シンフォギアのリメイクや他に浮気している間に二月になっていました。
今回から第二章になります。そして新キャラも登場します。
それぞれの場所で
ムーンセイバーが辺境の街から出て行ってから数日の時が過ぎた。彼女の頼みで一党だった女武闘家とヴェルナンデスはゴブリンスレイヤーの一党に入り、女神官も含めて四人となった。
魔物狩りの専門家であるムーンセイバーの下で学び、共闘して来た彼女達が待っていたのは、ゴブリン狩りの毎日だった。それもたたのゴブリン狩りではない。
巣穴を爆破して生き埋め、水攻め、狙撃など、冒険とはかけ離れたものだ。
ゴブリンは素人でも簡単に殺せるが、ハッキリ言って二人は魔物を狩る時よりこちらの方が精神的に疲弊しやすい。
そして今日もゴブリン狩りをしていた。ゴブリンに臭いで悟られないようゴブリンの血で臭い消しをした上で。
「うぅ……」
一族の誇りとも言える清廉な装束をゴブリンの血で汚され、まるで唸り声を挙げているヴェルナンデス。不機嫌な事もあり、その目はまるで獲物に飢えた獣のようにも見えるが、今回潜入した砦に生きているゴブリンはもういない。
依頼を終えた帰り道、いつまでも不機嫌なままでいる仲間を、心優しい女神官が放っておくはずがない。
「あ、あの。洗えば落ちますから……」
「分かってます。ですが……!」
ゴブリンは女の臭いに敏感。ヴェルナンデスの装束は特にそれだ。故にその対策を施すのは理に適っている。
分かってはいるのだが、プライドの高いヴェルナンデスにはどうしても受け入れ難い。
「何だ?」
分かりやすく後ろから睨みつけてくるヴェルナンデスに振り返らず冷たく問う。
「……いえ」
何とか私情を押し殺す。それが出来なければ今頃ここにいない。
仮に私情を挟んだとしても、それでやり方を変える事はない。それがゴブリンスレイヤーという人物だ。
同じ銀等級だとしても、重戦士なり槍使いなり、まともな冒険者が他にもいたはずだ。
何故彼に託したのか。それだけはヴェルナンデスも理解出来なかった。
――
女武闘家。
元々は女神官と共に新人一党を組んでいたが初めての冒険、ゴブリン退治で失敗。危うく彼らに慰み者になる所を駆けつけたムーンセイバーの助けにより生存。
その後は彼女に弟子入りし、その下で修行を重ねて同じ一党として活躍する。
武器は持たないがゴブリンスレイヤーよりも素早く、重い一撃を入れられる女武闘家。ムーンセイバーの修行で培った技術で敵を粉砕し、素早い回避力で無傷の帰還を果たす。だが分析能力が甘く、不測の事態に弱い。
ヴェルナンデス。
最近この辺境の街に流れ着いて来た。理由は不明だがムーンセイバーに関係があるようだ。
階級は黒曜ではあるが、実力は銀等級以上。
多彩かつ速攻性が高い魔術を扱う魔道士ヴェルナンデス。無詠唱魔術により、相手よりも素早くかつ正確な魔術を放つ。しかしプライドが高く、その時の状況で独断専行する事がある。
「それが君の評価なんだね」
「ああ……」
夕暮れ時になったギルドからの帰り道の途中。今述べた二人の評価を、牛飼娘は優しく聞いてくれた。
「新しい仲間が出来たって言ってたけど、二人とも女の子って聞いた時は驚いちゃったよ。それも、ムーンセイバーさんの一党だったなんて」
「そうか……」
短くそう答えるが、牛飼娘の心境は少し穏やかではない。
「もう……人の気も知らないで……」
優秀な冒険者と一緒なのは安心するが、幼馴染として、一人の女の子としては複雑な思いだ。
「それにしてもムーンセイバーさん、今頃何処にいるんだろう」
「分からん……。きっと故郷に……辿り着いているはずだ」
ムーンセイバーの実力なら、余程の
「そうだね」
離れ離れになった友達を思う気持ちは同じ。きっと元気でやっていると、信じている。
きっとまた会えると。
――
その頃、ムーンセイバーは……
「さて……どうしたものかねこれは」
蠢く暗雲によって陽光が届かない森林の道。そんな暗黒の大地に魔物が蔓延るのは自明の理。だが迂回する事も出来ず、仕方なく通る事になったが、案の定大量のスケルトンによって囲まれてしまう。
剣を持ったスケルトン、弓を携えた
一撃入れれば、形成されている骨格は容易くバラバラになるが、ゴブリンと同じく数が多い点では厄介なところだ。
「今のところ十体……」
スケルトンとアーチャーが三体、クラブとソルジャー二体ずつ。状況は不利であるが、ムーンセイバーの表情には焦る様子はない。それどころか笑みすら浮かべている。
「ふっ……!」
同時にスカートを翻して露になった太腿。そこに仕込まれていた鞘より短剣を三本出し、それを素早く投擲。スケルトン達の間を縫うように飛んでいった刃はスケルトンアーチャーの額を正確に、三体とも貫き、バラバラの骨となって崩れた。
そこにすかさずクラブスケルトンが棍棒を振り下ろすが、クロスではじいてガラ空きとなったその肋骨にそのまま投擲、粉々にしてやる。
そしてすかさずスケルトンソルジャーの首を白銀の剣で刈り取るが、背後から背中を斬ろうとするスケルトンが迫る。だがその背後から、先程投擲したクロスがブーメランの如く、ムーンセイバーの元へと戻ろうとスケルトンの頭蓋骨を吹き飛ばした。
返って来たクロスを見ずに片手で掴み取り、綻びが出来た包囲網を抜け出して脱兎のごとく先へと駆ける。
当然迷い込んだ獲物をスケルトン達が逃すはずがなく、その背を追う。だがそれこそムーンセイバーの思惑通り。
真っ直ぐこちらに向かってくるスケルトンの方にすぐさま反転、すかさず短剣を三本投擲。額に直撃したスケルトンの頭部を撃ち落とす。
後は白銀の剣で打ち合う事なくその一閃で残った二体の頚髄を断ち斬った。
スケルトンに包囲されて劣勢に立たされた状況から一転、たった一人で全滅させた。このような手合いに襲われるの
「確かにアイツの言う通り、ゴブリンの方が厄介かもしれないわね」
そうボヤきながら白銀の刃を鞘に納める。が、その手は柄を離さない。その場から動く事なく周囲を警戒する。
自分に向けられる視線。こんな薄暗い森の中で、そんなものを向ける者など限られている。だが、どうも闇の者からではないようで、それも明確な殺意でなければ邪なものでもない。
それどころか、覚えのあるものだった。より集中して研ぎ澄ましていると、それが何処から向けられているのかがより明確に分かってくる。
「分かってんのよ。さっさと姿見せなさいよ」
いよいよ確信に変わると、虚空に向かって呼び掛けた。そこには誰一人としていない。だが命ある動物はいる。
「ニャァ」
白い毛並みの子猫が可愛らしく鳴いて、こちらにやって来る。子猫特有のちょこちょこと足元まで駆け回るその姿は癒しを与えてくれる。
「こんな所まで来て……もしかして私を迎えに来てくれたの?」
「ニャァ!」
その通り。と、言わんばかりに元気よく鳴いて、ムーンセイバーから離れるように走る。
「こっちに来い……って事か」
走ってついて行き、白子猫もまた走る。ムーンセイバーなら白子猫にあっという間に追いつくが、ある程度距離を空けるように森の中を走る。
しばらく走ると茂みが深かったこの辺りも、ムーンセイバー達を覆っていた木々達の隙間から橙色の陽が差し込む。何処までも果てしなく続いた闇の森も光が見え、ようやく辿り着いた。
「ありがとうね、お陰で早く出られたよ」
白子猫を撫でようと手を伸ばした時、その下から展開された魔法陣によって光の粒となって消えた。
「やっぱり、召喚魔術か」
白い子猫は召喚魔術によって喚び出されたもの。自身の力を糧としては様々な獣を喚び出して操る。だが召喚獣を喚び出すには高度な魔術操作が要求され、失敗すれば喚び出された獣は制御不能、場合によってはそれに殺される事も少なくはない。
だかムーンセイバーは知っている。これ程人懐っこい猫を呼び出せる術者の存在を。それは今、先程の猫のように元気よく手を振って、こちらに向かって走って来ている。
「お姉ちゃーん!」
嬉しそうに彼女に抱きついた。
「おかえりお姉ちゃん!」
「ただいま」
純新無垢で、微笑ましくなるつぶらな瞳で見上げる彼女の頭を撫でてやる。嬉しそうに笑みを浮かべる少女。
「もしかして、一人で迎えに来てくれたの?」
「うん!ここから来るからむかえに行ってあげなさいって、おじい様が言ってたの!」
「そっか。偉いぞ」
「えへへ」
年頃の少女らしく、大好きなムーンセイバーに褒められて喜ぶ。
そんな少女と手を繋ぎながら帰り道を歩いていく。
「ねえねえ!おしごとどうだったの?わるいやつやっつけた!?」
「もちろん。いっぱいやっつけた」
「凄ーい!」
旅をして周った所、辺境の街で過ごした日々、冒険の数々。そんな旅路での話を聞いて、心を躍らせている少女。
「こんどは私もいくー!」
「まだダメ。アンタはまだ子供なんだから、お許しが降りてないでしょ?」
少女はまだ十二歳。ギルドならまだ子供という事で冒険者として登録するのは厳しい。
その上、見た目とともに精神的にも幼すぎる。怖いもの知らずで浅慮な所も含めて、任務に赴かせるには危険が大きすぎる。
「むーっ!おじい様と同じこと言ったー!」
「そりゃあ言うわ……」
幼子の我儘には困ったものだと呆れるが、ムーンセイバーはふと思い返す。似たような事を辺境の街でもやったような気がした。とはいえ、少女を旅に同行させる事も、辺境の街へ連れて行く事にも結構躊躇いがある。
さてどうしたものか、このじゃじゃ馬は。帰って来ても既視感ある悩みの種に煩わされる羽目になった。
召喚少女(12)
モデル:マリア・ラーネッド
天真爛漫で怖いもの知らず。反面、年相応の幼さが表に出ており、浅慮な所がある。
体術は行えないが強力な力を秘めており、召喚魔術を行え、特に四聖獣を呼び出せる。四聖獣も友達のように慕ってくれる彼女を主として認めており、懐いている。