黒子のバスケ 銀色の疾風   作:星月

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投稿が遅れて申し訳ありません。
テスト期間中で時間がとれませんでした。


第三十一話 天命下らず、そして彼らはすれ違う

 緑間達が二年生へと進級し、全中二連覇という目標へ向けて練習に励む中。

 帝光中学の、彼らの今後を左右する出来事が起こった。

 

「二年、黄瀬涼太! ポジションは多分どこでも行けるっス! よろしく!」

 

 新たに入学した新入部員とは別に、一人の男――黄瀬涼太が帝光バスケ部に現れた。

 彼は類い稀なる才能でバスケ初心者とは思えないほどの成長を見せた。それはコーチ達の目にとまり、黄瀬は瞬く間に一軍に合流し、レギュラーレベルにまで上り詰めた。

 そしてある日――

 

「ちょっと俺と、勝負してくんないっすか? ――白瀧っち」

 

 黄瀬涼太は一人の男の前に立ち、そう言った。

 視線の先にいるのは白瀧。眼差しは自信を帯びていた。

 全国大会から月日がたち、“キセキの世代”の中でも実力の差が出てきた。そして彼らの中で少し遅れていたのが白瀧だった。

 白瀧は良くも悪くも器用貧乏であった。オフェンス・ディフェンスを問わず様々な分野で活躍する一方、中々天才の域に達しない。どんどん力をつけていく“キセキの世代(同僚)”との戦いに遅れを取っている一面があったのである。

 だからこそ黄瀬は白瀧に目をつけた。少しでも早くレギュラーになるために。

 白瀧もそのことは当然自覚している。だが相手がいかに天才であろうとも、バスケ初心者である相手にこのようなことを言われては――

 

「……寝言は寝て言えよ黄瀬。バスケをろくに知らないやつが、軽々しく勝負などと口にするな!」

 

 全国制覇を果たした白瀧がその勝負を避けるわけもなく勝負が成立する。

 そしてその結果として――白瀧は勝負の後、彼が背負っていた背番号・8を黄瀬に譲り渡した。

 

「……」

 

 敗北の悔しさが募り、体育館の床に横になる白瀧。

 緑間は彼に何も言葉を発しない。声をかけることもなくその場を後にした。

 大丈夫だと。白瀧ならばきっと諦めることはないと、そう信じて。

 

 

――――

 

 

 さらにそれから数ヶ月後。帝光バスケ部は再び全国の舞台に戻ってきた。

 予選大会は“キセキの世代”の圧倒的な力と、神出鬼没の六人目(シックスマン)、経験豊富な三年生、データ収集に長けた有能なマネージャー、さらに白瀧の力もあって勝ち抜いた。

 黄瀬との戦いで屈辱を味わった後でも、緑間の予想通り白瀧は諦めなかった。むしろ彼は『いつでも黄瀬にリベンジしてやる』という強い意気込みをもって練習に励んでいた。

 おかげでベンチの層が格段と厚くなり、予選は苦戦することもなく勝ちあがった。

 そして今日から運命の決勝トーナメント。一回戦から容赦はしない、と帝光はメンバーが変わった新たな“キセキの世代”でスターターを固めることになった。

 どんな布陣であろうと、何があろうと人事を尽くすのみ、と緑間は恒例のおは朝を見ながら朝食を口に運ぶ。

 

『5位は――蟹座のあなた』

「今日は五位か。まずまずといったところだが、油断は禁物なのだよ」

 

 己の運勢を確かめ、精神を引き締める。ラッキーアイテムのことをしっかり頭に叩き込み、食事に戻った。

 その後もおは朝占いの放送は続き――

 

『そして最下位は……残念、山羊座のあなた。

 今日はやること全てが空回りがちです。知らず知らずのうちに、悪い出来事に巻きこまれそう。目立つような行動やそういったことは可能な限り避けてください』

「なん……だと……!?」

 

 最下位の放送を聞いて、緑間は手にしていた箸を落としてしまった。

 

「山羊座。12月21日頃から1月19日頃生まれの人間がこれに該当するのだよ。誕生日プレゼントがクリスマスプレゼントやお年玉と一緒にされて悲しく思うこともあるという。つまりまさか……白瀧か!?」

 

 1年前に聞いた友のプロフィールと彼の体験談を緑間は思い出した。思わぬ形で友の不運を知り、緑間は焦りを隠すことができなかった。

 だが、驚いてばかりではいられない。緑間は朝食を済ませるや否や自室に駆け出した。

 

「……あった!」

 

 しばらく机の中を探し続け、そして目的の物を手に取って笑みを浮かべた。手にしたものと彼の満面の笑みのセットは、おそらく見た者全てを戦慄させることだろう。

 

 

――――

 

 

 ――そしてその後。試合開始の時が刻一刻と時間が迫る中、控え室にて緑間は白瀧に声をかけた。

 

「白瀧、少し手を貸すのだよ」

「は? 何だよいきなり。……って、ウォイ!?」

 

 振り返り、何事かと問いかける白瀧だが、緑間が左手に持つものを見て目を疑った。

 なぜなら緑間が握り締めているのは……

 

「いきなりカッターナイフなんて取り出してどうしちゃったの!? よからぬ殺意にでも芽生えちゃった!? あるいはツンデレじゃなくて実はヤンデレだった!?」

 

 刃物の一種、カッターナイフだったのだから。

 

「これを肌身離さずもっておけ。一瞬たりともな」

「……へ? えっと、俺が……?」

「そうだ」

 

 戸惑う白瀧を他所に、緑間はカッターナイフを白瀧に預ける。

 当然事情を知らない白瀧は目を点にしている。どういう意味だと、視線で問うとようやくその意味を理解した緑間が語り始めた。

 

「いいか。今日のおは朝占い、お前の山羊座は最下位だったのだよ」

「……そうなんだ。それで?」

「これほどの不運を振り払うにはもはやラッキーアイテムしかない! そのために、俺が用意してやったのだよ」

「……で? まさかお前はこれを試合中もベンチに置いておけとでも言うのか?」

 

 呆れ顔を浮かべて話を聞く白瀧だが、緑間はさも当然と言うように頷く。

 

「そうに決まっているのだよ」

「刃物をベンチに持っていけるか!? 出場できなくなってしまうわ!」

 

 だが試合中に刃物を持ち込むわけにはいかないと白瀧はカッターナイフを返却した。

 

「何をしている!? ちゃんと刃の予備も持ってきたのだよ。ゆえに何も問題はない!」

「お前馬鹿か、馬鹿か? 馬鹿なのか!? だからそういうことじゃなくて、刃物の持ち込み自体が駄目だと言っているんだよ!」

「気は確かか! このままではお前が痛い目にあうのだよ!」

「お前こそ正気に戻れ!」

 

 緑間の表情は真剣そのものだった。カッターナイフを持たねば必ずや不幸が白瀧を襲うと。

 たしかに普通にものだったならば白瀧も受け入れたかもしれない。しかし今回は物が物であった。白瀧がそれを受け取るわけにはいかない。

 

「まあ落ち着けって。……そういうのは普段から心がけてやっているお前だからこそ意味がある。いきなりやったところでそんなに効果は現れないさ」

 

 興奮している緑間を抑えるため、白瀧は彼の両肩に手を置き、言った。

 

「あいにく俺は運気とかそういうのを信じてないんだ。見えないものに頼りたくはない。

 ……大体、仮に本当にそれがあったとしても、そんな不幸ごときに俺がやられるとお前は思うのか? これでも去年より成長していると自負しているんだぜ? 不幸なんて迎え撃ってやる」

「しかし!」

「それなら、さ。そこまで心配なら俺が不幸に会う前に試合を決めてくれ。俺はベンチスタートなんだから、お前達が決めてくれれば大丈夫だろ?」

「白瀧……」

「な?」

 

 正しいか正しくないのかわからない運勢よりも、仲間を信じているからこそ出る言葉。それを言われては緑間も返す言葉がない。緑間とて白瀧の力を評価しているのだから。

 

「ふん。お前がそこまで言うのならば仕方がない。だが後悔はするなよ」

「わかってる。でもわざわざありがとう。それじゅあ、そろそろ時間だ。行こうぜ!」

「……ああ。今日の試合をさっさと終わらせるとしよう」

 

 結局白瀧はラッキーアイテムを受け取ることなく試合に向かった。

 

 

――――

 

 

 ……だが、その試合は誰もが予想していない方向へと進んでいく。

 

「――馬鹿なっ!?」

「スティール、まただ! 帝光中学、またしても得点に繋げられない!」

 

 ボールマンへのダブルチーム。しかも相手の選手はパスコースを全て見切っているかのような動きを見せ、次々とボールを奪っていく。

 

「ハハッ! 甘いな、テメエらの動きなんて丸わかりなんだよ!」

 

 カウンターのレイアップを決めた敵のPG――三年の花宮真(はなみやまこと)が得意げな顔で言った。目にかかりそうな髪型に加えて鋭い目つき、特徴的なまゆげが印象に残る選手だ。“キセキの世代”がいなければ確実に天才と呼ばれていただろうと噂される五人の逸材、“無冠の五将”の一人でもある。

 

「その程度かよ中学バスケ界最強ってのは! ぬるすぎてつまんねえぞ!」

 

 悔しがる帝光中学の選手達を花宮はけらけら笑う。

 花宮によってパスが封じられ、帝光はボール運びがまったくと言っていいほど機能していない。

 緑間はあまり視野が広くなくパスも得意ではないため、ボール運びには向いていない。

 黄瀬は経験が浅いためか相手のエースに完全に抑えこまれており、それどころではない。

 他の二人も個人技は得意なのだが、彼らはボールをもらってこそ本領を発揮できるタイプだ。

 帝光はパスが途絶えたことでリズムを失い、第一Q終了時点で14対21と帝光がはじめて追い上げる形になった。

 相手を追いかけるという試合展開、決して予想していなかったわけではないが想像以上に状況が悪い。

 これ以上相手のペースに合わせて流れを渡すわけにもいかず……

 

「第二Qからメンバーチェンジだ。黄瀬に代わり、白瀧を投入する」

 

 監督はここで白瀧の投入を選択した。

 そしてこれによってようやく帝光というチームが本領を発揮するようになった。

 

「もちすぎだ、くれ!」

 

 ダブルチームにつかまった司令塔に代わり、白瀧がボールを運ぶ。手渡しでボールを受け取ると、白瀧は瞬く間にコートを駆け上がった。

 相手のエースがマークにつくがドリブルではスピードが勝る白瀧に分がある。

 鋭いカットイン。敵の反応が一歩遅れて白瀧が突破した。すかざず敵のヘルプが入るが……

 

「そうなってくれればこっちのもんだ!」

「よくやった! 後は任せるのだよ!」

 

 すかさず白瀧は捉まる前にパスアウト。その先にいるのは緑間。外からゴールを射抜く。

 

「ちっ!」

「この野郎!」

「ナイッシュ、緑間!」

「ふん。これくらい造作もないのだよ。もっとパスを出すがいい」

 

 敵の舌打ちは意識に入れず、白瀧は緑間と声をかわしてディフェンスに戻る。

 一対一の形に持ってこれれば、相手の執拗なディフェンスを突破できれば後は帝光が有利なのだ。

 そして敵のディフェンスを突破することに関しては白瀧が誰よりも上手い。

 スピードとキレがあるドライブに加えてパスもある。さらに古武術の応用により、各動作の動きの違いをなくすことによって花宮の動揺を誘い、相手の包囲網を打破してみせた。

 花宮も対応を考えるが、白瀧を意識しすぎると他の四人が黙っていなかった。

 

「さあ、こっから逆襲といこうか!」

 

 たった一人の加入によって戦局は変わった。個々の力が折り重なるようになり、チームとなった。

 さらに帝光は第三Qから六人目(シックスマン)・黒子を投入し、さらに多彩なパスワークで敵を翻弄。調子を取り戻した“キセキの世代”も彼らの本領を発揮するようになった。

 第四Qが始まったときには120対38と相手を圧倒していた。

 さらに試合再開早々に白瀧がカウンターのワンマン速攻を決め、試合は完全に帝光のものとなっていた。

 

(どうやら杞憂に終わったようだな……)

 

 試合が有利に進み、これ以上ないほど順調である。

 何事もなくこのまま試合を終われることが出来るだろうと、緑間は胸を撫で下ろした。

 

「ちっ。ったく、やっぱりあいつ邪魔だな。あいつが出てこなければ自然と壊れていったはずなのに」

「……む?」

あいつがいる限り帝光は壊れない(・・・・・・・・・・・・・・・)。白瀧要がいる限り」

 

 駆け出そうとしたとき、敵の4番――花宮の呟きが緑間の耳に入る。声の調子から察するに諦めを口にしたようではなかった。これから何かをしようと企んでいるような、そんな表情だった。

 だが緑間にはその真意はつかめない。試合とはかけ離れた、壊れる・壊れないなど、一体何を意味しているのか。たしかに白瀧のチームプレイがなかったならばあのまま帝光は敵の罠に嵌まって自滅していたかもしれない。

 しかし『壊れる』などと、そのような深刻な事態のことが何故試合で起こりうるというのか。少なくともこの時の緑間は理解できなかった。

 

「おい。……次、やっぱりヤレ」

「ああ、ようやくか。いい加減待ちくたびれたぜ」

 

 そして花宮は白瀧のマークについていた選手に声をかける。

 短いやり取りでやはり緑間には内容はまったくわからなかった。だが会話が成り立っているところを見ると、事前に何か話していたのだろう。

 気にはなるものの、今はこの試合に集中せねばと意識を切り替える。

 攻守が入れ替わった。花宮からゴール下へとボールが通る。

 PFへと渡り、味方のスクリーンでマークをかわすとシュートを撃つ。

 だがドリブルの勢いを殺しきれなかったのだろうか、ボールはリングに激突する。

 

「リバウンド!」

 

 外れたボールに飛びついたのは白瀧。

 すかさずこぼれ球に反応した彼はボールが落ちる位置を予測し、跳躍した。

 相手も跳躍するが白瀧がボールを抑える方が早い。

 緑間もそれを見て、何事もないということを確認。すかさずカウンターに移ろうと体を反転させて走り出す。

 

「あーあー」

 

 しかし一歩目で足を止めた。

 パチン、と。突如誰かが鳴らしたスナップが聞こえたのである。

 

「残念。しゅーりょー――」

 

 視線を音がした方向へと向ける。その先にいたのは、先ほど自チームのエースと会話していた花宮だった。

 

「まさか……」

「あっ……がぁ、あああああああああ!!!!」

「なっ――――ッ!!??」

 

 緑間がそれを理解したのと同時に、白瀧の悲鳴が響き渡った。

 すぐに声の主を、白瀧を振り返る。――リバウンドを制したはずの彼は、コートに倒れていた。

 右肩を押さえ、苦しそうに身を悶えている。口から吐き出されるのも呻き声だけだった。

 

「あ、ああっ。……ぐっぁ……」

「レフェリータイムッ!!」

「ッ、白瀧!」

「白瀧君!!」

 

 白瀧の負傷を知った審判が時間を止める。それによりコート内の選手だけでなくコートの外からもチームメイトが駆け寄った。

 

「……馬鹿な。なぜ白瀧が? なぜ、こんなことに……」

 

 そんな中緑間は何が起こったのか理解できず、その場で呆然と立ち尽くす。すると先ほど指を鳴らして歪んだ笑みを浮かべでいた、花宮の呟きが聞こえた。

 

「あれれれれー? 何だ、どうしちゃったんだろう?」

「ッ――!!」

 

 感情がまったくこもっていない声。あまりにもわざとらしいその発言が、今のプレイの真実を物語っていた。

 つまり――

 

「貴様ら、まさかわざと白瀧を狙ったのか……!」

「はぁ? おいおい、言いがかりはよせよ。事故だよ事故。ゴール下での接触なんてよくある事だろ? そんなに声を荒げるような、たいしたことではないだろ?」

 

 最初から白瀧を狙っての行動だということ。チームの中心のような役割を果たした白瀧を潰すために。

 曖昧な答えを返すだけだが、しかしその表情にはやはり歪んだ笑みしかない。……答えは明白だった。想像通り、この男はわざと白瀧を傷つけるために仕掛けたのだと。

 

「貴様らは!」

「待ってください、緑間君!」

「ぐっ、黒子――!?」

 

 今にも掴みかかろうとする緑間だが、それを止めたのは黒子だった。

 「何をするのだよ!」と講義するが黒子は首を横に振り、そして白瀧が倒れている方向へと視線を促した。

 

「ここで緑間君が問題を起こせば帝光が不利です。白瀧君の思いまで無駄にするわけにはいかないでしょう!?」

「ッ……ちっ」

 

 試合半ばで倒れただけではなく、その白瀧の思いまで踏み躙るなど、できるはずもない。

 緑間は力をこめた右腕を降ろして歯を食いしばった。仲間が思いとどまったことで黒子も手を離して共に白瀧の元へと向かう。

 

「よかったな。怪我をしたのがベンチ(・・・)のそいつで」

 

 最後の敵の一言は聞こえなかったふりをして……。

 

 

――――

 

 

 白瀧が負傷交代したものの、試合の勝敗はもはや変わりようがなく、帝光が勝利を収めた。

 だが白瀧の怪我は重傷であった。その後の帝光中は白瀧抜きで大会に挑むことになる。

 次の試合にて、帝光のエース・青峰が才能の開花により苦悩するも、チーム全体でカバーすることで勝ち進み、見事二連覇を果たした。

 そして大会終了後、三年生達が引退する。それに伴って一軍の再編成が行われるのだが……

 

「白瀧、治療期間中であろうと私はお前を二軍に落とすことはしない。一軍に残り、今後もチームを支えて欲しい」

 

 監督は治療中の白瀧を降格することはしなかった。これまでと同様に一軍にいてほしいと、白瀧にはっきりと嘆願する。

 その視線の先にいる白瀧は、右肩を三角巾とバストバンドを用いてお腹の前で固定していた。

 ――『肩関節脱臼』。これこそがあの忌々しい試合の後、白瀧が診断された症状である。若い者にこれが起きると再発が非常に起きやすく、今回は四週間の固定による保存療法を命じられた。さらに固定が終了しても数週間は運動ができない。当然ながらその間バスケをすることなど到底不可能である。

 それでも、それがわかっていてもなお監督は白瀧を降格することはしなかった。

 

「今、俺はまともにバスケをすることはできませんが、それでよろしいのですか?」

「構わない。『キセキの世代』のことを考えてもお前は帝光に欠かせない逸材だ。お前は青峰や黄瀬達にはない、チームを支える精神的支柱のような役割を果たしている。

 部員はお前のことを頼りにしているのだ。お前はいるだけでも意味がある。外から部を見て、そして部員を支えてやって欲しい。これはお前にしかできないことだ」

「……わかりました。監督のご期待にそえるよう、最善を尽くします」

「そうか。ありがとう」

 

 監督の絶対的な信頼が感じ取れる言葉だった。

 白瀧は少しの間だけ目を閉じて考えると、了解の意を返す。

 それから今後のことについて細かい話を済ませると、白瀧は部屋を後にした。

 

(『いるだけでも意味がある』、か)

 

 脳裏に監督が口にした言葉が蘇る。部室まで歩いていく途中、白瀧の表情は優れなかった。

 

(俺を励ましてくれているのでしょうが、監督。それは俺のことを選手としては期待していないということではないのですか? もはや『キセキの世代』のことだけを選手として期待しているのではないですか?)

 

 信頼されていることは嬉しいが、できれば違う分野での信頼が欲しかったのだ。

 

(バスケをできないバスケットプレイヤーに、一体どれだけの価値がある? レギュラーの座を失った俺には、プレイでしかチームを支えることができないというのに……)

 

 今白瀧はバスケをできない。そして今まで白瀧は自身のバスケでチームに貢献してきた。

 そんな彼がバスケ以外でチームを支えることなど、監督が話すほどの価値が自分にあることなど考えられなかったのだ。

 

(俺は選手だ。一人の選手として皆と共にいる。仲間を陰から支えるだけではなく、共に肩を並べて戦いたいんだよ……!)

 

 足取りがどんどん重くなっていく。前を向いて歩いているものの、どこを見ているのかわからない。今の白瀧にはそんな危険性があった。

 

「…………」

 

 そんな白瀧の後姿を、緑間はただじっと見つめていた。

 

 

――――

 

 

 それから約三週間後。

 その日の練習が終わった後、緑間は普段の打ち込みを行っていた。傍には白瀧もいて固定されていない左肩でパスを出し、練習を見届けている。

 今は何もしていない方が辛いらしく、少しでもバスケに関わりたいらしい。

 

「最近、練習してても活気がないよな」

「……そうだな。控えメンバー達の空気が重々しいのが気がかりだ」

 

 白瀧が寂しそうに呟く。緑間は短く肯定の返事だけを返し、シュートを続けた。

 この頃なぜか練習中にチームメイト内で小さな騒動が起こっているのである。

 理由は、レギュラーとそうでないものとの力の差が激しくなったこと。

 三年生が引退したことで、“キセキの世代”は完全に帝光の中で最高戦力となった。

 しかしその五人があまりにも強すぎる。周りとの差が大きすぎる。――いや、大きくなってしまった。

 切欠はエースの覚醒にあった。突如才能が開花したかのように周囲を圧倒するようになった。

 誰も止められない、誰も敵わない。どうしようもない。

 相手をするチームメイトはその力の差に諦めるようになってしまい、そしてエースもまた対抗できるライバルがいないという現実に絶望を感じていた。

 

「やっぱり、青峰がいないせいかな……」

「やつだけに限った話ではないのだよ。黄瀬なども練習を休む日が増えた」

 

 そしてその結果、帝光のエース――青峰が練習を欠席するようになった。何もせずとも勝てるのに、これ以上練習をしたら余計に上手くなり、敵がいなくなることでバスケがつまらなくなる。そう考えてしまったのだ。

 さらに青峰につられるように、同じく急成長を果たした黄瀬を含めた二人のレギュラーも練習を休みがちになった。才能があれば勝てるとそう考えたのだろう。

 レギュラー不在という現状はチームに大きな影響をもたらす。この現状で士気を維持することは難しいものであった。

 

「何を考えているのか俺には到底理解できん。人事を尽くさぬやつに、天命が下るものか――!!」

 

 緑間はその三人に怒りを抱いていた。副部長という責任のある立場になったから、というだけではない。努力することの大切さを知る彼が、練習をサボるような選手達を許せるわけもないのだ。

 また一発、怒りがこめられたボールがリングを射抜く。

 

「俺も練習に参加できていれば、無理やりにでも勝負を仕掛けて止めたんだけどな」

「……やめておけ。今下手に無理をして、治療期間を長引かせる必要などないのだよ」

「ははっ。まあそうだよな」

 

 乾いた笑いが体育館に響く。

 ……青峰達が練習に来なくなった後、緑間は白瀧と行動を共にする時間が極端に増えた。

 まともに練習に参加しなくなった青峰よりも、バスケに何も思い入れがない紫原よりも、才能に頼り切る黄瀬よりも、緑間は努力を知る白瀧に感心を寄せていたのだ。

 怪我をしていても練習には顔を出す上に、チームのために声を出したりマネージャー達と共にサポートに回る。

 少しでもチームのためにと、健気に働く白瀧を評価したのだ。チームのために人事を尽くすその姿は見ていて緑間も良い気分になる。

 

「でも本当に皆凄いよな。俺がいない間に、皆がどんどん遠くに行ってしまうような感覚だよ」

 

 仲間が突如強くなる中、練習に参加できない現状に焦りを抱いていたのだろう。

 白瀧は胸中の不安を打ち明けた。きっと緑間以外の人間ならば明かさない本当の心の内側を。

 

「ふん。人事を尽くさぬ者達が強くなったところで意味はないのだよ。それに、お前ならどうせすぐに追いつくことになるだろう」

「はは。そうだと良いんだけどな」

 

 緑間は白瀧の不安を消し去るようにと励ましの言葉を送った。

 決して大げさではないし嘘でもない。緑間は本当に白瀧ならば追いつくと信じているのだ。

 そう言う緑間とて、今も彼らに追いつくようにと努力を続けている。また同じスタートラインに立てればという、緑間なりの思いやりがこもっていた。

 

「そう信じるよ。俺だってまた皆とバスケをしたい。……だけど同時に、そう言う緑間も俺よりずっと先に進んでしまうんじゃないかって、最近は不安になる」

「俺がだと?」

「ああ。他のやつらがなぜか連続して時期が重なっているし。しかも緑間は才能だけでなく、常に練習(シューティング)だって欠かさずにやっているんだ。だからもうそろそろ上の段階にも進んでしまうでのはないかって」

 

 シューティングを観察しながら、白瀧は冗談半分で緑間に話す。緑間の才能もそろそろ開花するのではないかと。

 なぜか“キセキの世代”と呼ばれた者たちの急激な成長は時期が重なっている。ならば緑間にも新たな力を得る契機が訪れるのではないかと、白瀧はふと考えたのだ。

 

「何を馬鹿なことを言っているのだよ。……ふむ。だが、まあそうだな。確かに俺も少し試してみたいというものがある」

 

 根拠もないその意見、笑って流すのは簡単だが。少し考えると緑間はシューティングを一時中止し、ボールを手に取りハーフラインまで歩いていく。

 実は緑間はチャレンジしたいことがあった。自分だけなら実行に移そうとは考えないことを。

 

「一応聞いておくけど、何をやっているんだ?」

 

 ハーフライン上に立ち、バスケットを見る緑間。

 それを不審に思った白瀧が問いかける。緑間がリングよりもずっと遠いところでシュートを撃とうとしているのだから当然の反応だ。

 

「……これまではシュートの正確性を重視していたため、このようなチャレンジは考えたとしても実行しようとは思わなかったのだがな」

「いや、そりゃハーフコートのシュートだなんて誰も思わないって」

「お前が言ったことなのだよ。上の段階にも進めるのではないかと」

 

 いたずらが成功した少年のように緑間は笑った。

 あくまで冗談であり、まだまだ自分が上に行くのは早いのだと、まだ近くにいるとそう白瀧に示そうとした。

 それでもやる以上は人事を尽くすと緑間は力を込め――シュートを撃つ。

 いつものように、綺麗な放物線を描いたシュート。それは緑間の予想通りの軌道を進む。

 しかし――緑間の予想を裏切って、リングを射抜いた。

 

「なっ!?」

 

 ……その挑戦は冗談のはずだった。入るとは思っていなかった。しかし現実、不可能が可能となった。

 シュートを撃ったはずの緑間が驚愕する。咄嗟に自分の手を見つめ、シュートの感覚を確かめている。

 

「ぁっ……ぁ」

 

 そして隣で見ていた白瀧もまた当然驚きを隠すことはできない。

 唖然とし、言葉に詰まる。共に頑張れる相手だと思っていた緑間までもが覚醒したという事実が、心を深く抉った。

 ――“キセキの世代”は、全員がもはや届かぬところに行こうとしている。俺が停滞している間に、はるか高みへと……!

 

「ハハッ……ハッ、ハハハハ!!」

「……ッ!」

 

 耐えられずに白瀧の口から笑い声がこぼれだした。

 緑間もその声で我に返り、白瀧を見る。

 

「ハハハハ、ハハハハハハハハ!!」

「白、瀧……」

「ハハハハ……アハハハハ……ハハ、ァッ……」

 

 壊れた人形のように笑い続ける白瀧。酸素不足で息が苦しくなり、ようやく笑い声が途絶えた。

 やがて笑みを浮かべたまま顔を上げ、視線を緑間へ向ける。笑っているのに、ただいつものように笑っているだけだというのに、緑間はその笑顔を見るのが怖かった。何かが――いや、今まで共に築いてきたもの全てが壊れてしまいそうに思えたから。

 

「すごいよ! すごい、すごいじゃないか緑間! やっぱりお前達は天才だよ!」

「いや、違う! 俺は、俺はただ……」

「何を謙遜しているんだよ、お前らしくもない。もっと誇っていいんだ。俺にとっても、チームメイトが強くなることは嬉しいことなんだから。だから、だか……ら……?」

 

 緑間は必死に否定しようとするが、白瀧がそれを遮った。

 もっと誇れと、もっと自信を持てと。もっと余裕を持てと。

 白瀧はひたすら緑間を褒め称えた。いつの間にか自分よりもずっと前に走り去っていた友を、ひたすら褒め称えた。

 

「……あ、れ……?」

 

 だが、突如としてその声は止む。

 

「あれ? あれ? な、んで?」

 

 視界がゆらりと揺れ、声が掠れはじめる。

 白瀧は自分でも自分の状態が理解できないのか、頭の上に疑問符を浮かべた。

 

「何でだろ? 嬉しい、ことなのに。……俺は、喜ばなきゃいけないのに。……どうしちゃったんだよ俺?」

「……」

「どうしてだよ? ……どうして涙が、止まらない……!?」

 

 何かわからないものがこみ上げ、とっさに左手で目頭を押さえる。自然と白瀧の目から涙が溢れ出した。

 チームを思う白瀧にとっては緑間の覚醒は嬉しいことであるはず。選手が強くなれば自ずとチームも強くなるのだから。しかしそう考えても、堰を切ったように涙が止まらない。

 ――まさか友の成長を憎むような、そのような醜い男に成り下がってしまったのかと思考がよぎった。

 

「ごめん緑間。……ごめん、ごめん!!」

「ま、待て白瀧!」

 

 そんな自分を許せなくて、それだけは耐えられなくて、友に今の無様な姿を見せたくなくて。白瀧は体育館から飛び出して行った。

 放っておくわけにはいかず緑間もその後を追う。

 しかし速さに関しては白瀧の方が上。緑間はやがて彼の姿を見失ってしまう。仕方がなく、緑間は以前主将に聞いた、白瀧が思い悩んだときに頻繁に行くという場所――帝光中学付近の土手へと足を運んだ。

 

 できるだけ急がなければと、緑間も必死に走る。

 チームメイトに呼びかけようとも思ったが、今の白瀧の精神状況を考えるとそれは駄目だという考えに至った。ゆえに単独で、土手へと向かう。

 やがて目的地にたどり着くと――白瀧が座り込んでいる姿が視界に入った。

 体育座りでどこか遠くを眺めている白瀧。瞳から流れていた涙は止まっているが、死んだような顔をしている。

 心配になった緑間はすぐ後ろまで歩み寄る。すると緑間が声をかけるよりも先に、彼の接近に気づいた白瀧から問いかけがあった。

 

「なあ。お前の目には、俺の姿は惨めに映っているか?」

「……」

 

 振り向く事無く、顔を見る事無く問いかけたその問いに返答はない。

 

「ああ、そうだろうな」

 

 無言。それこそが答えだと察した白瀧は、さらに話を続ける。

 

「緑間、もう俺のことを気にかけなくていい。お前までこんなところで立ち止まるな。お前も天才だ。もっと先に行ける。

 本当に俺のことを考えてくれるのならばもっと先へ進んでくれ。そうでなければ俺は本当にチームの足かせとなってしまう。それだけは、耐えられないっ」

 

 今白瀧はチームのために戦えない。それなのに仲間の足を引っ張るわけにはいかない。

 再び白瀧の目から涙が溢れてきた。悔しさか、絶望か、あるいはそれ以外のものか。一体この涙は何を意味しているのか。

 

「大丈夫だ。きっといつか必ず追いついてみせる。必ずもう一度コートに帰る。

 だから……今は、もう後ろを振り返るな。立ち止まっている者に手を差し伸べなくて良い。同情や哀れみは、余計に、苦しいんだ……!」

 

 白瀧は下唇を力強くぐっと噛み締め、こみ上げる感情を堪えた。

 やはりその涙の意味は緑間にはわからないが、それでも緑間はこの言葉を聞いては立ち止まれない。せめてこの白瀧の願いを叶えてやらなければそれこそ白瀧の道が途絶えてしまう。

 結局その夜、緑間は一度も白瀧と言葉をかわすことなく後ろに向き直り、帰路についた。

 

「……そうだ、それでいい。お前達は勝者だ。進み続けろ。そうすることで敗者()が報われる……」

 

 どんどん小さくなっていく足音。それにつれて白瀧の顔も伏せていく。やがて目から滑り落ちた大粒の雫は地面に落ち、不恰好な円の模様を描いた。

 

「先に行け。きっと、すぐに追いつくから……! もう一度、お前達と、共に……必ず!!」

 

 彼の心からの叫びを耳にするものはいない。

 弱々しく震えた声で。しかしそれでいて力強く白瀧は再起を誓う。

 

 ――そしてここから先。白瀧がキセキの世代(彼ら)に追いつくことは、二度となかった。

 

 

――――

 

 

 “キセキの世代”と呼ばれた彼らが覚醒し、全盛期を迎える時期に、白瀧はただ見ていることしかできなかった。

 コートの外で練習を見続け声を張り上げる白瀧。だが時間の経過に比例して他の選手達との実力の差が広がっていくにつれ、徐々に彼の瞳に意識の色が消えていく。希望の光が消えていく。声が小さくなっていく。

 

 チームを思うからこそ共に戦うことを選び、チームのために戦ったがゆえに敵に狙われた。 

 そして他の者よりも力があるからこそ諦めることができず、しかしキセキの世代には及ばないからこそ絶望した。

 それでも立ち止まらず、這い蹲ってでも進もうと、一つの約束だけが白瀧を動かす。

 彼のそんな姿勢を見てある者は敬い、ある者は忌み嫌い、ある者は信頼し、ある者は希望を見出した。

 そんな中、ただ一人だけ――緑間だけは違った。なぜ他の者達はそのような目で白瀧を見ることができるのかと疑問を抱いた。――白瀧の姿が緑間には、哀れに見えたのだ。

 

 ――なぜやつがこのような事態に陥ったというのだ?

 緑間は白瀧と共に過ごした時間を思い出すたびに悩み続けた。その問いに答えられる者はいない。

 なぜ人事を尽くし仲間を思う者(白瀧)がバスケをできないのか。なぜ才能に溢れ力を持つ者(青峰や黄瀬、紫原達)がバスケに尽くすことができないのか。皮肉としか言いようがなかった。

 もしも白瀧が個人プレイに走るような男だったならば、少なくともここまで苦しむこともなかっただろう。それどころかあの負傷とてなかったはず。……それゆえに余計に滑稽だと思えてしまった。

 

 ――何が間違っていたのだろうか。どこで誤ったのだろうか。

 後悔の念は何度も浮かび上がってくる。

 白瀧がチームプレイに徹したというのに、何故仲間である俺自身の手でやつをさらに追い詰めることになった?

 力の成長、そのタイミングが悪すぎた。何故このような時に、何故今さら起こってしまう!? せめて一人の時に起こっていれば白瀧が本当に挫折することはなかったはず。あるいはあと少し早く、あの試合の時にこの力があれば、白瀧が敵に潰されることもなく勝利を手にすることができたはずなのに……!?

 

 そう考えて、一つの結論に至った。

 何が、どこで間違っていたかだと?

 ……いや違う、それどころの話ではなかった。最初からだ。白瀧の思いが、チームプレイに徹したことが、それこそが全ての元凶。

 チームプレイのように『誰かと協力すれば』と綺麗事を並べるからこそ、人は勘違いする。どんな相手にも立ち向かえると。どこまでも共に行けると。

 だがそれでは駄目なのだ。それでは越えられない壁に激突する。そして性根の腐った敵に狙われる。

 そんなことならば最初から他人を頼ることなど、信じることなど俺達はするべきではないのだ。絶対的な力をもってして相手を黙らせるのみ。一人で全てを打倒する! それこそが俺達が勝ち続けるための唯一の手段だ!

 

 全て同じであった。

 白瀧が緑間を変えようと思っていたのと同じように、緑間もまた白瀧を変えようと思っていた。

 しかし抱いていた思いはまったく反対のもの。白瀧が緑間にもう一度チームプレイを思い出して欲しいと望んだことに対し、緑間は白瀧がもう二度とチームのために戦うことはなく、個人で力を発揮して欲しいと望んでいた。

 相反する二人の考えが一致するはずもない。そして緑間がその意見を白瀧を前にして直接口にすることもまた、できるはずがなかった。その一言は下手すれば、白瀧が今までしてきたこと全てを否定してしまう可能性もあったから。

 だからこそ緑間は言葉にすることはなく、ただ行動で証明する。己のあり方を、バスケの真髄を。

 ――『人事を尽くして天命を待つ』。どうか人事を尽くした者に、いつの日か天命が下るようにと。




怪我について補足を。
今回出てきた白瀧の怪我、『肩関節脱臼』とは実際のバスケでも起こりうる怪我の一つです。
最もわかりやすい例は――ディフェンスのハンズアップですかね。両手を挙げている際に、相手の浸入を止めようとして逆に腕ごと後ろに持っていかれる……といった具合に。
白瀧が直後に叫んでいますが、肩の痛みはとても激しいそうです。
話にも出ましたが、再発が起こりやすく癖になりやすいという非常にやっかいな怪我です。

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