そして風邪を引いてしまった。
皆様も体調管理には気をつけて!
「それでは本日これより、神の御名においてアベルとデボラの結婚式を行います。
皆さま、甲板後方の特別室をご注目ください。 花嫁デボラの入場です!」
遂に始まってしまった。もう逃げられない。
「さあ、行こうかデボラ」
「え、ええパパ」
パパに手を引かれ控室──特別室から出ていく。
すると前世のテレビでよく見た花火の様な装置が特別室前を彩っていた。これは魔法なのかしら?それともそういう別の技術?
と、普段ならそんなくだらないことを考えているだろうけど、今はそうじゃない。まだ受け入れ態勢が整っていないから平静を保つので精一杯だ。
ゆっくりと祭壇へと歩いて行き、遂に心の準備が整わないままアベルのもとに辿り着いてしまった。
「おお、神よ。 このよき日、よき場所にこの花嫁と花婿が導かれました。この二人の出会いをどうぞ祝福してください」
ああ、もうそこに、間近に迫ってきている。
心の──精神の準備は出来ていないのに。
「さあ、それではお二人の誓いの言葉を。
なんじ、アベルはデボラを妻とし……健やかなる時も病める時もその身を共にすることを誓いますか?」
「はい、誓います」
「なんじ、デボラはアベルを夫とし…… 健やかなる時も病める時もその身を共にすることを誓いますか?」
「…………」
答えられない。どうすればいい?
「姉さん?」「デボラさん?」
フローラとビアンカが私を心配そうにしているのが分かる。
パパもママも答えない私を見て少し動揺している。
そんな中私は石の様に固まってしまっていた。
「デボラ?」
そんな中、アベルが私に心配そうに声をかけてくる。
──そうだ、いっそバラしてしまおう。そうすれば、今更だけど考え直してもらえるかもしれない。
私という異物ではなく、本当の花嫁を選び直すかもしれない。
「アベル。前にも聞いたけど本当に私でいいの?」
「……もちろんだよデボラ」
「プロポーズを受けた時に言ってなかったことがあるんだけど……」
「なんだい?」
「私って男みたいな女よ?いや、そうは思えないかもしれないけれど今まで男として振る舞ってきたつもりよ。身体は女でも中身は男。
……そんな私と結婚しても幸せになれないかもしれない。それでもいいの?」
アベルは不思議そうな顔をしてから、少し真剣な顔をして──
「私は──いや、俺はデボラのことを全部知っているわけじゃない。
でも、ポートセルミからの短い付き合いでもデボラの言う男らしさも含めて好きになったんだ。
だから──そんな不安そうにしないで。俺が必ずデボラを幸せにしてみせるよ」
──その言葉を聞いて私の心が、精神が晴れた気がした。
私はずっと自分をこの世界の異物だと思っていた。その存在も、この在り方も。
だけど、アベルはそれを聞いて、知った上で受け入れてくれる。
この時、ようやく私は女であることを受け入れられた気がした。
「……ありがとう、アベル。
神父様、待たせたわね。神とアベルに誓うわ」
「よろしい。 では、指輪の交換を」
私は炎のリングを。アベルは水のリングをそれぞれ手に取り互いに左手の薬指へとはめた。
そして──
「それでは、神の御前で二人が夫婦となることの証をお見せなさい。
さあ、誓いの口づけを!」
改めて私はアベルと向き合う。今この時、私の目にはアベルしか映らない。
そして、これから困難な道を歩む青年は私だけを見つめていた。
互いに何も言わず見つめ合い──口づけを交わした。
初めてのキスは幸せな味がした。
「おお神よ! ここにまた新たな夫婦が生まれました!
どうか末永くこの二人を見守って下さいますよう!」
神父の宣言共に花火が打ち上がり、参列者の拍手が鳴り響いた。
「おめでとうアベル! 幸せにな!」
「アベル!それにデボラさん!おめでとう!」
「デボラ姉さん!本当におめでとう!
アベルさんもどうか姉さんと二人でお幸せに!」
ヘンリー、ビアンカ、フローラから祝いの言葉を受け取りながら、アベルと私は退場した。
私たちは夫婦になったのだ。
TSしたことや、急なマリッジブルーに襲われた転生デボラさんを上手く描写出来たかな?
とりあえず、今回をもって転生デボラさんは一つの山を越えました。
まだもう一つ直近で山があるんですけどね(意味深)
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