4月。
ブラックルーム側の指示で俺、戸塚、真鍋の三人...ブラックルーム4期生が高度育成高等学校に入学する事になった。
『...では、行ってきなさい。諸君の健闘を祈るよ。』
『『『はいっ!!!』』』
とはいえ、俺達は大人達からそこまで期待はされていなかった。何せ、去年入学した3期生の奴らは高度育成高等学校の副会長である南雲雅の手によって上手く退学に追い込まれたのはいいものの、その際に多くの一般生徒が巻き添えになった事で全員が失敗作とされ、ブラックルーム関係者からも失望されていたのだ。
どれだけブラックルーム時代のカリキュラムが優秀で評価されていたとしても、上手く退学に追い込まれないと失敗作と見なされてしまう...あまりの手のひら返しに俺達は3期生に多少は同情していた。
その前の1期生や2期生は失敗作扱いこそされなかったが、高度育成高等学校に在籍できたのは半年以下と決していい結果とは言えなかった。そのため、俺達も半年ぐらい在籍できれば頑張った方だと大人達から言われる有り様だった。
「へぇ、あれが高度育成高等学校...山内様!志保!いよいよですね!」
「えぇ、山内様!そして、弥彦!私達でブラックルームの大人達を見返してやりましょうよ!」
「あぁ、そうだね。もちろんだとも...」
バスに揺られながら、俺達はお互いの意気込みを確認し合っていた。
そして、バスを降りた俺達は学校の敷地内に入るとそれぞれが所属するクラスを確認し始めた。
「あった!俺はAクラスです!」
「えぇ、私はCクラスですか...」
「マジかよ...」
その結果は弥彦はAクラス、志保はCクラスだった。
ちなみに残った俺はというと...
「何と!山内様!Dクラスなんて流石です!」
「面接官達も山内様の見事な無能っぷりにすっかり、騙されてしまったんでしょうね!」
高度育成高等学校の内情や仕組みについては既にブラックルーム時代に知らされている。もちろん、クラス分けについてもだ。
そんななか俺が落ちこぼれのDクラスに所属する事ができた...つまり、これは俺が上手く無能に擬態する事ができたという意味だ。弥彦や志保がキラキラした目で俺を見ているのも納得だろう。
「山内様~!俺、運動も筆記も手を抜いた上で面接でも他人に媚びを売るような発言をしたのにどうしてAクラスなんでしょうか?」
「その発言がお前が優れた処世術を身につけていると思われたか...はたまた、お荷物枠として選ばれたかのどちらかだと思うな。」
「そうですか...一応、俺としては後者の方がありがたいんですがね...」
戸塚は自らがAクラスである事に納得できてないようだった。まぁ、お荷物枠としての抜擢なら退学になりやすいという点もあるので俺から見ると決して悪いとは言えないのだが...
それはさておき、それぞれの所属するクラスが割れてしまったのはメリットが大きい。お互いに各クラスの情報を共有しつつ、退学になりそうな生徒を絞った上でその生徒を水面下で守る事ができるからだ。
不安要素としては俺達、ブラックルーム生が誰も所属していないBクラスだ...何せ、俺達よりも先にこのクラスから退学者が出てしまった時点でゲームオーバー同然なのだから...そのため、Bクラスの動向にも常に気を配っておく必要が出てくるのだ。
「とりあえず、まずはそれぞれのクラスに向かうとしようか。クラスメートの情報を詳しく調べておく必要があるからね。」
「そうですね...」
「山内様の健闘をご祈りしています!」
こうして、俺達はそれぞれの所属するクラスへと足を運んだのだった...
「俺は山内春樹。小学生の時は卓球で全国に...中学時代は野球部でエースで背番号は4番だった。けど、インターハイで怪我をして今はリハビリ中だ。よろしくぅ!」
入学式を終えた俺達は平田洋介というイケメンの提案で自己紹介をする事になった。その際の咄嗟の俺の自己紹介がこれだ。
(完璧...いや、ちょっと嘘で塗り固めすぎたか?とはいえ、これで俺はどこからどう見ても頭の悪いバカキャラにしか見えないだろうな...)
見事な嘘っぷりに皆は目を丸くして俺を見ていたっけな...俺自身も自分で言って恥ずかしいぐらいだ。もし、こういうバカキャラが俺だけだったら、ただの痛い奴じゃねぇか!...と、僅かながらの後悔の念を持った。
幸いにも俺の近くの席にいた池寛治という奴とお互いのバカっぷりがマッチングした事もあってか、すぐに意気投合して仲良くなれた。池にはこれから俺の無能さを示すためのカモフラージュ要員にでもなってもらうとするか...無能一人が悪目立ちするよりかは無能が二人いた方が違和感はないだろう。
そして、もう一人のカモフラージュ要員として須藤健という奴とも仲良くなった。言うまでもなくコイツも池同様にバカである。一応、代わりとして運動能力は高いのだが俺や
「よう!綾小路~!今度、ゲーセンにでも行かね?」
「...いいのか?」
「当たり前だろ?」
そのアイツというのがホワイトルームの4期生で最高傑作...綾小路清隆だ。
ブラックルームでは何かしらの方法でホワイトルーム側の情報を手に入れているらしい。そのため、俺も綾小路がホワイトルームの最高傑作である事を事前に知らされていたが...まさか、こんなところで出会えるとは思ってもいなかった。ちなみに綾小路をはじめとするホワイトルームの関係者はブラックルームの事を認知していないため、綾小路も現時点では俺がブラックルームの最高傑作だとは考えてもいないはずだ。
せっかくなので、それぞれの施設の最高傑作同士としてタイマンを挑もうともしたが、何もブラックルーム生の目的はホワイトルーム生を倒す事ではないため、現時点では時期尚早として諦める事にした。とはいえ、将来的に戦わないといかない機会が来る日もあるかもしれない...俺はそれも踏まえて綾小路の実力をこの目で調べるべく、奴と友好関係を結んでいった。
こんな感じで入学して数日の間は池や須藤、綾小路とつるんで束の間の青春...いや、学校生活を満喫していた。
クラス内でも俺の無能さが定着していったのか、須藤や池と並んで『三バカ』とまで呼ばれるようになった。いわゆる完全なバカキャラ扱いである。
まぁ...普段からセクハラ発言をしたり、胸の大きさランキングなんて不謹慎なものを作ったせいか、長谷部を中心とする一部の女子からの視線が冷たいのも地味に気にしている...あくまでバカキャラ作りのためにやっているのであって本当はそういうのには興味がないから安心してほしいと心の中で謝罪しておいた。
それにしても、実際には俺を『三バカ』と呼んでる奴らよりも...その俺の方が遥かに優れているとも知らずに本当に呑気なものだと思っている。
(はぁ...やれやれ、それよりも大丈夫か...?コイツらは月に10万ポイントが支給されるだなんてそんな上手い話を本気で信じているのかよ!?おいおい!俺の見立てだと違和感に気づいているのが高円寺と綾小路だけだぞ...ひょっとして、このクラス...俺の思っていた以上にやばいのか?)
何も考えずに支給されたポイントを遊興費として消費しまくるクラスメート達を見て俺は微かに危機感を抱いていた。
そして、俺の微かな危機感は来月になって見事に的中する事となった...
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