私はあなたの金床になれるのか。   作:ライン生命生態課巨獣対策室

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ゆっくりなペースの投稿になりますが、よろしくお願い致します。


第二話

古い記憶

 

いったいいくつの時の記憶だろうか。それすら思い出せないほどの幼い記憶。

目に映るのは、灰色の空と白い綿。

頬に落ちる白い綿が体温で溶けていくのを感じて、ようやくそれが雪だと気づいた。

自身の体が硬い大地の上に仰向けになっているのを感じると同時に、全身に痛みが走る。

幼く小さな体にめいいっぱいの力を込め、起き上がるが体はいうことを聞く様子はない。

全身の骨が折れているのだろう。

頭を動かし、周囲の様子を見るが、どうやら山の中のようだ。

目の前にある絶壁を見るに、私はこの崖の天辺から落ちてしまったらしい。

 

どうして、何があったのか。

今となっては思い出せない記憶だが、当時の私は幼いながらも自分の終わりをうすうすと感じていたはずだ。

 

自分の運命を呪った。

死にたくない。生きたい。そんな言葉の羅列が頭の中で流れていく。

 

私は、体の痛みなどお構いなしにかすれた声で何度も助けを求めた。

こんな山の中に運よく人が通るとは、到底思えないが、当時の私がそこまで考える余裕はないだろう。

 

どれくらいの時間がたっただろうか。1時間のようにも感じるし、10分ほどかもしれない。

もしくはまだ1分も経っていないのかもしれない。

 

呼吸が苦しくなり、もう声を出すこともままならなくなったとき、雪を踏みしめ、固まる音が徐々に近づいてくる。

 

もうすべてをあきらめ、諦め交じりの微笑が無意識に顔に出始めたとき、彼女は現れたのだ。

 

降り注いでいる白い雪と同じ美しい白髪。

朱色の立派な角を生やし、耳には赤色の装飾品。

彼女が踏み歩いた雪の上は、不自然に溶けており、近づくに連れ熱気が自身の体に感じてくる。

白く美しい美貌に、爬虫類のような大きく見開かれた瞳が私を見下ろしていた。

 

彼女の冷たい視線が私に向かい、じろりと全身をなめまわすかのように見られる。

それは、化け物のようであり、そして天女のようにも思える人だった。

まさか最後に出くわしたものが、人ではなく、正体不明のナニカになるとは。

 

私は恐怖からくるものなのか、限りある体力を使い果たした結果なのか、視界がもうろうとしはじめ、意識を手放しかけていた。

 

最後に見たのは、まるでよい悪だくみを思いついたかのように、いたずら小僧のような笑みを浮かべたナニカの姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 

龍門商店街の一角で、頭に2本の角を持ち、濃紺色のスーツを着た龍族の男が一人佇んでいた。

彼がなぜこのような場所にいるかというと、これは同居人の女性のニェンが朝に言った一言が発端だった。

 

 

 

「家から映画館に向うだぁー」

彼女は、やれやれといった態度で、朝食を口にほおばりながら、私に視線を向ける。

 

「デートっていうやつを分かってねーな、ティエ。こうゆうのはな、待ち合わせっていうのが常識なのよ。そこから始まる波乱万丈の物語が映画のお約束ってわけよ。」

「お前は仕事のし過ぎで、常識っていうのが、なってないぜ。今度、おすすめ映画集10本を見てもらわないとな!」

彼女は、楽し気な様子で、映画の詳細について語り始めた。

 

その常識というのは、彼女の絶賛B級映画の話だろうか。

正直、話している理論は、意味不明だが、世間に疎い自分より、多くの娯楽に精通している彼女のほうが正しい可能性は、少なからずある。

 

「なんせ昨日みた映画は、主人公が彼女との待ち合わせ場所についた瞬間、謎のオリジニウム仮面が現れ、愛の逃走劇が始まったからな!」

 

ほんとに彼女を信用していいのか…。

とにかく、彼女は、昨日見た映画に影響され、一度街で待ち合わせをしてから、映画館に向いたいらしい。

 

私は、食器を下げ終えて、会社に向かう身支度を始めた。

「ニェン、それなら龍門商店街に集合でいいかい?私は会社に向かうから、戸締りだけ頼むよ」

「んな、んな!」

私の言葉にニェンは、まだ口の中に食べ物が残っていたのか言葉になっていない返事をした。

 

 

 

ということが朝の事情があったわけで、私は龍門商店街でニェンが来るのを待っていた。

この商店街は、露天が多く立ち並んでおり、龍門市民にとって生活のかなめの場所でもある。

多くの店が立ち並んでいるため、たいていの物はこの商店街でそろえることが出来る。

そのため、人通りも多くなるので、人との諍いも多い。

例えば、ナンパまがいのことも起きうるわけで…。

 

「ちょっとそこのおにいさん、かっこいいね。どうだい私とお茶でもしねぇか。」

とほんとに声をかけられるとは思わず、内心驚きながら、声をかけてきた方向を向いた。

そこには、薄紫色のサングラスをかけ、赤いシャツとネクタイ、カジュアルスーツに身をつつんだニェンだった。

 

彼女はサングラスを少し目元より上げ、にやにやとした顔で私の顔をじろじろと見てきた。

 

私は、正直困惑していた。彼女の普段見ない装いに驚いているのもあったが、なんといっても似合いすぎていた。

スーツの美しいデザインが彼女の魅力を引き出しているのもあるが、特に赤いシャツとベルトが彼女の朱色の両手と角と調和しており、彼女の美しさを際立たせていた。

 

「おい、なんか言えよ。まさかこの短時間で私の顔を忘れちまったのか。」

彼女が不機嫌そうに顔をそらした。

 

「いや…ごめん。服装に驚いて…」

 

「なんだよ、そんなに似合ってなかったか。」

 

「いやそれはない、似合ってるよ。綺麗すぎて驚いた…。」

私は、まだ高ぶる感情を抑えきれず、ゆっくりと答えた。

 

「なんだよ、そんなに真剣そうに言われたら、恥ずかしいぜ。」

ニェンはさっきの不機嫌な態度とは打って変わって、照れくさそうな表情で笑った。

 

私は、落ち着きを取り戻すため、彼女と会話を続けた。

「そんな服いつ買ったんだい?初めて見たよ。」

「昔、買った服だよ。ほこりかぶってたから引っ張りだしてきた。敏腕映画監督みたいだろ!」

ニェンはサングラスをかけなおして、にやりと笑った。

 

「今日は、お前は仕事帰りで、スーツで来ると思ったからな。こっちもスーツ着て、スーツデートで驚かせてやろうと思ってな。」

 

「だけど思ったより反応良くて、驚いたぜ。私の事、惚れ直したか。」

ニェンは、してやったりと言った表情だ。

 

「もちろん、惚れ直したよ。」

私は、今度は落ち着いて真剣な気持ちで彼女に伝えた。

 

「おう…ありがとな…。オメェもいつもスーツ似合ってるぜ。」

彼女は、私の発言に面食らった様子で、しどろもどろに答えた。

 

私は、彼女があまりに照れくさそうに言うので、思わず可愛すぎて笑ってしまった。

 

「おい、笑ってんじゃねーよ」

彼女が、ほのかに顔を赤くしながら、まくしたてる。

 

「ごめん…。それに、その服装ならだれも無職とは、思わないじゃないかな」

 

「オメェー、それは一言余計だ。」

私の言葉に対し、彼女は、怒気を込めながら、私を力強く小突いた。

 




主人公、ニェンの事好き過ぎますね笑



ニェンの服装は、音律聯覚の時の服装になります。
ほんとに素敵なので、興味ある方はぜひ調べてみてください。
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