小鬼殺しと夜を狩る一族   作:レーラ

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昨日に引き続き、新キャラ登場です。


新たな任務

辺境の街から東へと進んで2日、ようやく辿り着いたムーンセイバーの故郷。そこは村……と言うには寂れていて、並ぶ家屋の柱などが燃えた痕があり、殆ど炭と化してボロボロに破壊されている。そんなオンボロに目もくれず、ただひたすら真っ直ぐ道を歩いている。

 

 その先にあるのは、他の家と違って美しさを残している白い修道院。煉瓦で立てられたそれは、屋根の一部に欠損があり、ステンドグラスも所々欠けているが、雨風を凌ぐには充分である。

 

 ムーンセイバーの背丈を優に超える修道院の大扉。二人の手で左右それぞれ押して開かせる。中へ入ると、聖なる女神の像が、礼拝堂中央の奥で二人の帰りを待っていたかのように手を広げていた。

 

 その像の下で跪いて祈りを捧げていた緑の神父服に身を包む白髪の老人。

 

「待っていたぞ」

 

 立ち上がって振り返る。ムーンセイバーが右手を胸の上に置いて、彼に一礼する。

 

「ただいま戻りました。我が師」

 

 彼こそがムーンセイバーの師であり、彼女と手を繋ぐ少女の祖父である聖堂老師。この教会の主だ。

 

「顔を上げよ」

 

 そう言い、ムーンセイバーの所まで歩み寄る。命じられて平伏から顔を上げる。

 

「よくぞ無事に帰ってきてくれた。師として、嬉しく思うぞ」

「ありがとうございます我が師」

「では、お前が手に入れたコアソウルをここに」

 

 聖堂老師が手を伸ばした先にある女神像の下にある祭壇。そこには厚みがある深紅の書物が安置されている。

 

「これこそが、魔物から取り出したコアソウルを封印する鎮魂の魔導書……またの名をグリモア・オブ・ソウル。この白紙のページにその魔物の魂を封印し、その情報を記す」

 

 聖堂老師の先代のまたさらに先代達が作り上げた遺産の一つ。そこにムーンセイバーが静かに歩いていく。安置されたグリモア・オブ・ソウルの前に立った瞬間、ページが独りでに開かれた。

 

「さあ……その書物にコアソウルを」

 

 ムーンセイバーは恐れを抱く事なく、ページの上に掌を乗せた。すると掌から赤い閃光が放たれて、ただならぬ魔力を帯びた暗黒の瘴気が漏れ出る。

 

 だがそれに呼応するように、白紙のページに文字が浮かび上がり、見えぬ何かが執筆しているかのように次々と文字が刻まれていく。

 

 やがて漏れ出た瘴気がページの中に吸い込まれていき、妖しい光が弱くなっていく。それが消えたと同時に、刻まれた文字も止まる。既に1ページを埋め尽くし、隣のページも同様の状態となっていた。

 

 ページから手を離すと、そのページの中央には古城で討伐したゲーゴスの姿が写っている。

 

「まず一つ……」

 

 続けて次のページを開いて、同様の儀式を行う。ページの上に掌を置いて、そのページにオーガから入手したコアソウルを封じ込めた。

 

 二つ目のコアソウルの封印も完了。グリモア・オブ・ソウルを閉じる。

 

「これで以上になります」

「ふむ、ご苦労であった」

 

 聖堂老師がグリモア・オブ・ソウルを手に取る。

 

「しかし、些か長かったな。もしや、どこかで油を売っていたのか?」

 

 図星を突かれて僅かに「うっ……」という呻き声が漏れる。分かりやすい反応に呆れる聖堂老師。

 

「よく……お見通しで……」

「お前の事は幼き頃より見ておる。まあ……お前の事だ。何か事情があったのだろう。だが、己が使命を忘れてはならぬ。お前は、最後の末裔なのだからな」

「……はい。肝に銘じます」

 

 問い詰める事はしないが、これも世界安寧と救済の為。聖堂老師はムーンセイバーの悪い癖を咎める。

 

「所で、久々の辺境の街はどうであった?」

「五年前とあまり変わりありません」

「そうか……だが、それだけ長かったのだ。良き旅であっただろうな?」

「はい。それはもう……刺激的でした」

 

 脳裏に浮かぶ別れた愛弟子の日々。ゴブリンスレイヤーやヴェルナンデスといった旧友との再会。語りきれない事が色々ある。

 

「ねえねえ!私も行きたい!」

「え?」

「そのなんとかっていう所、私も行きたい!怖い怪獣をやっつけるわけじゃないし、良いでしょ?」

 

 強請るように二人にお願いする召喚少女。またこれかと二人は頭を抱える。

 

「これから大事な話をする。お前は外で待っていなさい」

「むーっ!また私にナイショ話ー?」

「これもまた必要な事だ」

 

 例え幼子であるとしても、聖堂老師の厳しい姿勢は崩さない。だがそれは一族を守る為、光ある世界を闇から守る為。

 

「分かった……」

 

 まだ不満はあるが、その話が一族の行く末を左右する重大なものであるという事は分かっている。自分のせいで、ムーンセイバーの邪魔は出来ない。大人しく聖堂老師の言うことを聞いて、礼拝堂で大人しく待つ事になった。

 

 ムーンセイバーを聖堂老師の研究部屋に通すと、早速本題に入る。

 

「話というのはな、外部からの依頼だ」

「外部から?」

 

 ここの存在は徹底的に隠匿されていて、熟練の斥候でも見つける事は出来ない。ましてや魔物達が寄り付く事が出来ない神聖な領域。

 

「我らの事を知っての依頼だろう」

「その依頼主って……?」

「至高神の大司教(アークビショップ)

 

 その二つ名にムーンセイバーは目を見開いて驚愕する。

 

「それって……」

「西方一帯における、神官職の頂点に立たれる御方。かつて、 十数年前に魔神王を討ち取った一党の御一人」

 

 齢七十を超える聖堂老師も尊敬の念をもって語る存在。魔神王を討ち取った功績で金等級となったその人は、伝説の勇者である白金等級に次ぐ実力者。

 

 通常、在野での最高等級は銀等級までであり、それ以上は国家規模の事態の対処を求められる最高の等級。言ってしまえば英雄そのものと言える。

 

 一体どんな人物なのか検討もつかない。会ったことの無いムーンセイバーは固唾を飲む。

 

「その大司教様が、お前を指名して依頼されたのだ」

「私に?」

「まずは、大司教様がおられる水の街に行くのだ」

 

 神官職の頂点に立つ大司教の命令となれば、断る事は許されない。無論、依頼の内容をまだ聞かされていない本人からすれば無茶苦茶とも思えるが、かつてムーンセイバーも修道女だった。そもそも断るという選択肢が存在しない。

 

「承知しました。明日発ちます」

「うむ。頼んだぞ」

 

 ムーンセイバーに課せられた新たな任務。冒険者としてではなく、一族の使命を背負いし戦士として、再び旅立つ事になった。

 

 翌朝、装備を整えたムーンセイバーは再び修道院に一礼にて別れを告げ、故郷を離れる。何度目なのか数えるのは既にやめている。

 

「水の街……ここからなら一日くらいかな?」

 

 水の街は故郷より西にある西方地帯の交易都市。辺境の街よりは近いが、それなりに距離はある為、歩くとなると一日掛けなければならない。

 

 少し離れたところで馬車が確保出来ないか少し歩いていく。

 

「待ってー!」

 

 聞き覚えある幼い声にまさかと振り返った。すると、召喚少女が走ってこちらへやって来た。

 

「何でこっち来ちゃったの?!」

「お姉ちゃん、隣の街に行くんでしょ?私も一緒に行く!」

「まさか盗み聞きしてたの?!」

 

 幼子故に予測不能な行動をするが、まさか自分達に気配を悟られないように盗み聞きしていた事に驚嘆する。

 

「私も、お姉ちゃんの役に立ちたい!」

「ダメ。どんな依頼なのか分からないのに、まだ子供なアンタを連れて行けない」

「行くったら行くの!」

 

 召喚少女の癇癪に反応したのか、小さな翼竜が何処からともなく姿を現した。

 

「のわっ!」

 

 急に飛び出してぶつかりそうになり、思わず身を翻して回避した。

 

「今の……アンタが呼んだの?」

「そうだよ!あたらしいお友達のせーちゃん!」

 

 紹介されてせーちゃんこと、青龍が可愛げに吼える。

 

「これならいいでしょ!?」

「ダメ……って言いたいけど、今のを見せられたらね」

 

 召喚魔術は一体呼び出すだけでも高度な技術を要するというのに、それをこんな幼子が何体も呼び出すという出鱈目。

 

前回はびゃっちゃんこと白虎くらいしか召喚出来なかったが、それを一年で別種を呼び出せるようになっていた。これには認めざるを得ない。

 

「だけど、師には一通入れるんだよ?」

「うん!」

 

 こうして新たな仲間、召喚少女を伴って水の街へと赴く事になった。だが今の桃色の衣装はまるでお姫様であり、とても冒険者には見えない。街に着いたら服でも買ってやろうと考える。

 




兵器ちゃんが仲間になった!

聖堂老師(75)

モデル:バーロウ(悪魔城ドラキュラ 奪われた刻印)
東の地にある修道院の管理者にして主。幼いムーンセイバーを師事し、対魔の技術と知恵を教えた。
世界を救済する為に生涯を捧げて来ただけあって、厳格ではあるが、ムーンセイバー達の事は我が子のように思っている。
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