ゲヘナクソ雑魚TSサキュバス   作:TSサキュバス流行れ

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公害と言っても差し支えない女

 

 

 

 時速60キロメートルで走る車から手を出すと女性の胸の感触になる。という話を聞いたことはあるだろうか? 

 この俗説は、走る車から手を出したときにかかる風圧を定量的に計算し、女性の胸の重さと比較したものだ。時速60キロメートルで手のひらにかかる風圧は、女性でいうDカップの胸の重さに等しいとされている。

 

 この噂を中学のクラスメイトからの話で知り苦節数年。俺はそれを確かめることなくこの世を去った。

 数年という言葉から察しが付くと思うが、免許を取れる歳になる前、具体的には大学受験を控えたときくらいに死んだということだ。無念である。

 そのクラスメイトは親の運転する車で試したらしいが、当時思春期俺はそこまで恥を捨てることは出来なかったのだ。

 

 ……何? 平凡な男子高校生の過去話なんて興味が無いって? 

 

 そりゃそうだ。本題に入ろう。

 今こうして思考ができる現状を見て分かる通り、俺は今も生きている。もちろんその交通事故から生き残ったというわけではなく、もっとオカルトチックで、信じがたい現象によって。

 

「あうあー」

 

 そんな声にならない声が部屋に響く。

 先ほどから目に映るのは木で作られた柵のようなものと、動物を模したカラフルな絵が吊るされながら回転するモビールのみ。その他にはまっさらな天井と窓から差す光しか見えない。

 

 もちろん、俺だってこんな退屈な光景が見たくて見ているわけではない。

 起き上がったり横を向こうとしても、体が思うように動かないのだ。

 

「うやぁ~」

 

 呂律が回らない口を動かしながら両腕を上げると、クリームパンの如くムチムチとした小さな腕が視界に入る。

 その拳の大きさは直径5センチメートルにも満たないし、腕の長さも非常に短い。少なくとも、成長期を終えた男子高校生の手では無かった。

 

 ここまで言えばわかるだろう。平たく言えば俺は転生したのだ。

 

 ……意味が分からないって? そんなの、気がついたら視界一面に知らない男の顔があった俺の方が言いたいよ。

 傍から見たら父親が子供を抱いている光景だったのだろうが、当時の俺からすれば恐怖映像でしかなかった。

 

 だが、志半ばで非業の死を遂げた俺にとって、この転生はまさに神からのプレゼント。

 状況を理解した俺は、新しい赤子の体で前世の悲願を叶えようと強く決意した。

 

 

 

 そんな決意するほどの夢とは一体何だって? そりゃあ────女の子とエッチすること以外ないだろ。

 

 

 

 あんな俗説に興味を示している時点で、俺が女体に夢見る童貞ということくらい容易に想像がつくと思う。

 小学校では男友達と公園を走り回り、中学校では思春期というデバフに加えて部活、そして高校は男子校……スリーアウトと言っても過言じゃない。

 セックスはおろか、女性と付き合ったことすら無い俺にとって、童貞を卒業したという友人の話は憧れだった。

 

 だが、だからといって校外で彼女を作ろうという気も起きず、大学に行ったら女遊びをするんだと息巻いて受験勉強をしていたタイミングで死んだのだ。そりゃあ死んでも死にきれないだろう。

 

「……あら? あなた! 目を覚ましましたよ!」

 

 ベビーベッドの上で両腕を振り回すと、存在をアピールしていた俺の顔を母親と思わしき人物が覗き込んできた。ぱっちりとした二重まぶたの中に納まる透き通った青い瞳と目が合う。

 他にも見るからに手触りの良さそうなサラッとした金色の髪、きめの細かい白色の肌には荒れの一つもない。筋の通った高い鼻筋は顔に美形特有の凹凸を生ませており、薄桃色の小さな唇は穏やかに弛んでいる。

 

「ほーらママですよ~」

 

 母親は丁寧に俺の背中と後頭部に手を回し抱き上げてきた。先ほどよりも近い距離でその顔が目に映る。

 うむ。前世を含めてもこれほどまでの美人は見たことがない。至近距離に顔を寄せられても慌てることなく思考ができるのは、彼女と俺が血縁関係にあるからかは定かではない。

 気になるところといえば、彼女の頭上に浮かぶ特徴的な形をした天使のような輪っかと、背中から見える馬鹿デカい天使の羽だろうか。

 

「あう、あぅぁー」

 

「あら、ヘイローが気になるんですか?」

 

 抱き上げられたまま頭上……ヘイローに手を伸ばす俺に、母親が笑って頭を下げる。

 まるで太陽をデフォルメしたかのような形のヘイローの端を触ってみるが、実体がないようで指がすり抜けてしまった。

 

「あなたにもありますよ。ほら」

 

 俺を抱きかかえたまま部屋の一角に置かれていた馬鹿デカい鏡の前に立つ母親。

 そこにはたしかに、俺の頭上に浮かぶヘイローがあった。……おい、ちょっと待て何だこれ!? 

 

「!?」

 

「ふふっ、お父さんに似たんですかね? こんな形のヘイローは見たことありません」

 

 鏡を見て絶句する俺を見てどう思ったのか、上品に笑ってそんなことを言う母親。

 俺のヘイローは立体的なピンク色のハートを中心として、その左右から茨のような、蝙蝠の羽のようなものが渦を描いて広がっている。

 そう。それはまるでエロ漫画でへその下に書かれている子宮の形を模した淫紋のような、極めて卑猥な形にかたどられていた。

 

「お。起きたみたいだな。俺にも抱かせてくれよ」

 

 部屋に入ってきたのは起き掛けに頬ずりをしてきた、ヤギのような二本の角を生やした黒髪の男。この人も母親に負けず劣らずド級の美形であるが、男の容姿に興味はないため詳細は省くとする。

 ……あ。でもこの人にはヘイロー無いんだ。

 

「……大人しいな。普通赤ん坊ってこんなもんなのか?」

 

「さあ? 同級生の子は四六時中泣いてるって言っていましたが……人によるのかもしれませんね」

 

 すると父親は俺の額に手をやり、薄っすらと生えている前髪を上に持ち上げた。

 

「おっ、角生えてきてんじゃん。前見たときはもっと小さかったよな」

 

「そうですね。尻尾と羽も伸びてきてますよ」

 

 緩い着心地のパジャマの背中に手を入れた母親が肩甲骨辺りをまさぐってくる。すると明らかに何もないはずの場所から、指先でさするような感触が伝わってきた。

 不思議な感覚にくすぐったさを感じながら鏡を見ると、服を捲った下には確かに蝙蝠のような小さな羽が生えていた。

 

「んー……悪魔の特徴が露骨に出てるな。これだとトリニティに入学させるのはキツいか」

 

「あなたの種が強すぎたんでしょうね。何せ、私はわるーいインキュバスに種付けされたんですし」

 

 申し訳なさそうに頭を掻く父親に対し、母親は蠱惑的な笑みを浮かべながら身を寄せ、その頬にキスをした。

 ……仲睦まじいのは結構だが、今結構衝撃的な発言したよなこの人。何インキュバスって

 

「……そうだな」

 

「あら? 何か言いたげなご様子ですね? まさかこの期に及んでどちらから襲ったとか、そんなお話を始めるおつもりですか?」

 

「いや、そういうわけじゃないんだが……良いのか? この子をゲヘナに入学させても」

 

 トリニティとかゲヘナとか、そんな話が飛び交っているが、それよりも前にインキュバスについてもっと詳しく教えて貰いたい。

 

「私に似たらトリニティ、あなたに似たらゲヘナに入学させる。そういう約束だったでしょう? あなたと結婚したんですし、今更悪魔に偏見などありませんよ」

 

 なるほど、何となく理解できた。

 恐らくこの世界には母親みたく天使のような特徴を持つ人間と、父親のように悪魔のような特徴を持つ人間がいるのだろう。父親にヘイローが無いのは悪魔故だろうか? 

 

「そうか。まあ、どちらにせよ一番はヘイローを持って生まれてくれたことだよな。キヴォトスの外の、それも普通の人間ですらねぇ俺との子だしよ」

 

「ふふっ、そんなに心配だったんですか?」

 

「そりゃそうだろ。逆に何でお前はそんな堂々としてれるんだよ」

 

 呆れた様子で問いかける父親に対し、母親は俺の頭を優しく撫でた。

 

「こうして、元気に生まれてきてくれただけで私は嬉しいんです。ゲヘナなら伸び伸びと育ってくれるでしょうし、かえって良かったのかもしれませんよ?」

 

 そのあまりにも穏やかで嬉しそうな声色に、思わず涙腺が緩みそうになる。

 それと同時に、本来生まれてくるはずの子供の精神を乗っ取ってしまったという、罪悪感が強く心を締め付けた。

 童貞を卒業するぞ! なんて息巻いていた自分が嫌になる。

 

「うっ……うええぇぇえ!」

 

「あらあら、オムツかしら」

 

 精神が肉体に引っ張られているのか、涙と共に叫びを上げる口を塞ぐことは叶わない。

 そんな矛盾する言動の中で、俺は()()()()()()()()()()()()()()()のであった。

 

 それは、この2人の子供としての人生を、生まれるはずだった子の分も含めてしっかりと謳歌するということ。

 他所の知らない人間が入り込んでいたことは絶対にバレないように、恥ずかしくても年相応の子供のように日々を過ごそう。そう固く胸に誓うのだった。

 

「よーしよし。今交換してあげますからね~」

 

 俺をゆっくりとベビーベッドに乗せ、パジャマのズボンを脱がした母親……()()()()は、隣でその様子を見る()()()()の肩を叩いた。

 

「ここからはあなたがやってください。私が居ないときでも出来るようにしてほしいので」

 

「もちろんだ。よし……」

 

 ……良かった。いくら決意を固めても、いきなりであったばかりの美女に全裸を見られるのは恥ずかしい。

 いや見られてるのは変わりないんだけど、気持ち的な問題でだ。

 

「あ、間違っても淫気で発情なんてさせないでくださいね? 昔の私みたいに」

 

 ……インキュバスであるお父さんと、お母さんとの出会いは中々劇的なものだったようだ。

 というより、いくら言葉が分からないとはいえ、赤子の前で言う発言じゃないと思うんだけど。

 

「させねぇよ!? ()()()にするわけないだろ馬鹿!?」

 

 お父さんも丁寧な口調で暴走するお母さんに抗議するように叫んでいる。

 インキュバスの方が理性的とは中々不思議な状況だが……ん? 

 

「んぁ?」 

 

 

 

 ────今()って言った? 

 

 

 

「ふふっ、冗談ですよ。そんなに大声を出したらリリスがビックリしてしまいますよ?」

 

 意地悪に笑うお母さんから初めて明かされた俺の名前。

 リリスという明らかに女の子に付ける名前に、先ほどの実の娘という発言。

 

 それを聞いた俺の脳内には、一つの最悪な可能性が浮かんで消えなかった。 

 ……いや、そんなわけないだろ。きっと聞き間違いに決まってる。

 

「まったく……ほら、いい子だから大人しくしてるんだぞ」

 

 そう自分に言い聞かせる俺に気づくわけもなく、オムツを固定するマジックテープが剥がれる音が部屋に響き渡る。

 そこで、俺は露わとなった自分の下半身を見て、深い絶望に落とし込まれるのであった。

 

「びえあああああああああ!? あああぁぁぁぁああ!!」

 

 少しだけ盛り上がったお腹を超えると見えて来るのは鼠径部。第一次性徴すら迎えていないその股座に毛が生えている訳もなく、その奥にはベビーベッドの柵が鮮明に映し出されている。

 正直そんなのはどうでもいい。問題なのは、そこに見えるはずの()()の面影が、一切合切消えてなくなっていた事なのだから。

 

「……あなた?」

 

「違うぞ!? 俺は何もしてない!」

 

 何を勘違いしたのか、お母さんが見るも恐ろしい顔でお父さんを睨みつけていた。

 かなり不憫なタイミングで泣き出してしまったが、生憎とそれを抑える余裕なんてありはしない。

 

「ど、どうしたんだリリス! そんなに俺が嫌なのか!?」

 

 ごめん、そうじゃないんだお父さん。

 都合がいいかもしれないけど、こうやって年相応に涙を流し続ける俺を、どうか今だけはどうか許してくれ。

 

 ま、まあ美形に生まれたんだし? 中学生くらいになったら女遊びしてもいいよね? ……なんて考えていた罰が当たったのだろうか。

 もしそうだとしても、神様ってやつはかなり意地が悪い奴なんだとしか思えない。だってそうだろう? ────

 

「ふええええぇぇぇええええ!」

 

 

 

 

 

 ────二度目の人生を、サキュバスとして生きろと言うんだから。

 

 

 

 

 

 ♡♡♡

 

 

 

 

 

 D.U.内にあるとあるデパートにて、夜伽(よとぎ)リリスは両親に連れられとある店へと足を運んでいた。

 

「休日だからか随分と人が多いな」

 

 集団から頭一つ抜けて高い視点で奥を見渡した男・リリスの父親である夜伽アスモは、肩の上に乗せたリリスが落ちないように足を支えながら呟いく。

 父親の肩に座って足を揺らすだけのリリスからは実感できないだろうが、自らの足で歩くとなったら瞬く間に人混みに紛れて迷子になるであろうほど、デパート内は人でごった返していている。

 そんなアスモと手を繋いで歩く女・夜伽ホノカは苦笑いを浮かべながら返した。

 

「3月ですし、皆さん進学や入学に向けての買い物に来ているのでしょうね。ここまで人が多いと申し訳ない気持ちになってしまいます」

 

 ホノカは背中から生えた6枚の大きな天使の羽を見てため息を吐く。すれ違う人々の邪魔にならないようできる限り折りたたんでいるようだが、それでも時折道行く人々の顔や体と接触しては小さく謝罪をするという流れを繰り返していた。

 そんな中アスモはホノカと繋いだ右手を離し、無遠慮に妻の羽を手のひらで撫でまわす。

 

「ひゃっ! っもう!」

 

「相変わらずデカい羽だな。……リリス、ちゃんと尻尾と角は隠すんだぞ?」

 

 ホノカの抗議するような視線を受けながら、アスモはそれを無視して自身の頭に腕を回して体を固定しているリリスに問いかけた。

 

「うん! 分かってるよ」

 

 掴んでいた手を自分の頭の上に持っていき、ペタペタと感触を確かめるリリス。普段ならそこにあるはずのものが無いことを確認し、ほっと一息をついた。

 

「偉いぞ。人前では正体を隠すのが一人前の淫魔だからな」

 

 リリスの頭を撫でるアスモの声は、その小ささも相まってデパートの喧騒に包まれて消えた。

 

「ホノカ様?」

 

 それから程なくして、リリスたち3人……正確には、リリスの前を歩くホノカに、一人の子供を胸に抱いた女性が話しかけてきた。

 アスモとリリスは心当たりがないのか首を傾げていたが、名前を呼ばれたホノカは心当たりがあるのか、嬉しそうに声を上げて駆け寄って行った。

 

「お父さん、あの人だれ?」

 

「……お母さんの同級生」

 

 アスモの額に手を置いていたリリスは、何故かそこからから汗がにじみ出ていることに気が付いた。

 ほのかに湿る手のひらに不快感を覚えながら、リリスは真下に立つ男を睨みつけた。

 

「知ってるの、知り合いの人?」

 

「……いや。あいつのことを様付けで呼んでたからな」

 

「ふーん」

 

 何かやましいことでもあるのかと追及するリリスだったが、納得のいく理由を説明されは深追いはできない。

 年の割に賢い子供だと認識されているが、それでもリリスは幼稚園にすら入っていない幼児なのだから。それ以上問いただすと違和感を持たれてしまう。

 

「一回だけだし流石に覚えてないとは思うんだが……」

 

 そんなアスモの言葉が人々の喧騒に紛れて消えていく。

 

「? 何か言った?」

 

「いやっ、何でもないぞ!」

 

 誤魔化すように肩を揺らして遊びながら、アスモはホノカの元へと歩いていく。

 

「そろそろ銃を持たせても良い頃合いだと思っていたのですが、意外と年長くらいの歳で持たせるつもりの方が多いようで」

 

「そうなんですか? 私は入園祝いとして買うつもりでしたよ。今日もそのためにここに来たんです」

 

 子持ちの女同士、それも久しく会っていなかった旧友ともなると話は弾むようで、相手の腕に抱かれた桃色の髪の少女は眠たそうに目を細めていた。

 

「……どうも」

 

「あら、あなたは……」

 

 気まずそうに会釈をして会話の輪に入ったアスモを、彼女は訝し気に見つめる。

 

「ホノカの夫のアスモです。初めまして」

 

「これはこれは、失礼しました。……どこかでお会いしたような気がしたのですが、気のせいだったようですね」

 

 初対面の人間を呆けた目で見つめてしまったことを恥ずかしく思っているのだろう。頬をほんのり赤くしながら謝罪の言葉を口にした。

 そして彼女の視線は、アスモの頭の上に陣取るリリスの元へと向かう。

 

「あら、そちらが?」

 

「ええ。娘のリリスです」

 

「リリスです。よろしくおねがいしますっ」

 

 肩車をしたままぺこりと頭を下げるリリス。

 

「あらまぁ。よろしくねリリスちゃん」

 

 それを受けた女性は微笑ましそうに笑顔を浮かべ、自身に寄りかかって舟をこいでいる少女を揺らして話しかけた。

 既に夢の中へ入り掛けていたのか、目を擦りながら母親の胸に耳を当てる少女。

 

「ほら。あなたも挨拶しなさいミカ」

 

「やだっー……あたしねむいもん」

 

 ミカと呼ばれた少女はもう90度顔を内側に向け、母親の胸元に顔を埋めてしまった。

 

「もうっ……すみません。この子眠くなるといつもこうで」

 

「大丈夫ですよ。ごめんねミカちゃん。リリスとは同い年みたいだし、もしまた会ったら仲良くしてあげて」

 

 最後の挨拶として発したホノカだったが、ミカはその言葉に興味を示したのか、初めてリリスの方へ顔を向ける。

 琥珀のような美しい色合いの瞳と見つめ合うこと数秒。ミカは自分から母親の腕を降りて地面へと立った。

 

「あらあら、この子ったら気まぐれなんだから」

 

「……お父さん、私も」

 

 それを見て、自分も降りると父親の頭を叩いて意思表明するリリス。

 自身の足を掴む手が外れると、リリスはそのまま器用に服を掴んで地面に降り立った。

 

「えっと……わたし、みかっていうの。よろしくね」

 

「うん! よろしくねっ。ミカちゃん!」

 

 たどたどしいながらに言葉を紡いだミカに対し、リリスは人好きのする満面の笑みを浮かべ挨拶を返した。

 傍から見れば微笑ましい光景だったが、その内心リリスは幼い少女と交友を持てたことに大層喜んでいた。もちろん性的な意味合いは一切含まれていない。

 

「……! うん! よろしく!」

 

 幼稚園に入る前となれば、初めましての挨拶も慣れないし不安になるもの。

 そんな状況で友好的に返されたことにより、ミカの警戒心は一瞬にして消え去っていた。

 両手を体の前に持って握り、嬉しそうに身を捩っているミカを見て、リリスは思わずその手をその上から握り込んでいた。

 

「あっ……」

 

「えへへ。ねえねえお母さん、ミカちゃんとあっちで遊んできてもいい?」

 

 恥ずかしそうに視線を逸らしたミカを見て、リリスは嬉しそうに微笑む。

 そんな彼女が指を指した方向には、子供が中に入って遊べる休憩所があった。

 

「もちろんです。立ち話も何でしたし、あそこに座りましょうか」

 

「やった! 行こ、ミカちゃん!」

 

 ミカの手を引き、駆け足で休憩所へと向かうリリス。

 それを見てミカの母親が先頭を歩く陣形で、保護者三人もその後ろを追って行った。

 

 前を歩く友人を見ながら、ホノカはアスモに穏やかな、しかし確かに圧力のある笑みを向ける。

 

「……場所、回数、時期を教えていただけますか?」

 

「夢の中、一回、あなたと出会う前です」

 

 身も凍るような恐ろしい笑顔の前に、アスモは堪らず背筋を伸ばして答えた。

 返答次第では浮気を疑われる可能性があるためか、彼の言葉は非常に真っすぐでシンプルなものだった

 

「あら、一回で辞めちゃったんですね? 神秘の量は私と同じくらいはあるはずですが」

 

質の高い神秘を追い求めて、数多のうら若き乙女たちを夢の中で抱き潰してきた夫の昔を思い出し問い詰める。

そんなホノカの質問に対して、アスモは恥ずかしそうに頬を掻いて答えた。

 

「……その直後にお前と出会ったからな。俺らにしか分からない味ってのがあるんだよ」

 

「ふふっ。そうでしたか」

 

 その言葉で伝わる何かがあったのか、ホノカは嬉しそうに笑って子供たちのところへ駆けていった。

 絶体絶命の状況を立て直せたアスモは安心したように胸に手を当て、その後ろをついて行くのであった。

 

「リリスちゃん、すごくいいにおいだね」

 

「そうかな? 多分ハンドクリームの匂いかも。サミュエラっていうブランドの奴つけてるんだ」

 

 遊び始めて数分が経った頃、アスモは膝の上に肘を置いて頬杖をしながら、楽し気に遊ぶリリスとミカを呆けた表情で見つめていた。

 それも仕方のないことだろう。母親二人の間に割って入るほどの無遠慮さを彼は持ち合わせていない。

 

「……ん?」

 

 だから、二人の異常にいち早く気が付けたのは、ある意味では幸運だったのかもしれない。

 靴を脱いで遊ぶことができる遊び場のため、二人は可愛らしい靴下のままクッションマットの上に座っている。

 

 そんな状況で、ミカは仰向けに横たわるリリスの上に覆いかぶさるようにくっつき、リリスの胸に顔を埋めていた。

 

「きゃはは、やめてよっ。くすぐったいって」

 

「……っ、あぅ……」

 

 リリスはくすぐったさからか、両手足を左右に動かしながら楽しげに笑っている。

 問題なのは顔を埋めているミカの方。

 

「────ふぁ、んっ……はぁ……」

 

 乱れて横に垂れた桃色の髪越しから見える頬や耳は、熱があるのかと思うほど真っ赤に染まっており、リリスの脇の下に置かれた両手は握っては開いてを忙しなく繰り返している。

 

「おいおいおいおい……。嘘だろ……?」

 

 まるで地上に居ながら窒息しているかのような動きをするミカを見て、アスモの脳裏に一つの可能性がよぎる。

 そのままふと奥のベンチに座る保護者二人の様子を見るが、アスモに監視を任せた気になっているのか会話に夢中になっている。

 

「……よし」

 

 普段なら子供よりも会話を優先するなと小言を言いたくなるアスモだったが、この状況においては逆に好機と考えた。

 ベンチから立ち上がり、目の前で不規則に乱れる人の波を器用にかいくぐり、リリスたちの元へと向かっていった。

 

「あはははは! ミカちゃっ、涙出てきたって」

 

「ひゃ……なにこれぇ……」

 

 二人とも目の前に立つアスモのことを気にも留めていない様子。

 そしてこれ幸いとアスモはリリスの額に片手を、もう片方をミカの首筋にそっと当てた。

 

「あれ? お父さ……ん……?」

 

「ふえぇ……っ……」

 

 突然現れたアスモに驚く間もなく、二人は目を閉じて穏やかな寝息を立て始める。

 周りから視線を浴びていないことを確認した後、アスモは2人を丁寧に両腕に抱き、ホノカたちの元へと向かって行った。

 

「あら……2人とも寝ちゃったんですか?」

 

「ああ。随分と楽しそうにしてたよ」

 

『色んな意味でな』と、余計な言葉を付けたそうとして寸前で口を閉じる。

 幸い、そんなアスモの歪んだ表情がバレることはなく、リリスとミカは互いの親の腕の中で眠りながら別れるのであった。

 

 

 





 クソ雑魚TSサキュバス:美形の両親、更にはインキュバスの子供とかいうチート転生に喜んでたの束の間、物理的にエッチできないことが判明して発狂。
 聖園ミカ:被害者。夜伽両親の計らいによってそれ以降会わなくなった。人間の五感で一番記憶に残るのは嗅覚とのこと。サミュエラの製品がお気に入りらしいけど多分関係ない。

 ロリには♡記号を付けないというキショいこだわりのもと執筆しています。ぜひ高評価お気に入りよろしくお願いします。
 全部に返すのは難しいですが、来た感想は全て読ませてもらってます。

 投稿は昼の12時1分を想定していますが、お昼休みにこんな小説見れるわけないだろ! っていう至極真っ当な感想が来て笑いました。
 この時間が一番安定して投稿できるので、しばらくはこれでお願いします。変更する場合はあとがきにて告知する予定です。

先生にメス堕ちするのは……

  • それは『アリ』だ
  • 無し
  • どちらでも
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