奪われた刻印のBGMってどれも神曲ですもんねw
というわけで女武闘家VSホブゴブリン ムーンセイバーVS小鬼英雄戦となります
ホブゴブリンとの乱戦が始まり、剣戟と悲鳴が入り乱れる。とはいっても悲鳴の方は殆どがゴブリン側からのものである。ベテランの手にかかれば、ホブゴブリンなど敵ではない。ただ一人を除いて。
この乱戦の中には女武闘家の姿もある。力任せに振り回してくる棍棒を避けながら攻撃の機会を伺う。何せ乱戦の中だ。残っている雑魚の横槍も相手にしなければならない。
(小さいのが鬱陶しい……!)
殆どが狩られたとはいえ、数が多いのがゴブリン。中には死んだ振りをして急襲するゴブリンもいる。
たとえベテランでも横槍を入れてくるゴブリンは目障り極まりない。新米から卒業したばかりの女武闘家の技量では、横槍を仕留めたとしても、それによってホブの一撃を回避する事は不可能だ。
一方、ホブは体格も力も、そして数も優位。相手の女は一撃受けただけで潰される小さい的。他の冒険者に比べればまだ貧弱。すばしっこいのが厄介だが、得物はなく、搦手を扱うような相手ではない。
いずれ体力が尽きれば動きも鈍くなる。そこを叩けば一瞬だ。
勝ちを確信しているゴブリン達の下卑た笑みが女武闘家に向けられる。だが……
「
突如、背後から雷の光弾が過ぎ去っていくと、それは小型に触れる。その刹那、ゴブリンの身体は感電。黒焦げになりながら今度こそ息絶えた。
これで邪魔者は消えた。標的に目掛けて駆け出す。
手駒が消えて苛立ちを露わにするホブゴブリンが棍棒を振り下ろす。だがそんな見え見えな攻撃をくらう女武闘家ではない。それを避けて懐まで入り込んだ。
「うおおおぉぉぉ!」
隙だらけな腹に正拳が強く入った。内蔵を潰されて吐血した所で、女武闘家のアグネアに雷が迸る。
「
再びホブゴブリンの腹に拳が入ったと同時に轟雷がその肉を穿ち抜いた。
ホブゴブリンが最後に見たのは絶対に勝てると思っていた冒険者、それも貧弱な女。腹に大穴が空いたホブゴブリンは呻き声を満足に挙げられず、そのまま倒れて動かなくなった。
「よし……!」
ムーンセイバーから教わった秘技が、初めての冒険で敗北したホブゴブリンへのリベンジが果たされた。
だが浮かれている余裕は無い。まだ戦いは終わっていない。急いでムーンセイバーの所へと走った。
同じ頃、ムーンセイバーはゴブリンチャンピオンに苦戦していた。
(くそ……戦い慣れてるわね……!これは、簡単に仕留められそうにない……!)
片手で巨大斧を振り回しているだけでなく、空いた手でムーンセイバーを殴り潰そうとしている。そのせいでゴブリンチャンピオンの身体に乗って急所を突くことが出来ない。
ゴブリンチャンピオンは戦闘に特化した上位種。渡りとしてゴブリンロードの傘下に入ったのだろう。その実力はゴブリンでありながらそこらの魔物より脅威だ。
重戦士のような巨大な武器がない。まともな防御も出来ない。故に腕力を物に言わせて振り回す棍棒を避けるしかない。
だが槍使いのようなリーチの長いものはない為、接近するのも容易ではない。
ヴェルナンデスの方もホブを相手にしていて、こちらのサポートは望めない。そして、白銀の剣は斬れ味が落ちないのと刃毀れしない点以外は並の剣と大差ない。
無いものねだりするつもりはない。そんな事をしても詮無き事。ならば自分にしかない武器を使って仕留める。
「手こずってるじゃないか」
「手ぇ貸すか?」
既に重戦士と槍使いの方は小鬼英雄を仕留めている。男達のまるで余裕綽々な態度が妙にイラッとする。
「冗談!そこで見物してな!」
こんな軽い男達の手を借りてはたとえ小鬼英雄を仕留めたとしてもプライドが許さない。様子見はこれまで。通常の武器が決め手にならないのなら、別の決め手を使う。
「仕方ない。チャンピオンとはいえ、ゴブリン相手に使うのは気乗りしないけど……!」
クロスを片手に突っ走る。なんだ女の特攻かと、小虫としか見ていないムーンセイバーを笑いながら斧を水平に払う。
だがそれを跳躍して避け、クロスを頭上に高く放り投げては自分も草地を蹴って飛んだ。
飛んで来たムーンセイバーはそのまま剣で頭を狙っているのだろう。馬鹿な女だ。
勝利を確信した小鬼英雄は飛んで来たムーンセイバーを掴もうと腕を伸ばそうとした。だが……
「GOB……?!」
ムーンセイバーは笑っていた。まるでそう来る事が分かっていたかのように。
「ドゥエッ!」
その刹那、ムーンセイバーは飛び蹴りでゴブリンチャンピオンの手を踏み台にして跳躍、さらに高く宙を舞う。
そしてムーンセイバーから光が発せられた。眩く、光から目を逸らそうと下を見るが、自身も光の中に入っていると気付いた時には遅かった。
「
力を解放したムーンセイバーの周囲に、無数の光の十字架が螺旋状に天へ駆け巡る。光の十字架は小鬼英雄の身体は砕かれていき、四肢と胴体が別れていった。
何が起きたのか理解出来ぬまま、小鬼英雄は光の中で息絶えた。
かつてあの古城で見た光の十字架。その眩い光はあらゆる暗黒を滅し、祈る者達を照らす希望となる。
あれが再び打ち上げられ、ホブよりも大きい小鬼英雄を一撃で葬り去った。
それを目の当たりにした女武闘家が光に導かれる。次第に光の柱が消えるとその中心には座り込んだムーンセイバーがいた。
「セイバーさん!」
「あれ?アンタ、こっち来たの?」
着地したムーンセイバーだったが、グランドクロスを使った反動で息遣いが荒くなっている。走って駆けつけて来た女武闘家が肩を貸す。
「大丈夫ですか?!もしかして、あのゴブリンに……」
「違う違う。これはただの反動。やっぱグランドクロスは、体力の燃費が悪いわね」
雑嚢から
「ありがとう。もういいよ」
ある程度回復したので貸してくれた肩を放すと小屋へ向かってどんどん歩いていく。
「あ、そうだ」
急に立ち止まって振り返った。
「よく頑張ったじゃん。もうそれは、完全にアンタのものだね」
一度敗れたホブゴブリンを、今度は自分の手で倒した女武闘家を、ムーンセイバーは褒めた。彼女はそのまま小屋の方へと行ってしまった。
残された女武闘家はセイバーと出会った時を思い出しながらアグネアの指輪を見ていた。
元々アグネアはムーンセイバーから助けてもらった際に貰ったものだ。今思えば、この指輪を貰った時から女武闘家の運命が始まったと言っても過言ではない。
あれから色んな事があった。ムーンセイバーの修行、怪物狩りの日々。その日々の積み重ねがあったからこそ、今の自分がいる。
いつか自分も、ムーンセイバーのような冒険者になりたい。辿り着くにはまだまだほど遠い境地だが、一緒に戦って、多くの事を学びたい。
それが女武闘家が選んだ進むべき道。
「何してんのー?早く来なよー」
「は、はい!」
ムーンセイバーの呼びかけで思い出から我に返った女武闘家は慌てて駆けつけた。
その後、ゴブリンロードを倒したゴブリンスレイヤーと女神官が帰って来た。彼の方はゴブリンロードと一騎討ちを繰り広げ、その疲労から女神官の肩を借りていた。
かくして、ゴブリンロードの軍勢は一匹残らず討ち取られ、牧場は小鬼禍の脅威から守られた。それは、冒険者達の勝利を意味していた。
タイトル元ネタ
闘魂狂詩曲
悪魔城ドラキュラ 奪われた刻印 より