読んでいただけることと、読んでいただいている方に感謝を。
MS―JDF06S―ザクⅡ スナイパーカスタム
全長 2メートル30cm
重量
全備重量
動力 プラズマエンジン
出力 軍事機密
推力 軍事機密
センサー範囲 2キロ
装甲材料 ルナチタ二ウム合金及びスチール複合材
武装
20ミリ×100口径狙撃砲
9×23口径サブマシンガン
多目的地雷×3(対人から対装甲まで)
多目的手榴弾×3(煙幕・スタン・催涙)
ヒートホーク×1
左肩多目的レーダー×1
ギリースーツ
その他武装多数
製造概要
「古参兵用のいぶし銀な機体、いいよね」という防衛陸軍中将の一言のもとに始まった
「近代化改修計画」により近代化改修を施されたザクⅡのバリエーションの一つ。
思っていた以上に活躍したザクⅠスナイパータイプをモデルに、ザクⅡを改修した。
大変残念なことに、ビーム兵器がないため実体弾による攻撃になっている。
基本的に狙撃手向けの機体だが、マークスマンが使う事もある。
左側背部に装備された多目的レーダーにより高い索敵を誇る反面、基本武装は少ない。
頭部パーツはフリッツヘルム使用になっているのが特徴。
また、レーダーを装備したことにより観測手が必要なくなった。
第三話 敵を撃つ日々
結論から言えば、戦力不足の嘆かれるアフリカにおいて正体不明だろうが何だろうが、使えるものは何でも使うんだよの精神が発揮されることになった。
要するに「扶桑に帰る? ははっワロス」というのがアフリカ駐屯軍の出した結論であり、そのままアンドウ少尉およびロニ准尉は、この熱砂の大地に留まることになった。
なにせ、強力なMS運用母艦とMS各種、技術系とはいえ十分以上に戦えるパイロット達がいるのである、帰らせるという手はなかった。
とはいえ、ずっととどまらせるという事はないようであり、一カ月間という短期間だけアフリカ軍団に加わることになったのである。
一か月後に扶桑から輸送船がやってくる、その際に武器などの補充が行われるという。
その時、輸送船と一緒に扶桑へと行くといい、というのが結論だった。
無論、MAを乗せるわけにはいかないから、二人がこっそりついていくことになるのだが。
「准尉、こちらS1・・・・・・ネウロイの偵察部隊を発見した」
『こちらS2、こちらのカメラも捉えました』
「よし、それじゃあ俺から見て右側の戦車型をやる」
『では左側は私が倒します』
「三・・・・・・二・・・・・・一・・・・・・撃て」
『狙撃によるコア消失を確認、ウィッチ隊は残存勢力の掃討に移行してください』
『了解だよ、ロニ!』
『うひゃあ、楽だ楽だ~!』
『イエーイ、ロッケンロール!』
一発目の狙撃で戦車型のコアが露出し、二撃目でそのコアを打ち抜く。
ザクに搭載されている熱源感知システムは、異世界の大地においても正常に機能した。
即ち、ネウロイのコアを探知するのに何の問題もなかったのだ。
砂漠迷彩のギリースーツを纏ったザクⅡスナイパーカスタム(以下ザクⅡS型)が、20ミリ狙撃砲のボルトをオープンにして、薬莢を排出する。
ガキョン、という音と共に排出された薬莢が、ザクⅡS型の装甲に当たって乾いた音を立てた。
アンドウのザクⅡS型が二―リング・ポジションを解除して立ち上がると、そのまま排熱。
排熱した際の風で、ギリースーツが翻り、その下の装甲が一瞬露になった。
その下の装甲には森林迷彩が施されており、現在使用されている「砂漠戦」とは本来ならば別用途であることが容易に分かった。
「やれやれ、生きた心地がしないぜまったく」
『レーザー兵器が掠ればその瞬間お陀仏ですからね』
「それもあるが、アレだよアレ」
『・・・・・・ああ、あの《シールド》ですか』
「羨ましい限りだよ、まったく」
そう言うと、アンドウはカメラで戦っているパットンガールズを見る。
そこには、歩兵型の放つレーザーをシールドで逸らしている姿があった。
ネウロイの放つレーザーは、シールドに当たると弾かれる。
その隙をついてパットンガールズは猛然と前進し、戦車の大砲を模した武器で火力を叩き込むのだ。
ザクⅡS型でこの戦場に出るようになってからの、見慣れた光景が広がっていた。
砂漠用にペイントする暇がなく、防塵装備こそ行えたが緑のまま。
だがそれは、アフリカ軍団への一種の意思表示ともなっていた。
すなわち「怪しんだ時は撃て」という、無言のメッセージだった。
「くそ、この暑さ冷却装置だけじゃあまるで意味がねえ・・・・・・あちい」
『日本の都心と違って、カラッとしているじゃないですか』
「そうはいっても・・・・・・S2新手をとらえた」
『方向は?』
「俺から見て北西、数6、そのうち飛行型2だ」
『こちらのレーダーでも捉えました、敵2機が高速で接近中・・・・・・ハンナ大尉、行けますか?』
『もちろんだ、行くぞライーサ!』
『了解!』
ザクⅡS型の積んでいるレーダーが、新たなネウロイの機影をとらえる。
衛星リンクができない為、限定的なレーダーの照射範囲ではあるが、この時代のレーダーより格段に優れたレーダーのおかげで常に先手をとれる。
これもまた、ザクⅡS型の恩恵であった。
立射の体制で、2機のザクⅡS型が20ミリ狙撃砲を構える。
狙いは空ではなく、地上のネウロイだ。
「S2、多脚戦車を確認した、あれの装甲を引きはがすから手伝え」
『了解S1、火力を集中させます・・・・・・ウィッチ隊の皆さんは周囲の歩兵型をお願いします』
『『『了解!』』』
2機のザクⅡS型が多脚戦車のような形態のネウロイ(ロニは王蟲みたい、と呼んだ)への狙撃を開始した。
2発、4発、6発、次々と叩きつけられる20ミリ徹甲榴弾は、確実にネウロイのコアを守る装甲を破壊していった。
2門の狙撃砲が弾倉に残った最後の20ミリ徹甲榴弾を発射し、ネウロイのコア(今回は真正面)がある部分の装甲を完全に引きはがす。
「コアの露出を確認、バッハ少佐行けますか?」
『こちらバッハ、コアの露出をとらえた・・・・・・アハトアハトを撃つ、しゃがみたまえ!』
アンドウとロニがしゃがんだ瞬間、アハトアハトの8・8センチ徹甲榴弾が轟音と共に発射され、ネウロイのコアを真正面からぶち抜いた。
耳障りな金属音と共に、ネウロイのコアは破壊され、白い光の粒子となって消えていった。
それは同時に、戦闘が終わった合図ともなる。
見ればパットンガールズも周囲の歩兵型ネウロイを一匹残らず粉砕していた。
『戦闘終了、周囲に敵影なし・・・・・・ふぅ』
「こうも連戦続きだと疲れるか、ロニ?」
『ああ、いえそんなことは・・・・・・』
「無駄とは思うが、少し休ませてもらえるように上層部に話してみよう」
『・・・・・・ありがとうございます、少尉』
この一週間、戦いっぱなしである以上休息も必要だ、特にロニ准尉には。
とはいえ、ネウロイがいつ来るかは全然わからないのも事実。
その為、今回の休息についての意見が通るかは、アンドウにもわからなかった。
──(アフリカ基地にて)──
結論から言えば「休んでOK」という判断が下された。
というか、一週間も連続で戦い続けていることから、いつ休ませようかという話し合いもされていたらしい。
ただ、現場のウィッチ隊からの要望で、ネウロイが来たらすぐ発進できるように、基地内部で休んでほしいという事だった。
(まあ、仕方ないだろうなこれは)
パラソルのついたテーブル、そこに併設されている椅子に座ると、アンドウは一息ついた。
そして、パイロットスーツの胸元を開けて空気を送り込みつつ思った。
異邦人も異邦人、否、異世界人というべきアンドウ達が、仮に現地住民とのいさかい(無論ないとは言い切れない)を起こしたりしたら厄介なことになる。
本人たちにその気がなくても、何が起きるかわからない。
そうなれば、基地内部で目の届く範囲で大人しくしておいてくれというのは、妥当な判断と言えた。
「アンタねえ、何辛気臭い顔しているのよ」
「うわっ・・・・・・加東大尉、そんなに俺は辛気臭い顔をしていましたか?」
「そうね、眉間に深―いしわが寄るくらいには」
「うげっ、加東大尉みたいに眉間にしわが寄るんですか?」
「どーいういみだ、こら」
そう言って、加東大尉が頭を小突く。
アンドウがそれに対して大げさに返して、そして二人で笑った。
異邦人たる二人に積極的に話しかけ、そして、部隊に馴染めるように気を配ってくれたのが加東圭子大尉その人だった。
彼女のおかげか、ウィッチ隊の面々とも少しずつだが打ち解けられている、とアンドウは感じていた。
なにせ、ウィッチ隊とのファーストコンタクトは、一回目、二回目共にあまりにもよくないものだったから、彼もそこを気にしていたのである。
そこを取り持ってくれたのが、加東大尉だったのだ。
「でもさあ、アンドウ少尉?」
「何です、加東大尉」
「なんで最初に会ったあのモビル・スーツだっけ、あの・・・・・・」
「グフ、ですか?」
「そう、それよ、それで戦わないの?」
「あー、それですか」
カラン、とグラスの中に入っている氷が音を立てる。
水の中に氷が浮いており、加東大尉とアンドウ少尉の手にそれぞれ握られている。
それは、この熱砂の大地にとって最も贅沢な行為の一つだ。
そして、アンドウには加東大尉の言いたい事は分かる。
最初に見せた、グフ・フライトパッケージ(高機動型グフ)を使用すれば、より早くネウロイを倒すことができるかもしれない。
だが、そうできない理由があった。
「そうですね、それじゃあ一つストライカーでたとえ話をしましょう」
「ほう?」
「貴女の前には2種類のストライカーがあります」
「ふむふむ」
「一つは最新型で、スピードも速いですが、一度使うと1週間は整備で使えません」
「ふむ」
「もう一つは旧式で、スピードも並みですが、一週間連続で使っても壊れません」
「あー、成程」
「貴女は、どちらを持ってアフリカへ行きますか?」
「成程ね、それがあのグフとザクの違いという訳か」
「そのほかにもいろいろとあるんですが、まあそういう事です」
そう、グフ高機動型は、そのデリケートな構造上、一週間は整備に費やす。
それに対して、ザクはその構造上、一週間ほどならば無整備でも十分に動作する。
それが、アンドウが旧式とはいえザクを使用している理由だった。
無論、日本から持って来ている予備パーツの量などもザクが一番多いから、という理由もあるのだが。
「そういえば、ロニちゃんはどこに行ったの?」
「ああ、アイツならザクとグフの整備をしにシャンブロに行きましたよ」
「そっか、色々と聞きたい事があったんだけどなあ」
「あまり記事には書かないでください、こちらとしても困るんで」
「解ってるわよ、個人的に気になることがあるの」
「俺でよければ、お答えしますが?」
「ああ、確かに貴方でも答えられるかもしれないわね」
そう言うと、加東大尉はどこからか手帳を取り出した。
従軍記者らしい、取材ができる時期を見逃さないようにしていたのだな、とアンドウはどこか疲れた頭で考えた。
しかし、加東大尉の言葉には言葉が詰まらざるお得なかった。
「ロニ准尉との関係性はどんなもんなの?」
「・・・・・・はい?」
「あのねえ、うら若き男女が二人きりよ?」
「いや、上士と部下ですけど・・・・・・それ以上の関係性という訳でもないし」
「ぶー、つまんない」
「いや、むくれないでくださいよ大尉・・・・・・」
加東大尉はむくれた。
そりゃあもう、年を考えろという言葉をアンドウが飲み込む程度には。
そしてアンドウはこうも考えた。
(まあ、砂漠の大地でインターネットもない状況じゃあ、恋愛話とかそういうのは格好の暇つぶしになるからなあ)
この時代じゃあラジオ放送も最前線までに一般化していないしなあ、などと氷水を一口飲みつつ思うアンドウ。
冷えた水が喉を通る感覚が心地よく、体の隅々に水分がいきわたるのが分かる。
二口目を飲んだ時、加東は言った。
「それじゃあ、二つ目の質問」
「いや、一つだけではないので?」
「一つと言った覚えはないわ」
「さいですか」
「ねえ、アンドウ技術少尉」
「はい」
「貴方はカールスラント人と扶桑人の混血よね?」
「そうですね」
「そしてロニ准尉はカールスラント人よね?」
「・・・・・・そうです」
「その、これは個人的な興味なんだけど・・・・・・どうして扶桑にいるの?」
「あー、其れですか」
いささかばつが悪そうに、加東大尉は言った。
彼女の雰囲気から、答えづらければ答えなくていいという無言の言葉があった。
しかし、アンドウもこれには答えておく必要があると思った。
ただ、この世界にとっては残酷な事なのだが。
「その、他言無用でメモも取らないことを約束してくれますか?」
「そんなに重い話なら・・・・・・」
「いえ、なんていうのか、結構酷な話ですから」
「・・・・・・いいわ、聞いておく」
「その、こちらの扶桑は外国と戦争をしたんです」
「仕掛けたの?」
「いえ、仕掛けられました・・・・・・その時、常備軍では足りず、徴兵でも足りず、義勇兵を募ったんです」
「義勇兵・・・・・・」
「そして、義勇兵は世界から集まりまして・・・・・・その結果、扶桑は今非常に多国籍の国家になったんです」
「そしてアンドウ技術少尉とロニ准尉は・・・・・・いわば、義勇兵の子孫という事かしら?」
「ええ、そういう事です」
「成程ねぇ・・・・・・ねえ」
「何でしょうか」
「答えづらそうにしていたのは、なんでかしら?」
加東大尉の言葉に、アンドウは一瞬言葉に詰まる。
しかし、それでもアンドウはどうにか言葉を紡ぎ出した。
「・・・・・・この世界は」
「うん?」
「人間とネウロイの戦いです」
「ええ、そうよ?」
「でもこちらは・・・・・・人間と人間です」
「・・・・・・あっ」
「そして、戦争が終わってもなお、人は一つの目標に手を携えて、とはいかない」
「・・・・・・」
「俺たちからすれば、この世界の人々は眩しい」
「・・・・・・それはどうして?」
「簡単です、人種も肌の色も関係ない、国籍だってそうだ、生きるために一つになって戦っている・・・・・・どんなごたごたがあっても、結局そこに行きつく」
「・・・・・・」
「こちらの世界は、それがない、それができないんです」
そういうと、アンドウは一気に氷水を飲み干した。
そして、グラスを加藤大尉に渡す。
「氷水、ありがとうございました」
「ちょっと、どこ行く気?」
「ネウロイが来ているみたいですよ」
「へ?」
『こちらロニ准尉、アンドウ技術少尉、発進の為にシャンブロに戻ってください』
《ウィッチ隊に緊急発進命令、ネウロイが輸送路に接近中、至急迎撃に向かわれたし》
「ほらね?」
「・・・・・・しゃんぶろ、のレーダーはすごいわね」
「ええ、本当に」
そういうと、アンドウはシャンブロに向かって走り出した。
その背中を、加東大尉は見えなくなるまで見送るのだった。
ウィッチとのからみが少なくて申し訳ない。
次は絡ませられるように努力します。