間だから飯にしようぜ〉

「あぁ? もうこんな時間か。飯にするかタービン」

 

(凄い……前世で聞いた通りだ)

 

 阿吽の呼吸とでも言うべきか。シマカゼタービンとその騎手である瀬名敏則さんは人と馬というよりは、もはや人対人のようにコミュニケーションが取れている。

 私たち()は馬房へ、騎手の方々と調教師の人たちは休憩所へ直行。

 そしてそこで目にしたのは、何と。

 

〈師匠ってホント焼き鳥好きだよねー。特にねぎまって言うんだっけ? 私も食べてみたけどお腹壊してダメだった〉

 

 焼き鳥を頬張ってる師匠シマカゼタービンを横目に、ナコウトプカラは干し草をムシャムシャと食べながらカラカラと笑いつつ、私にそんなことを言ってきた。

 いやね……同じ05世代のスターホースといえばカイザーフェルゼンは義妹のヒメカミアゼリア共々ツツジをつまみ食いしていたっていうし、バーネットキッドも胃が規格外の食いしん坊だったはずなんだけど、その二頭は草食動物の枠をギリギリはみ出していなかった。

 しかし、目の前のシマカゼタービンはというと、馬にとっては毒物にも等しいネギやら消化できないはずの鶏肉やらを昼食に平気な顔をしてモシャモシャと食べている。

 前世でwikiとかネットで仕入れて知ってた情報とはいえ、いざ目の前にすると驚くものだ。

 

〈で、午後からはお前さんと併せ馬なんだが……〉

〈! お、お手柔らかによろしくお願いします!〉

〈お。おう。礼儀正しいお嬢さんだな〉

〈さっきの師匠の走りっぷりを見てビビっちゃったんじゃない?〉

〈……プカラ、何か言ったか?〉

〈ギクッ……い、いいえ別に〉

〈今「ギクッ」っつっただろ。明日は2周追加な〉

〈ううぇー……〉

〈あ、あの! タービンさん!〉

〈……何だい嬢ちゃん〉

〈そ、その……相談、したいことがあるんですが、よろしいですか?〉

〈相談? ……話を聞こう───〉

 


 

〈───なるほどな。騎手さんが変わってから上手く勝てていなくて、それで騎手さんが悩んじまってるってことか〉

〈はい。お恥ずかしながら〉

 

 一応タービンさんにはこれまでのことをざっくりと話してみた。

 デビュー戦とその次のレースまでは生沿さんが主戦騎手だったけれども、その生沿さんを必要とする別の馬がいたから泣く泣く彼とはお別れしたこと。

 その代わりに福延さんが私に乗ることになったけれども、(相手が強かったことを差し引いても)中々勝てていない状況にあること。

 福延さんは生沿さんからの助言に従って鞭を使わない騎乗を試みているけど苦労していること。

 そして、まだ2戦しか一緒に走っていない、にも関わらず、福延さんは私から降りようかと真剣に悩んでること。

 しかし、タービンさんは。

 

〈お前の騎手……いくら何でも根性が足りてない気がするぞ〉

〈ですよねー……〉

 

 私も何となく思っていたけど、言わないようにしていたことを、タービンさんはバッサリ言った。

 

〈……怒らないのか?〉

〈それよりも今の状況を何とかしたいんです。続きを聞かせてください〉

〈……あぁ、わかった。……だが勘違いするな。俺だって根性論は好きじゃない〉

〈私もです。ただこれは根性論というよりは……〉

〈……そうだな〉

〈……あのぅ、師匠、新人ちゃん、会話の内容が読めないんですけど?〉

 

 間に挟まるような形で私たちの会話を聞いていたナコウトプカラさんは、「何のことやら?」と首を傾げていた。

 

〈……プカラ〉

〈は、はぃ〉

〈お前と四ツ木騎手って最初からコンビを組んでいたように思うが合っているよな?〉

〈あ、はい〉

〈……つまり、四ツ木騎手は前任者と自分を比べる必要がないわけだ。そうだろう?〉

〈まぁ、そうでしょうね〉

〈一方でお嬢ちゃんの騎手が……福延さんとか言ったな? 中央の騎手だったか?〉

〈あ、はい〉

〈なるほどな……だが、お前はどうしたい?〉

〈福延さんとのコンビですよね〉

 

 私が尋ねるとタービンさんは嘶くと同時に頷いた。

 

〈もちろん続けたいです。でも、福延さんは私を御せなくて悩んでいるっぽいですし……〉

〈そうか……まぁ、そうだよな〉

 

 タービンは、ハルノウラワの置かれている状況や彼女の考えを何となく理解した。

 それ故にどうしても気になることがあったので切り出してみた。

 

〈……だが、それなら何で前の騎手さんと別れちまったんだ? 確か……生沿さんって言ったな?〉

〈あぁ、それはその……〉

 

 タービンも実は生沿健司という騎手を知ってる。何なら、南部杯とフェブラリーステークスを獲った時のシャッタードスカイに乗っていたのが彼だったので、実際に併せ馬でアグレッサー役をした時に彼と知り合っていたりする。

 その生沿健司と言えば、中央では「癖馬の駆け込み寺」とすら言われているらしいことをタービンは風の噂で知っている。……そも、彼の本業は瀬名酒造の輓馬なのだが、健康維持(運動不足の解消)のついでに時折群馬トレセンで併せ馬の相手役をアルバイトでこなしている以上は、対戦相手のこともある程度頭に入れておかねばならないと考えている。

 特にシャッタードスカイも実は瀬名酒造の輓馬の一頭なのだが、G1も十分に狙える実力者として開花したため、先輩としてスパルタトレーニングを仕込んだ際、シャッタードスカイ自身だけでなく彼の主戦騎手になった生沿のこともざっくりとだが研究したものだ。

 

 その生沿がわざわざハルノウラワから降りてまで乗りたい馬がいた、もしくは彼がいないと実力を発揮できない馬がいて、その馬のためにハルノウラワが生沿を諦めた、という構図がこれまで聞いた話からは見えてきた。

 

(……これかもしれないな)

 

 そして、何故福延とハルノウラワのコンビが中々勝てないのか、その理由にタービンは気付いた。

 


 

「……つまりタービン。お前の見立てではハルノウラワの素直すぎる性格が原因だってことか?」

〈俺はそう思うね〉

「……どういうことですか?」

 

 その日の夕方。

 午後の調教を終えて敷浪厩舎に泊まることになったハルノウラワを見送ってから、シマカゼタービンとその騎手である瀬名敏則は休憩所に福延を呼び、ハルノウラワと福延のコンビが不調な原因についての(タービンが感じた)私見を述べた。

 

〈ハルノウラワ……あいつはきっと俺並みに頭がいいし、俺よりも気立てが良い奴だ。それだけに周りに気を使いすぎてるような気がする〉

「確かにな……あの子の目はお前の目を初めて見た時と同じに思えたよ」

「えっと……その、どういうことですか?」

「あぁ、その……ハルノウラワって、素直で頭がいい馬、っていうのがあなたや前任の生沿さんの見立てでしたけど、タービンも同じことを感じたみたいで」

「は、はぁ……」

 

 目の前にいるのは鬣をライアンカットに短く切っている以外は一見普通の栗毛の馬なのだが、何故か人であるはずの敏則とコミュニケーションが成り立っている事態に福延は困惑する……まるでこれは現役時代のクロスクロウやクロススキッパーと主戦騎手だった生沿のやり取りを見ているかのようだった。

 

(本当にこれ話通じているのか?)

 

 そう疑うのだが、

 

「ハルノウラワは逆に素直すぎて、あなたが手綱の握り方に戸惑っていることを敏感に感じすぎてるんだろう」

「……それって本当に?」

「あぁ。これまであなたはハルノウラワをどう御すべきか分からないって悩んでたみたいだが、逆にハルノウラワもあなたに手綱をどう握ってもらうべきか悩んでいるってことだよ」

〈つまり、お互いがお互いに迷惑を掛けないように遠慮がちになってるせいだろうな〉

「だよな」

「え、タービンは今何と?」

「あぁ、えっと……お互いに気を使いすぎて遠慮がちになっている、とタービンはそう見てるんですよ」

「気を使いすぎて……遠慮がちに……」

 

 言われてみれば、敏則からの(厳密に言えばシマカゼタービンのだが)指摘は的を射たものだと福延も感じた。

 

「福延さん。別にあんたはハルノウラワに一回乗って終わりってわけじゃなくこの先彼女が現役中はずっと乗っていくつもりだったんだろう?」

「も、もちろんです」

〈だとしたら……〉

「……ほぉ、タービン。なるほどな。福延さん。ズバリ聞きたいんですが」

「何でしょうか?」

「そうだなぁ……いきなりこんなことを聞くのはあれだが……」

 

 

 

「……はぁ!?」

 


 

 翌日。

 朝から私は福延さんを乗せて軽く走ってパカポコと。……気のせいか福延さんがガチガチに緊張してない?

 

〈朝早くからご苦労さん〉

〈あ、師匠〉

〈おはようございます、タービンさん〉

 

 朝起きだして調教に入る頃、シマカゼタービンさんが騎手の敏則さんを伴って群馬トレセンにやってきた。……が。

 

〈あの……何か?〉

 

 そのタービンさんはジッと私を見つめてくる。一体何だろう?

 

〈……お前。俺と同じ目をしてるって敏則が言ってたが、よーく見てみたらマジみたいだな〉

〈え? あ、あの、どう言う意味ですか?〉

 

 敏則は父がシマカゼタービンを買い取ってきた時の第一印象についてこう話していた。

 「知性を感じる目をしている」と。

 

 タービン自身も何度となく鏡や姿見で自分の姿や目を見てきた。

 そのタービン自身は昨日からハルノウラワが持っている「特異性」が感じ取れた。

 そして、彼はハルノウラワの目を見て、昨日は憶測に過ぎなかったものが確信めいたものに変わるのを感じた。

 ……ただし、それをこの場で追求するのも野暮だし、この後の予定も押してるので、

 

〈……まぁ、午前中はプカラに付き合わなきゃならん。お前さんとの併せ馬は午後からだったな〉

〈は、はい〉

〈じゃあ、また後でな。行くぞープカラ〉

〈はーい……ところで師匠、マジで群馬スペシャル5周、やるんですか?〉

〈当たり前だろ。男に二言はない〉

〈うえー……〉

 

 昨日の軽口の罰として、普段の群馬スペシャル3周に、さらに2周追加されることが取り消されていないことを知り、プカラは項垂れながら調教コースへと向かって行った。

 

 一方、ハルノウラワの鞍上にいる福延の胸中では昨日、敏則(とタービン)から振られた質問が反芻していた。

 


 

(ハルノウラワを俺の中でどういう関係と考えるか、か……)

 

 昨日の夕方に敏則とタービンから問われたこと。それは、

 「ハルノウラワをあなたにとって近しい関係に置くならどんなポジションか」。

 つまり、遠慮がちにならずに親しい関係に置くとして、「ハルノウラワは俺にとってどんな関係と考える」か。

 

「ブルル?」

 

 午前中、調教で走りつつそれを考え、気付けばもうお昼前。

 

 「よく頑張った」という労いの気持ちを込め、彼女の鬣や背中を撫でながら考える。

 ……少なくとも妻や恋人とは考えられない。

 かと言って、自分に近しい関係に例えると……。

 

「娘か……姪っ子、だろうか」

「……フンッ?」

 

 

 

〈ぜぇーぜぇーぜぇー……はぁ……はぁ……はぁ……っとに群馬スペシャルを5周とか……!〉

〈本当はもう2周させたいところだったが、これ以上はお前も限界だろう? むしろよくここまでスタミナがついたものだ〉

 

 午前の調教を終えて、鬣やら背中やらを福延さんに撫でられていたら、彼が妙なことをポロリと漏らした。

 その言葉の意味を尋ねようかと思った矢先、文字通り息も絶え絶えなプカラさんがタービンさんに文句を垂れつつも厩舎に戻ってきた。

 ……もしかして?

 

〈はぁはぁはぁ……疲れたー……もうご飯にしましょー師匠ぉー……〉

〈そういえばもうお昼か。わかった飯にしよう〉

〈はぁ……はぁ……はぁ……今日は、今日は、ありがとうございました! また明日もよろしくお願いします!〉

〈いや、明日からはしばらくトレセンに来れんよ。俺もそろそろ忙しくなるんでな〉

〈……本業でしょうか? それとも峠攻め?〉

〈両方だよ〉

〈あ、あの、タービンさん!〉

 

 師弟の会話に割り込むことになってしまったが、どうしても聞きたかった。

 福延さんに尋ねても正確に意図が伝わらないとも思ったから。

 

〈どうした? 午後から俺と併せだったと思うが〉

〈タービンさん、昨日福延さんに何て言ったんですか? 午前中の調教中、あの人ずっと何か考え事をしていたみたいですし〉

〈ほぅ……別に気を散らせるつもりは無かったんだが……この際、お嬢ちゃんにも同じことを尋ねてみようか〉

 

 

 

〈私にとって生沿さんや福延さんがどんな人か、って?〉

〈お前さんにとっての身近な存在の関係性で例えたら、ってことだ。例えば先生とか、兄とか弟とか。親戚のおっさんでもいい〉

〈ぶふっ、おっさんって……〉

 

 不覚にも笑ってしまった。

 でも、そっか……お互いに遠慮がちになっているなら、逆に自分にとって親しくなれそうな関係に置き換えて接する、か……。

 さっき福延さんがボソッと言ってたけども……、

 

〈そうですね……生沿さんは私に競馬の走り方を岡嶋先生と一緒に教えてくれたお兄さんで、そうなると福延さんは……親戚のおじさん……?〉

 

 ……いや、それよりももっと近しい関係だと思った時が一回あったじゃないか?

 

〈……そういえば〉

〈何だ?〉

〈……お父さん、かな。私から見ると福延さんって〉

〈お父さん、か……〉

 

 タービンさんは私の出した答えに何とも言えない顔をしていたけど、すぐ後にイタズラっぽいことを考えついたのか悪い顔をしてこんなことを私に言ってきた。

 

〈……なら、ちょっと()()()()を困らせてやれ〉

〈困らせる……?〉

〈なぁ、お嬢ちゃん。お前さん……今までいい子ちゃんを演じてきただろう?〉

〈え、えぇっと……〉

〈騎手さんの言うことには素直に従ってきた。そうだろう?〉

〈……そうですね〉

〈だな。つまりお前さんは今までずっと受け身だったんだよ。それがいけないんだ。で、だからだな……こうしてみてはどうだ?〉

〈え?〉

〈いいか? お前さんは福延さんに降りてほしくないんだろ? だったらそれを態度で示してやるんだ。それも、派手にな〉

〈派手に……〉

 


 

 そんなアドバイスを貰った昼休憩が終わり、ハルノウラワとシマカゼタービンの併せ馬が始まった、のだが。

 

「わわわっ、待て、待て、止まれハルナ!?」

 

 手綱を引いてくる福延さんを無視して、彼を振り落とさないように加減しながら暴走(?)してみる。

 横並びにシマカゼタービンとその騎手の敏則さんが併走している。

 まだ体が出来ていない私のためにギアを落としてくれているのがヒシヒシと感じる。

 

「何故だ、今までこんなこと無かったのに……!?」

「福延さん、逆らっちゃぁダメだ。ハルノウラワの手綱としっかり握って振り落とされないように!」

「握ってますよ! でも何で今日に限って言うことを聞かないんだ……!?」

「ハルノウラワの走りたいように走らせてみればいい!」

「!」

 

 敏則さんにそう言われて、福延さんが握っていた手綱の力が緩まったのを感じた。

 ではこちらはお返しに手綱のハミを噛み返して、

 

「ハルナ……!」

 

 しっかり掴まっててね!

 

〈いいぞお嬢ちゃん。さて、俺もちょっと本気で行かせてもらうぞ!〉「ヴンッ!!」

 

 いつの間にやらタービンさんが加速していく。

 今の私はついていくのがやっとだ。

 でも……、

 

〈何でだろう、今までよりも走るのが楽しい!〉

 

 確かに私は逃げで走るのが好きだ。

 けれども、こうやって他の馬の後ろに付いて風除けにしながら走って、そして、

 

〈ここで差し脚……ッ!!〉

 

 最終直線で目を走っていたタービンさんに追いついて外から差して抜いて───行こうとしたら、

 

〈させるか〉

「行けタービン!」

 

 最後の最後でまた加速!?

 ぎゃー、鬼ぃ!悪魔ぁ!このスタミナお化けぇ!!大人気(おとなげ)ない!!!

 

 定めたゴールラインをタービンさんが超えていった時には、私たちは5馬身も6馬身も離されていた。

 

〈はぁ、はぁ、はぁ……くやしー!負けたぁ!〉

〈ふぅ……っしっかし、まさかあそこで差し脚を使ってくるか。普段のお前さんの走りは逃げだと聞いてたが、差し逃げも出来そうだな〉

〈はぁ……はぁ……はぁ……〉

 

 遠目でナコウトプカラとの併走を見ていた分、シマカゼタービンが7歳という年齢にも関わらずスタミナのある馬であることは福延にもわかっていた。

 それにしても最終直線での再加速は予想していなかった。

 午前中の疲労も計算に入れていたのに。

 

 だが、

 

「差し逃げ……か」

 

 ハルノウラワが自分に示してくれた走り方。

 予想外に伸びた差し脚。

 逃げ以外に、彼女が好きなもう一つの戦い方があることを福延は事ここに至って理解した───。

 


 

 ───そして、迎えた12月中旬。

 夜空にファンファーレが鳴り響く川崎競馬場。

 

【川崎競馬今日のメインレース、第10競走を迎えました。農林水産大臣賞典第61回全日本2歳優駿G1。2歳馬のダート頂上決戦です。距離1600m出走馬14頭、JRAから5頭、兵庫、名古屋、笠松、北海道からそれぞれ1頭ずつ。南関東勢5頭。14頭による頂上決戦です、14番ハルノウラワ、浦和からの参戦。今ゲートに収まりまして】

 

 ガチャンッ、という音と共にゲートが開き、14頭が一斉にダートへと飛び出して行った───。

 

 

 

*1
出典元:海外テレビドラマ『スターゲイトSG-1』より

*2
※デュランダルではありません




 なお、シマカゼタービンはハルノウラワが自身と同じく中身が人間(転生馬)であると気付いた模様。

 この話書いている間に色んなことが起きすぎた。
 ドウデュースが秋古馬二冠を達成したり、四ツ木騎手の元ネタの人が引退するって言ってたり、メイショウサムソンが虹の彼方に旅立ってしまったり、寝てる間にサクラ家のウマ娘が増えてたり……情報量多すぎいぃ!

 ところで。
 アイルトンシンボリ編本編をご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、自分の作品では高速道路や長旅のシーンでは必ずと言っていいほど音楽が登場します。
 これは、去年亡くなった父に自分が影響されて育ったためだと思っています。
 父は音楽が好きで、特に父から教わった音楽で一番気に入ったのが『Earth.Wind&Fire』を始めとする70〜80年代にヒットしたDiscoミュージックや、80〜90年代のEurobeatで、未だにテクノサウンドには胸が躍ります。
 その父から幼い頃に、サンプリングした曲でオリジナル編成のCDを作る方法を教わったことがあります。
 高速道路でのシーンは、その時のことを思い出しながら書いてました。

 ここで、登場した新架空馬について軽い解説を。



◎ナコウトプカラ
○実馬編
 父・ナリタトップロード
 母・ゴーアレディ

 2006年5月15日生まれ。
 幼名は「ゴーアレディの2006」。ナリタトップロードのラストクロップ。
 2010年の時点で4歳馬になっている。本人は競走馬としては実力がそろそろ下り坂に入ろうかという時期に差し掛かっていると思い込んでいるが、ステイヤーとしての勝負根性に実は衰えが全く見られない。
 名称の由来は、黒松家が代々受け継いできた冠名「ナコウト」に、アイマラ語で「強きもの」を意味する「プカラ(Pucará)」を合わせたもの*1。また、黒松オーナーは名前の響きが父馬にも似ていると感じたらしい。
 主な勝ち鞍は、2009年の北関東菊花賞(NKG1・ダート2600m)、JBCステイヤーズ(Jpn1・高崎開催時・ダート2800m)、2010年のミラノ大賞典(イタリアG1)、ブラジルカップ(日本中央OP)及びアルゼンチン共和国杯(G2)。
 高崎所属の牝馬でありながら中央の重賞にも度々顔を出しており、ハルノウラワと出会った時点で14戦8勝。
 彼女の生涯の目標は父が獲れなかった中央の芝G1(特に有馬記念)を制すること。

 ナコウトプカラ(ゴーアレディの2006)の血統表
ナリタトップロード
(1996)
サッカーボーイ
(1985)
ディクタス
(1967)
Sanctus
Doronic
ダイナサッシュ
(1979)
ノーザンテースト
ロイヤルサッシュ
フローラルマジック
(1985)
Affirmed
(1975)
Exclusive Native
Won’t Tell You
Rare Lady
(1974)
Never Bend
Double Agent
ゴーアレディ
(1993)
イージーゴア
(1986)
Alydar
(1975)
Native Dancer
Sweet Tooth
Relaxing
(1976)
Buckpasser
Marking Time
ハギノトップレディ
(1977)
Sancy
(1969)
Sanctus
Wordys
イットー
(1971)
ヴェンチア
ミスマルミチ


○ウマ娘編
 群馬トレセン学園所属の地方ウマ娘。
 休日や放課後は居酒屋チェーン店でアルバイトをしている。
 ナリタトップロードに憧れていたが、それ故に足利や高崎の一般開放日に通い詰めた結果、ダートに走り慣れてしまい、本人には芝適正がある自覚が無かったことや、中央トレセン学園が実家から遠すぎて環境も違いすぎることなどから、悩みに悩んだ末、群馬トレセン学園を受験して入学した経緯がある。
 ここで時々、群馬トレセン学園に臨時講師として顔を出しているメジロモンスニー(とシマカゼタービン)にステイヤーとしての実力を見出された結果、彼女たち(特にタービン)の課すスパルタ修行に心身共に削られながらも鍛えられ、ハルノウラワと初めて出会った頃(シニア期1年目)には北関東菊花賞やJBCステイヤーズのようなダートの中長距離戦の他、中央G2のアルゼンチン共和国杯を勝利するなど、既に芝・ダート問わずに実力あるステイヤーとして名跡を刻み始めていた。
 
 ちなみに、彼女のいるウマ娘世界では日光市鬼怒川の西岸が「メジロ特区」となり再開発中であり、元々彼女の実家はこの付近にあったらしい(現住所は「栃木県日光市メジロ特区」となっているらしい)。

制服姿
【挿絵表示】

体操着姿
【挿絵表示】

勝負服姿
【挿絵表示】




 SpecialThanks‼︎ イナダ大根様

 また血統表のテンプレートはスターク(元・はぎほぎ)さまよりお借りいたしました。ありがとうございました。

*1
なお、アルゼンチン空軍で2024年現在も現役で運用されているCOIN機、FMA IA-58という機体の愛称も「プカラ」であり、実際にはここが名前の着想元である。

そろそろウマ娘編出した方がいい?

  • 出していいよ
  • 出してもいいけどアプリ版準拠で
  • 出してもいいけど浦和所属で
  • [ライジェル]所属でおk(同人誌版)
  • まだ早いんじゃないの?
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