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運命の日がやって来た。
遂にアベルがビアンカとフローラ、どちらかと結婚を決める日だ。
私はというと邪魔にならないように自分の部屋に引きこもってる。
あの場所には最低限の人間だけいればいい。
ただ、結果は気になるので、メイドに決まったら教えてくれと伝えてある。
「アベルがビアンカを選んでもフローラを選んでも祝福してあげないとね」
アベルという主人公に関わるのはこれで最初で最後──いや、十年後のブオーン復活があるか。それぐらいだ。
それまでにブオーンを叩きのめせるぐらいの強さは欲しい。
だから今度こそパパを説得して『まじんのかなづち』を探す予定だ。
なんだったら『はかいのてっきゅう』でも構わない。デカくて強い武器を振り回したいのだ。
「それにしても遅いわね……もうとっくに決まっててもいい頃のはずだけど」
朝、アベルが屋敷に来たのは目視で確認している。
ビアンカも別荘から真っ直ぐここに来ているし、屋敷から出て行った姿は見ていない。
メイドも私に伝えにこないということは、まだアベルは選べていないのだろうか?
昨日の相談で決心がついたんじゃないのだろうか?
いや、まさか……。
「……ハーレムを狙ってるとか?」
ドラクエ作品において、ハーレムを築くといった要素は無い。
しかし、この世界は原作のゲームと違って一夫多妻が許される可能性がある。
まあ、一夫多妻、ハーレムと聞こえは良いが複数の女性を娶るというのは大変だろう。現実的ではない。
ゲーム的に言えば仲間が増えるから万々歳かもしれないけど。
「デボラ様、よろしいでしょうか?」
──と、ハーレムについて考えているとメイドがやってきた。
「いいわよ。入りなさい」
メイドは部屋に入るなり神妙な顔をしていた。
「デボラ様、フローラ様がお呼びです」
「フローラが? 結婚が決まった報告じゃなくて?」
「はい、なんでも問題が発生したとかで……」
???
結婚イベントにそんな問題になるようなことがあったかしら?
「分かったわ。すぐ向かうわ」
一先ず、問題が何かは分からないけど広間に向かうとしよう。
☆☆☆☆☆
広間へと降りるとアベルの姿が最初に目に入り、続いてビアンカ、パパ、フローラの順に並んで壁際に立っている。
これは一体……?
「フローラ、一体どうしたの?問題が発生したって聞いたんだけど……」
「姉さん、来てくれましたか。 ちょっとこっちに来てください」
そう言って近寄ってきたフローラに案内されて……何故かアベルの前に立たされる。
「フローラ?」
「姉さん、そのままでいてください」
「え、ええ、分かったわ」
珍しくフローラが強引だ。
パパはというと……なんだか暖かい目でこっちを見ている。
「ほら、アベル。しっかりしなさい」
「わ、分かってるよビアンカ」
アベルの後ろにはビアンカの姿が。
何やらアベルを励ますというか勇気づけるようにしているのは何故?
この感じだとまだフローラもビアンカも選んでないんじゃない?
「えっと……?」
この状況が全く理解出来ない。一体何が起きているのか──と考える間もなくアベルが口を開いた。
「デボラさん!」
「どうしたのアベル? 今日は大事な日でしょう?昨日も相談に乗ってあげたし、どちらを選ぶかの決心はついたんじゃ……」
「実は……あなたに伝えたいことがあります」
「それは今じゃなくてもいいんじゃ──」
「いいえ──今じゃないとダメなんです」
アベルは跪いて私に手を向けてくる。
そして──。
「デボラさん、俺と……いや、私と結婚してくれませんか?」
「…………………………え?」
硬直すること体感1分。私は混乱していた。
「わ、私と結婚!? じょ、冗談でしょう!?」
「本気です。 受け入れてもらえるのであれば、どうかこの手を取ってください」
「!?!?」
い、意味がわからない。なんで私!?原作に存在しない女よ!?
というかこの状況って……。
「フ、フローラ、どういうことかしら?説明してもらえる?」
「……姉さんが言っていた、いい出会いの相手はアベルさんのことでしょう?
今まで浮いた話一つなかった姉さんが気になる相手が出来て、それが両想いと確認が取れれば、取るべき行動は一つじゃないですか」
それってアベルが私を……っていうのはこの状況で分からないわけないけど、なんでフローラがそれを後押しするの!?
「ビ、ビアンカさんは!?」
「私は……アベルが好きよ。 でも昨日、互いに本音を話して──そこで私はアベルの恋を応援しようって思えたの」
なん……ですって……!?
ま、まずい!ビアンカもフローラもアベルの味方じゃん!
ここでパパは……あ、ダメだ。多分この計画知ってたな。あの温かい目はこういうことだったのか。
み、味方がいない!
「くっ……戦略的撤た──」
「姉さん?逃げたらダメよ」
デボラは 逃げ出した!
しかし まわりこまれてしまった!
ガシッと腕を掴まれてしまった……!これでは逃げられない……!
「姉さん、さっきから顔が真っ赤ですよ。もう観念したらどうですか?」
「………ッ!」
も、もうダメだ。お終いだ……!
これはもう完全に周りを固められてしまっている!どうしてこうなった!
「デボラさん……」
アベルがすごい切ない表情をしている。そんな捨てられた犬みたいな顔しないで……!
「……アベル、本当に私でいいの?」
「はい! 昨日のデボラさんとの話で出た私の歩く道の隣に、あなたがいて欲しいんです!」
────ッ!!
「……私は結構わがままよ」
「構いません」
「それに結構がさつだし」
「そんなことありません。出会ってからずっと私に気遣ってくれていましたよ」
「……グズで弱い男は嫌いよ」
「必ず、必ずデボラさんを守れる強い男になってみせます!」
……ああ、これはもう私の負けだ。完敗だ。
確かに、アベルにそういう気が無かったといえば嘘になる。
原作を知る私だから、ビアンカかフローラと結ばれる運命にあると、その気持ちを押し込めた。前世が男だからと言い訳をして。
でも、ここまで私を想ってくれる相手を拒絶出来るかと言われたら──それは無理だ。
恋愛は好きになった方が負け、という言葉があった気がする。
つまり、私は最初からアベルに負けていたのだ。
私はアベルの手を取り──
「よ、よろしくお願いします……アベル」
求婚を受け入れた。
エンダァァァァァッ!!
結婚式回ちょっと時間かかるかもしれない予告はしておきます。
新婚旅行編とか考えてるけど、それは番外編にして本編サクサク進めるべきか悩むところ。