『そして、批判票の1位は33票を獲得した生徒...残念ながらお前だ、山内。』
この日、Dクラスの担任である茶柱佐枝からのあまりにも無慈悲な宣告に納得できないという様子で喚いているこの俺、
『最後の最後まで君は惨めで醜く...救いようのない不良品という訳か。』
クラスメートの一人である高円寺のこの発言に切れた俺は八つ当たり同然に持っていた椅子を彼に目掛けて振り上げたが、呆気なく受け止められてしまった。
『...退出だ。』
そのまま、茶柱に連れられる形で俺はすすり泣きながらクラスを退出していった。クラスメート達の視線を浴びながら...
そして、教室の扉が閉められた瞬間だった。
『あぁ......あぁあああああぁぁぁっ!!!』
俺の悲痛な断末魔が響き渡った。
こうして、この俺...高度育成高等学校の山内春樹という生徒は最後の最後まで醜態を晒した末に無惨にも退学に追い込まれていった...
そう...誰もがそう思っていた事だろう。
・・・・・
(さて...邪魔な教師もいなくなった事だし、もう
校舎を出て迎えの車と
そうだとも...俺の目的はこの高度育成高等学校から退学に追い込まれる事なのだから...
(やれやれ、一時はどうなる事かと思ったけど本当に良かったよ...自らに課された使命を失敗したんじゃ、ブラックルームの最高傑作としての名に傷がついてしまうからね...)
山内春樹の正体...
それはブラックルーム...略して
ブラックルームとは俺の母によって設立された極秘施設である。
母は元々は政治家を志しており、鬼島という政治家に師事していた。そう...後に総理大臣となる男である。
鬼島は政敵である直江仁之助に対抗する形で政府直属の人材育成機関の設立を考えていたらしく、その設立並びに責任者を任されたのが母であった。
鬼島の意向を受けた母は人材育成機関を設立してその施設に...
「ブラックルーム」と名付けた。これがブラックルームの始まりである。
母は出資者達の協力を得て【ブラックルームプロジェクト】を本格的に始動。さらに財界の関係者に説得力を持たせるためにブラックルームの4期生として息子であるこの俺...山内春樹を施設に参加させていた。
しかし、ある日...母が鬼島によって開校させられた高度育成高等学校の内情を知ってしまった事で事態は大きく動き出した。
元々、ブラックルームは直江仁之助の部下であった綾小路篤臣によって設立されたホワイトルームと同じように【天才を作り出す】ための施設だった。そのために高度なカリキュラムが施されており、それを子供達は室内も廊下も...自分に与えられた部屋すらも、最低限の灯りを除いて何もかもが真っ黒な世界で受けさせられる...そんな日々が続いていた。
そんな中、母によって10年程前に新たなカリキュラムが追加されたのだ。
それは...『作り出された天才が如何にして完全なる無能に擬態できるか』というものである。
なぜ、そのようなバカらしいカリキュラムを追加したのか不思議に思うだろう?その理由は俺をはじめとするブラックルーム生に新たに課された使命にあった。
ブラックルーム生に新たに課された使命...簡単に言えば【高度育成高等学校に入学し、上手く退学に追い込まれる】というものだった。
えっ?なになに?だったら、さっさと自主退学すればよくねって?
いや、それではダメなのだ...むしろ、その方法を選んだ者はブラックルームの恥さらしと見なされて下手をすれば、退学以上に悲惨な末路を辿る事になる。
まず、ブラックルーム生達が入学する事になる高度育成高等学校は表向きは希望する進学や就職先に100%応える夢のような学校だが、実際にはその特権を使えるのはAクラスで卒業した生徒のみである。
それだけならいい...問題なのが学校側は最初から全員を卒業させる気はなく、必ず何人かの退学者が出るようになっているという点だ。
上記のような甘い誘いに応じてわざわざ、推薦まで受けて入学してきた一般生徒が学校側の事情で退学に追い込まれるのはあまりにも酷だと母は考えていた。
そこで思い付いたのだ...その退学に追い込まれる何人かの生徒の役をブラックルーム生に担ってもらおうと。
こうして、高度育成高等学校に入学したブラックルーム生は無能な生徒を演じて自分以外の一般生徒が退学に追い込まれないように気を配りつつ、どうしても誰かが犠牲にならないといけない場面が訪れたのなら、自分がその犠牲者役になるように仕向けなければならない。
他にも入学した後のブラックルーム生にはたくさんの決まりがあり、例を挙げるなら...
・自分がブラックルーム生である事を絶対に一般生徒に知られてはいけない。(知られたら何かしらの罰則があるらしいが、流石に一般生徒に正体がバレたブラックルーム生は現時点では存在しないため不明)
・自分よりも先...もしくは同時に同じクラスの一般生徒が退学に追い込まれてしまった場合、カリキュラムの成績に関係なく失敗作と見なされてブラックルームから永久に追放となる。もちろん、追放された後の将来の事は何の保証もされない。(ただし、一般生徒の退学理由が完全な自主退学、もしくは犯罪行為が原因の場合は例外である)
・退学者を出さずに長く在籍する事ができたブラックルーム生である程、退学後の生活が豪華になる。(半年以上、退学者を出さずに在籍できれば卒業時のAクラス並の生活が保証されるが、今までのブラックルーム生でこれを成し遂げた者はいなかった)
・命を捨てる覚悟がない限り、意図的にテストで赤点を取るなどしての自主退学は厳禁。
・万が一にも自分の学年が一人も退学者を出す事がなく、160人全員が卒業できた場合はその学年に所属していたブラックルーム生全員に一生、生活に困らない暮らしが約束されるらしい。(当たり前だが、そんな事例は一度もないため真偽は不明。)
まぁ...こんなところだろうか?
「あっ!山内様!」
「山内様!」
「やぁ、弥彦に志保...お疲れ様。」
俺に声をかけて駆け寄ってきた男女の二人組、そう...こいつらが俺の言っていた同業者...すなわち、同じくブラックルームの4期生である
同じ4期生とはいえ、俺はブラックルーム時代のカリキュラムの成績が圧倒的で最高傑作と称えられていた存在...よって、俺は二人からは敬われているのだ。
今回のクラス内投票でどうやら、二人も上手く退学に追い込まれる事ができたようだ。
「聞いてくださいよ!坂柳の奴、まんまと俺を退学に追い込んでくれて助かりましたよ!」
「私は龍園がターゲットって言われてたので、どうにかして自分にヘイトが向くように振る舞いました...危うく失敗作になるところでしたね...」
「まぁまぁ、落ち着きな。最終的には上手く退学に追い込まれたんだから、いいじゃないか。」
俺としても、同期である弥彦と志保が上手く退学に追い込まれてくれた事を本当に嬉しく思っていた。
「それもそうですよね!歴代のブラックルーム生としての自己ベストも更新できましたし!」
「それにしても、この1年...いろんな事がありましたね...」
「そうだな...」
俺は戸塚や山内と会話をしながら、今までの学校生活を思い出していた...
好評であれば続きを書いていこうと思います!