ゲヘナクソ雑魚TSサキュバス 作:TSサキュバス流行れ
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転生してから十五年が経ち、季節は中学校生活も終わりを告げる冬。ゲヘナの土地は降り積もる乾いた雪によって白く覆われていた。
そんな中私、夜伽リリスは街灯の光を反射する粉雪を見つめる。
「ひぃ~……寒ぃ」
頬に吹き付ける冷たい空気に、首にかけたマフラーを上に持っていきながら、隣を歩くヒナちゃんの真っ白な髪の毛に顔を埋めた。
見紛う程白色のもふもふヘアーには小ぶりな氷の結晶が乗っており、触れた私の顔を少し濡らす。
それから程なくヒナちゃんの髪は、ほのかに香るシャンプーの香りと共に、私の顔を温めてくれた。
「ちゃんと前をみないと危ないわよ」
「このままヒナちゃんについて行くから大丈夫だよ」
「……はぁ。私はあなたの盲導犬じゃないのよ」
そう言いつつも、ヒナちゃんが歩く足を止めることはない。何故ならこうなった私が暫くどかないことを理解しているからだ。
背筋をピンと伸ばし、髪をうずめたままヒナちゃんの真後ろをついていく。
普通なら後ろ髪に顔を埋めて歩くなど、前かがみになって危ないと思うかもしれないが、私よりヒナちゃんの方が背が大きいから無問題だ。
ヒナちゃん143センチメートル。私に至っては133センチメートルと、この時間帯に出歩いていたら補導間違いなしの背格好である。
「疲れた~。もう勉強しなくてもよくない? このまま行っても絶対合格できるって」
そんなロリっ子二人組がこんな時間まで何をしていたかというと、再来月に控えた高校受験のためのお勉強である。
自治区の名を冠したゲヘナ学園に入るため、私とヒナちゃんはこうやって放課後図書室が閉まる19時まで残っているということだね。
「駄目よ。後二ヶ月なんだから、最後までやり切りましょう」
「えぇ~」
お勉強とはいっても、そのほとんどが出来ている内容のおさらい、それも数週目といったところである。
私もヒナちゃんも余裕のA判定だし、落ちることはまずあり得ないと言っていいのに。
ちなみに意外かもしれないが、私がヒナちゃんに勉強を教える側である。普段ポンコツだろとか言った人は夢で襲いに行くから震えて眠るように。
前世では大学受験勉強の真っ最中だったからね。中学校卒業程度なら、どれだけ難しい問題でも流石に解けるし教えてあげられる。
「お願い。あなたと一緒の学校に行きたいの」
振り返って立ち止まり、私の目をジッと見つめてそう言って来るヒナちゃん。
普段通りの眠たげな目だったが、そこには確かに彼女らしい意志の強さが垣間見えた。
「冗談だよ、言ってみただけ」
そんな真剣に口説かれたら照れるからやめてほしい。
腰から生えた羽がパタパタと動くのを感じながら、私はダウンジャケットを着こんでもこもこになったヒナちゃんに抱き着くのであった。
「そう。ありがとう」
飛び込まれても一歩も後ろに下がらないフィジカルを見せつけた後、ヒナちゃんは遠慮がちに私の頭の上に手を置いた。
撫でようとして寸前でとどまったのか、頭の上の柔らかい感触が動くことはない。
「わっ。手冷たいね」
何だか焦らされているようでじれったくなったため、その手を右手で持って自身の頬に添えるように持ってくる。
手ぶくろを付けていないヒナちゃんの指先はとても冷たく、思わず一瞬目を閉じてしまった。
「こっちも温めてあげる」
もう片方の手も冷たそうに赤くなっていたため反対側で温める。
ヒナちゃんの手は小さいが、それ以上に私の顔が小さいため、すべすべとした感触が顔を包み込んで幸せいっぱいだ。
「っ、リリス」
狼狽えたように視線を逸らすヒナちゃん。
もう十年近く一緒にいるのに全然慣れない初心なところも可愛くてしょうがないんだなこれが。
視覚と触覚から幸せになれるヒナちゃん成分を堪能していたそのとき、冷たさからか全身にピリッとした感覚が走った。
「えへへ……っくしゅん!」
マズいと思った次の瞬間、案の定くしゃみが出てしまった。
辛うじて下を向くことに成功したが、その代償か鼻水が垂れてきてしまう。
「っ……ふふっ、大丈夫?」
「うえ……ヒナちゃん、ティッシュ持ってない?」
涙目になりながら鼻水をすする私に小さく噴き出して笑うヒナちゃんは、ポケットに入れたティッシュを渡してくれた。
「ありがとー……」
鼻をかみ、丸めたティッシュを近くのごみ箱に捨てる。
「鼻、赤くなってるわ。風邪をひく前に早く帰りましょう」
「あはは、そうだね。受験前にかかったら大変だし」
転ばないように気を付けながら、人々に踏まれて滑りやすくなった雪の道を歩いて帰る。
すっかり見慣れたマンションのエントランスまでたどり着き、服に付いた雪を払った後中のエレベーターに乗り込んだ。
この時間帯に利用する人はあまり居ないためか、中には私とヒナちゃんの二人しかいない。
上っていく途中でエレベーターが止まると、ヒナちゃんは扉から外に出て私に小さく手を振った。
「じゃあ、また明日」
「うん! じゃあねヒナちゃん!」
そうしてヒナちゃんと別れた後、家に帰って速攻で冷えた体を温めるためお風呂に入る。
お父さんとお母さんは今日は出かけていて居ないため、珍しく家には誰も居ない。
「はあ゛……ふぅ」
湯船に入ったときに親父くさい反応をしてしまうのは前世故なのか。お母さんがこんな声出しているのは見たことがないし、お父さんは魔法で体を清めて終わりだからそもそも風呂に入らない。
正直風呂入るの面倒だし魔法で済ませたいのだが、私は
湯船から上がり、諸々の後始末を済ませてパジャマ姿で食事の準備を進める。
ラップで蓋をされた夜ご飯をレンジでチンし、一人キッチンだけ電気がついた薄暗いリビングで箸を持つ。
今日のメニューは……まあ別に関係ないか。
「……いただきます」
いつも賑やかに食卓を囲んでいる分、こういう一人静かに食事をしていると、色々なことを思い出してしまう。
そこでふと、私は夢幻のように過ぎていった15年間のことを思い出した。
「随分と、幸せな生活してるよなぁ……」
決して前世の暮らしが悪かったわけでは無い。不自由さや日中母親が居ない寂しさを抱えつつも、それを支えてくれる友人も居たし、人間関係には恵まれていた方だと思う。
しかし、不満が無いかと聞かれればそうじゃない。それは、
「彼女か……」
今、当時の俺とはほとんど別人になった
それは例えば恋人に向ける感情だったり……はたまた親が子に向ける感情だったり。とにもかくにも、誰でもいいから友人や仕事よりも優先して扱ってほしいという歪な欲求と、年相応の性欲が混じったのだと考えると自然だ。
だって、
今世の両親……お父さんとお母さんは、それはそれは娘至上主義の親バカ人間だ。
お父さんは、二人のためなら全人類を永遠に醒めない夢に招待してやる……なんて冗談も言うし、お母さんはそんなお父さんに出来る訳ないでしょうと笑っているくらいだ。
つまり今の私は、恋人を欲しがる原因となった『足りなかった親からの愛情を十二分に受けている』状態なのだ。
今の私の主な欲求と言えば、ヒナちゃんとクリスマスを一緒に過ごしたいとか、予約した来週新発売のサミュエラの香水を使ってみたいとか、
普通それらが叶えられなかったとしても、不満は一晩寝れば収まるだろうし、その願望を死に際にまで引きずるようなことはない。
そんなことを考えていたとき、箸でつまんでいたじゃがいもが千切れて器に落ちていった。……少し、余計なことを考えすぎたかもしれないね。
少なくとも今はこうして何の不満もなく過ごせているんだし、昔のことは忘れるべきだ。
今はヒナちゃんと一緒にゲヘナ学園へと入学するということだけを考えていればいい。
「ふー、ふー」
箸の上に乗った肉じゃがを吹いて冷まし、口の中に放り込んむ。
「……っむぐ」
流石は料理が上手だと評判のお母さんの肉じゃがだ。お肉は柔らかいし、一緒に食べたジャガイモも口に入れた瞬間ほぐれていく。
そして、最後の具と白米を平らげ、両手を合わせて小さく呟く。
「っ……ごちそうさまでした」
最近食欲旺盛になったと嬉しそうに言ってただけあって、女の子一人に食べさせるには中々ボリューミーな量だった。
残すわけにはいかないと何とか食べ切ると、お腹が膨れる気持ち悪さに耐えながら、食器を洗い、水気を切って棚に戻す。
歯を磨いてベッドに飛び込むと、自然と眠気が襲ってくる。
特に運動などの疲れることはしていないのだが、最近はやけに寝つきが早いような気がする。
「ふぁ……っ」
あくびを噛み殺しながら部屋の電気を消し目を閉じる。
エアコンの利いた暖かい寝室は、直ぐに私を夢の世界へと誘ってくれた。
「
────なんて言葉を、無意識に部屋に残しながら。
「あれ?」
と思っていたのだが、何故か私はヒナちゃんを襲いかけたトラウマが残る、ホテルの一室を再現した部屋の真ん中に立っていた。
……おかしいな。こんなこと今まで一度もなかったんだけど。
人の夢に入ったときの露出の多い姿のまま辺りを見渡すと、ベッドの上に見慣れない桃色の髪の少女が横たわっている事に気が付いた。
「誰?」
そう声を掛けて近寄るが返事はない。
顔を覗き込むと、少女が穏やかに寝息を立てて眠っている事に気が付いた。
「なんでここに……っ!?」
その顔を見るや否や、尻尾と羽が餌を目の前にした犬の尻尾の如く激しく動き出すのを感じた。
それと同時に、久しく来ていなかった情動が胸の奥に疼くのを感じる。
「……だめだめ。また同じことを繰り返すなんて」
そんなことを呟きながら、眠っている少女の肩に手を伸ばす。一刻も早く、私はこの場から逃げ出したかったのだ。
何故なら、また自分を制御できなくなりそうなほど、目の前の少女が美味しそうに見えてしまっているのだから。
「起きて」
「ん……んんっ」
眠りを邪魔された少女が、鬱陶しそうに眼を擦る。
少しして開かれて見えた瞳は、それはそれは美しい青と橙色のオッドアイだった。
「ごめんね。ちょっと起きてもらえると助かるかも」
「……?」
寝ぼけているのか、呆然とした様子で私を見た後、部屋を軽く見渡す少女。
「うへぇ……」
そうして独特な鳴き声を上げた後、再び目を閉じるのであった。
……え? 二度寝した?
「嘘でしょ……ほら、起きてって!」
その小さな肩を再度揺らしながら、私は少女の謎の図太さを恨めしく思うのだった。
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全部に返すのは難しいですが、来た感想は全て楽しく読ませてもらってます。執筆する上でのモチベーションです。ありがとうございます。
これからの投降17時になるかもしれません。
まだ未定ですが、一応告知しておきます。
女先生概念は……
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