気付けば去年、フォーエバーヤングが勝ったあのレースを現地観戦してからちょうど一年経ってたかぁ。
※2024年12月17日追記……川崎競馬場の3号スタンドについて記述を追記
高崎で群馬スペシャルの洗礼と、タービンさんの特訓とアドバイスを受けてから約10日後。
【川崎競馬、今日の第10競走、全日本2歳優駿。出走までの時刻が刻一刻と迫ってまいりました】
鎌倉記念を勝って以来の再びやってきました川崎競馬場。
兵庫ジュニアグランプリを勝ったオルフェが出走回避と、一応2着に入ったのでと私に出走の優先権が回ってきた。
【暮れの早い冬空、既に日は落ちて煌々と照明が灯っております】
【しかし、前々日の雨に、前日のすっきりしない天気のため、天候は一応晴れですが、馬場は不良となっています。足元が心配ですね】
うげぇー、埼玉でも降ってたけどこっちもそうかー。足元ぐっちゃぐちゃってことか? 嫌な予感がするー……。
その時、見知った顔に声を掛けられた。
〈あらあら、
〈ちょ、その呼び方やめて……〉
前走でやり合ったリアライズノユメちゃんだった。
〈今すんごく嫌ぁな顔してたけど……あ、さては愛しの騎手さんがいなくてご不満?〉
〈愛しの騎手さんって……〉
恐らく生沿さんのことだ。今の今まで気付かなかったけど、今日の川崎に彼の姿はない。
でも、私が嫌そうな顔をしていた原因はそっちじゃなくて……。
〈そうじゃなくて。2日ぐらい前にここら辺で雨降ってたでしょ? 足元ぐっちゃぐちゃだなぁって思ったからダルいなぁって〉
〈あー……何か分かる気はする。走りにくくなるし、汚れるしねー……〉
するとそこにもう2頭現れた。
〈あ、ど、どうもボス……〉
前走の兵庫ジュニアグランプリで4着になっていたカネマサコンコルドは私を前にだいぶビビり散らかしてる……。うーん……傷付くなぁ……。
〈おいハルノウラワ。お前一体今月の頭はどこに消えていやがった?〉
〈Oh,出た……〉
件の鎌倉記念で私が負かしたキスミープリンス。
同じ浦和所属なので調教場所も同じ野田トレセン。
私に負けたことがよほど癪に触ったらしく、これまで調教の度に鼻息を荒くして挑んできたが、その都度遠慮なく負かしてきた。……正直なところ、調教の併せ馬で私が塩対応するのは彼ぐらいだ。
しかし、同じ野田トレセン所属なので、私の群馬行きを見られてたとしてもおかしくはない。
〈何あんた?〉
〈お前こそハルノウラワの何だよ?〉
そしたらパドック上で両者睨み合う展開に……。
あー、これ、俗に言う「私のために争わないでー」ってやつだ。人生も馬生も通してこんなこと初めて経験したけど全っ然嬉しくない。
なお、カネマサコンコルドくんは我関せずにすごすごとフェードアウトしていった。
「ちょ、ユメちゃん」
「プリンス、どうどう、落ち着けって」
熱り立った2頭がダートコースに向かいそうになるのを騎手と厩務員の人たちが必死で抑え込んでる。
何かすんごく申し訳ない。
〈あんた、あとで砂かけてやるから覚えてなさい!〉
〈ふんっ上等! お前が見るのは俺の尻だけだ!〉
ユメちゃんとキスミーは捨て台詞のように宣戦布告しながらお互いに引き離された。
【只今、パドックで3番リアライズノユメと4番キスミープリンスが睨み合っていましたが、お互いにジョッキーや厩務員に引き離されて一先ずは収まったようです】
【出会した13番カネマサコンコルド、14番ハルノウラワもその状況に一時固まっていたようですが……何とか平常に戻ったようです。若干、ハルノウラワがしょげているようにも見えたんですが気のせいかもしれません】
【そのハルノウラワ、前回ここで走った際は鎌倉記念を快勝していきましたが、鞍上が福延悠一に交代後は勝ち星に恵まれていません。それでも今日は2番人気です】
【なお、今日の1番人気は9番ガムラン。鞍上は海老奈仁義騎手です】
【今日までの戦績は2戦2勝。その両方ともがダート1600m。2歳王者を狙っての全日本2歳優駿へ駒を進めてまいりました】
【なお先ほどまで3番のリアライズノユメでしたが、只今5番のビッグロマンスが3番人気になりました。これって、パドックでの睨み合いが原因でしょうか?】
【そうですねぇ……ハルノウラワを前にしてか、それともキスミープリンスに対してかは定かでは無いのですが、あまり気性が荒いイメージのなかった馬なんですよね】
【そういえば、この2頭とも、前走では確か……】
【……えぇ、確かにどちらもハルノウラワに先着されているので】
【もしかしてさっきのあれも2頭なりのリベンジ宣言だったんでしょうかね?】
【そう……かもしれません。確証は持てませんが】
【むぅ……こんな光景を見るのは2006年の有馬記念以来ですね】
……解説さんの見解は当たってるよ。
でも、2006年の有馬記念ってなんのこっちゃ?
パドックやら返し馬でも何かあったの?*1
そうこうしている内にダートコースに出てみたけど……Oh、確かにぬっちゃぁってしてるぅ……。
【今日の川崎競馬場、馬場は不良。しかし、若干の雲は見られますが月明かりを遮るものはほとんどない夜空が広がっています】
【2歳ダート王者のために用意された舞台。ですが、今日の川崎競馬場。例年でも類を見ないほどの観客動員数です。先月、老朽化を理由に閉鎖した3号スタンド*2ですが、今日だけは限定的に解放しなければならないほどにお客さんが集まっています。先ほどの報告ですが、入場者数が43600人を数えたとか*3。売り上げも2歳優駿としては過去最多を記録しそうな勢いで伸びています】
【これってもしかして?】
【えぇ、もしかするかもですね。私たちはハルノウラワ効果を目の当たりにしているようです】
な、何だって〜!? ハルノウラワ効果!?
いつの間にそんな物理現象みたいな名前が生まれていたの?
……あ。そういえば、新馬戦の人集りも凄いの何の言ってたけど、アレがここでも起きちゃってんの……!?
〈……うっわぁ、マジだぁー……〉
「おー……凄い人だな」
まるで人がゴミのようだ*4。
実況放送を聞いてから観客席を改めて見てみたらもう凄いのなんの……。
集合体恐怖症持ちの馬が居たりしたら間違いなく発狂するレベルで観客席に詰めかけてる人が超がつくほど多い。
〈人間さんたち五月蝿い……〉
〈集中出来ない……〉
それだけ観客の声援も凄いモノ。気が散ってしまう競争相手も何頭かいるっぽい。
ふふふ……こんのぉど素人が!*5
なぁんて、一度は言ってみたかった。口には出さないけど。
【川崎競馬今日のメインレース、第10競走を迎えました。農林水産大臣賞典第61回全日本2歳優駿G1。2歳馬のダート頂上決戦です。距離1600m出走馬14頭、JRAから5頭、兵庫、名古屋、笠松、北海道からそれぞれ1頭ずつ。南関東勢5頭。14頭による頂上決戦です】
さぁ、ボチボチ本番と行きますか。それにしても足元ぐっちゃぐちゃなのってやっぱ嫌だなぁ……。
【14番ハルノウラワ、浦和からの参戦。今ゲートに収まりまして───】
ガチャンッ、とゲートが開き、14頭が一斉に飛び出して行こうとする、が。
「〈!?〉」
【各馬一斉にスタートしました、おっと、14番ハルノウラワ出遅れたか。10番トウショウクラウンもあまり良いスタートでは無かったようです】
【カネマサコンコルドも後方から行きます。前は横並びですが3番リアライズノユメ、2番リョウウン、1番エルウェーオージャがハナを奪い合う形。先頭集団の外側から5番ビッグロマンスが並んでいき、先頭4頭横一線。このすぐ後ろに4番キスミープリンス。その外に9番ガムランが付けて行きます。……後方にいたハルノウラワは大外に回っていく?】
「「「あぁー!?」」」「マジかよー!」「金返せー!!」
最後方から2番目か3番目にハルノウラワという位置付け、しかも大外を回っていくような形になったために、観客たちは鞍上の福延が勝負を捨てたのだと考えた。
「鞍上を生沿に戻せぇ!!」
騒めきの中にそんな罵声も混じり飛んだ。
だが、そんな声、ハルノウラワにも福延にも耳に届かない。
【内に潜り込む11番ドラゴンウィスカー、その後に6番ミサキティンバー、8番オヤシオと続いて、ここまでが先行集団で固まっています】
もちろん、出遅れは事実。でも、わざわざ群馬まで行った成果をここで発揮する絶好の機会だと思った
ここで、ハルノウラワ(と福延)から見て
【13番カネマサコンコルドが差を詰めていく。10番トウショウクラウンが続き、その大外に14番ハルノウラワ。12番リュウノフラッシュ、最後方に7番モエレトゥループという順で間も無く残り1000mを通過】
その実況通り、福延(とハルノウラワ)にも内ラチに設置された「10」の標識が見えた。
【向正面に入ります。先頭は1番エルウェーオージャ、2番リョウウンが続く形で先頭集団がバラけ始めます。2頭の差は体半分ぐらい。2馬身差置いて3番手集団固まっていましたが、3番リアライズノユメが前へ出ます、5番のビッグロマンスも押し上げてきた。その後に4番キスミープリンス、11番ドラゴンウィスカー、9番ガムランが徐々に進出を開始。その後方に8番のオヤシオ、10番のトウショウクラウンが続きます。13番カネマサコンコルド。ここに14番ハルノウラワ、やはり大外から行く! 内から6番ミサキティンバーもこのグループに留まっています。そこから3馬身離れて12番リュウノフラッシュ、最後方に7番のモエレトゥループ。先団から中団までギッシリ固まっています】
福延とハルノウラワの目に「6」の標識が見えた。
そろそろ行くか。
そう言わんばかりにハミを咥えて頭を前へ振るハルノウラワに福延は答えた。
「よし、行けっ!ハルノウラワ!!」
【先頭、2番のリョウウンが僅かに前へ出ますが、3番リアライズノユメが並んできた。さらにはガムラン、追ってきたキスミープリンス、しかし追い込んできたビッグロマンス、そのままスタンド前直線! 前は4頭横並び。ですが外からビッグロマンスが抜きに掛か……おっと! 後方から猛烈な追い上げ……14番! 14番ハルノウラワだ! 大外を走ってずっと耐えていたのはこのためか!】
その実況を聞き、初めて観客も騎手も、何なら馬も何頭かがその方向に気を取られた。
【しかし、5番ビッグロマンスここで先頭に立ち、リアライズノユメ追い縋りますが2番手から伸びない。ガムラン3番手ですが、キスミープリンスがこれに追いつく、ゴールまで残り200、ビッグロマンス後ろを突き放すがここでハルノウラワ、大外回って前に出た! 前に出たのはハルノウラワ!! そのままゴールイン!! ゴール直前で4頭纏めて差し切った!!】
その光景に、観客たちは一瞬言葉を失い、競馬場が先ほどとは打って変わって静寂に包まれた。
しかし、ハルノウラワの鞍上、福延悠一が手を握ってガッツポーズを決めると、実況も思い出したかのように言葉を綴った。
【や、やりました! ハルノウラワ!! ハルウララ初産駒がG1級レースを初制覇だ!!!】
「ワァァァァァッ!!」
満員の観客席からは喜び、嘆き、様々な声が反響する。
彼らの正面にあるターフビジョンに記された着順、1着には「14」の数字が確かに電光掲示板に刻まれており、2着の「5」、つまりビッグロマンスとの着差は「アタマ差」と表示されていた。
全日本2歳優駿の回、最後まで読んでいただきありがとうございました。
実は筆者の家、南関競馬の中継をやってるテレビ局が何故かTVKだけ映らなくて……しかし、去年の全日本2歳優駿。
「観に行かなきゃ後悔する」と直感した筆者は川崎競馬場まで行っての現地観戦を仕事終わりに敢行しました。
その結果が後のダート界を引っ張る存在になるフォーエバーヤングの初G1級制覇だったのだから……いやはや、時に事実は小説よりも奇なりとはよく言ったもの。そこまで行かなくても、改めて考えると不思議な巡り合わせでした。馬券?結果は聞かないで……。
なお、あの時の全日本2歳優駿のファンファーレ演奏でトロンボーンを吹いていたのがあの『○点』の司会者さんだったのがさらに驚きでした。
……これ、フォーエバーヤングがウマ娘として登場するなら『笑○』が絡む可能性出てきた?
あと、遅ればせながらアンケートを設置いたしました。
そろそろウマ娘編出した方がいい?
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出していいよ
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出してもいいけどアプリ版準拠で
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出してもいいけど浦和所属で
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[ライジェル]所属でおk(同人誌版)
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まだ早いんじゃないの?