リリーシャの魔法   作:西風 そら

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14 ジャックと合コン編集部

 

 

 

「ご、合コン……ですか? 合同コンパ?」

 

 小杉は二回聞き直した。

 遊栄社、少年ジャック編集部、打ち合わせのブース内。

 仕事の話が終わって原稿を揃えている所で、担当作家の秋名の口からいきなり似合わない単語が転がり出たのだ。

 

「知り合いの漫画関係の仕事をしているお嬢さんがたが、遊栄社の男性社員と懇親を広げたいそうで……そんなに深い意味は無くて……その、頼まれてしまったもので……」

 

 あの秋名が言葉に困っている。彼女自身もあまり慣れていないのだろう。

 

「あ、秋名先生が幹事をやられるのですか?」

「幹事……? そうですね、私がやらなくては。という事は私も参加しなきゃならないの? まさか……」

 

 物凄く不馴れな感じだ。

 誰だよこの人にこんな事を押し付けた奴は。付き合わされるこっちの身にもなってくれ。

 

 困惑のパーテーションの隙間から影が覗いた。

「聞き捨てならない話が耳をくすぐりました」

 ぬっと突き出した顔は、ジャック編集部のドンファン(自称)、山久。この手の話は聞き洩らさない。

「お任せ下さい、男性側の幹事は僕が引き受けましょう。何人集めればいいんです?」

 

「あ、あの、それは助かります。出来れば漫画誌編集部の方で」

「ふむ」

「こちらは私を除いて六名程で……同人数が好ましいのですか? 多い分には大歓迎だと思うのですが」

「ふむふむ、了解しました」

 

 軽く日時を決め、場所は山久が見繕うという事で、秋名は肩の荷を下ろしたように帰って行った。心なしか足取りが千鳥っている。

 

 

「小杉ィ、同期に声掛けろ」

「み、皆、彼女持ちか、お眼鏡に叶わないタイプですよっ」

「阿呆、今回の合コンに限っては、彼女持ちだの容姿だの年収だの親と同居だのは関係ねぇ」

「は?」

「シゴデキ(仕事が出来る)か、担当枠に余裕があるかどうかだ」

「…………」

 

「彼女、先日のミズサトサロンに行ったろ。お相手は多分、天宮山羊子の扱いで超学館を離れたがっている専属契約していない若手作家か、プロアシ陣だ。漫画のイロハが出来ている、イチから育てる必要がない。

 今どこでも不足しているのは、人気Web小説のコミカライズを注文通りに上げてくれる絵描き。向こうから来てくれるなんて有り難い、掘り出し物が紛れているかもしれんぞ」

「…………」

「秋名嬢、原作作家としては程々だが人脈は一級だ、大事にしろよ」

 

 早速スマホに耳を当てながら去りかける山久を、小杉は慌てて追い掛けた。

 

「あ、あの、女性作家たちは普通の漫画家をやりたいんじゃ」

 

「普通って何だよ。今一つパッとしなかった小説が、コミカライズで大化けする事もあるんだ。誇りある立派な仕事じゃねぇか」

「そ、それはそうですけれど……」

「原作者にとってもモチベーションも部数も上がって、三方両得だ」

「三方……」

 

「俺たち編集の仕事は、相性を吟味して最高の組み合わせをマッチング……マリアージュしてやることだ。責任重大な仲人さんだぜ」

「……はい、でも正直言うと、粗製乱造ってイメージを持ってしまっています」

 

「そうだよ、使っては捨てられて行く激流みたいな分野だ。まだノウハウが無いから誰も教えてくれない。俺ら若いのがこれから確立して行かにゃならんステージだ。

 俺らン所にもその内お鉢が回って来るやもしれん、ヘボやると後世の若いのの笑い者になるぞ。気ィ抜くなよ、小杉」

 

 今度こそ去って行く山久を、小杉は茫然と見送った。自分はまだまだ修行が足りていない……

 

 

 

 

 

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