小鬼殺しと夜を狩る一族   作:レーラ

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第1章 開幕デェス!

今回もオリジナル話となります。



第一章
自分に足りないもの


 ゲーゴスとの戦いから数日が過ぎた。女武闘家とパーティを組んでからは行動を共にし、彼女に戦い方を教えながら依頼をこなしている。

 

 今はギルドの敷地内で体術の訓練をしている。

 

「ほらほらどうしたぁ?もうバテてんの?」

 

 故郷で教わった武術を繰り出すも、セイバーはそれを軽くいなしている。正拳突き、裏拳、回し蹴り、鉄山靠など、多彩な技を繰り出すも、それを的確に避け、捌き、返す。

 

(まるで通用しない……!これが歴戦の……)

「そらぁっ!」

「うわぁっ!」

 

 足払いから一回転、あっという間にひっくり返されてしまい背中から落ちた。

 

「まだまだ真っ直ぐね。まあそれがアンタの良い所なんだけど」

 

 大の字でへばっている女武闘家に手を差し伸べてやる。その手を借りて立ち上がった。

 

「並の怪物相手なら通用するけど、やっぱり色々工夫が欲しいね」

「工夫……ですか?」

「そっ。今のアンタのその技は確かに強い。私でもまともに受けたらやられる。だけど同時に弱みでもある」

「……はい」

 

 それは最初の冒険で思い知らされた。セイバーの指摘通り、女武闘家の主な攻撃は武術のみ。ゴブリンなら一撃で屠れたが、ホブゴブリンにはそれがまったく通用しなかった所か、簡単にやられてしまった。

 

「それと、アンタの拳は懐に入られなければ届かない。だから弓で狙撃されたり、魔法が相手となると相性は最悪。為す術なく一方的にやられる」

 

 第2の弱点。遠距離や搦手に滅法弱い事。強い拳も届かなければ何の意味もない。仮に接近しても、相手がわざわざそこに留まってくれるはずもない。やられないよう逃げるのが当然だ。

 

「そこに工夫を加える事で、その拳は最強の武器となる」

 

 工夫、と言われて古城で放った技を思い出した。

 

「もしかして、あの光の十字架がバーッ!ってなるやつを私に?」

「いや、流石に聖なる十字架(グランドクロス)は教えられないわ……」

 

 困り笑いをするセイバー。

 

「そもそも、ああいうのは鍛え抜いてこそ成せる究極の奥義なんだから、鍛えた程度じゃ出来ないわ」

「は、はあ……」

「その為にも、まずは精神力を鍛えなきゃね」

 

 そう言うが、女武闘家には精神力を鍛えるにはどうしたらいいか分からない。結局この日はここで組手を日没まで続けたが、結局一矢も報いる事が出来ないままお開きとなった。

 

「とりあえず武具は買っておいた方が良いわね。ほら」

 

 セイバーの手持ちから幾つか金銭が入った財布を渡される。

 

「い、良いんですか?!」

「それだけあれば大抵のものは揃えられると思う。まずは篭手(ナックル)とかそういうものの方が良いかな。防具もアンタの武術を阻害しないやつとかの方が良さそうね」

 

 セイバーのアドバイスを受けた女武闘家は早速商店に向かった。

 

 ――

 

 その翌朝、女武闘家は起きると、いつもの道着を着る。その上から昨日買った装備を装着する。

 

 腕にはセスタスを装備、そして脚にもアーマープレートを装着する。薄く見えるがとても頑丈。鎧と同時に打撃武器の代わりの役目を果たす。

 

 これならば、攻撃を受け止めたホブゴブリンを屠れるかもしれない。そう考えたが、試してもいない事を断言するのは死に直結しかねない。

 

 装備を着けた状態で軽く武術の動作をやってみると、いつもより重さはあるが動作に支障はなく、いつも通りのコンディションであると確認する。

 

 準備も出来た事で、ギルドへと赴く、だが扉を開けるとセイバーがコルクボードの前に立っている。

 

「おはようございますセイバーさん!」

「おはよう。おっ、買ってきたか。ふむふむ……良いじゃない。ピッタリだよ」

 

 女武闘家の装備は最適なものだと評価した。

 

「ありがとうございます!あの、依頼を受けるんですか?精神力を鍛えるっていうのは……」

 

 これから精神力を鍛えるものかと思っていた女武闘家が驚きながら質問する。

 

「そっ。習うより実戦で上げていく。流石にゴブリンだとあれだから……あった」

 

 依頼書をコルクボードから外して依頼内容を女武闘家に見せる。

 

岩石巨人(ゴーレム)討伐……ですか?」

「そう。ゴブリンより強いけど、そろそろ新米(ルーキー)って肩書きから卒業しないとね。それじゃあ受付に行ってくるから、待ってて」

 

 セイバーが受付に行っている間、空いている座席に座って待っている。

 

「こんにちは」

 

 そこに声を掛ける少女の声。女神官が笑顔で一礼している。セイバーが来るまで相席することになり、お互いにあった出来事を話し合っていく。

 

「じゃあ、これから依頼に?」

「うん。そろそろ新米から卒業しな、って。そっちはまたゴブリン退治?」

「はい。相変わらずゴブリン退治です」

 

 ゴブリンスレイヤーと一党を組んだ女神官は、彼と共にゴブリン退治の日々を過ごしている。彼の奇抜な発想に、豊富な手段を聞いて女武闘家は苦笑いを浮かべるしかない。

 

「それ、本当にゴブリン退治なんだよね?」

「はい。ゴブリン退治です」

「砦ごと焼いてから聖壁(プロテクション)で閉じ込めるなんて……なんてエグいのかしら」

 

 ゴブリンスレイヤーの指示があったとはいえ、やっている事が本当に聖職者なのか疑ってしまう。そこに女神官が質問をする。

 

「セイバーさんの特訓はどうですか?」

「うんキツい。さっきもボコボコにされた。それも格闘術で」

「セイバーさんって、武術の心得もあるんですか?」

「うん。でなきゃ、色んな魔物を倒してないと思うよ」

 

 これまでセイバーの戦いを間近で見ていたからこそ分かる。剣だけでなくサブウェポンを交えた多彩な手数と技術、的確に怪物を狩る知識、全てが洗練されている。一体どれ程の努力でそのような境地に至るのか、女武闘家には想像が出来ない。

 

「きっと、色々経験したんだと思う。セイバーさんにしろ、ゴブリンスレイヤーさんにしろ」

「そうですね……」

「ん?何の話?」

 

 受付を終えたセイバーが戻って来ていた。話しに夢中で本人に気付かなかったが、セイバーの反応からどうやら会話までは聞いていないようだ。

 

「あっ!セイバーさん!何でもないですよ!」

「こんにちはセイバーさん」

「こんにちは。あれ?ゴブリンスレイヤーは?」

「これから合流します」

「そっか。頑張りなよ」

 

 そう言って頭を撫でてやる。

 

「えへへ……ありがとうございます」

「じゃあ私達は行くよ。ほら、ついて行く!」

「は、はい!それじゃあまたね!」

 

 女神官に手を振って一旦別れる。今度の依頼もこれまでと同じ、魔物を狩る。だがセイバーの言う精神力とは何か?その答えが見つからないまま、冒険へ向かう。

 

 

 ――

 

 辺境の街から少し離れた遺跡。かつて鉱人(ドワーフ)造り上げた坑道だったのだろうが、それが今やゴブリンの巣窟と成り果てていた。

 

「どうしておまけ感覚でゴブリンがいるんかね?!」

 

 愚痴りながらも白銀の剣で周囲のゴブリンを斬り捨てる。一方女武闘家も巧みな武術で、ゴブリンを全部一撃で仕留める。

 

 武具のお陰で飛んでくる矢を拳と蹴りで捌ける。そして繰り出される正拳突きは、今までの比ではない。それもあって以前よりゴブリンを処理する早さの向上している。だが当の本人はまだ何かが足りないのを自覚している。

 

(まだ足りない……もっと……)

 

 だがゴブリンは考える猶予を与えてくれない。背後から1匹、奇襲を仕掛けてきた事に気付くのが遅れた。察知した時には既に頭上。

 

「しまっ……」

 

 だが投擲された短剣によって、ゴブリンは頭を撃ち抜かれて絶命する。今の1匹で襲撃は止んだが、最後は良くなかった。

 

「次は助けないよ?」

「すみません!」

 

 流石のセイバーも今の失態には看過できない。次は無い、と釘を刺された女武闘家は気を入れ直して、先へ進む。

 

 坑道は入り組んでいて、まるで迷路のような造りになっている。坑道内には使われなくなっていた燭台が残っており、それを灯していく。お陰で帰り道はこれを辿れば迷わずに済みそうだ。

 

 だがいつゴブリンが襲って来るか分からない為、用心は怠らない。と、言っている傍から背後の壁が突き破られる。空いた穴からゴブリンが襲いかかって来た。

 

「くらえっ!」

 

 こうなる事は想定済み。聖水を穴に放り込んで穴の中を炎で燃やし尽くす。先頭のたった数匹は逃れたがそのまま女武闘家の正拳突きからの裏拳によって粉砕された。

 

「凄い……一網打尽ですね」

「アンタも良い反応だったよ」

 

 一応穴の中を確認して、動かなくなった事を確認してから先へ進んだ。

 

 やがて奥まで進むと、まるで広大な神殿を彷彿とさせる広場に出る。

 

「凄い……」

「鉱人が築き上げた技術と知識の結晶……それが闇の一族に乗っ取られた、ってとこかな」

 

 広大な内装に息を飲む女武闘家に対し、セイバーは険しい表情で中央まで進む。ここに邪悪な意思がある事を悟っている。

 

 その時、奥の扉がひとりでに、轟音を奏でながらゆっくりと開いていく。その影響で揺れが起きている。

 

「さあ、本命のお出ましよ」

「は、はい……!」

 

 扉の奥から巨大な足音、少しずつ大きくなっていく。やがて影から扉に手をかける巨大な岩の巨人。扉から出ると、その姿を現した。

 

「これが……岩石巨人……!」

「怖じてる場合じゃ……えっ?」

 

 何かを察知したセイバー。少しずつ表情が深刻なものになっていく。

 

「足音が1つじゃない……!」

「えっ……?!」

 

 その意味に気が付いた女武闘家の表情が青ざめる。複数の足音と共に、岩石巨人が3体現れた。

 

「これは想定してなかったなぁ……」

 

 自分達より一回りも二回りも巨大にして強固な身体をした敵が4体。百戦錬磨のセイバーも、これには口角が引きつっている。だが絶望はしていない。

 

「あいつの弱点は赤い結晶よ。そこを壊せば奴らは身体を維持しきれなくなる」

 

 何度も戦った事があるセイバーには弱点が分かっている。彼女の言う通り、岩石巨人の胸部には赤い宝石のように輝く結晶が埋め込まれている。

 

 巨大な姿をした怪物が4体という圧倒的なプレッシャーに押し潰されそうになっていた女武闘家も、その弱点が分かると己を奮い立たせる。

 

「やれるね?」

 

 振り返って問うセイバー。女武闘家の答えは当然こうだ。

 

「はい!」

 

 頷いて言い切った。

 

「ならば良し!いくわよ!」

 

 剣を抜き、体勢を構える2人。岩石巨人達が仕掛ける前に先手を打つべく2人は駆け出したその時だった。

 

雷光弾(ホーリーライトニング)!」

 

 呪文が坑道内に響くと同時に、2人の背後から雷の光弾が4発飛来し、それぞれの個体に向かう。巨大な腕で弾き飛ばすが、一体だけ反応が遅れて結晶に直撃して倒れた。

 

「な、何ですか今のって?!」

「雷光弾……まさか!」

 

 自分達が辿ってきた道から現れた青いローブを纏った女性の姿。その姿、その声、その呪文、何もかもが見覚えのあるセイバーは驚愕していた。

 

「やっと追いつきましたよ。()()月下の剣士(ムーンセイバー)さんと呼べば、よろしくて?」

「ヴェルナンデス……!」

 

 フードを取ると、茶色の髪がサラサラと靡きながらその風貌を見せた。

 




キャラ紹介

女魔導師- ヴェルナンデス-(20)

イメージCV:戦姫絶唱シンフォギア 風鳴翼

モデル:サイファ、ヨーコ・ヴェルナンデス、シャーロット・オーリン

職業は女魔導師。
理知的な性格であるが堅物であり、任務や使命を第一と考えている。
魔術の扱いに長けており、魔導書に刻まれた魔術を行使する事が出来る。
一応近接戦も行えるが、技術も力もセイバーより大きく劣る。
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