今回難産でした。
ビアンカにも幸せになってもらいたい、そう思いませんかあなた?
ビアンカと話すためまたも場所を変えることにしたのだけれど……。
うん、ぶっちゃけるととっても気まずい。
何せビアンカはアベルのことをレヌール城の一件があってからずっと想い続け、10年の時を経てようやく再会した幼馴染であり、想い人なのだ。
そんなアベルをぽっと出の私が射止めてしまった。分かりやすく言えばWSS──私が先に好きだったのに、というやつだ。
これに関しては私が悪いわけではないが、ビアンカにとっては面白い話ではないはずだ。
如何にアベルのことを想って祝福しようとも、割り切れない部分はある。それが表情に陰として表れている。
「ビアンカさん、顔色が悪い様だけど体調でも悪いの?」
「い、いえ、そんなことは……あはは」
「……それならいいんだけど」
めっちゃ無理してる。失恋のダメージは大きい様だ……。
原作でもアベルと結ばれないとエンディングまで独り身を貫く女だ。面構えが違う。
でも私はビアンカにも幸せになってもらいたい気持ちはある。
原作でもフローラが言っていたが、同じ天空人の血を引くからか私もビアンカのことを他人と思えない何かを感じている。
もしかすると姉妹ではなく、親戚関係にあったのかもしれない。
「この辺でいいかしらね。 付き合ってもらって悪かったわね」
「それでデボラさん、私と話したいことって……?」
「そうね、まずはお礼から。アベルのために色々としてくれたんでしょう?ありがとうね」
「い、いえ、そんな大したことはしてませんから。お気になさらず……」
「そうかしら? ビアンカさんがそう思うならそれでいいけど。
それで本題なんだけれど、ビアンカさんにはアベルのことを色々と教えて欲しくて」
「アベルのこと、ですか?」
「ええ。結婚はしたけれど、私アベルのことをほとんど知らないのよ。
出会ったのはポートセルミで……って、その辺はアベルから聞いてる?」
「はい。再会した時、プックルの話になってその時に……。それと、アベルが結婚相手を決める時に」
そういえば、アベルもビアンカと本音で語り合ったって言ってたわね。
その時に私のことは話したらしい。どんな話かまでは分からないが。
「そうなのね。でも、私はアベルと付き合いがあったのはそのプックルの件と『死の火山』での遭遇ぐらいで、私はアベルのこと全然知らないのよね。 ……だから、ビアンカさんからアベルの話を聞ければな、と思って」
嘘です。原作でどういう人生を送ってきたかは知ってます。
でも、私が存在する以上、何かしらの変化があるかもしれないし、原作とは違いプレイヤーではなく個人として存在しているアベルは原作と違うキャラクターをしているかもしれない。
なら、本人と話す前にある程度人柄を知っているビアンカに話を聞ければ、と思ったわけだ。
まあ、それだけじゃないんだけど。
そう言うと、ビアンカは柔らかな表情を作って「ええ、私で良ければ」とビアンカが知るアベルの人柄と思い出を語ってくれた。
プックルとの出会いやレヌール城でのおばけ退治をした話。アベルの故郷であるサンタローズが焼け野原となった話。
そしてそこからはアベルと再会し、彼から聞いた十年間の話になり、彼が旅する目的などを語ってくれた。
聞いたところ、ほとんど原作通りだ。アベルがビアンカに語っていないところもあるので完璧ではないが確認は出来た。
ただ、ここからが問題で……
「アベルはね、デボラさんの話をするととても嬉しそうにしていたわ。
サンタローズでも奴隷生活でも優しくしてくれる人はいたそうだけど、あんなに頼りになる人はパパスさん以外にいなかったって」
それは嬉しい高評価だ。パパスという父の存在はアベルにとって、とても大きな存在だ。
そんな偉大な人物と同じぐらい頼りになると言われて、この世界で強くなった甲斐があったというものだ。
「それに……プックルと再会した後、迷惑をかけてしまった村にアベルたちが嫌な目に遭わないように色々と話してくれたって聞きましたよ。
アベルはデボラさんに全部押し付けることになってしまったって悔いてました」
「ああ、あれはいいのよ。事情を聞いた私が、十年ぶりの再会に父親の形見を取り戻したアベルの気持ちに水を差さないようにって勝手にやったことなんだから」
「……きっとそういうところですよ。アベルが惚れたところは」
溜息を吐いてビアンカが私を呆れ顔で見つめてきた。
「さて、私が知るアベルはこんなところです」
「長々とありがとう、ビアンカさん」
「いいえ。 ……それじゃあ、そろそろ私も村に帰ります。父の容態も心配なので……アベルのこと、どうかよろしくお願いします」
頭を下げてビアンカはこの場を──サラボナを去ろうとする。
ここだ。この話をするのはここしかない。
「ビアンカさん、この『みずのリング』を探すのを協力してくれたお礼をさせてもらえる?」
「……お礼、ですか?」
「そうよ。 あなたの協力が無ければきっとこの『みずのリング』はこの場に無かった。
──だから、これはそのお礼。 お父様の容体、あまり良くないんでしょう?だから、パパの紹介で腕の良い治療師を紹介してあげる。
勿論、費用は全部こっちが持つからお金の心配はしなくてもいいわ」
ビアンカの義父であるダンカンは確かそれなりに重い病にかかって臥せっていたはず。
十年経っても生きているので、命に係わるほどのものではないはずだが、念には念をだ。 それに、父の容体が落ち着けばビアンカも色々と考える余地が出来るかもしれない。
「そんな、悪いですよ。 私、そんなにしてもらうほどのことは……」
「これも私が勝手にやったことよ。気にしないで頂戴。
……それでもどうしても気が済まない、っていうならひとつだけお願いしたいことがあるんだけど、いいかしら?」
「え? 一体何ですか?」
「そうね……将来、私たちが困っていたら助けて欲しい。 たったそれだけよ。」
きょとんとした顔をしたビアンカは数秒後にはフフッと微笑む。
「勿論です。私に出来ることならなんでも言ってください」
「ありがとう。 数日後には治療師が向かうはずだから、お父様に伝えておいてね?」
「はい! ではデボラさん、お幸せに」
そう言ってビアンカは去っていった。
……これできっと、ビアンカの未来がひとつ明るくなると信じたい。
そうして、しばらくして宴に合流し夜になり──。
「アベル君もデボラも今日は疲れただろう。 今日はこの別荘で二人でゆっくり休みなさい」
「姉さん、頑張って!」
パパとフローラに別荘に押し込まれた。
──そうだ。私たちは夫婦になったのだから初夜が──初夜!?
え、ドラクエでそんな初夜イベントなんてあったっけ!? ビアンカのアルカパの宿屋ぐらいしか記憶が……!
この夜、結婚以上に覚悟が必要な重大イベントが始まろうとしていた──!!
ビアンカはまだ出番があります、とだけ。
次回で結婚式編は終わり、数話旅行をしてテルパドール編かな?
感想、高評価よろしくお願いします。