魔人の惑星
ある森の中。
男たちが―――『魔人』が『ヒト』を追いかけていた。
『おい、そっちに行ったぞ!』
『バインド張れ。1体で良いんだ。落ち着いてあの雌を狙え!』
無数の光が飛んで行き、ある場所で蜘蛛の巣のように放射状に広がる。
ヒトはそれを避けるように逃げなくてはならないため、徐々に集団の数は減っていく。
やがて、4匹ほどまでに減ったところを拘束魔法『バインド』で一斉に捕まえにかかる。
先ほどまで使っていた待機タイプではなく、投網のように飛ばすタイプである。
逃げていたヒトは後ろから迫ってくるそれを、ある種の人間を超えた感覚『第六感』で避けるが、とうとう避けきれずに、一匹の雌がバインドに足を捕られてしまう。
直ぐに逃げようと、バインドの網を外そうとするが、まったく外れない。
そうしている間に、そのヒトの雌は捕まってしまう。
男たちは、特に下卑た顔を受けべるでもなく、一仕事終わったといった感じで、そのヒトを箱に入れて、自動車に乗せる。
連れ去られる彼女に向かって、一緒に逃げていたヒトの雄が「リリア!」と叫んでいたが、男たちは一匹捕まえれば、ノルマ達成なので、特に何もしなかった。
それでも、ヒトの雄は、何度も「リリア!」と叫びながら、自動車を追ってきて、とうとう小銃で撃ってきた。
しかし、鬱陶しく感じたハンターに火炎魔法『バーン』によって、呆気なく焼き尽くされてしまった。
それを見ていたヒトの雌は「ヒロシ!」と叫ぶが、魔人たちに『うるせぇ』と箱を殴られてしまう。
男の拳には付与魔法『テンプルライズ』が付与されており、箱の中の温度は徐々に上がっていく。
最終的には熱中症にすらなりうる温度になり、そのヒトは徐々に体力を奪われて、気絶してしまう。
男たちは仕事終わりの札遊びに興じることにしたようで、最初から最後まで、ヒトに関心を向けることはなかった。
時代は西暦2130年。
人間の中に魔法を使える者が現れたのが西暦2020年のこと。
魔法が世界的に認知されたのが西暦2030~2040年のこと。
魔法を使える者が差別を始めたのが、西暦2040年代のこと。
魔法を使える者を『魔人』と呼び、使えないものを『ヒト』と動物名で呼ぶ者が現れ始めたのが、西暦2050年半ばのこと。
魔人によるアメリカ侵略があったのが、2059年のことで、僅か3日で決着がつき、北アメリカ大陸以外のほぼ全ての国が、焦土と化した。
西暦2060年代では、北アメリカ大陸全ての国が合併され、パンゲア合衆国と名前が改められた。
それに伴い、魔人の支配体制はより強まり、世界は魔人の物となった。
ヒトは、その時代を逃げ延び、子を成して種を存続させた。
魔人は第一世代のほとんどが逝き、第二世代にバトンを譲った。
その際にヒトの扱いは、差別すべき敵ではなく、か弱い動物となった。
ヒトの中にはレジスタンスと呼ばれる者もいたが、魔人に相手されることもなく、姿を消した。
現在では、パンゲア合衆国だけが地球上の人類活動可能領域となり、パンゲア合衆国の人民は魔人のみで構成された。
ヒトは第一世代の魔人たちには虐げられたが、第二世代の魔人たちは不思議とヒトを虐げらることはなかった。
今では、ヒトは愛玩動物だったり、実験動物だったり、といった扱いを受けている。
かくして、旧人類『ヒト』は地球での主権を失い。
地球は、『魔人』の惑星となった。