中間テストの返却日...案の定、須藤は英語で赤点を取ってしまった。
これに対して平田が慌てて、茶柱に須藤の答案用紙を見せてほしいと頼み込んでいた。大方、採点ミスがあるのを期待していたのだろう...しかし、その微かな希望は打ち砕かれてしまった。
それでも、救済措置がないのかと必死の様子で尋ねる平田や櫛田を茶柱は冷たく突っぱねていた。これにより、クラス全体が諦めムードに突入してしまった。
(さて、俺以外で須藤の救済方法に気づいた奴はどれだけいるんだろうな...)
須藤を救済する方法は2つある。
1つ目は退学阻止のポイントを払うこと。この学校はポイントさえあれば何でも買える以上、【退学を阻止する権利】というのも買えるはずだと俺は予想している。
しかし、肝心のその額は2000万ポイント...とてもじゃないが、俺を含めたこのクラスの奴らが払えるような金額ではないだろう。
よって、俺は2つ目の方法を使うつもりでいる。
それは、須藤の点数を1点購入する事だ。勉強する意欲を無くすのを防ぐためにそれなりに1点につきの額は高いはずだが、退学阻止にかかる2000万ポイントと比べれば遥かにマシのはずだ。
(とはいえ、どうするか...)
ここで須藤が退学となってしまえば俺はブラックルーム側から失敗作扱いされて今後の人生が詰む以上、須藤を絶対に助けておく必要がある。
だが、かといって俺が実力者でこのクラスの真の最終兵器だという事はなるべくは知られたくない。実力者扱いをされると退学になりにくくなるからだ...なので、誰かに須藤の救済方法に気づいてもらう必要があるのだが...
...と、思っていた時だ。綾小路が急に席を立つと教室を出てどこかへ向かっていくのが見えた。さらに少し遅れて綾小路の隣の席である堀北も席を立ってどこかへ向かっていったではないか。
堀北は分からないが、綾小路は流石はホワイトルームの最高傑作と言うべきだ。大方、須藤の救済方法に気づいて茶柱と交渉に向かったのだろう。
(何とか一件落着ってわけだが...この調子だとほんとに先が思いやられるな...)
最悪の場合は実力が多少バレるのも覚悟で俺が須藤の点数を購入する事も考えていたが、その手間が省けたようで本当に良かったぜ...
・・・・・
そんな感じで6月も終わりが近づいてきた。
あの後、須藤が無事に退学を回避した事もあって祝勝会が開かれた...なぜか、綾小路の部屋で。
その際に綾小路は須藤の退学を回避できた全てを堀北の手柄という事にしていた...つまり、綾小路は自らの隠れ蓑に堀北を選んだという事だ。
ひょっとすると、俺も今後の活動のために隠れ蓑を作っておいた方が良いのかもしれないな...
また、密かに戸塚や真鍋とも会ってお互いに情報交換や近況報告もおこなっていた。
まず、戸塚が所属しているAクラスでは葛城康平という男子が率いる葛城派と坂柳有栖という女子が率いる坂柳派で別れているらしい。
ちなみに戸塚は葛城派に所属している。理由としては葛城の方が坂柳よりも力量では遥かに劣っているとブラックルーム生の本能が察したためであり、その葛城の無能な腰巾着を演じていれば上手くクラスメートからの反感を買う事ができ、退学になりやすくなるだろうと踏んだからだ。
次に真鍋だが、こちらはクラスの女子のリーダー格的なキャラを演じるらしい。本人が傲慢な振る舞いを見せているのもあって、上手くそれなりにクラスの反感を買えているようだった。
そして、最後に俺は真鍋からとある忠告を受けた。
『近い内にCクラスのリーダー、龍園翔がDクラスに何かを仕掛けてくる。』
真鍋はクラスにおける地位がそこまで高くはないために計画の具体的な内容は分からなかったらしいが、Dクラスの生徒の誰かが狙われるのは確かなんだとか...
(やっぱりかよ、一難去ってまた一難ってやつか...ほんとにこのクラスは大丈夫か?)
俺は今後に待ち受けているであろう試練に思わずため息が出てしまうのだった...