小鬼殺しと夜を狩る一族   作:レーラ

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いよいよ序章も終盤戦。

今回、ゴブリンスレイヤー達が砦を焼き払っている間に、セイバーと女武闘家はある所へと向かいます。

ラストには悪魔城ドラキュラの中でも指折りのトラウマボスが待ち構えています。


罪深き古城

 ゴブリンの住処となった東の古城。城自体はあまり大きなものではなく、一部が瓦礫となって崩壊しているが、野営するには十分な作りとなっている。

 

 特筆すべきは塔の存在。この塔は約60m以上の高さがあり、周囲の見張り台にもなる。闇夜でも目が利くゴブリンであれば、その索敵範囲も人間の目よりも優れものとなる。

 

 かつてこの城は罪人を幽閉する為に建てられた、言わば監獄の城。ここで多くの罪人が幽閉されており、その呪いが今も尚、生者達を脅かしているという伝承があったそうだ。それが人を近寄らせない原因となっており、皮肉にもそれを恐れないゴブリン達にとって、最高の塒になってしまったのだ。

 

 塔の中ではゴブリンによる宴が催されていた。家畜の肉を喰らい、攫った村娘とそれを助けようとした女の冒険者達を弄ぶ。

 

 村娘の方は数多くのゴブリンの相手にしきれず、既に事切れていた。

 女の冒険者の方も城の中にあった処刑具にによって、惨たらしい死を迎えた者もいる。

 

 神官だった者は十字架に磔にされた上に、槍を1本ずつ刺され、その悲鳴をゴブリン達を悦ばせた。最終的には全身を串刺しにされた。

 

 魔術師の方は四肢を狼の脚と繋がれた縄で縛られたまま八つ裂きにされた。

 

 最後の一人は孕み袋として使われている為か、まだ生かされているが、ゴブリン達の気分次第でいつ処刑されるか分からない。

 

 再びゴブリンによる輪姦が始まり、冒険者の悲鳴が塔中に響いた。塔の最上階で偵察していたゴブリンも、悲鳴を聞いて下卑た笑みを浮かべていた。

 

 だからこそ、侵入者の存在に気付かなかった。

 

 既にゴブリンの血で臭い消しを済ませていたハンターと女武闘家が物見の死角に入って、門番を剣で屠った。

 

「よし……」

 

 音を立てぬよう扉をゆっくり開けて入り込む。中の蝋燭は既に溶けきっているが、松明と外から差し込む月光のお陰もあり、見通しは悪くないが、完全とは言いきれない。

 

 暗闇からいつゴブリンが奇襲して来るか分からない。周囲を警戒しながら先へと進んで行く。

 

「ここにはいないようね……」

 

 1階にはゴブリンも生きている虜囚もいない。あるのは白骨化した遺体と無惨にも嬲られた遺体だけ。

 

「酷い……ここまでするなんて……」

「それがアイツらのやり方。行くわよ。弔うのは終わってからよ」

 

 次の階へ続く回廊を渡って、2階へと潜入する。ここも1階と変わらず、そのまま3階へと進んでいく。

 

 女武闘家にとって、ゴブリン退治はあの時以来だった。無惨な姿となっま虜囚を見て、嫌な記憶を引き出してしまう。

 だがついて行くと決めたからにはここで逃げ出すわけにはいかないと、己を奮い立たせている。

 

 それを分かっているのか、セイバーの方もここまでの同行を許している。

 

 途中、罠は仕掛けてあるったが、その仕掛けはハンターの前では意味をなさない。その手際の良さに女武闘家は思わず見入ってしまう。

 

「手際が良いですね。どこでそれを?」

「昔ちょっと教わったの。後は経験よ」

 

 簡単に言うも、こういう罠の仕掛けは斥候の専門分野であり、前線に出て剣を振るう戦士がそう簡単に出来る芸当ではないのだが、本人はどうでも良さげだ。

 

 次の階への扉の前に立つと、ゴブリンの笑い声が扉越しに聞こえる。ここに殆どのゴブリンが集まっていると推測される。始める前に、女武闘家に指示を出す。

 

「ここからは乱戦になる。弓兵もいるだろうけど、それは私が真っ先に潰す。アンタは、捕まった人を引きずってでもここから出すのよ」

「まさか、1人でゴブリンを?」

「秘策はあるけど、ここにアンタがいたら巻き添えをくらう事になる。だから私が奴らを引き付けている間に、アンタが助け出す。そして下に降りたら、絶対に戻らない事。私に万が一があっても見殺しにして」

「けど……!」

「私の言う事は絶対に聞く、そう言ったわよね?」

 

 何をするつもりか、セイバーの表情からは分からないが、笑みを浮かべている。

 あまりにも無謀と思えるこの状況だが、その絶対的な自信を感じさせるセイバーを見て、安心感と同時に一抹の不安も感じる。

 

 とはいえ、セイバーの指示には絶対服従するという約束もある。女武闘家はゆっくり頷いた。

 

「分かりました」

「よし、行くわよ。1……2の……3!」

 

 合図をすると、ドアを蹴破って突入する。この階層に大量のゴブリン。一部が群れを成しており、その中心には囚われた冒険者が嬲られていた。

 

 しかも、シャーマンとホブが1匹ずつ。その姿を確認すると、鞭を振るって襲い掛かるゴブリンを粉砕する。さらに、ゴブリンシャーマンの杖から火矢(ファイアボルト)が放たれるも、放ったクロスの前では炎の矢は掻き消され、そのまま頭蓋をかち割った。

 

 弓を使うゴブリンには短剣を投げて黙らせ、接近するゴブリンは剣で切り裂く。

 

 セイバーの立ち回りもあって、ゴブリンは女武闘家から完全に注意が逸れている。お陰で襲い掛かるゴブリンは数少ないが、それでも虜囚を助ける為には接近せざるを得ない。

 

 こちらに増援を回すよう呼びかけようとしたゴブリンを徒手空拳で打ち砕く。さらに背後から奇襲をしかけて来られても、裏拳で屠る。故郷での鍛練は無駄ではなかったと実感する。

 

 周囲にゴブリンがいない事を確認し、動けない女の冒険者を担いで下の階へと降りていく。

 

(よし……後は外に出るまで……!)

 

 剣やサブウェポンだけでこの量のゴブリンを殺し切るのは無理がある。特にホブは耐久性が増しており、今の装備では一撃で仕留められない。周囲には雑魚もいて、それでは手間がかかる。故に、セイバーはこの秘策に賭けるしかない。

 

 ホブゴブリンが棍棒を振り回すと、セイバーはスライディングで避けながらホブの股を掻い潜る。

 ホブゴブリンの背後を取ると聖水の入った瓶を投げて割る。割れた所から火柱が燃え上がり、ゴブリンを寄せ付けない壁となる。

 

 その隙に階段下へ降りようと扉まで走る。だが、目の前に飛来した巨大な棍棒がセイバーを通り過ぎ、目前だった扉へと向かった。そして……

 

 ドカァァァン!!

 

 目の前から鳴り響く轟音。立ち込める砂煙が晴れると扉を潰し、通れなくなっていた。セイバーを逃がすまいと出鱈目に投げた棍棒が壁ごと扉を破壊してしまった。

 

「嘘でしょ……?!」

 

 退路を絶たれたセイバーに逃げ道は無い。だが上へ続く階段が残っている。虎穴に入らずんば虎子を得ず。秘策遂行の為、塔の頂上を目指すべく、セイバーは上への階段を登る。

 

 そんなセイバーを逃がすまいと総手でその後を追いかける。弓矢に代わって、投石紐(スリング)でセイバーを狙う。

 その威力はたかが石と侮れない。頭に直撃すれば確実に意識は飛ばされる。背後から飛んでくる石をしゃがんで少しでも当たらないようにする。身体に当たるも、鎧のお陰でその威力は失われる。

 

 5階を登りきり、後は最上階のみ。ここに来るで短剣を3本、聖水を1個を使って足止めをした。それもあってゴブリン達との距離をとる事が出来たが、最上階部屋の扉は数本の鎖と南京錠によって閉ざされていた。

 

 そこの鍵などここに初めて来たセイバーが持っているわけがない。だが下の階からゴブリンの下卑た声が迫っている。聖水の炎が消えて、追いつかれるのは時間の問題だ。

 

「壊すしかない!」

 

 止むを得ず南京錠ごと鎖を切り刻んで封鎖を解除、部屋に入ると急いで扉を閉め、扉を落ちていた木材で固定した。同じタイミングでゴブリン達が破ろうと扉を強引に打ち付けるが、ちょっとやそっとでは破られない。

 

 急いで頂上に出ようと走ろうとしたが、その足は目の前にいる目の前の光景を見て止まってしまった。

 

「これって……!うわぁっ!」

 

 だが背後の扉が破壊された衝撃でセイバーも吹き飛ばされてしまう。破壊された出入口から追い込まれたセイバーを嘲笑うようにゴブリン達が下卑た表情で見下ろしている。

 

「くっ……!何の……はっ……!」

 

 立ち上がったセイバーの背後から何か鎖のような金属の音が響いた。その正体を間近で目の当たりにした時、セイバーは息を飲んだ。

 

(道理でこの辺り人が近寄らないわけだよ……!あんなのがいたんじゃ、普通寄るわけがない!)

 

 広い部屋が狭く感じる程の巨体。腐った皮膚に覆われた皮膚から滴るどす黒い血。所々剥き出しになった肋骨、両足に繋がれた黄金の枷。

 

 侵入者(セイバー)が入って来たのを感じ取ったのか、眠りから覚めたかのようにその二本足で起き上がった。

 

 かつて伝承で聞いたことがあった。

 

 かつて永劫の罪で投獄された罪人達の怨念が1つの塊となって魔獣となったと。その名は……

 

 「永劫に囚われし罪人(ゲーゴス)!」

 

 皮膚から肉が剥き出しになった瞬間、ゲーゴスが咆哮を挙げた。

 

 

 

 




蒼月の十字架でもトップを争う強敵ですね。

私もゲーゴス倒すのにどんだけ負けたことか……w

次回、セイバーVSゲーゴス戦!
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