天空の花嫁の姉って?   作:ざいざる嬢

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この回のイメージソングはYOASOBIの「祝福」です。これしかないと思った。

そういえば、ドラクエモンスターズ4の主人公がビアンカ、フローラの幼少期みたいですね。
デボラは???


グランバニア 祝福を君に

 

「じゃあサンチョ、これの保管頼むよ」

 

「承りました。 坊っちゃんの子供へのプレゼント、渡す日が楽しみですね!」

 

 完成した手紙とロケット(プレゼント)をサンチョに預けた。ロケットは念のためにと称してふたつ用意した。これで双子にひとつずつ渡せるから一安心ね。

 

「その頃には一体どれぐらい大きくなっているんだろうな……」

 

「子供の成長は早いから予測もつかないわね。 でもきっと元気な子よ」

 

「デボラは休んでなくて大丈夫かい?シスターがそろそろ動き回らないようにって……」

 

「ええ、もうそろそろ生まれる時期みたいだけど……やっぱりジッとしているのは性に合わなくて。でも少し動き回るのが辛いわね……」

 

 胸も張って少し痛いし、お腹も今では足元が見えないぐらい立派に大きくなってる。双子だからもっと大きくなるのかと思ったけど、その辺りは大丈夫(?)そうね。

 

「無理しちゃだめだよ……もう一人の身体じゃないんだから……」

 

「あら、アベルもそんな風に心配してくれるのね。 まあ、アベルが試練に行くのを見届けたら部屋に戻るわよ」

 

 そう、アベルは手紙を渡してすぐに試練に向かうと言った。

 なんでも大臣が「聞いていた日から随分とずれ込んでいるのは問題では?自ら決めた日程も守れないのは王として、国民の上に立つ者としてよろしいものではありませんぞ」とか言ったらしく、アベルはそれを受けて出立を急いだというわけだ。

 あの大臣ホント余計なことしかしないわね!!急かした理由も本当のところはアベルを殺すために雇ったカンダタたちに伝えた日取りと変わってしまったから、それに苛立って文句を言いに来たに決まってるわ!

 殺そうとした相手にさっさと殺されに行け(要約)だなんて、どんだけ面の皮が厚ければ言えるのよ!一度その面の皮を剝いでやろうか!!

 

 ……ふぅ。ちょっと苛立ちが……これもきっと妊娠した影響ね、多分。

 

 でも、どういうルートを辿ったとして私は大臣と仲良くすることは出来ないでしょうね。

 だってどんな理由があろうとも大臣はアベルを殺そうとしてるんだから。 私の愛するヒトを。

 転生云々も関係ない。私個人として大臣は許せない。

 だから──責任は取ってもらう。必ずね。

 

 

 

 

 

「じゃあ、行ってくるよ」

 

「坊ちゃま……お気をつけて」

 

「アベルよ。試練を乗り越え無事に帰って来る時を待っているぞ」

 

 いよいよアベルが試練に向かう。

 今のアベルは私の持っていた武器や防具を全部貸し出してるから、使い方さえ間違えなければ──それこそカンダタの痛恨の一撃さえ受けなければ負けることはないだろう。

 ……でも不安だから。

 

「アベル、ちょっと……」

 

 アベルを手招きしてから見送りのキスをするために顔を掴んで唇に触れる。そして唇を離した後そのまま首元に抱きついた。

 

「デボラ、恥ずかし──」

 

「アベル、このまま聞いて」

 

 やったことは情熱的だったけど、反面今の私の言葉はとても冷めていたと思う。

 その温度差に真剣さを感じさせたのか、アベルも私が何か重要なことを周囲に知られずに伝えようとしているという意図を汲み取ってくれて、そのまま私を抱きしめ返しながら聞き耳を立てていた。

 

「……今回の試練、恐らくだけどアベルをよく思わない相手からの刺客が来るわ。城で過ごしている時に嫌な視線をずっと感じていたわ」

 

「……」

 

「そいつを罰するためには可能ならそいつを捕らえて情報を聞き出さないといけないわ。

 でも、相手もきっと手練れよ。だから決して無理はしないで。試練を途中で中止して帰ってきてもいい。 だから……絶対無事に帰って来て」

 

 言うことは言った。これでアベルも試練で何かが起きるかもしれないという考えが浮かぶようになる。

 ゲームなんかでよくある探索していたらボスと遭遇してしまい準備も整わないまま全滅──みたいなことにはならないだろう。

 アベルは真剣な眼差しで私を見つめ「試練を終えて必ず帰って来るよ」と告げ、ピエール、メタリン、プックルを連れて試練へと向かった。

 

 

 

 

 

「デボラ様、これは……?」

 

「それは()()()()()()()()。子供に手紙を渡すときにアベルにも渡そうかなって思ったの。

 ほら、グランバニアに来てからあまり二人の時間がなかったから、これまでの感謝も込めて書いてみたの。それに妊娠している今しか書けないこともあるし……」

 

 アベルを見送った後、私は部屋にサンチョを呼び出し二つ目の手紙を手渡した。

 グランバニアに2通残す手紙はアベルと子供たち宛てだ。

 アベルへの手紙は保険。原作通りに進んでしまった場合に助けになる情報をいくつも書き込んである。例えが悪いけど遺書の代わりのようなものかしら。

 冒頭も「この手紙をアベルが読んでいるということは──」とパパスのてがみに寄せて書いている。

 

「なるほど……これはきっと坊っちゃんも驚かれますね!」

 

「ええ、きっとそうね」

 

 多分驚きすぎて言葉に出来ないと思うわ。

 サンチョに手紙を預けた私はそのまま部屋に戻り、出産に備えて体を休めた。

 

 

 

 

 

 ──二日後。

 

「ハア……ハア……うぐぅ……!!」

 

「デボラ様、息を吸ってください」

 

「そう……言われても……!!」

 

 遂に陣痛が始まり、私は猛烈な痛みと戦っていた。

 前世でもこんなに苦しい思いをした覚えはないと言えるほどの痛みに襲われ、シスターと助産師、使用人のもとで出産の時を迎えていた。

 

 呼吸法……確かラマーズ法だったかしら?ヒッヒッフーみたいな……。前世でもっと詳しく学んでおくべきだったわね。でも、それをなるべく意識してやろうとしても雑念がそれを妨げる。

 原作なら出産前にアベルと一度顔を会わせるタイミングがあったはずだけど、二日経ってもアベルが試練から戻る様子がないまま出産の時を迎えている。

 アベルは無事なのか。もしかしてそこだけ原作とはずれてしまったのかとネガティブな思考が何度も何度も浮かんでは消えを繰り返している。

 そのせいで出産に集中できずただ苦しい時間が続いてしまっている。

 

「このままだとデボラ様とお子様が……」

 

「デボラさん、落ち着いて。 一度呼吸を整えて──」

 

 ああ、私の弱い精神(こころ)が情けなく悲鳴を上げている。

 無理だ。痛い。苦しい。早く楽になりたい──負の感情が私の中で渦巻いてデボラ()が消えてしまいそうな──。

 

 

 

「デボラ!!」

 

 

 

 声の方に視線を向ければアベルの姿があって、そのまま駆け寄り私の手をぎゅっと握った。

 ──ああ、温かい手。生きている。生きて帰って来てくれた。それだけで不安が消えていき気持ちが少し楽になる。

 

「アベル……無事、だったのね……」

 

「ああ、俺は無事だよ。約束通り無事に帰ってきた! だからデボラも……そんな不安そうな顔をしないでくれ……俺が……僕が傍にいるから」

 

 アベルが心から私を心配してくれている。そんなに酷い顔をしていたのかと私は思わず顔を背けてしまう。

 乱れた呼吸を整えるためひとつひとつの呼吸を深く、ゆっくりと行なう。

 痛みも心なしか落ち着いてきたから、私は──デボラはアベルに背けた顔を向け直した。

 

「約束……守ってくれてありがとう……。次は、私の番、ね」

 

「私ね、不安だったの。 強がっていたけど、根っこの部分はどうにも弱気で、さっきまでアベルが無事か分からなくて、もしかしたら……って想像するだけでダメになってた」

 

「デボラ……」

 

「だけど、アベルが約束を守って帰って来たんだから……私も頑張らなきゃね……!!」

 

 私は今できる最高の笑顔を浮かべてアベルと私の不安を一蹴した。

 いつも私がしているような自信にあふれた笑顔をイメージして。

 

「でも、まだ不安だから……この手を握っていてくれる?」

 

「……もちろんだよ。頑張れデボラ!」

 

 原作にこんなシーンはなかった。誰もアベルに退室を促さない。

 だから私は安心した。だって私が愛したアベル()が手を握っていてくれるから。

 

「うッ……ん……ぐぅ……!!」

 

「頭が見えてきました!もう少しですよ!」

 

「頑張れ……!頑張れ!デボラ!!」

 

「……ああぁッ!!!!」

 

 

 

 

 ──おぎゃあ!!おぎゃあ!!おぎゃあ!!

 

 

 

 

 産声が聞こえる。私のお腹から生まれた赤ちゃんの元気な声が。

 一人目が生まれた後すぐに二人目の赤ちゃんも流れるように生まれてきた。

 

「おめでとうございます、元気な双子……男の子と女の子ですよ」

 

 無事に産まれた赤ちゃん(愛の結晶)を見て、私とアベルは互いに目を合わせ泣いて笑った。

 私たち夫婦は父と母になったんだと、そう理解して。

 




次回からデモンズタワー編開始です。
独自要素マシマシでいきますので乞うご期待。

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