天空の花嫁の姉って?   作:ざいざる嬢

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転生デボラさん「グランバニアは不安よね……。 デボラ、動きます」


デモンズタワー

 

 状況を整理しよう。

 何故私が何の抵抗も出来ずに此処デモンズタワーへと誘拐されたのか。

 

 戴冠式の日、私は居室で子供たちをあやしながら過ごしていると、いつもと違う使用人がやってきた。

 なんでも子供が生まれたことで今の人員では足りないだろうと判断したオジロンが最後の仕事のひとつとして使用人の数を増やしたという。

 私はすっかりその話を信じてしまい、宴の時間にせめて同じものをと用意された料理を口にしてしまい──そこからの記憶がなくなっている、というわけだった。

 何たる失態……あの使用人はきっと大臣の差し金だ。でもどうして私にまで薬を盛ったのか。

 いよいよ私まで邪魔になったのかしら?私とアベル、両方を同時に処理してレックスとタバサを次期王として育てることにしたのか……いずれにせよ原作とは違った結果になってしまっている。

 今の私はいつもの普段着に加えて手枷を着けられていることから、誘拐されて捕らわれの身であることは間違いないが、そんなことよりもレックスとタバサは無事なのかが気がかり。

 原作だと双子は使用人と共にベッドの下に隠れさせ、花嫁ひとりが攫われるという展開だけど、()()()()()()()()()()()

 こうなると無事を祈ることしかできないわね……。

 そもそもなんで使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 時期が時期なんだからもっと慎重に警戒していても良かったのにどうして……。

 まさかこれが原作の強制力というやつなのかしら?必ず主人公の妻は攫われなければならない、みたいな? ゲームの展開なら仕方ないで済ませられるけど、実際にそんなことされたら堪ったもんじゃないわよ!!

 

「おお、どうやら目覚めたようだな」

 

 と、目覚めてから状況整理をしていた間に私が目覚めたことに気づいた誘拐犯が声を掛けてきた。声がする方を向けばそこには馬面の魔物──アベルの仇のひとりである【ジャミ】の姿があった。その背後にはヤツの手下であろう魔物の影が十数体見える。

 

「フフフ、我が居城デモンズタワーへようこそ」

 

「ようこそって……勝手に連れてきておいてようこそもクソもあったもんじゃないわ」

 

「それは失礼したな。 だが、仮にも王妃ともあろう者がクソなどと口にするのはよろしくないぞ」

 

「……魔物のくせに意外と細かいところを気にするじゃない」

 

「当然だ。 我ら光の教団にも序列がある。目上の者に対しての態度は気をつけねばならないからな。ゲマ様はその辺りは厳しいのでな」

 

 あら意外。ゲマの知りたくもない一面を知ってしまったわ。あんな似非フリーザみたいな喋り方をしているだけだと思ったらそんなところもあったのね。覚えておく価値もないのでさっさと忘れよう。

 

「さて、お前を攫ってきた理由(ワケ)だが……もうひとりゲストを迎えてから話すとしよう」

 

 ジャミがこれから種明かしをするのが楽しみだとニヤニヤと嗤う。

 ああ、これから大臣が来るってことね。それで致命傷を負わされると……。

 

「どういうことだ! 話が違うぞ!!」

 

 そうして怒声と共に現れてしまったのはやはり大臣だった。

 虚勢を張るためか城で聞く声よりも声量が大きい。内心ビビッているんでしょうね。

 

「おお、お前(大臣)か。待ちかねたぞ、約束を果たしてくれたようで何よりだ」

 

「私はお前達の言う通りに協力してやったぞ! アベルを暗殺するために宴の席で薬を盛って眠らせた!邪魔にならないように王妃も眠らせたというのに、何故王妃を攫ってアベルを殺さなかったのだ!!」

 

 ……ああ、やっぱりアベルを殺す気だったのね。

 私の視線に気づいたのか大臣は少し震えているように見える。というか震えている。

 きっと今の私の眼はゴミを見るような目になっているだろう。実際そう思っているし、訂正する気もないわ。

 

「ああ、すまんすまん。計画に変更があったのだ」

 

「変更、だと?」

 

「そうだ。 当初はお前に頼まれた通りアベルを殺して、その見返りを貰うつもりだったんだが……そこの女がアベル王の妻だというではないか。

 まさか世間で()()()()()()()()()()()()()()()が妻だとは思わなくてな……実物を見て俺はこの女が欲しくなってしまったのだ」

 

 ジャミが舌なめずりして私をみている。 ……まさか私に惚れたとか言わないわよね?冗談じゃないわよ。

 というかその異名魔物にまで知られているの!?

 

「ならば、この女を攫いアベルをおびき寄せて殺し……俺がアベルになりすましグランバニアを手に入れるという計画に変更したわけだ」

 

「なっ……!?」

 

 絶句する大臣。というか、なんで魔物がいうこと聞くと思っているんだろう?

 ラインハットの太后もそうだけど、魔物と関わると基本ロクなことがないことぐらい想像できるでしょうに。

 

「筋書きはこうだ。 我ら(魔物)の手先だった大臣の手によって王妃が攫われた。アベル王は愛する王妃を救うため大臣の部屋からこのデモンズタワーへの手掛かりを見つけ乗り込んでくる。そして、元凶である大臣を斃し愛する王妃と共にグランバニアへと帰る……という具合にな。

 ただし本物のアベル王は殺し、成り代わった私がアベルとして凱旋するがな」

 

「ふ、ふざけるな! 貴様らが勝手にやったことだろう!?それに私を殺すだと!?」

 

「ああ、そうだ。城の兵を堕落させ、偽りの平和に興じていたグランバニアに我々に逆らえるだけの戦力はそう残っていまい。それに王妃を探すために人員を割いているだろうし、手薄になった城を攻め落とす好機だ。 故にお前にもう利用価値はない。だから殺す。

  お前は上手く我々を使っていたつもりだろうが……その気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ」

 

 ギャハハハハ!と魔物たちの嗤い声が広間に響き渡る。

 大臣は呆然としていて役に立たない。魔物と手を組んでいたのはどういうわけなのか気になるところだけど……。

 

「その筋書き無理がないかしら? まず私がお前達に協力するわけないじゃない」

 

 メダパニなんかの状態異常魔法で洗脳でもする気なのかしら?悪いけどその手の魔法には耐性を付けているから効かないんだけど……黙っていた方がいいわね。

 え?耐性があるならなんで薬は効いたんだって?薬と魔法は違うのよ。

 

「わっはっはっ!今はそうだろうな。 だが!お前にオレの魂を植え付ければ可能なのだよ!

 魂を植え付ければ如何な人間とて魔に堕ちるのだ!」

 

 そんなことできるの!? ……いや、別作品だけど魔物の心的な職業用のアイテムがあるからそれの応用と考えれば出来る……のかしら?

 

「アベルを仕留めた暁には我が王妃として存分に愛してくれよう。ありがたく思うがいい」

 

 へぇ……。なかなかの自信よね。その自信はこのデモンズタワーの仕掛けや罠の数々と配下の強さと……ジャミ自身のバリアからきているのだと思うけど。

 バリアを張っているジャミは手ごわい。というかまともな手では倒せない。

 原作では攫われた花嫁がアベルのピンチに隠された能力(いてつくはどう)を発揮し、ジャミのバリアを破ることでようやくまともなダメージを与えられるようになる。要はギミックボスだ。

 この状態だとさっきも言った通りジャミを倒すことは出来ない。

 でも、もし今の私が……アベルのピンチによって発揮する天空人の力を発揮できれば?

 

 ……試す価値はある。

 

 目の前にはジャミの配下のデカいオークにデカいキメラ、それとバードマンやアームライオンなどが計十数体。

 対して私は役立たずの大臣に加えて服以外装備なしの私……出産して数日経ったとはいえ万全な状態じゃない。あれらに挑むのは無謀。大人しくアベルを待つべき──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──それは雑魚の思考だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 原作をぶっ壊すって決めたじゃない。

 10年も離れ離れにならないようにって行動してきたじゃない。

 身体は動く。武器や防具がなくたってメガザルロックを素手で割れるぐらいのパワーはある。補助魔法も使える。後はこの大臣を()()で逃がして、私がここにいる魔物全員ぶちのめしてアベルと一緒にゲマを迎え撃てば……うん、イケるわね。イケる気しかしないわ。

 

「フフフ」

 

「……? どうした突然笑い出して」

 

「いや……ね。ジャミ、アナタ私の好み知ってる?」

 

「好み? そんなもの知る必要ないだろう。お前には私の魂を植え付け、私のモノになるのだから」

 

「モノ、ね。 そんなアナタに教えてあげる。私の好みはね……」

 

 ゴトリと音を立てて手枷が外れる。

 手枷が外れたことに魔物たちは驚いているようだけど、これぐらい関節を外してちょいちょいっとやってやれば外せるのよ。

 深く腰を落とし、脇に拳を構える。深く呼吸をして気合をためて──

 

「アベルみたいな男よッ!!」

 

「ば、バカめ!そんな攻撃効か──ぐげぁ!?

 

 私のせいけんづきがジャミの鼻頭に炸裂し、勢いのまま吹き飛ばされた。

 手ごたえからしてまだバリアは張っていなかったみたいね。ある意味チャンスだわ。

 

「なっ!? ジャ、ジャミ様!?」

 

「次はお前よデカいキメラ!!」

 

「き、貴様!! 我をただのキメラと同じにするんじゃない!我こそは空の王者キメー……」

 

「的がデカくて助かるわ! バイキルトからの……ばくれつけん!!」

 

「ぐげあっはぁぁぁあああ!!?」

 

「キメーラ様ぁぁぁあああ!!?」

 

 デカいキメラが私の拳に沈んでいく。

 ……確かこのキメラ、原作だとLv.35だったわね。 じゃあ私はそれ以上に強いってことが証明されたってことね!

 

「あ、あの女を止めろぉぉぉ!!」

 

「おっといけない」

 

 迫りくる魔物をうけながしのかまえで対処しながら、私は倒したキメラに近寄り翼を毟り取る。キメラのつばさ、ゲットだわ!

 

「ギャアアアアアアアアアアアッッッ!!!?」

 

 あ、まだ生きてた。まあいいわ。キメラの尻尾を掴んでそのままバイキルトで上がった力に任せて襲い来る魔物たち手がけて振り回す。

 

「そーれっ!!」

 

「よ、避けろぉぉぉぉ!!」

 

「うわああああああ!!めちゃくちゃだあああああ!!」

 

 魔物たちが散り散りに逃げ出していく。誰も逃がすつもりはないけど……先にコイツから処理しないとね。時間が惜しいし。

 私は後ろを振り向いて立ち尽くしていた大臣の胸ぐらをつかんだ。

 

「デ、デボラ王妃……その……なにを」

 

「歯、食いしばりなさい」

 

「へ? ぶぎゃあっ!?」

 

 大臣の顔面にとうこん討ちをお見舞いしてやる。ある程度加減はしているけど……あ、バイキルトかけたままだったわ。いっけなーいわすれてたわー(棒読み)

 まあ平手打ちだから平気よね。それに私たちを殺そうとしたんだから、これぐらいはやってもいいわよね?ヨシ!

 

「おい、お前よくもやってくれたわね」

 

「ひっ、ひぃぃぃっ」

 

 今の大臣に私はどう見えているのだろう。魔王だろうか?私から逃げようと必死に後退りしているが逃がすなんてことはしない。だって魔王からは逃げられないのだから。

 それにこれぐらいの剣幕で迫らないと上下関係を叩き込めないでしょ。ましてや女を軽視しているような奴なんだから。

 

「今からお前をこの塔から放り投げるわ。 命が惜しければ落下しながらこの獲りたてのキメラのつばさを使ってグランバニアへ戻り、今すぐ救援を呼びなさい。アベルにも嘘偽りなく自分のやった所業を全て話すこと。いいわね?」

 

「そ、それは……」

 

「言っておくけど、拒否したらそこまで。 私はお前を守らないし、魔物たち(あいつら)はお前を殺そうと追いかけるわ。 罪を告白して生き延びるかもしれない可能性に賭けるのと、ここで死ぬか。好きな方を選びなさい」

 

 多分、生き延びたとしても大臣の罪が明らかになれば今までの地位は失い最悪処刑、良くて生涯を牢で過ごすことになるけど自業自得ね。

 まあ原作と違って生き残る道を用意してあげただけ感謝して欲しいわ。

 

「わ、わがりました! い、生ぎだい!生きだいでず!!」

 

「そう、分かったわ。 じゃあいくわよ!!」

 

 塔の壁を殴りつけて穴を空け大臣を投げ飛ばし──キメラのつばさで無事に(?)飛んでいったのを確認してから振り返る。

 

「待たせたわね。 じゃ、続き始めましょうか」

 




大臣に関するオリ設定
・女性蔑視する態度や高慢な態度からパパスとは反りが合わなかった。
・ある日、パパスが伴侶として連れてきたのは何処ぞの出身かも分からぬ女で、魔物と心を通わせることが出来るという嘘か真か分からない曰く付き(大臣目線)だったことからパパスは婚約する相手を間違えたと非難していた。
・やがてマーサが攫われパパスが王子を連れ旅に出てから、オジロンを都合よく扱い実質実権を握るに至った。これであのパパスから国を奪ってやったとほくそ笑む。
・そんな矢先、魔物たちから接触を受けた。普通なら突っぱねるべきだが大臣はマーサのことを思い出し、マーサと違い自分なら魔物を利用できると魔物と手を組むことにしてしまう。
・そうして魔物と交渉を続けいい関係を築いていたつもりだったが、実際は逆に利用されていた。魔物がグランバニアを襲うことがなくなったから相手の要望通り兵士たちにモンスターチェスを渡して堕落させたのも、いずれ兵力が落ちたグランバニアを落とすためだと気づかずに。
それでも大臣は満足だった。何故ならあのパパスとマーサが出来なかったことを自分は成し遂げたのだから。
そして、パパスの子が生きていたと知り今更帰って来た王子に王位を渡すまいと行動を始め──結果、破滅の道を歩むことになった。


余談ですがジャミの言う魂を植え付けるというのは、ドラクエ6でアクバーがシスター相手にやろうとしていたことです。なんか芋虫食べさせようとしていた気が。

次回も転生デボラさんが暴れますのでお楽しみに!
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