小鬼殺しと夜を狩る一族   作:レーラ

2 / 27
2話目にしてようやく舞台へとおもむきます。

そして怪物もそれらしいものも出てきます。


辺境の街へ

 冒険者、人は誰しも私の事をそう言うけど、正直あまりそんな実感は無い。

 

 ただひたすら世界を巡っては己を鍛えて、時には寄り道もして、見聞を広げて知識を得る。

 

 当然その過程で色んなモンスターと戦った。ゴブリン、ドラゴン、アンデッド。それを気まぐれで葬って来た。

 

 巷では『月下の剣士』なんて呼ばれてるみたいだけど、私は剣士なんて柄じゃないし、正々堂々とか、そんな高潔な精神は持ち合わせていない。

 

 だから私は、そんな立派な二つ名を持つような事はしてない。

 

 

 

 ただ闇を滅するだけ。私にあるのは、たったこれだけの使命。

 

 

 

 


 

 

 

 ゴブリンの脅威から守った村を旅立ってから数日、長い旅路をその足で歩き続けた。宛のない旅はいつも命懸け、明日も知れぬ我が身ではあるが、セイバーはそれも含めて楽しんでいる。

 

「ここを通りたけりゃぁ金目のもん置いて行きな」

(出たよこの手の輩……)

 

 但し道中で盗賊や魔物と遭遇する事も珍しくなく、魔物の場合は容赦なく剣を振るって滅する。盗賊相手には剣を振るう事なく、短剣を使うか、盗賊が使っていた武器を使って返り討ちにする。

 

「二度とこんな事するんじゃないわよ」

 

 4人とはいえ、所詮盗賊。セイバーに太刀打ち出来るわけもなく、全員とも意識を一撃で刈り取られた。

 

「いけないいけない。早く進まなきゃ」

 

 森の中は魔物や獣達が蔓延る。特に夜は異形の怪物達の時間。その状態ではまともな休息は望めないどころか、あっという間にこちらが狩られてしまう。

 

 まだ日暮れまで時間はあるが、先程の輩がまた現れないとは限らない。出来るだけ早くここを抜ける必要がある。

 

 額の汗を拭い、水筒の水を口に含んでそれを飲み込んで水分を補給しながら森の中を見渡すと、セイバーが何かに反応したかのように目を見開かせた。

 

「こりゃあ、思いの外時間が掛かりそうね……」

 

 周囲に立ち込める濃霧。勘にも似た不安と予感を抱きながらも風に揺れる草木に紛れた歪な音を聞き逃さぬよう周囲を索敵しながら先へ進む。

 

 1歩ずつ、慎重に、草木を掻き分けながら全身の神経を張り巡らせて邪悪なる気配を探す。

 

 やがて前方から歪な音色を拾った。

 

「やはりいるか……!」

 

 地中から出ずる屍人(ゾンビ)が呻き声をあげて、腐敗した肉体とともに現す。1体が現れるとその後ろからも続々と土から這いずり出て来る。

 

 生気すら感じられぬ目が生きた血肉を求めてセイバーに襲い掛かる。

 

「魑魅魍魎どもが……!」

 

 セイバーは銀剣を抜いて振り下ろす。屍人の肉体を容易く切り裂く。後ろから屍人が腕を振り下ろそうとするが、すぐさま振り返り、腕ごとその首を刎ねる。

 

 数で劣ろうとも、腐り果てた肉体の動きは鈍く、見切りやすく、脆い。とはいえ、次々と現れる屍人達はゴブリンのような厄介さがある。

 

「キリないな……」

「うわあああぁぁぁ!!」

 

 突如、森に響き渡る男の悲鳴。他にも屍人に襲われている人がいるようだ。だが今の悲鳴ではまともに戦う事も出来ず逃げ惑っているだろう。

 

セイバーは周囲のゾンビを無視して悲鳴がした方へと走った。

 

 駆けつけた先には悲鳴を上げたと思われる中年の男がゾンビに囲まれていた。男は異形の怪物に怖じてまともに立てず、逃げる事すら出来なくなっていた。

 

「く、来るなぁ……!」

 

 だが男の命乞いを、屍人達が聞き入る訳もなくその肉を喰らわんと腕を振り下ろそうとした。

 

「伏せて!」

 

 声とともに投擲されるナイフ。男は咄嗟に縮こまるように伏せた。複数の呻き声とともに刃が肉を貫き、腐った体が地に倒れた。

 

 伏せていた男が顔を上げると時分に襲いかかっていた屍人は既に動かなくなり、塵となって消えた。

 

「今……一体……」

「大丈夫?!」

 

 そう言ってセイバーは男に駆け寄る。

 

「あ、ありがとうございます!お陰で助かりました!」

「お礼なら後で良い。それよりも立てる?」

「は、はい」

 

 セイバーが手を差し伸べた手を掴んで立ち上がった。

 

「あなた、どうしてここに?」

「はい……。私は隣街で商人をしていたのですが、辺境の街に店を構えることになりまして……。ですが途中、濃霧に……」

 

 先程まで日光が森に差し込むほど暖かかったここが、霧が発生した途端、日は暗雲によって隠され、周囲は冷たい闇の領域へと変わった。

 

 男は闇を察知する力は無く、偶然ここに居合わせただけ。理不尽ではあるが闇は時と場所を選ばず蔓延る故、この男の事は不幸な巡り合わせだった。

 

「商人って事は馬車を使って?」

「はい……あ、あれです」

 

 指した方には木製の二輪馬車を繋げた馬が嘶きをあげている。一刻も早くここから離れたそうだ。

 

「上出来」

 

 笑みを浮かべてそう告げた。

 

 商人からお礼という事で馬車に乗せてもらう事になり、今は馬車の荷物を乗せた荷台に乗って休んでいる。

 

 だがまだ油断は出来ない。いつまた邪悪な怪物が現れるか分からない現状、森を出るまでは索敵を続ける他ない。

 

 主人の命令を反映しているのか、馬も全力で駆けている。

 

「あの、貴方様はって冒険者なのですか?」

 

 命が助かり、少し安堵して余裕が生まれたのか振り返ってセイバーに問う。

 

「まあそんな所!今はどこにも属さない流浪の冒険者って感じかな!」

 

 馬車を操る主人が首を傾げる。冒険者は街のギルドに所属するのが主だが、旅して回る冒険者も珍しくはない。とはいえ、身なりがあもり冒険者らしくない。寧ろ何処かの貴族の出身か、都市の聖騎士なのではと思われている。

 

 助けてもらった彼女を乗せた主は彼女が冒険者だと思いながらも聞かずにはいられない。

 

「この先は辺境の街ですぞ。そこに何か用なのですか?」

「ええ!ちょっとね!」

 

 詳しい説明は省いているが、商人は無理やりではあるが納得しているようだ。今でもこうやって敵が来ないか見張ってくれている。実力も確かなのはこの目で見ている。セイバーが見張ってくれているお陰で進行に専念出来る。

 

「おお……見えましたぞ!」

 

 木々の間から差し込む光が見えてきた。ようやくこの森から出られそうだと商人は先んじて喜んでいる。

 

 商人の言った通り、そこを抜けると森の外へと出た。立ち込めていた暗雲と霧は既になく、空には太陽が光を照らし、周囲は当たりを見渡せる程に景色は鮮明だ。

 

 馬も安心したのかゆっくりと歩いて馬車を動かしている。その後の道中も特に異変も起こらなかった。街までもうすぐそこまでという距離で、4人の冒険者一党ともすれ違った。

 

「やはり、大丈夫でしょうか?」

「心配ないさ!相手はゴブリンだぞ?俺の剣でみんなやっつけてやるさ!」

 

 白い装束を身に纏った華奢な少女が心配していた所を、鉢巻を巻いた剣士が胸を張って言い切っていたのが聞こえた。

 

 

 ゴブリンは皆殺しだ

 

 

 ゴブリン退治と聞いてある男の存在を思い出した。ゴブリン退治を嬉々として引き受け、あらゆる手段を用いてゴブリンを狩り続ける変わった男だった。

 

 今もまだ健在で、ゴブリンを借り続けているのだろうか。そんな事を想像していたが、やがて馬車は辺境の街へと辿り着いた。

 

 目的地に到着したセイバーは鎧を着ているにも関わらず、荷台から軽快に飛び降りる。

 

「ありがとうね。お陰で早く到着出来た」

「いえいえ。これも偏に、貴方様のお陰です。もし助けに来てくださらなかったら、今頃は……」

 

 思い出すだけでもゾッとする商人だったが、そんなもしもから現在に切り替える。

 

「私はここに居を構えるつもりです。何か必要があれば是非寄ってください。特別にお安く致しますぞ」

「ありがとう。なんだったら、今ここでサービスしてもらっても……」

「それはご勘弁ください。我々も生活が掛かっているものですから」

「冗談だよ冗談。けど、特別はありがたいわ。その内寄るからね!」

 

 セイバーは手を振って商人と別れ、そのまま周囲を見渡して探す。

 

「えーっと確かこの辺だったような……あった!」

 

 目的の場所はすぐに分かり、その建物の方へと向かう。その看板には剣の紋様、その下には《Adventure's Guild》と刻まれている。

 

「5年振りだったかな?そこはあんまり覚えてないけど……元気にしてるかな」

 

 訪れた事があるのか懐かしそうに看板を見上げる。すぐに扉の方に向き、大扉を左右とも大きく開く。

 

 ギルドの中に入ると聞こえるのは冒険者同士の宴と下品な笑い声。たわいもない軽口が交わる談話もあれば真剣な作戦会議など、それらが多く入り乱れる。

 

「相変わらずかな。お、いたいた」

 

 セイバーが見たのは受付にいる三つ編みの髪をしたギルドの受付嬢の姿。カウンターまで行くと、セイバーを見た受付嬢が喜びに満ちた顔で立ち上がった。

 

「あっ!あなたは!」

「久しぶり」

 

セイバーが軽く手を振る。

 

「お久しぶりです!今まで何処へ行ってたんですか?」

「まあ……一旦故郷に帰ってから、ちょっと旅をね。結構掛かっちゃったけど」

「もう!()()がどれだけ心配したか、分かってますか?ご無事なら手紙でも構いませんから知らせてください!」

 

 カウンター越しにグイグイと言い寄られ、今度からはちゃんと連絡しようと考える。それはそうと、ある男の存在を思い出したセイバーは受付嬢に尋ねる。

 

「私達ねぇ……。それはそうと、彼はまだいるの?」

「彼、というと?」

「ほら、アレだよ。ゴブリン退治の専門の……」

「ああ!ゴブリンスレイヤーさんですか!勿論ですよ!ですが、今日はまだ見てませんね」

 

 やはりかと呆れる。それはそうと、再び受付嬢に尋ねる。

 

「所でなんだけどさ、さっき子供くらいの冒険者4人がゴブリン退治に行ったみたいなんだけど……」

 

 セイバーの表情はどこか浮かない様子だった。だが受付嬢も同様のようで、皆まで言わなくても何が聞きたいのか分かっているようだ。

 

「はい。それが、全員白磁でして」

「やっぱり新米(ルーキー)か。確か、剣士は男の子で、残りの女の子は魔術師と神官、あとの1人は……武闘家かな?武器持ってないみたいだし」

「は、はい。その通りです」

 

 一党の職業まで言い当てたセイバーを前に少し驚きが混ざる。

 

「参ったな……。あの新米達、殆どがゴブリンをただの雑魚だと軽く見ている。新米があんな半端な防具……誰も雑嚢を持っていなかったから、回復薬(ポーション)解毒薬(アンチトーデ)なんてあるわけないわ……」

 

あの一瞬で一党の装備を見ていたからこそ、そうなるだろうと懸念している。

 

「すみません……私も止めたのですが……」

「分かるよ。どうせ、『大丈夫大丈夫!相手はゴブリンなんだから!』って忠告を聞かなかったんでしょ?」

「……はい」

 

 何処からそんな自信が湧くのか甚だ疑問だった。

 

「今から追えば、間に合うか……?場所は?」

「助けにいくのですか?それでしたらゴブリンスレイヤーさんを……」

「待っている暇はない。このまま放っておいたら、間違いなく全滅よ」

 

 ゴブリンは子供の人間並みの姿であり、すばしっこい。自己中心的で残虐な性質。

 

 1匹では大した戦闘力を持たない正真正銘の雑魚。だが厄介なのはその数の多さ。ただの雑魚だからと侮って掛かるとその数の暴力で返り討ちに逢うケースも少なくない。

 

 受付嬢からクエストの仔細が記された紙を受け取り、目を通す。それを返すと、雑嚢から回復薬を出して、瓶の蓋を開けて勢い良く飲み干す。

 

「もし私がいない間にゴブリンスレイヤーが戻って来たら、すぐに向かってほしいって伝えて!」

「分かりました!」

 

 扉を強く開けてギルドから出ていき、その勢いのまま橋って向かう。街を出て、馬車でとおった道を駆けて行く。

 

 この辺りの地形は全て頭に叩き込んであり、久しぶりに足を踏み込んだこの地であっても、地図を見ずに目的地まで真っ直ぐ向かえる。

 

 やがて隆起している岩が多く見られるようになり、木の根が多く張っていて、周囲を見渡せば森と変わらない場所に入った。

 

 それでもその足を止めることなく進んでいく。すると、突然その足を止めた。

 

「ここか……」

 

 目的地である洞窟に辿り着いた。その洞穴の隣にはトーテムが飾られている。

 

「あからさまだな。さて、間に合うと良いけど……」

 

 ボヤくと松明に火を灯し、それを手に狭い洞穴に入った。

 




キャラ性能

セイバー
武器:白銀の剣
装備(身体):白銀の鎧
装備(靴):白銀の脛当て

サブウェポン:短剣、斧、クロス、聖水

アイテムクラッシュ:
ブレイズバスター(装備)サウザンドエッジ(短剣)
グランドクロス(十字架)ハイドロストーム(聖水)

体術
スライディング、バックダッシュ、タックル、回し蹴り

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。