息抜きに書いた作品です。
緩く楽しんで読んでもらえると嬉しいです。
ドラゴンクエストという作品を知っているだろうか?
国民的RPGのひとつと言えば伝わるだろう。
そのシリーズ作品で天空シリーズと称されているものがある。具体的に言うとⅣ、V、Ⅵの三作品がそれに当たる。
中でもドラゴンクエストVは映画になったこともあり、ゲームをあまりプレイせず配信動画を観るだけだった私が興味を持って劇場へと行ったこともあった。
さて、このドラゴンクエストVがどんな作品であるかを簡潔に言えば「人生」という言葉が相応しいのではないか?
主人公の幼年期から物語は始まり、とある事件をきっかけに父を亡くし十年を奴隷として過ごし脱走。青年期は父の足跡を追い勇者を探す旅に出て──その先で結婚をする。
そう、副題が『天空の花嫁』とだけあって主人公は結婚をするのだ。それも、幼馴染だったビアンカかお嬢様のフローラかという選択を迫られる。
ところで、どうして私がこんな話をしているかというと──
「デボラ姉さん?こんなところにいらしたのですか?」
「ん? フローラ、私を探していたの?」
簡潔に言おう。
私は転生し、フローラの姉に生まれ変わっていた。
何を言っているのかさっぱり分からないだろうが、嘘ではない。
私は『デボラ』というフローラの姉として、このドラゴンクエストの世界に生を受けた。
前世の記憶を思い出したのは初めて魔物に襲われた時、乗っていた馬車に頭を打ったことがキッカケだった。
思い出した前世はただの一般人、今世は富豪の愛娘。ある意味勝ち組転生である。
だがおかしい。おかしいのだ。
本来ドラゴンクエストV──ドラクエ5の世界にフローラの姉など存在しないのだ。
配信者のプレイ配信を見ていてもビアンカかフローラしかいなかったし、映画にもこの二人しかいなかった。
それなのにデボラという存在がいる。これはどういうことなのだろうか?
「そろそろ夕食の時間ですから、一緒に食べようとお誘いをしに来たのですが」
「ああ、もうそんな時間? 分かったわ。これをやり終えたら向かうわ」
まあ、この世界にそういう存在として生まれ変わってしまったのであれば仕方ないと私は数年掛けて割り切った。
そして今現在、花嫁修行と称した修道院での生活を終えサラボナで平和に暮らしている。
「デボラ!」
「なによパパ」
「お前また屋敷を抜け出して魔物退治に向かったと聞いたぞ!?」
「あー、それはねパパ。最近買ったこの『きせきのつるぎ』の使い心地を──」
「また武器を買ったのか!? なんでお前はドレスや宝石よりも武器を好むのだ!?」
「だからそういうのは私の性に合わないっていつも言ってるじゃない。それに着飾らなくても私は十分綺麗だし。
それよりパパ、私『まじんのかなづち』が欲しいんだけど」
「呪われた武器を欲しがるのか!? いかん!いかんぞそれは! ドレスや宝石、美容品だったらいくらでも買ってやるがそれはダメだ!」
平和に……とは言ったものの、それはあくまで私個人の間でだ。
私はこの世界を謳歌するための手段としてそれなりの強さを得ようとしている。財力に関してはパパ──ルドマン家が潤沢に持っているため、問題はない。ただ、腕っぷしは違う。
これに関しては実践を積むしかない。なので昔から積極的に修道院や宿屋、屋敷を抜け出しては魔物を狩りに行く生活を送っていた。
長年抜け出した甲斐があったのか、サラボナ周辺の魔物程度では相手にならないぐらいには強くなれた自覚はある。
レベル的にいくつなのだろう? ゲームのようにステータスを見る手段がないから分からないけど、不測の事態に備えてはいるから大丈夫だろう。武器や防具もパパのコネを使って取り寄せてるから上等な物を揃えている。
ただ、最近はあまり強くなった自覚がないため、メタルスライムやはぐれメタルといったレアモンスターを探しに行こうかなと考えている。
その為に『まじんのかなづち』が欲しいのだけど……仕方ないので『キラーピアス』や『どくばり』、『はやぶさのけん』あたりで満足するしかない。
「はぁ……お前も少しはフローラの様にお淑やかに出来んのか……?」
「私は十分お淑やかでしょう?」
「どこがッ!?」
そんなこんなでパパ──ルドマンを振り回す日々を送っていた。
それからしばらくして──
「結婚?」
「そうだ」
「誰の?」
「フローラだ。 ただ、相手はこれから──とある指輪を得ることが出来た者にしようと思っておる」
これは原作イベントだ! フローラとビアンカ、主人公の結婚イベント!
指輪を取りに行くイベントだったかな?
「ふーん、ようやくフローラにも春が来るのね」
「そこでどうして自分じゃないんだと怒らないのだ……」
「いや、私なんかよりもフローラの方が人気あるでしょ?言いよる男が結構いるって聞くし。
それに私とフローラだったら皆フローラを選ぶに決まってるじゃない」
ガクッとなるパパ。でも納得して欲しい。
私の前世は男だ。もうこの世界でそれなりの年月を女として生きているとはいえ、ここまでずっと男に惹かれることはただの一度もなかった。
ならもう私は独り身でいい。前世が男だからと言って女の子に興味があるわけでもないしね。
確か主人公と結婚出来なくてもアンディと結ばれるはずだから、その点は安心ね。フローラには幸せになってもらいたいし。
「お前は自分の人気を分かっていないのか……」
「私が戦乙女として噂になっていることは知ってるわよ?」
戦乙女。誰が言ったか私の二つ名だ。
ぶっちゃけ屋敷を抜け出して魔物相手に試し斬りがてら、危なさそうな魔物を率先して狩っていたらそう呼ぶ人が増えたらしい。
サラボナだけでなく、ルラフェン、ポートセルミまでその名前は伝わっているとか。SNSもないこの世界でよくもまあそんな情報が伝わるものだと感心した。
「と、とりあえずだ。フローラの結婚相手はまず『死の火山』にあると言われている『ほのおのリング』を持ち帰った者に決めようと思っている」
「『死の火山』? あんなところでいいの?私が取ってきてあげようか?」
「ならん! それをやったら婚約者が絞れんではないか!?」
残念。まあ、パパがフローラを任せられる相手として『死の火山』ぐらいの魔物を倒せる腕前ぐらいは欲しいんでしょう。
私も前に行ったことあるけど、とにかく暑くて途中で帰ってきちゃったのよね。我慢すれば行けないことはないのだけれど。
「ところで……だ、デボラ。 お前も結婚したいとは思わんのか?」
「いや全然?」
「そ、そうか……ならせめて、どんな相手ならいいと思うんだ?
それぐらいは聞かせてくれんか?」
なんかパパが私の恋愛事情に首を突っ込もうとしてくるのは何故だろう?
いや、これも親が子を思う気持ち、というやつなんだろう。
なら理想を言うぐらいならいいかな?
「そうね……まず私より強いといいわね。もしくは肩を並べて戦える男。
加えて言えば……私に従ってくれる人、なんてどうかしら?」
「………それは冒険者としての仲間を求めているのではないか?」
「あ、バレた?」
今まで一人で魔物退治に行っていたから、仲間がいたらなぁなんて考えていたことを口に出しただけだ。
実際のところ、私を追いかけてきた兵士も、たまたま居合わせた冒険者の戦士も私より強い人はいなかった。
それこそ主人公なんか結婚したら一緒に冒険も出来るし、尽くしてくれそうだから条件は満たしているけど……この世界の異物の私が結ばれる相手じゃないからやっぱり無しね。
そんなことを話して、月日は流れ──
「デボラさん、俺と……いや、私と結婚してくれませんか?」
「…………………………え?」
何故か主人公にプロポーズされた。
どうして!?ビアンカかフローラじゃないの!?もしくはパパ!
あ〜!これからの物語、どうなっちゃうの!?
なお、デボラが知ってるドラクエ5はPS2リメイクなのでDS版でデボラが追加されたことを知りません。
DS版を実況してる人を私は知らないのでこんなネタにしました。異論は受け付けます。
余談ではありますが、ユアストーリーは二日目に観に行きました。パンフレットまで買った私の感想はお察しください。