私はあなたの金床になれるのか。   作:ライン生命生態課巨獣対策室

1 / 2
初投稿。
ニェンの魅力を十分に伝えきれませんでした。


第一話

龍門(ロンメン)

 

炎国の最西北端に位置するこの町は、きらびやかな高層ビルが立ち並んでいる炎国随一の主要都市である。

そんな街の一等地、龍門の街並みを一望できる高層マンションに住んでいることは、我ながら私の人生で自慢できることの一つだと思う。

 

と字面だけは、いいが中身が伴っているかと言われるとそうではない。

せっかくの街並みを一望できる窓際のデスクも毎日の書類仕事に追われていれば、景色も楽しむ暇もない。

宝の持ち腐れ、、不適材不適所だろうか。

唯一のこの部屋で助かっていることといえば、無駄に部屋が大きいことだろう。

同居人が絶え間なく買ってきた物が部屋内に散乱するからだ。

映画グッズや用途不明の小道具、時には高価そうな鋳造品、などなど。

挙げていけばキリがない。

 

リビングが散らかるため、今じゃリビングの隣の部屋の一室を倉庫にして、部屋に押し込んでいる。

そろそろ一部屋じゃ足りなくなってくる勢いだ。

考えるだけで頭が痛い。

 

そんな頭を悩ませる同居人だが、いまは仕事中のワタシの目の前での雑誌を読みながらソファでだらけきっている。

 

「あー、暇だ。お、明日から新作の映画が始まるじゃねか!この監督、小道具や演出は凝ってて面白いのに、肝心な話がてんで面白くなくて最高なんだよ!」

 

こちとらデスクの上に大量の書類を携えて、頭を抱えているというのに、目の前でこの態度ときた。

仕事しているのが馬鹿らしくなってくる。

今日は、もう仕事は切り上げて、休みにしようか。

ちょうど昨日届いた、ボブ農場の自家製ビールがあったはずだ。

わざわざクルビアから取り寄せた一品だ。

時計を見るとまだ15時を回ったころだが、この時間から飲み始めるのもたまにはいいかもしれない。そう考えると少し気持ちが明るくなる。

 

「おい、つまんなそうな顔しやがって・・。私の話聞いてたか。ティエ!」

 

「もちろん聞いてたよ、ニェン。また新作のB級映画がはじまるんだろ。」

私は気だるけに応える。

 

「ただのB級映画がじゃねーぞ。B級映画の中のB級映画だ。実質A級映画といっても過言じゃない。」

 

いやそれは過言だろ。

私は、そんな発言を飲み込んだ。

 

「でも面白くないんだろ」

「面白くない」

ニェンは、そんな言葉とともに、にかっと頬を上げて笑った。

 

なぜこんなにも自信満々なのか。

何とも言えない無言の時間が続いた気がした。

 

「そんなことはどうでもいいんだよ!あした一緒に映画を観に行くよな!な!」

 

本題は映画のお誘いだったみたいだ。

どうやらほんとに私は、話を聞いていなかったようだ。

これがお酒の魔力。いやクルビアの魔力か。

恐ろしい男だ。ボブおじ。

 

だが明日は、午前中は仕事の予定がある。

 

「午後からでいいのなら、行けるよ。」

「明日の午後だな!ドタキャンはなしだぜ。もししたらお前の会社にド派手な花火を打ちあげてやる!」

 

「勘弁してくれ、、それは笑えない。」

私の笑顔がひきつる。

冗談じゃなくほんとに一度やられているため、あの時の記憶を思い出し、胃が痛くなる。

あの時は、龍門(ロンメン)近衞局まで出張ってきたため、近衛局の鬼族の副隊長にこっぴどく怒られた。

普段は温厚な彼女に怒られるのは、さすがに堪えた。

まだあの龍族の堅物隊長が出てこなかっただけましなのだが。

 

 

「よし明日の予定も決まったし、出かけんぞ!おい、ささっと準備しろ!」

ニェンは、ソファから飛び上がり、私に指をさしてそう言った。

彼女の朱色の指先が私の目の前に来る。

 

「見ての通り私は、仕事中でね。ついて行きたいのは、やまやまだけど今日は、遠慮するよ。」

私は、残念そうに肩を落としてそういった。

 

悪いが私には、ボブ叔父が待っている。彼が今夜の先約なのさ。

 

「何言ってやがる。オメーが仕事をもう切り上げることなんてお見通しだぜ。

ばれてねえと思ったか。つまんねえこと言ってないで、はやく靴を履き替えんだよ。」

「・・それともあの小麦酒が気になるのかよ。」

ニェンは、してやったりといった顔で、舌を出してそう言った。

 

どうやら彼女にすべてお見通しらしい。

私とボブ叔父との密談がばれていた。

いったいどこから・・

そういえば昨日の荷物をトランスポーター受けとったのは、彼女だった。

これで事件は解決。私の間抜けが露呈しただけだった。

すまないボブおじ、私はここまでのようだ。

 

「そんなにわかりやすいかな、私は・・」

観念して、椅子から立ち上がる。

 

「ん?なに私にかかればこんなもんよ・・。それにオメーとは、長い付き合いだからな。」

ニェンは私に近づき、肩を組んできてそう言った。

 

彼女の絹のような美しい白髪とこの世のものとは思えない美しい顔立ちが目の前に近づく。

やはりいつになっても慣れない。彼女の神のような化け物のような、存在感。

彼女の顔立ち、立ち振る舞いは、昔から私を魅了する。

 

「すべてお見通しってわけだ。」

彼女が耳元で囁いた。

 

このままではまずい。彼女の魅力にあてられ、心が飲まれてしまう。

私は、いまの状況を惜しむ気持ちを感じながら、彼女から逃げるように離れた。

「支度をするから、少し待っててくれ。」

 

私が彼女から離れた瞬間、彼女が残念そうな表情をしていたのは、私の気のせいだろう。

 

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 

龍門(ロンメン)の街中。

中心街から少し離れた場所に位置するのがこの場所だ。

炎国、そして他国の料理店が多く並ぶこの街道は、多くの国の食を楽しむことが出来る。

故郷の味を求めて足を運ぶトランスポーターたちに人気の場所でもある。

 

私たちが来た店は、龍門の中で、尚蜀(しょうしょく)の味を本化的に出してくれるお店だ。

私とニェンもよくこの店を愛用している。

 

注文した火鍋が届き、鍋に具材を投入していく。

まずは白菜だ。先に投入することによってしなしなになり、白菜とスープがよくなじむ。

この白菜と肉を一緒に口に放り込むのがうまいのだ。

 

「だから悪くはないんだけどさ。なんつっても辛みが足んねーのって。ここも悪くはねーんだけさ。」

ニェンは、相変わらずの辛み談義だ。

正直この店の火鍋は、一般人からしてみたら十分辛い。

十分に尚蜀クオリティだ。

 

「ニェン。君の味付けを基準にしたらこの店に閑古鳥が鳴くよ。ここの店主は十分尚蜀(しょうしょく)の味を出しているよ。」

「それに私は、これぐらいの辛さがちょうどいい。」

 

現に隣の席では、3人のお子さんを持つ探偵家業を営む龍族の中年男性が火を噴いている。

いやあれは、隣に座るフェリーンの子に一服盛られたか。

 

「わかってねーな、ティエ。いいか、辛味ってのは生き方なんだ。

ちょうどいい痛みと強烈な衝撃が舌の上で爆発すりゃ、オメーだって “人生とはこれほど滋味豊かなものだったのか!”って思うはずだ。」

 

「一般人が君の基準の辛さを食べたら、人生の豊かさではなく、過酷さをその身で味わうだろうね」

私は、鍋をつつきながらそう言う。

この肉は、もう食べてもよさそうだ。

 

「なんだとー、かわいくねーやつだな。そんな奴には、この肉は没収だ。」

彼女は、眉を吊り上げ、不機嫌そうな顔をしたと思ったら、私が狙いを定めていたお肉を奪い取った。

 

「あ、ニェン!それは私が大切に育てた子だぞ。」

「は、鍋将軍の地位は私のもんだ!人生の豊かさがわからん奴は、白菜でも食べてな」

「白菜もおいしいだろ!」

 

彼女との戦場ならぬ鍋場の戦いは、まだ始まったばかりだ。

 

 

 

 

「お会計ありがとうございました!」

結局、人類と歳との溝は深かった。人類一人がが歳に勝てるはずもなく、私は白菜を美味しく食べた。

私は、財布から消えた龍門幣に見て、この世の過酷さを知ったのだ。

え、割り勘じゃないのかって?私のおごりだよ。だって彼女は無職だし。

 

「店長、やっぱこの店の火鍋は、格別だぜ!」

彼女は嬉しそうに店長と話している。

・・この笑顔が見れたのだから、今日は満足しよう。

 

「いつもありがとうございます。またのご来店お待ちしております。」

私たちは、お店からでて、中心街に向って歩き出した。

 

「食べた。食べた。ティエ、少し散歩して帰ろうぜ。」

散歩がてら、繁華街のほうに歩きだした。

 

「見ろよ、この景色。今日も相変わらずお祭り騒ぎだ。」

ニェンの発言通り、今日も龍門は、相変わらずのようだ。

煌びやかな街並み。バックミュージックのように聞こええる怒号と叫び。

うん、いつもの龍門の喧噪だ。

 

「ニェン、これをお祭りだといえるのは、一部の人間だけだよ」

大半の住民は、逃げるのに精いっぱいだ。

だがここの住民がこの程度じゃへこたれないのは確かだ。

喧噪の中には、サンクタの銃の音が聞こえる。

この喧噪の主が赤髪の天使が所属するペンギン急便の可能性が高いだろう。

 

「私は、好きだね!龍門の奴らは、みんな必死に生きてる。

働いてるやつ、都市を守ってるやつ、酔っぱらってるやつ、自分の病にあらがってるやつ。」

隣を歩いていた彼女は、私の前を歩きだし、嬉しそうにステップを刻みながら話しだした。

 

彼女は昔から変わらない。

容姿も身長も。そしてこの考えも。

いつだって彼女は、人が好きなのだ。

そして私もそんな彼女がたまらなく好きなのだ。

 

「生きるのは大変だ!だけど私は人が必死に生き抜く様がたまらなく好きなのさ!

 

お前を含めてな!」

 

前を歩いていた彼女は、振り返った。

 

彼女の白髪が風に靡く。

彼女は腕を後ろに回し、私の顔を下から覗くように顔を上げた。

彼女の赤い角、耳にある赤い装飾品が街灯に照らされ、宝石のように輝く。

彼女の顔がいつの間にか、目の前に来ていた。

その顔は、なぜかいつか見たあの日の情景を思い出した。

 

 

「私と出会ってくれてありがとな!」

 

 

 

それは、こちらも同じだ。

 




主人公
ティエくん
一応龍族
名前は別に覚えなくてもいい。


アークナイツ豆知識
炎国(えんこく)
アークナイツにおけるテラと呼ばれる世界にある国の一つ。
龍門(ロンメン)
炎国にある都市のひとつ。アークナイツのストーリーで一番出てくる場所。
尚蜀(しょうしょく)
炎国にある都市のひとつ。詳しくはイベント「将進酒」ぜひやってください!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。